MAD111 世紀末総支配人伝説 怒りのヌカ・ワールド   作:溶けない氷

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ウェイストランドでも連邦はキャピタルに比べればかなりましだから。
キャピタルは人間やめちゃったアッパラパーがそこらへんにうろついてて人肉食が当然のように横行してるから。
え?連邦もそんな変わらないって?
農業ができるだけまだマシなんだよ!(ガチギレ
この清浄な世界だとfallout世界は動物も植物もめちゃくちゃ繁殖力強そうだから大増殖しそう。


Hard Negotiation

「隊長、矢文です。白旗の用意ありと書いてあります」

「白旗?」

屋上で警戒態勢に当たっていた栗林から階下の伊丹へ報告がなされた。

銃を構えながら油断なく周囲の様子を伺う伊丹だったが、向こうから白旗をつけた矢文がフォルマル邸宅の屋上に届いたという報告を受けた。

自衛隊の空挺部隊と緑の怪物達との銃撃戦がいまだに向こうで行われる中、伊丹達第3偵察隊は銃弾も既に残り少なくもう一度の突撃を受ければ自衛隊員も槍や剣で応戦せざるを得ないほどに追い詰められていた。

 

 

伊丹の頭によぎったのは某国民的ロボットアニメの監督の巨大な赤いジ○と因果地平のお話であった。

白い旗が”根こそぎに殲滅する”という意味、白手袋を投げつけると同じだという可能性はある。

 

「まさか、俺たちを殲滅するって意味じゃないよな」

「何言ってるんですか、ここでも降伏は白旗ですよ。

内容ですけど・・・レレイに読んで確かめてもらったんですけど・・・・」

手紙に書かれていた内容は意外にも話し合いに応じるというものであった。

 

イタリカの領主 ミュイ伯爵令嬢へ

「降伏せよ。我々はヌカ・ワールド。

町の物資と人員を総支配人に献上しろ

抵抗は無意味だ」

 

自衛隊へは

「異世界の軍隊へ、貴公らはよく戦った。

これ以上の戦闘は双方にとって無意味である。

貴公らが帝国と敵対するのであれば、彼らに与して損害を被る理由はない。

速やかに武器を収め、撤収することを提案する。

我々は手出ししない

拒むならば”地上の太陽”で殲滅する」

 

回答期限は太陽が頂点に達する時までにとも添えられていた。

時計が発明されていない帝国では最も正確な時間を測る道具は日時計だと考えられていた。

総支配人から帝国と自衛隊双方に向けて当てられた文面は要するに降伏するか、撤退するかの違いだけである。

自衛隊については正体不明ということもあるのか、文面はわりかし穏当だがいざ戦闘になれば重火器を保有していない偵察隊にまず勝ち目はないだろう。

「ムゥ・・・この”ヌカ・ワールド”というのがわからないな・・・

帝国の人員の中で誰か知っている人はいるのかな?」

伊丹が降伏か、戦闘継続かで招集した帝国のそれぞれの代表、ピニャ・ハミルトン、そしてミュイとその側仕えの執事に問いかけるが誰もはっきりとしたことはわからない。

そんな中、正確な翻訳の為に出席してもらっていたレレイが手を上げて知っていると言った時には周囲の人間も驚いた。

「商人から聞いた話、あくまでも噂」

レレイの話によれば”異世界への門”は最低でも二つあり帝国が侵攻した”ニホン”は伊丹たちが住む世界。

もう一方の”荒野”、そこはあまりにも荒んだ世界。

ただ荒廃した建物と荒野が広がるだけの何の価値もない土地。

うだるような暑さの快晴が続いたかと思えば、毒を含んだ嵐が襲ってくる。

そこに住み着く怪異は戦闘力も凶暴性も帝国が今までに戦ったモンスターとは桁違い。

侵攻した帝国軍の部隊の中核のはずの騎士ですら圧倒する怪力のアンデッドのようなモンスター。次々と湧いて出てくる巨大な昆虫。

そして帝国の重装騎士がまるでぼろきれのように引き裂かれたという”鋼爪竜”

そんな怪異たちが常に殺し合い、奪い合い、貪り合う修羅の世界にも人間は生きている。

当然のように彼らの凶暴性や好戦性はかつて帝国を襲った蛮族のそれと比べても凄まじい。

そんな彼らが自分たちのことを”レイダー”と呼んでいる。

意味は”襲い奪うもの”

彼らは凶暴で我が強い為に幾つかのグループで殺し合い、縄張りを主張しあっていた。

そんな彼らを前の王を殺し、圧倒的な暴力とカリスマでまとめ上げたのが彼らの指導者の”オーバーボス”

彼らの蛮族王だという。

彼に関しては明らかに誇張や帝国の伝説から盗用したとしか思えない噂が付いている。

曰く、人間だが200歳を超えている。

曰く、数々の強大な怪異を斧一本で討伐した。

曰く、7日と7晩で帝国侵攻の巨大な拠点”砦”を築いた。

曰く、数々の精緻なゴーレムを創造し、使役する。

曰く、とてつもなく巨大な鎧を纏い人間を小枝のようにへし折ってしまう。

曰く、数々の怪異を僕として飼いならしている。

曰く、帝国の要塞を一人で完全に破壊した。

曰く、強大な炎の魔導師である。

曰く、矢玉も彼を避けて射手に返って行く。

曰く、一口飲むだけで傷を癒す神秘の霊薬の製法を知るただ一人の人間である。

 

(レレイは馬鹿馬鹿しいと思うが全部実話である)

 

はっきり言って、バカバカしいほどの誇張だ。

「本当だとは思えない、蛮族の王が自分を神格化するための馬鹿げた作り話だと思う」

この話にはピニャも賛同せざるを得ないが

「そんな話は妾も父上から聞いたことがない。

だいたいなんだ!?帝国皇女たる妾が知らんことを商人が知っているというのか!?」

 

「だから噂は噂、けど商人は相手が蛮族でも現実的に取引する。

一方で帝国は彼らを侮っているから情報収集も疎かにしている。

彼らの価値観は私たちとはまるで違うけど”得”と考えれば取引はする。

むしろ、今まで帝国が彼らを知ろうともしなかったのが意外」

 

「なっ!?帝国が怠けていたとでも言いたいのか!?

それでもそなたは帝国の恩顧を受けた民か」

 

副官のハミルトンも鼻息を荒くしてレレイに突っかかるがそれを”どうどう”抑えたのが我らがヒーローの伊丹二尉。

 

帝国の行動や彼らの話云々はともかく、今の状況は自衛隊にとって圧倒的に不利なのは変わらない。

要は彼らの要求を受け入れるか受け入れないかの話だ

「反対だ!奴らが約束を違えないという保証がどこにある!?

それにそなたら”ジエイタイ”は武器を置けば立ち去れるとしてもイタリカの民はどうなる!?

話ではかの蛮族どもは男は殺し、女は奴隷にするというではないか!?

そんな連中が皇女殿下や伯爵令嬢を捕えれば・・どうなるか・・・

それをわかって言っておるのだろうな!?」

ハミルトンが一気にまくし立てるが

伊丹はピニャやハミルトンやミュイが同人的な展開で屈強な男たちに無理やり押し倒され

”くっ殺せ!”から

”イヤァ!”ビリビリから

奴隷娼婦ENDな展開を想像してしまった。

エルフのテュカも年相応に性に関しては知っている。

何しろ身売りをして稼ごうと言い出したくらい大胆な方向にいく娘なのだ。

自分が野蛮な男たちに昼も夜もあーんな事やこーんな事をされ望まぬ子を身籠もる想像でちょっと赤くなっている。

「だ!大丈夫だから!エルフって見た目より頑丈だし!5,6人産まされたくらいで私メゲないから!」

「いや、駄目でしょ!ハーフエルフが毎年仕込まれる将来しか見えないから!

明らかにBADENDだから!」

伊丹も見知った少女が鬼畜な苦界に落とされるのを許容するほど人でなしではない。

だが、このままではイタリカは消滅してしまい市民も皆殺しにされてしまう。

集まった自衛隊、帝国のピニャはじめとする代表、町の有力者たちがあーすべきだ

こーすべきだと議論白熱し纏りを見せない。

「方法ならある」

中世的的な価値観が横行する特地では降伏しなかった町は男は皆殺し、女は手篭めにされるのが普通であるし今まで帝国はそうやって領土を増やしてきた。

それだけに今度は自分たちがそうなる番だと思うと悲観のあまり街に火を放って赤子や子供は刺し殺し、自分たちも皆自決してせめて相手に何も残さないようにしようという地球のマサダ砦かバンザイクリフのような案すら出た。

集団自決は何も中世的な考えではない、地球でも最近までは・・・今でもありふれたものだという事を伊丹は思い出した。

そんな中で彼らにいい解決法があるとレレイが言った。

「商人から聞いた話。蛮王は必ずしも絶対的な王ではない」

ピニャがどういうことかと聞くと

「むしろ、蛮族の利益を調整する存在だと聞いた。

この手紙には”総支配人から”という文面がある、つまりここに蛮王が来ている可能性は高い。

だから彼ら支配下の蛮族でなく、蛮王の直接の財産としてイタリカを寄進するという形を取れば、蛮族も蛮王の私有財産に手はつけられない」

 

これにはピニャも大反対した!

「バカな!ここイタリカは帝国の要衝!それを蛮族に明け渡すだと!?

そのような事、帝国が許すと思うたか!?」

思わず腰の剣に手をかけるが、周りの空気はシンと重い。

そんな中、誰もが思わぬ人物が声をあげた。

「・・・・私は、彼らに明け渡そうと思います」

この町の名目上の領主であるミュイ伯爵令嬢だった。

「ミュイ様!?何をおっしゃっておられるのですか!?」

 

「聞いてください、確かに彼らが蛮族なのは明らかでしょう。

ですが帝国から送られて来た兵がいかに皇女殿下率いるとはいえこれだけというのは?

そうです、我々は帝国から見捨てられ滅びよと命ぜられたも同然なのです。

異界の軍も民を守るためと義憤に駆られて我らに味方してくれましたが、結果として彼らをもまた苦境に追いやってしまいました。

我らは今や弱く、自らを守る術も持たない以上・・

悲しい事ですが強者に媚びるしかないのです。

無論、彼らに無条件でひれ伏すのではありません。

イタリカが存続し繁栄することが彼らの利にもなるという事を納得させられれば有利な条件で彼らの譲歩を引き出せるやもしれません」

 

そう言ってすっと場をたつミュイ伯爵令嬢。

「伊丹殿、あの文面にはイタリカと”ジエイタイ”への二者への文が認められておりました。

我らに加勢してもらった上にこのような事を更に頼むのは心苦しいのですが、どうか私と共にかの蛮王と交渉に臨んでもらいたいのです

あなた方のお力添えがあれば、あるいは市民の生命には危害を加えないという確約を得られるやもしれません」

”市民の生命”それはつまり財産や”市民”には含まれないこの町の有力者の身の安全はわからないという事だ。

特地では新たに支配した領地の旧支配層は僅かに血を引くものも徹底的に一掃される傾向にある。これがマキャベリズムというものなのはわかっているが、この少女は自らを犠牲に捧げ市民を守ろうというのがわかってしまった。

「わかりました・・・伊丹二尉は全力でイタリカの全ての人を守ります」

さすがは英雄、伊丹はミュイも含めて全てのイタリカ市民を守るために蛮王。

総支配人と交渉に臨む覚悟をした。

そうと決まれば矢文を打ち込んで来た男に声をかける。

「おーい!我々は”ニホン”の”ジエイタイ”とイタリカの代表だ!

”総支配人”と交渉の準備ができたから、今からそちらに行く!」


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