MAD111 世紀末総支配人伝説 怒りのヌカ・ワールド   作:溶けない氷

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総支配人Music
山の魔王の宮殿にて クラシックラジオより

装備 貫きのレーザーガトリング 蝿から拾えた謎

第3世代人造人間 能力は高いらしいがインス内部のは温室育ちという印象が拭えない
ゴキブリを素手で殺して拾って食うのが日常のウェイストランドでは生きていけそうになさそう
脱走したい者が多いが、何地上に幻想抱いちゃってんの?感が強い



山の魔王の宮殿にて

伊丹たち第三偵察隊がフォルマル邸で64式小銃やMINIMIを奮っての白兵戦に突入してからすでに1時間が経過している。

当初は自衛隊の火力に押され気味だった盗賊団だったが、ここにスパミュの一団が乱入。

3すくみの大接戦になってしまった結果、当初の予定のフォルマル邸突入を優先される形となった。

「こんの!いい加減諦めなさいよ!」

今も栗林が銃剣で剣を振るって突入してきた盗賊団の剣士の一撃を躱して白兵戦でどタマをカチ割る。

ちなみに銃剣や銃床を振るって白兵戦をするとせっかく合わせた照準が狂ってしまう可能性があるので基本的にはお勧めできない。

 

しかしながら接近戦でそう贅沢も言っていられない。

何しろ、今この館に押し寄せてきているのは盗賊団だけではないからだ。

「この!いい加減諦めろ!」

今も冨田二曹の64式の銃弾が粗末な銃を物陰から撃ってきた巨大なモンスター、スーパーミュータントの頭蓋に直撃する。

自衛隊の銃弾は連射性を高めるための弱装弾だがそれでもウェイストランドでは高級な308口径相当の弾丸だ。

スパミュに対抗するにこれ以上の物は望めないだろう。

『い、痛いぃぃぃ!』

頭を撃たれて声をあげながらも、パイプサブマシンガンを撃ち返してくる。

だがそれで戦意がひるむことはない。

スパミュとは味方が殺されるのも、敵を殺すのも大好きという戦意の塊、好戦的種族なのだから。スーサイダーの核タッチダウンからもわかるように何も考えてない。できるからやるみたいなノリで。

 

『やるなチビ人間!もっとだ!もっとよく戦え!』

『兄弟がやられた!げーきどぉ、げーきどぉ!』

四方八方から自衛隊と帝国軍と盗賊団とに無差別に銃撃を加え、フォルマル邸宅はあちこちに弾痕がつき、壁はボロボロ、窓はことごとく割れた悲惨な有様になっている。

 

短機関銃の38口径は自衛隊の防弾着でも防げる、が喰らって無事というわけにはいかない。

「うわっ!」今も伊丹の防弾着にどこからか飛来した38口径が紛れ当たりし、倒れこむ。

「隊長!大丈夫ですか」

慌てて黒川が駆けつけるがすぐに起き上がって小銃を今やボロボロの壁に即席で作られた銃眼から冷静に撃ち返す。

「俺に構わず!それより倉田を見ててやってくれ」

倉田は傷の縫合が完了すると未だに傷が癒えていないにも関わらず銃座でMINIMIによる制圧射撃を行なっている。

既にフォルマル邸に分散配置された偵察隊の空薬莢がそこかしこに散らばっているという日本では考えられない光景だ。

民兵もクロスボウ、弓矢をこの3すくみの乱戦に対抗しているが豆鉄砲とはいえ銃に対しては不利は隠せない。

ましてや強力な5.56mmアサルトライフルを持ったスパミュも混じっているのだから。

防弾着とはいえ、ライフル弾を至近から喰らっては貫通間違いなし。

連邦でも有数に危険な存在だろう。危険でない場所なぞ連邦に存在するかと言われれば答えられないが。

『チビ人間どもよ、あっそぼう!!』

いつの間にやら銃弾をくぐり抜けてバリケードを突破し一階の玄関ホールに侵入してきたスパミュに相対してしまったのは栗林だが、彼女の戦闘スキルは卓越している上に侵入してきた怪物に敢然と立ち向かう人物がいた。

「弓兵は階上より上の布陣を崩すな!入ってきた敵を確実に仕留めよ!」

ピニャ皇女の勇気の守護天使が突然勤労意欲に目覚めでもしたのか民兵を指揮してホールや開いた壁の穴から侵入してくる敵兵の迎撃に当たっていた。

階上の弓兵がクロスボウを至近距離で次々とスーパーミュータントに突き刺していくが、その程度では頑丈な筋肉の塊に刺さるだけで動きを鈍らせるだけでしかない。

『い、痛いぃ!人間、もうおこったぞ!』

激怒しながらボードを栗林に叩き付けようとするが、素早い動きによってかわし床に穴が開くだけで終わる。

動きが鈍ったスパミュに栗林が至近距離から64式を叩き込むと

『アイエエエエェ!』

という叫び声をあげて倒れ伏した。

「やった!やりました!」

「みんな!踏ん張るんだ、もうすぐ味方が来る!」

伊丹達第三偵察隊の要請を受けて空から戦乙女が駆けつけつつある。

 

だが、イタリカの上空に現れつつあったのは健軍一等陸佐の第4戦闘団だけではない。

 

『間も無く、目的地上空。高度500ft、対地速度250kt。

風向北西、3m』

「目的地上空で降下する、その後は砦に帰還しろ」

ヌカ・ワールドの象徴とも言えるクアンタムカラーのX-01に身を包みながらイタリカ上空に到着した総支配人は徹甲ガトリングレーザーに核融合電池フュージョンコアを装填する。

市街戦では爆発物の使用は味方も巻き込んでしまいかねないため使用を自粛している。

 

二百年もののペルチバードは装甲が薄いため僅かな被弾も命取りになりかねないため先頭には参加せず総支配人は降りたら敵を皆殺しにしてテレポーテーションで帰る。

「降りる」

自由落下。

一瞬ののちに空中に飛び出すとそのまま自由落下しレイダー達が待機するモンフェラート商館の屋上に着地する・・・はずだったが強度が少し足りなかったらしく屋上から1階までそのまま突き抜けてしまう。

「うん、思ったよりも脆かったな。やぁマグス、調子はどうだい?」

「やっと来たかい、次からはお得意のテレポでヒュッと来てくれよ。

農民だけかと思ったら、スーパーミュータントに例の変な軍隊まで混じってるなんて話はアタシは聞いてないよ。

こっちはおかげで死人まで出て大損さ、これ以上やるっていうんなら部下は貸すからアンタが出張るんだね。

それと、街を全部更地にするのはやめといてくれよ。

農民ならいくらでも補給はできるが、キャップの入りが悪くなっちまう」

 

「敵勢力について情報はあるか?」

 

「まずはご存知スーパーミュータントども、あんたが連邦でさんざ殺して来た相手さ。

次が帝国軍、数だけの雑魚さ。あんたのご自慢のPAなら簡単に始末できるだろ。

それとここいらの野生のレイダー、帝国よりはやるみたいだが正直似たようなものさ。

そして最後が謎の軍隊、今んところは帝国に味方してるみたいだね。

連中の武器はコンバットライフルにグレネードってところ」

 

「それは変だな例の軍隊と帝国は今も交戦状態の筈だ。

帝国の連中も勝利か死かと息巻いてたぞ」

 

「アタシが知るかよ、大方一時休戦ってやつだろ。

どうする?全部にぶっ放して、結局街が消えてましたなんてオチは願い下げだよ」

 

「無論、いつもの通り。

連中が”平和的解決法”に応じるならそれでよし。

そうでないなら、ここじゃこいつが法律だ」

 

そう言って徹甲ガトリングレーザー”Refreshment”を構える。

Legendary Weapon、ウェイストランドにおける権力の象徴。

二百年前のアメリカと呼ばれていた国では様々な軍事科学技術が異常な発達を遂げた。

工場の量産品に優れた職人や科学者が更に様々な改良を加え、驚異的な破壊力を持った武器が多数つくられた。

今となっては伝説の域にある科学技術によって作られた、再現不能な武器は高キャップで取引されウェイストランドの権力の象徴となっている。

ミニニュークは自爆の危険がある威力過剰な上に、高価なこともあってここぞと言う場合にしか使えない。

このRefreshmentもその一つ。

中国のキメラ戦車や装甲車に対抗するために作られた?のであろうこの武器は

貧弱なアーマーしかつけていないグリーンランド人なら一発かすっただけで蒸発、城壁もダンボールのように貫くおそるべき兵器である。

この世界での問題の大半は安い無誘導のロケットと銃弾でカタがつく。

平和的解決とは”物資を全部出せ、殺さないでおいてやる”

ウェイストランドでの普通の解決とは”いうことを聞かないなら殺す”

なのでかなり紳士的である。

 

「OK、ボス。手下の中でも腕利きを連れて来な。

後はご自慢のPAとポンコツ3等兵どもで終わらせりゃいい」

そう言うなりオペレーターズの中でも最精鋭のブッチャーが6人、総支配人の直衛につく。

 

「総支配人、目標は現在戦闘中のこの街の中心。情報によるとこの街の元締めのアジトです。

言うことを聞かせてやりたいなら、こいつを付ければどんな奴も一発ですよ」

 

そう言って例の首輪爆弾の束を総支配人に手渡す。

今まで制圧した街の元締めの貴族の連中にはことごとくこいつをつけて絶対服従の奴隷になってもらった。

それでも反抗する奴は文字どおりクビになってもらおう。

ライバルが大勢いるソフトドリンク業界のビジネスは厳しいのだ。

 

「よし、行こう。動くものには全部銃弾をぶち込め」

「ヒャッハー!」

 

商館からレイダー達が出撃していく先ではスーパーミュータントとの戦いを終えたロウリィがフォルマル邸で伊丹達と合流したところだった。

双方の兵員が疲労の限界に達したところで一時的な小康状態に陥った隙をついてロウリィが道端からバリケードをくぐって転がり込むようにフォルマル邸に入って来たので

全員で慌てて中に引きずりこむようにして臨時の応急処置室になった台所へと運び込んだ。

ハルバートを杖代わりに使い、ぼろ切れのようになったドレスを身にまとい全身血にまみれて黒くなってさえいなければ中々扇情的で艶やかなお姿であったろう。

「ちょっ!?だ、大丈夫ですか。ロウリィさん!?すぐに傷の手当てをしないと・・・早く衛生を」

黒川が慌てて衛生キットを手に駆け寄り、傷の具合を見る

「だ、大丈夫よ・・・ちょっと疲れただけ・・・それに返り血が殆どだから見た目ほど重症じゃないし、亜神だから死なないしね。あの緑野郎どもかなり手強かったわよ」

「大丈夫じゃありませんよ、ひどい銃創ですから」

ウィンクをして茶化しているが急所は外してあると言うだけで手足や内臓を通らない場所には38口径がのめり込みひどい有様だと言うことは明白。

人間ならばとっくに死んでいるであろう重傷でも動けたこと自体、亜神の力の証明になる。

弾丸を摘出しつつ、傷口に包帯を巻いていくが既に弾丸は排出され傷口は塞がりつつある。

それでも痛みは人間と同様に受けるのだ。

「いつつ、ヨージ達も持ってるけど銃?結構痛いわね。

正直舐めてかかってたわ」

「ダメですよ!弱い拳銃弾・・・弱い銃だから良かったですけど、自衛隊の使ってるような強力な物を受けていたら手足がちぎれていてもおかしくなかったんですよ!」

 

その時、夜明けの空に響き渡る爆音と音楽が皆の耳に聞こえて来た

「みんな!援軍だ、もう少しだけ持ちこたえてくれ!」

そう言うと伊丹は発煙筒を敵の陣地の手前に放り投げ、残っていた無線機を掴む・・・

 

イタリカの戦い、第2ラウンドが始まろうとしていた。

 


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