MAD111 世紀末総支配人伝説 怒りのヌカ・ワールド 作:溶けない氷
『イタリカ大爆発!
ぶっちぎりバトルレイダーズ!!』の章をご覧ください。
スーパーミュータントスーサイダーが西門を自らの肉体もろとも破壊したのを見て残りのミュータントは武器を叩いて囃し立てる。
『兄弟!よく死んだ!』
『突っ込め!この街はもう俺たちのものだ!』
北からレイダー西からスーパーミュータント、頼みの自衛隊は南門で負傷者を出し制圧射撃の前に動けない。
今、ピニャ皇女の人生で最大の危機が訪れようとしていた。
今もまた目の前の若い兵士が悪夢から飛び出して来たような巨大な犬の化け物に食い殺された。
『人間、いっぱい!うまそう!』
『いたぞ!柔らかそうなメスだぁ!』
『そのメスは俺が食うんだぁ!』
『独り占めよくない!兄弟は分かち合う!俺、足がいい!』
なぜかスーパーミュータントからモテモテなピニャ皇女。
無論、捕まれば文字通り食べられてしまう。
「姫様!お逃げください!こやつら怪異の癖に!
ハミルトン!姫様を安全な場所に!」
ノーマとグレイが剣を振るい、必死にスーパーミュータントに立ち向かう。
『不味そうな人間!死ね!』
ノーマもグレイもこの世界での人間の強さの格からいえば騎士でありかなり上の方にある。
だが、それはあくまでも人間であって生体パワーアーマーとも言えるスーパーミュータントと白兵戦で戦えるものではない。
「行け!ハミルトン!姫様を連れて最後の防衛拠点まで!」
状況は最悪だった。本来ならば第一線が敵を引き受けたところに第2線の部隊が突出した敵を半包囲し叩くという戦術は幾つもの不確定要素に崩れた。
盗賊団の士気が異様に高かったことが作戦を崩壊させた、遮二無二攻め立てる盗賊達の勢いに負けてしまい一気に第2線まで押し込まれてしまった。
そして背後の西門が崩れ去ったという知らせ、兵達に悪い知らせを知られまいとしても伝令の様子とあの大音響と閃光では誰もが状況を悟るのに時間はかからなかった。
結果、民兵達の士気は崩壊し戦線も総崩れとなった。
「ヒャハハァ!イタリカの街はもう俺たちのものだぁ!」
「殺せぇ!奪え!焼いちまえ!」
この盗賊は報復を求めていた、アルヌスの丘では自衛隊相手には一矢も報いることができずに近代兵器の前に一方的に屠殺される豚みたいに
しかし ピニャは走った!死んでいったもの達のためにも指揮官が死ぬわけにはいかない!目には涙が溢れ、死んでいった民兵たちに詫びる。
『人間死ねぇ!お前たち人間が俺たちを作った!お前らの傲慢さの報いを受けろ!』
「くそっ!アグリーどもがいるなんて聞いてねぇぜ!撃て!撃ちまくれ!動くものはみんな撃て!
野郎!どたまねじ切っておもちゃにしてやるぜぇ!」
逃げ惑うイタリカ市民にそれを守ろうとした民兵、どさくさ紛れに市内で略奪する盗賊団。
動くものは皆標的だ!
「クソォ!なんで異世界の軍隊がこんなところにまで!かまうことはねぇ!こうなったら自棄だ!金目のものは早いもんがちだぁ!」
街のいたるところで激しい銃撃戦!放火!核爆発!略奪!強姦!の地獄絵図が展開される
街の裕福な商人の店だったろう商館は、今や双方が投げつけるグレネードや火炎瓶で激しく炎上し見る影も無い。
「ドケェ!くたばリヤがれレェ!」
怒り狂ったレイダーの一人がヌカ・ランチャーを構え、ヤケクソで核弾頭をイタリカの街に適当に狙いをつけて叩き込む。
老いも若きも男も女もまとめて建物ごと核の光で蒸発する。
「死ね!人間!」
負けじとミュータントもロケットや5.56mmを動くものにはなんでも撃ち込む。
イタリカの市民も略奪に来た盗賊達も関係なくレイダーのあるいはミュータントの銃弾の餌食になっていく。
もうこうなったらレイダーもミュータントも理性をなくし・・・・・元々そんなに無いが
イタリカのありとあらゆる動くものを殺戮するだけの殺人マシーンと化した!
『『『『『『『『『『ヒャッハー!』』』』』』』』』』
なぜかわからないが無駄にテンションが高くなったレイダー達は
「汚物は消毒だぁー!」と叫びながら誰彼構わず火炎放射器を吹きかけて回ったせいで街中が松明で人をつけるよりも遥かに早く火の海になっている。
「ひゃっははははぁ!最高だぜ!熱くて!痛くて!これぞ生きてるって証明ダロォ!ヒャッハー!」
「人間はそんなになってなぜ戦う!さっさと死ね!」
阿鼻叫喚の地獄絵図だがウェイストランドではごく当たり前の日常でしかない。
「テメェ!邪魔するか異世界の侵略者野郎!」
ある銀行内では盗賊とレイダーが略奪するものを巡って血みどろの白兵戦を展開していた。
火炎瓶を、グレネードを、剣を、リッパーをスーパースレッジを、槍を振るい。
美しい装飾の施された壁も豪華な絨毯も血と臓物が撒き散らされる羽目になった。
道端にはありとあらゆる階層のイタリカ市民だったものが転がっている、今はもう新鮮な死肉だ。なんということでしょう、美しかったイタリカの街があっという間にまるでウェイストランドの普通の街になってしまいました。
東門の部隊が敗走し戦線崩壊の後に、ピニャ達は手勢の退却を命じ市内の堅固な館であるフォルマル邸で最後の一戦を挑むべく後退して来た。
民兵は突破、分断されバラバラに敗走。
今や市内で無分別に戦うものもいるが全滅するのは時間の問題だろう。
一方で自衛隊部隊は何をしていたのか?
倉田3等陸曹が負傷してからの伊丹二尉の判断は素早かった
まず敵に遠距離攻撃が可能な武器を持つものがいることを判断したのちは一度は要請したアルヌス駐屯地にその危険を警告しようとした。
だがタイミングが悪く、すでにヘリがスピーカを搭載して出撃。
更に最も重要で高価な無線機が軽装甲機動車もろとも破壊されたことによって通信途絶という状態に陥ってしまった。
ヘリが通信圏内に来れば通信できるが・・・・
(俺の判断ミスだ、特地の武装勢力の武装は脅威では無いなんて勝手に判断したために!)
倉田の容体は安定してはいるが出血多量により、輸血なしでは危険だという報告を受けた。
更にそこに続く東門の陥落、西門の崩壊、北側からは新たな盗賊団の侵入という報告は皮肉なことに、制圧射撃の元にある南門が最も比較的安全という状態を生み出してしまっている。
今、伊丹の元に届く報告は錯綜するか元々帝国からは信頼されていない自衛隊のために途切れ途切れのもの。
今ならイタリカ市民を見捨てて南門から強行突破すれば射撃を受けかなりの損害は出るだろうがつつも自衛隊は脱出できるだろう。
今、最終防衛拠点のフォルマル邸に向かえば、帝国軍とともに玉砕エンディングだろう。
指揮官として考えればどうすべきかは考えるまでも無い。
「みな、聞いてくれ。俺たちはこれからフォルマル邸で帝国軍と合流し抵抗線を構築する。
壁は突破されたが持ちこたえれば、ヘリ部隊の火力で敵を一掃することが可能なはずだ。
危険な状況だということはわかっているが、ここが敵の射撃を受けている以上装甲の無い高機での突破は難しい」
言い訳だ、壁があっさり突破されてしまった以上それなりに頑丈とはいえ邸宅が城壁より持ちこたえられるとはとても思えない。
ましてや戦闘において有利な機関銃と軽装甲車も喪失した今の火力では刀槍弓の特地の武装勢力相手でもそんなには持ちこたえられないだろう。
それでも、伊丹は自衛隊員としての誇りを持って市民をできるだけ守る選択をした。
一方で我らが総支配人は…
「ボス、連絡が入った。オペレーターズが街で予想外の連中と交戦中。
負傷者が出ている上にこのままじゃ街が焼け落ちちまいそうだ。
新しい拠点にするつもりならちょっとまずいんじゃ無いか?」
新しいウォーリアバニーの少女とベッドで楽しんでいた総支配人は不機嫌そうな表情で無線機をとった。
「マグスか?なんだって?やれやれ、また問題発生か?総支配人の仕事はいつからワールドの何でも屋になったんだ?」
『冗談じゃないよ!この種馬!これじゃとんだ大赤字だ。これ以上揉め事が続くってんならうちは今回の一件は降りるよ!新しい小娘と乳繰り合ってないで後は自分でなんとかしな!』
「わかった・・・わかったよ。すぐにそっちに行く。
ゲイジ、ペルチバードを用意させてくれ。ほら、ドッグミートおいで」
かくして3週間ぶりにこの世界で戦うことになった総支配人。
身にはクアンタムカラーのX-01を纏いレーザーガトリングとロケットランチャーで武装したその姿は相対するものをことごとく絶望の淵に叩き込んできた連邦の死神に他ならない。