MAD111 世紀末総支配人伝説 怒りのヌカ・ワールド 作:溶けない氷
「ハァ、なんでこんな任務に就かされちゃったんだろうなぁ・・・」
と先程馬上で愚痴を繰り返しているのは
若い”帝国大使”・・・・とは名ばかりの地方出身の下級貴族の若者であった。
名前もユリウスと普通、そして今手にしている皇帝からの書状も実際にはそこらへんの下級役人が古くて安い適当な羊皮紙にそれっぽく書いただけの粗末な物。
それというのも皇帝が元老院への命令というのが
「かの蛮族どもに適当な額の金と女でも掴ませて懐柔せよ」
というもので方法はというと宰相に投げっぱなし、更にその宰相はその責任を辺境伯に投げるつもりだったのだが主だった辺境伯は先のアルヌスの門への侵攻で自衛隊との戦闘で戦死。
残ったのは更に先の蛮族との戦闘、および帝国全土を荒しまわる戦の後難のアルヌスで雇い主が戦死したため傭兵業を中止して盗賊となって暴れまわる傭兵から領地を守るために手いっぱい。
この未曾有の大混乱の最中でありながらもなおも帝国元老院には徹底抗戦を唱えるもの多し。
彼らの騒乱、かつて帝国が10万の兵を一夜にして失ってもなお
戦争、重税、略奪、飢饉、疫病・・・・
帝国に不幸の影が降りようとしていた。
「ユリウスよ、愚痴を言っても始まらん。今儂等にできることはさっさと親書をその蛮族に渡して帝国の威光を連中に知らしめることにある」
「父上、しかし連中が大人しく従うでしょうか?」
ヒャッハー!な巣窟に向かう二人は道道で帝国と盗賊団とヌカ・レイダーという三重苦によって荒廃し尽くした帝国領を見る羽目になった。
大抵は皆殺しにされたか逃げ出したか、さらわれて奴隷にされたかで無人であった。
どのみち、焦土作戦で食料がないのですぐに無人になるだろう。
「ヒャッハー!奴隷がどんどん増えるぜぇ!総支配人様の言った通りだぜ!」
田畑を荒らされ、食料も無く、金も力も無い農民の流れ行く先は食料のある場所。
それは帝国の食料を集めた都市か総支配人の支配する拠点か。
金があれば(金のある農民なんているのかどうかは別にして)都市で戦争が終わるまで凌げるかもしれない。
力があれば傭兵か山賊としてやっていけるだろう。
だが、金も力も無く故郷を追い出された農民は大抵の場合農奴になるしかない。
「おらぁ農民どもぉ!今日からここがお前らの寝床だぁ!怠けやがったら首がなくなるぞぉ!」
総支配人が作った大きな小屋に押し込まれる新しい農奴。
家族に一軒の木の小屋はウェイストランドでメンドくさがりな総支配人が量産なさったあのタイプである。
更にVaultのベッドは資源が微妙に少なくて済む優れものだった。
とはいえ、寝床と食事と安全と街灯(レイダーの気まぐれで殺されるのは別として)が確保された彼らは殆どのウェイストランド人より恵まれている・・・・・窓?知らない建造物ですね
「ヒャッハー!感謝しろ奴隷どもぉ!総支配人様がソーダマシンを作ってくださったぜぇ!
電球も一軒に2個の大盤振る舞いだぁ!
給料も払ってくださるぜぇ!キャップでだぁ!」
総支配人のグリーンランドを支配する恐ろしい計画とはコーラに隠されているらしいが果たして・・・
ヒャッハー砦へと向かう一見すると・・・・というかかなり普通のこの二人組は帝国の下級貴族のユリウスとブルーノの親子。
皇帝から宰相へ、宰相から元老院へ、元老院の中でも上から下へと仕事がたらい回しにされてこの二人に落ち着くあたりいかにヌカ・レイダーが軽く見られているかがわかる。
従うわけがない。
連中を従わせる一番手っ取り早く唯一の方法はベヒモスを素手の一撃で粉砕する世紀末総支配人を一騎打ちで倒すしかない。
やり方は簡単!ガントレットに入って様々なアトラクションでお楽しみください!
最後には当ヌカ・ワールドの総支配人が権力の座をかけてお客様を丁寧におもてなしいたします!なお本アトラクションは一切の安全基準を満たしておりません。
ヌカワールドは焼死、爆殺、刺殺、斬殺、撲殺、放射能汚染、疫病、窒息死、失血死、そのほかアトラクションによる不利益一切の責任を負いません。
一方でかつては帝国のそれなりに豊かな土地の村だったのだろう。
今は家の軒先にミートバッグが吊り下げられ、その中身は・・・・・
まぁお察しである。
「このあたりはエモノが多い!ナックルはここが好きになった」
広間の中央でガイコツや肉や死体を散らばせながらスーパーミュータントがアサルトライフルをかざして仲間に演説している。
頭に被ったり、腰に差しているのは殺した騎士から奪った剣や鎧兜だろう。
「「いいぞ、いいぞ」」
広間のミュータントも串に刺した何か不思議な肉にしゃぶりつきながら囃し立てる。
「ここの人間、とても弱い!柔らかい!美味い!連邦よりもずっといい場所!
緑の兄弟はここ支配する!兄弟はたくさん食べてもっと強くなる!
兄弟はもっともっと美味い肉を手にいれる!」
剣で盾を叩いたり、柱に吊り下げたちび人間の鎧を揺すっておもいおもいの方法で囃し立てるスーパーミュータント達。
スーパーミュータント:特地のオーガだと言われればそうかと日本人ならば思うだろう。
FEV(強制進化ウイルス)によって生まれた元は人間のミュータント。
しかしながら連中の恐ろしさは人間と同様に銃火器を使うということにある。
そればかりか銃弾を撃ち込まれても平然としているタフさ、放射能に対する耐性、人間をチーズみたいに割いてしまう怪力などウェイストランドで最も厄介な人類種の敵である。
弱点はこの話し方から分かる通り、バカなことにある。脳筋キャラなのだ。
「でも兄弟、ここの人間、銃持ってない。弾、拾えない」
「安心しろ兄弟、ここの人間弱くて愚か。銃いらない。殴れば簡単に死ぬ」
ミートバッグの一部になってしまった騎士を指差すナックル。
ちょっと変わった逸れオーガかと思って討伐に来たのが運の尽きであった。
「兄弟、ちょっと前 俺たち変なドアからここへ来た。
ここは緑のものがないけど、それ以外はいい場所。ここの兄弟は扉に戻ってもっと兄弟をたくさん連れて来るべき。
兄弟は皆でここをわかちあうべき」
開いた扉が一つだけなんて誰が決めた?
ウェイストランドの恐るべき生物はレイダーだけではない・・・・
「ヒャッハー!ますますいいところになって来たぜぇ!
キャップ!暴力!SEX!」