MAD111 世紀末総支配人伝説 怒りのヌカ・ワールド   作:溶けない氷

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このようにして地には悪しき人々が蔓延っているのを見て、総支配人は言った。『かの卑しい悪党どもを取り除かねばならない、これはジョン・ケイレブ・ブラッドバートンの予言にもある』
総支配人が右手を当てると命がヌカ・コンボイに吹き込まれた。
『いけ、悪しき人々に裁きを下すのだ』
正義のヌカれいだぁ戦士たちは武器を取り
『ヌカのために!総支配人のために!必ずや悪しき人々を打ち倒し、この地に正義をもたらしましょう!』
このようにしてたちまちのうちに帝国の圧政に苦しむ人々は総支配人と彼の戦士たちによって解放され、清く正しい彼らを受け入れたのです。

出ウェイストランド記 
預言者・総支配人と彼の清く正しいヌカれいだぁ戦士たちより

機体説明
ヌカ・コンボイ
ヌカ・ワールドのワールド・オブ・リフレッシュメントに200年間放置されていた車両。
ヌカ・ワールドで生産されたヌカ・コーラを運搬するために通常のフォルド・コンボイを改造して作られた車両。
核融合V8エンジンに強化されたフレーム、ガトリング砲、プラズマ兵器、核ミサイルを搭載した強襲トラックで護衛用のパワーアーマステーション、セントリーボットも搭載している。
武装・装甲が軍艦並みに強力になっているのは道路の事故、暴動突破、ライバル会社の襲撃、ヌカ・コーラの爆発、発売前に奪おうとする客などに備えたものである。
総支配人の手によって更に魔改造されて蘇った地獄の特急便。
今やコーラの代わりにレイダーや奴隷、略奪品を運ぶために使われる。

完全にオリジナル設定だが、普通だと感じたらあなたも立派なウェイストランド人。


パックスの場合。

「じょ!城門を閉めろぉ!奴らが来るぞ!」

遠くから喧しい奇妙な音楽が聞こえて来る。

今や帝国で略奪を受けていない街の方が珍しい中、この街はまだ奇跡的に略奪を受けていなかった。

だが、この街も機動力を手にいれたレイダーの前にはある程度繁栄している街は略奪対象になるということを理解し防御を固め始めたその矢先にパックスが襲来した。

『ヒャッハー!レイダーラジオ、今日もサイコとジェットで決めていくゼェ!』

『ヒャッハー!ヒャハハハッ!ヒャッハー!』

薬をキメて狂ったように笑い声を上げ、トラックの上の超大音量のスピーカーでエレキギターとドラムのロックンロール演奏を生演奏で周囲に撒き散らす。

車両の全身やギターに装備された火炎放射器からは常に火炎が吹き上がり遠目には森林火災が近づいて来るように見えるだろう。

中世ヨーロッパの文明レベルから見れば世紀末レベルの連中なのだから異様に見えるだろう。

パックスのリーダーメイソンの号令のもと、V8艦隊が思い思いにホーンやクラクション、バックファイアのカナギリ越えを上げ更に規制をあげる。

『奪え!』

『ヒャッハー!』

『殺せ!』

『ヒャッハー!』

『犯せ!』

『ヒャッハー!』

『進め進め!モタモタしてると獲物を楽しむ時間が減るぞ!』

なんという世紀末、帝国とて今までの征服先で似たようなことはしてきたが自分たちがやられる番になるとは想像もしていなかったのでしょう。

レイダーの中でも一番サイコでアホという褒め言葉を頂くパックス。

 

オペレーターならば金目の物をあるだけ差し出して首輪爆弾つきの奴隷になれば人体実験の材料にされることもあるが、パックスの場合は完全にその場のノリで拷問もデスマッチもあるので一層恐れられている。

 

「開けてぇ!お願い、子供もいるのよ!」

「くそっ!締め出す気かよ!まだ大勢外にいるんだぞ!」

レイダーが接近したのに合わせて大慌てで城門を閉める守備兵。

この世界の街並みは中世ヨーロッパに似ている。

いわゆる典型的な古典的RPG世界だが、そんな中で極彩色に塗りたくったパックスの外見は異様に見えた。

当初は道化の集団と、侮られたが道道で目に付く村も街で行われる帝国以上の残虐行為の噂が流れると誰もが彼らを恐れるようになった。

難民も扉が閉まると、当初は叩いて入れてくれと叫んでいたがやがてパックスが近づいて来ると逃げ惑う。

「助けてぇ!お願いよ!」

『ヒャッハー!まずは追いかけっこゲームだぜ!』

陣形の中から骨むき出しのバギーが出て来ると、パックスの一人がスワッターを手に取り、逃げ惑う人々に追いすがる。

生身の足とバギーとでは勝負になるはずもなくあっという間に追いつかれ・・・

『カッキーン!ホームラン!』

振り下ろされたロケットスワッターに頭蓋骨をかち割られ無残な死体を次々と晒す人々。

それを恐怖と悔しそうな目で眺める守備兵。

『ヒャッハー!見たかよあの間抜けな死に様、アヒャヒャヒャひゃ!』

なんという北斗ワールドなセリフなのでしょう。

やがて、集結したレイダーたちは城門前で気勢を上げる。

『ヒャッハー!さっさと門を開けて降伏しろぉ!

今なら奴隷化だけで許してやるゼェ!ヒャッハー』

おきまりの文句だが嘘である。

レイダーに約束などという概念は通用しない、約束を覚えるだけの脳みそも存在しない、約束を強制する暴力があってもすぐに忘れるからだ。

運び屋が証明したようにウェイストランド人は脳無しでも行動には支障がないことから証明されている。

昆虫みたいな連中だな。

レイダーの脅しに壁の上からクロスボウ、投石機、バリスタに攻撃魔法で応答する守備兵たち。

もはや問答無用ということだろう、当然だが。

5、6人のレイダーに命中し、もんどり打って死んだり重傷をおったりするが

他のレイダーは

『ヒャハハっ!馬鹿なやつダァ!』

あははハハッはははっ!と死んだり重傷を追った連中を指差して笑っている。

その異様さにゾッとしたような守備兵も更に撃ち込むが、レイダー側も容赦なしに攻撃を開始する。

車に据え付けられたガトリング砲が火を吹き、携帯ミサイルが防御塔を粉砕する。

そしていよいよ、ヌカ・コンボイが唸りを上げて加速を開始する。

100kmまで2秒という頭のおかしい加速度で300トンの鋼鉄の巨獣が突っ込むと中世風の城門は左右の塔ごと細い飴細工みたいにひしゃげて町中まで飛んで言った。

『ヒャッハー!吹っ飛んだゼェ!アヒャヒャヒャひゃ!みっともねぇ死に方しやがった!』

『V8を讃えよ!』

『V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!V8!!!』

指を組んで巨獣の心臓のV8に祈りを捧げるレイダー。

「城壁が崩れた!怯むな!我らの街からあの巨獣を追い払うのだ!」

帝国の魔法使いが火球の攻撃魔法でトラックを攻撃するが、瞬時にガトリング砲の掃射を食らって木っ端微塵になる。

『ヌカ・コーラ社の所有物への破壊行為は直ちにやめてください。

違反者は、厳罰に処されます』

トラックのハッチから現れたのはヌカ・コーラ社の防衛ロボットのセントリーボット。

ガトリング砲を撃ちまくりながらミサイルを発射する様は処罰を通り越して処刑だと思うのだが、戦前は無賃乗車するとレーザーで射殺して来るロボットが駅員だったりするので普通である。

『ヒャッハー!汚物は消毒だぁー!』

そう言いながら火炎放射器を撒き散らし、街を焼き払っていくレイダー達。

突入したトラックからは次々とレイダー達が躍り出て、思い思いに銃をぶっ放している。

亜人のウォーリアーバニーやハーピー、ワーウルフ種といったものまで今やパックスではレイダーとして参加している。

というか、パックスの奇抜なファッションが異常すぎてこっちの方が普通に見える。

「ヒャッハー!帝国め!今までの恨み、思い知れ!皆殺しにしてやるわ!」

見事にレイダー精神を振るいウォーリアーバニーはサブマシンガンを動くものに対しては皆に乱射する。

「お前達のせいで俺の家族はみんな殺されて!死ね帝国の犬ども!ヒャッハー!」

あるワーウルフは帝国から痛めつけられた痛みを万倍にして返そうと刀を振るって逃げるものも皆殺しにした。

一部の守備兵と民兵は教会に避難した住民を守るべく必死の抵抗をする。

が、所詮はそこまでであった。

最大の防御力を持つ城壁が崩れた時点で勝敗は決している。

 

 

帝国でもかなり大きい街だったのであろう・・・・・・だったのであろう街並みはレイダーパックスの攻撃によって陥落した。

 

今や、街並みはまるでカリカリのリスの串焼きのような醜さと破壊の跡を残している。

街の街路樹という街路樹からは死体が吊り下げられ、女神像は首が破壊された挙句に切り取られた犠牲者の首と交換されている。

広場に陣取っているのはV8核融合エンジンを搭載し、やたらと棘や鉄条網でとげとげしくなりペンキをぶちまけ極彩色に彩られたヌカ・コンボイ・パックス。

数々の刈り取られた人間・動物の頭蓋骨で全身に装飾が施された荒んだ美意識はこの狂った世紀末にふさわしい。

「ヒャッハー!オラー奴隷ども!さっさと荷物を積み込みなぁ!」

焦土戦のために街に集められた食料・物資は根こそぎ巨大なトラックに運び込まれていく。

運ぶのはこの街の元住民で殺されなかった男達だ。

美形は女パックスの玩具にされ散々犯された後に殺された、まるで女郎蜘蛛だ。

美女は総支配人への貢物として選ばれたこの街の伯爵令嬢以外は貴族も平民も御構い無しに好きに犯され、この後は奴隷として売り飛ばされる運命にある。

この世紀末において弱者の辿る運命は3つ

殺される、娼婦、奴隷。

時は!正に!世紀末!力こそ正義!狂気こそ正気!


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