MAD111 世紀末総支配人伝説 怒りのヌカ・ワールド   作:溶けない氷

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街までは何マイル?

総支配人がイタリカを支配し

イタリカがヒャッハーなレイダー達の巣窟となった。

伊丹がイタリカに入ると地獄そのものといった外観に反してその街の中は様変わりしていた。

焼け落ちるか、崩れ落ちた家はいつの間にやら消え去り跡地には自衛隊が難民に提供していたようなコンテナ風の家が立ち並んでいた。

街の主な通りには一番信じられなかったのだが街灯が並び、もう日暮れだというのに明かりが煌々と照らされていた。

一般的に特地でも魔法を使った明かりはあるが総じて高価であり貴族の邸宅に使われている程度だったのだから地球では街灯は燃料代がかかるのでよほど豊かな街の大通りくらいしか近代以前はランタン街灯くらいしか使われていなかった。

総支配人の支配する領域では松明もランタンもガス灯もすっ飛ばしてLED電球の街灯がポンポン建てられていた。

だからと言ってレイダー連中が電球の構造について理解しているとは言えない。

車が運転できても車の構造を理解していないというのに似ている。

伊丹が街に入るとまず目についたのはド派手なカラーリングの巨大で真っ赤なNuka-Colaとド派手にネオンが輝く屋台だった。

「おい兄ちゃん、どうやってここに入ってきた?」

屋台から話しかけられるとそこには真っ赤なMrハンデならぬMrフロシーが第3偵察隊の面々をもてなしていた図があった。

「あ、隊長!良かった、生きてらっしゃったんですね」

富田二曹が説明するにはあの後、山賊が邸宅になだれ込んできた後に自分たち自衛隊とその協力者のロウリィ、レレイ、テュカは自衛隊が敗走したという知らせとともに邸宅から放り出されたのだという。

置いてあった高機は戦闘で破壊され、レイダーに部品をひん剥かれて解体されて改造されてしまった。

富田二曹が目をやるとそこには鉄板を貼り付けられ、刺々しくなった世紀末世界風の自衛隊の車両があった。

伊丹も思わず『北斗ワールドかよ!』

と突っ込まずにいられないほどに改造された自衛隊の高機を

”ヒャッハー!!”と叫びながら馬乗りになったモヒカンのレイダーが運転していた。

なぜ運転するのに窓から身を乗り出すのか、なぜ火炎放射器を装備するのか。時は正に世紀末だからだろう、連中の行動に合理性を求めること自体間違っている。

「目は合わせんなよ、兄ちゃん。殺されて屍肉の塊だぜ。

それより酒はどうだ?なんか飲んでくだろ?まさか冷やかじゃないだろうなぁ・・・」そういうなり機関銃の安全装置を解除するフロシー。

ここもひどい世紀末バーテンダー。

馬車が来るまで偵察隊も待ち合わせ場所のここで半ば無理やり店に引きずり込まれたのだ。

尤も、出された酒は紛い物でも薄められたものでもなく料金も人生経験の長いロウリィに言わせると“この味でなら良心的な価格よぉ”らしい。

総支配人の考えでは薄めたり不味い酒を出すバーは消毒されるべしなのだから当然かもしれない。

 

 

受け取った銀貨もろとも移動する術を無くしてしまったため今はイタリカの生き残った商人が手配してくれている馬車が届くのを待っているということだった。

「そっちも生きてたんだったら、連絡しろよ」

「いえ、無理だったんですよ。連絡しようにも無線機まで取り上げられたんですから」

それから富田はあれから起こったことを報告した。

イタリカの街はこれから中立地帯となり、あの総支配人と呼ばれる人物がとりあえずということで壊れた城壁や家を建築し、街灯をつけてとりあえず見れる外見にしたことやあの皇女とお付きの騎士が今やお手つきになったという話。

これにはエロ=ゲかよ!と倉田も驚いたらしい。

 

あまりにも疲れていたので他の隊員は屋台の裏のホテルをとってそこで休憩しているという話だった。

「要するにだ、みんな今はすぐそこの旅館にいるんだな?

それも無傷で」

隙あらば金を毟り取ろうというロボットだったが宿は案外適切な値段だった。

宿もこの街であちこちに建てられたコンテナ風の建物だった。

総支配人もめんどくさかったのかVault-Tecコンテナ建築でとりあえず仮設住宅を建てたのだが、余った資材で街に必要と思われる商人用の宿も建てておきそれを偵察隊に貸していた。

どう考えても昼間から建て始めて夕暮れには終わっているレベルの建築ではないが気にしてはいけない。

なぜか片言の日本語で『ナニニシマスカ?』と屋台の別のロボットがラーメンを出してきたのには

(タカハシ!?量産されていたのか!?)

『お、おう』と押し切られて買ってしまった。

お代は商人から代金として受け取った銅貨でも払えるらしい。

はっきり言って謎の山賊は滅茶滅茶な存在だとしか思えないが、目の前のロボット?の事も後で報告する事になるのだろう。

まず間違いなく信じないだろうが・・・・

 

 

「急げ!既に街から火の手が上がっているぞ!」

薔薇騎士団は馬に拍車をかけイタリカの街に急いでいた。

 

本来であればイタリカから撤退する第3偵察隊と鉢合わせて伊丹がアーッ!な展開になるが高機が盗まれた今ではレイダーカフェで管を巻くしかない。

すぐそこではレイダーが娼婦とパコパコやっているのが見えたり、死体が逆さに釣り下がって皮を剥かれているなどかなりの世紀末ぶりを見せているが

ウェイストランド人にとっては穏やかすぎて退屈な光景にすぎない。

 

薔薇騎士団が町の半ば崩れ、コンクリートで無理やり補修した門のところにやってくると

異形のゴーレム達が出てきたのには驚いた。

武闘派で知られたボーゼスが何者だ!と詰問すると、

Mrガッツィー大佐がボーゼスをいきなり電ノコで切り刻もうとするのをドミネーターが止めた。

『やめなさいよ、また殺したら今度こそ初期化されちゃうわよ』

『Fuck!構いやしねぇ!ムショが怖くて生きてられるかぁ!』

正直、門番としてはレイダーよりは理性的だが世紀末AIはどいつもこいつも殺っちゃうよ!モードが基本なのはなぜだろうか?

きっと誰かがそのうち直してくれるだろう。


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