MAD111 世紀末総支配人伝説 怒りのヌカ・ワールド 作:溶けない氷
「ふむ、敗れたか。だがこれで近隣諸国が帝国を脅かす不安は解消した。
アルヌスより帝都に至るまでの全ての町と村を焼き払い、井戸には毒を投げ入れ、食料・家畜を運び出せ。さすればいかなる軍とて補給できず立ち往生するであろう」
「しかし陛下、アルヌスの蛮軍に対してはそれで良いでしょうが。
ベッサニカの蛮族に対してはいかがなさるおつもりなのですか?」
連中は蛮人とはいえ軍のアルヌスとは違い、まさに蛮族。
バラバラに散って略奪して回る連中に焦土作戦は相手の脅威度の割に被害が大きすぎる。
「ふ、所詮は蛮族の群れにすぎん。そうだな、適当にはした金・女を与えてやりアルヌスの丘の蛮族に当てればよかろう。
夷を以って夷を制す、制せずともある程度の被害を与えてくれればそれでよし」
今までも帝国は圧倒的な国力を以って東方遊牧民の撃退にも事をなした。
遊牧民同士の仲間割れを助長すればそれで事は足りる。
もっとも、総支配人の異常なクラフト能力を中世レベルの科学技術で想像しろと言うのが無理がある。
「よっこいしょと」
そう言うなり新しい拠点に常温核融合炉とウォータポンプと街灯やベッド、ミサイルタレット等を5秒で製作する総支配人。
「ベッドまで作るはめになるとはな、いっその事このままヌカ・ワールドでも作ろうか?」
この拠点はつい最近までそこそこの街だったらしいがなぜか焼け落ちて住人がいなくなっていたのでレイダーの拠点にしたのだ。
結論から言えば、帝国兵よりも粗衣粗食な連中の上の総支配人や自衛隊相手に焦土作戦は自身の体力を削るデメリットの方が大きすぎたと言える。
「ヒャッハー!灯だぁ!水だぁ!これでまた略奪に精がでるってもんだぜぇ!」
なお、どう頑張っても乱雑で世紀末感が溢れるのがレイダー拠点である。
「ボス、食料が足りないって部下の連中が文句を言ってるんだが」
「それに関しては問題ない。もっと労働者を集めればいいだろう。幸い、そこかしこに食いはぐれた農民がいるみたいだしな」
帝国の焦土作戦とは要するに農民から作物を取り上げて飢えて死ねと言うようなものである。
従わないのならば剣にものを言わせるのが帝国のやり方。
言葉がわからないために何が起こっているのかはわからなかったが、総支配人は立派なレイダーだけに帝国のやり方もよくわかった。
「着飾って、洒落た椅子に座ってりゃレイダーも貴族か。面白いな」
あなたもヌカ・ワールドで働こう!!
ちなみに奴隷には爆弾首輪をつけて労働させるのがヌカ・ワールドです。
寝場所、食料、水があり、スーパーミュータントのおやつになる心配もないのだからウェイストランド基準では充実している。
まぁこの世界の農民は弱いので面白半分に犯されたり殺されたりするかもしれないが。
「総支配人、部下たちからの献上品が届いてるここいらで取れた戦利品だそうだ」
そう言って部下たちから差し出されたのは新鮮な野菜に銅貨に巨乳の美女。
小綺麗な衣装を着て、ビクビクしている様子だが手が荒れていないことからそれなりの身分の女性だったのだろう。
「中々気がきく部下どもじゃないか、美味しそうな山の幸にデザートか。」
「ああ、だが英気を養ったらまたやる事をやってくれよ。コルターみたいに怠けられたんじゃまた新しいボスを探さなきゃならないからな」
レイダーは農村なんぞ支配しない。
防御陣地を築くにも不適当、大した資源もない、取れるのはせいぜい農産物だけ。
彼らはただ奪うだけ、面倒だからだ。
その農産物にしても皇帝の命令によって刈り取られるか焼かれ、井戸は毒が投げ込まれ使えなくなっている。
村の戦略的価値は低い。
キャップ・暴力・薬こそ彼らの存在意義。
アイボットが見つけた資源が豊富な土地、エルベ藩王国を攻めるべく兵力を整えるため総支配人は大量のロボット軍団の生産を決定した。
第3世代の人造人間は変に小賢しくて信用できないから却下。
そのために必要なのは大量の資源。
銅貨はそのための布石。
『ようこそヌカ・ワールドへ!アメリカ1のアミューズメントパークさ!やぁみんな!僕はキャッピー!』
『おっと、おいらはボトル』
と愉快な最低限の安全基準は満たしてるヌカワールドへの紹介ビデオを流し続ける農作業用のロボの隣にはバラバラ死体が壁に飾られていたり頭が串刺しの伝統のレイダーアート
「正直にいうと、大勢の人間がいる割にはこの世界にめぼしいものは見当たらないな」
今まで略奪した中で一番価値のあるものは言うまでもなく新鮮な野菜。
放射能に汚染されていない野菜はそれだけで同じ重さのキャップの価値があるレアものだ。
金や銀といった貴金属の類はウェイストランドではもはや大した価値はない。
「レイダーは自分の両腕で持って歩けるキャップ以外は信じないからな」
レイダーの点と点の支配は帝国にとっては歯がゆい