MAD111 世紀末総支配人伝説 怒りのヌカ・ワールド   作:溶けない氷

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血戦! イタリカ 後編

なお、総支配人的ヌカ・ワールドでのヒエラルキーは

犬=DIYロボット>(超えられない壁)>>>>>>亜人=レイダーである

 

イタリカは戦場と化していた、だがこの世界の戦場ではない。

ある意味では伊丹たちの地球の戦場に近かった。

三つ巴どころか四つ巴の激しい戦闘など滅多にないだろうが、ウェイストランドではありふれたことだ。

負傷した倉田を高機に載せ、フォルマル邸へと到着した伊丹たちは邸宅前の広場、大通りに面した有利な場所に残っていた機関銃を据え付ける作業に移る。

「機関銃この位置、射線前方の交叉路」

遠くからは激しい銃声、爆発音と悲鳴が聞こえてくるが段々近づいてくるのがわかる。

「隊長、こちらの方の機関銃は設置完了!いつでも交戦可能です!」

桑原曹長が5.56mmMINIMI機関銃を邸宅の屋上に据え付ける。

高所からの銃撃がどれだけ有利かは言うまでもない。

111だったらチャチャッと自動ガトリング砲台を1ダースほど作って据え付けてしまうのだろうが。

今も大閃光が邸宅の北のほうでドォン!という爆発音とともに上がる。

邸宅の一階部分は既にフォルマル邸の手伝いによってそこらじゅうからかき集めた材木や家具でバリケードが築かれているがあんな凄まじい爆発物を使われたらと思うとゾッとする。

「隊長、いつから俺たちは剣と魔法のファンタジー世界から戦争映画に紛れ込んじまったんですかね?」

双眼鏡で炎上するイタリカの街を監視しながら富田が呟くが、伊丹にだってそんな事はわからない。

フォルマル邸の中も屋上も今や、敗走してきた帝国軍の敗残兵や民兵の残りが集結し防御を固めている。

レレイが通訳して言うには緑色のオーガや、別の盗賊団が襲ってきたと言う。

唯一の救いはそれぞれが敵対しているのかイタリカの街でそれぞれ勝手に戦闘を繰り広げているのでこっちに連携して向かってきているのではないと言うことか。

もしも同時攻撃されていたら・・・と思うとゾッとする。

間違いなくフォルマル邸は30分と持たずに陥落し、この世界の常識どおり男は皆殺し、女は辱められたろう。

フォルマル家のメイド達もそこのところは覚悟しているのか手にはナイフを持ち、万が一賊が侵入して来た時にはせめて一人でも多く道連れにしてやろうと言う気迫を目に宿らせていた。

伊丹は手に持った64式小銃の安全装置を外し、いつでも撃てる体勢を取る。

20発の弾倉が予備も含めて8個で180発。

銃を持ち、防弾衣を着ていても剣も槍も矢も同じ人間を殺すには充分すぎる武器になる。

日本人は甘く見ていたのか、銃が無い、内燃機関が無い彼ら特地の人間相手に戦うのは簡単だと。尤も騒乱の原因はやはりこの世界の人間では無いので今更嘆いてもどうしようもないのだが。

 

「ハイヤァァァ!」

一気呵成にそのハルバートを振って振り落とされた巨大な槌ごと巨漢の腕を切り落とすのはロウリィ聖下。

東門の戦闘に参加すべく突っ込んでいったノリノリな彼女であるが東門の戦線が崩壊し、今や町中が戦場と化した現況では近くにいる怪しい奴を片っ端からぶっ殺す薩人マシーンと化していた。今も彼女に突っかかって来たスーパーミュータントが一人、銃ごと腕をぶった切られて苦しみに悶える。

『い、痛いぃぃ!』

彼女の足元には既に3人ものスパミュが血を流して首をすっ飛ばされたり胴を貫かれて倒れていた。

「これで、4人っ!」

だが駆け付けた他のスパミュも黙ってやられるのを見ているだけではない。

『撃てぇ!撃てえ!あのチビ人間強い!ナックルと同じくらい強い!』

38口径が雨あられとロウリィに降り注ぐがその程度のチャチな銃撃程度では戦乙女はの法は破れない。

体の大半をハルバートで覆い銃弾を防御、スパミュのリロード中に低姿勢から接近、横薙ぎに足を払い体勢が崩れたところに頭部への致命的一撃。

グロッグナック・バーバリアンばりの流れるような近接攻撃はヌカ・ワールドのレイダー達ですら及ばない。

面白い奴だ、ベースボールチームNuka-World cappiesに年俸100万キャップでどうだ?

ベースボールとは2つのチームが相手をスワッターと呼ばれるバットで撲殺しあい、殺した人数が多い方が勝ちというウェイストランドにおける長い伝統を誇り最も人気がある由緒正しいスポーツである。

世が世紀末なら、ロウリィならばきっと素晴らしいスワッターになれるだろうに惜しいことだ。

今も襲って来た巨漢をそのハルバートで叩き殺し、潰す。

それでスパミュが怯むかと言えば、ますます手強いこのチビ人間に敵意を示して兄弟達の仇を撃とうと盛んに撃ってくる。

見ればさすがのロウリィもこの雨あられと降り注ぐ銃弾の雨にさすがに無傷とはいかないようだ。亜神とは言え頭部、心臓といった急所への直撃は行動不能に直結する。

この状態で捕まったら生きたまま喰われてしまうというのは流石のロウリィも避けたい事態だろう。

派手な銃撃戦の音に惹きつけられて次から次へとスパミュが現れ、ロウリィも徐々にフォルマル邸の方向へ押し込まれていった。

一方で伊丹達自衛隊と帝国軍の守るフォルマル邸も今や嵐の中心になっていた。

「前方100に敵散兵の集団!まだ撃つな!引き付けろ!!」

50にまで敵兵が迫ると伊丹の指揮のもと自衛隊の機関銃、小銃、が一斉に銃声をあげた。

これに加えて民兵の弓兵にティカも加わって応戦し、あっという間に数十人が倒れる。

飛来する銃弾と矢の前にバタバタと倒れる盗賊だが彼らも馬鹿ではない。

機関銃が盗賊の真っ只中へ撃ち込むと連中も市街地の中へばらけて遮蔽物に隠れる。

だが撃たれっぱなしではない、連中は邸宅の車線から逃れると物陰から弓矢や投石機で反撃して来た。

木材や石壁で覆われているとは言え、生身の部分に命中すれば大怪我は免れない。

今も飛んで来た鉛の玉に顔を貫かれ民兵の一人が血みどろになって防御陣地の中に倒れこむ。

投石機は空気抵抗を少なくするために円錐形に鋳造された鉛の玉は革の鎧を貫いて人間に致命傷を与えるに充分な威力がある。

無論、それは民兵側の飛び道具にもいえ、銃弾とともに盗賊に突き刺さった矢玉で脳みそを路地に飛び散らされた無残な死体が転がっているのがここからも見える。

「無理に突っ込むな!家の壁を壊して・・・できるだけ体を晒さずに近づけぇ!」

「援護しろ!弓兵、めくら打ちでいいから奴らを集中させるな!」

自衛隊の銃に無くて弓にある特性の弓なり弾道、盗賊団の矢が屋上に陣取った伊丹達に降り注ぐ。自衛隊は確かに強い。遠距離から民間人の被害を考えなくていい砲撃戦でなら間違いなく一方的に撃破できるだろう。

だが、肉体的にも頭脳の点でも帝国人も日本人も同じ人間でしかない。

科学技術を補う戦い方をしてくるのは当然と言えた。

え?総支配人?骨がアダマンチウムだったりする生物が人間だと本気で思ってるのか?

「くそっ、くそぉッ!」

栗林達は館の応急銃眼から64式小銃を出して盗賊達に向かって発砲し続ける。

しかし元々64式小銃は遠距離から狙って撃つ大口径小銃でありこの場合は小口径の89式の方が向いていると思われる。

更に言えばなぜか弾丸が爆発するスプレーアンドプレイならもっと良かったろう。

「前方の石壁の向こう!敵散兵、手投げ弾!」

勝本三等陸曹が手榴弾を投げ、石壁の向こうから矢を射かける敵兵を始末する。

「やった!やりましたよ!」

栗林が喜ぶが、次の瞬間轟音が館の中に響き渡る。

「な、なんだぁ!?」

「隊長、投石器のでかいやつです!奴ら、燃えた岩石を館に打ち込んで来ました!」

盗賊団は今度は大型の投石機で焼けた石を打ち込んで来た。

このカタパルト戦術は今でもシリア内戦の市街戦で使われることもあるので案外馬鹿にできない。

自衛隊は今や袋のネズミとなっていた。

銃弾を消耗し、敵味方に既に多数の死傷者が出ているが数で勝る盗賊団は遮二無二攻めてくる。

「隊長!荷車が来ます」

見れば向こうから全面に木の板や鉄板、を雑多に貼り付けた荷車が向かってくる。

即席の破城槌を盾に攻めてくる盗賊団だったが・・・

「隊長!屋敷の北側が破られました!盗賊団が侵入して来ます!」

投石機で破られた屋敷の北側の壁から飛び道具の援護の元、馬車を盾に接近して来た盗賊団は屋敷の内部に突入して来た。

自衛隊と盗賊。

銃と剣の戦いの始まりだ・・・・


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