MAD111 世紀末総支配人伝説 怒りのヌカ・ワールド   作:溶けない氷

1 / 34
War... War never changes


始まり

日本

その日はよく晴れていた。

そして心を躍らせながらスマートフォンを片手に歩いているのは伊丹耀司。

彼はオタクであり、自衛隊員。

 

「今日は絶好の同人誌即売会日和だな。」

そう言いながら電車を降りて、上りエスカレーターで上へとあがっていく。

次の瞬間、彼の頭に衝撃が走る。

額を柱にぶつけてしまったのだ。

 

連邦、かつてのマサチューセッツ州

一方、その日は激しい放射能嵐だった。

そしてVault111の上、目を閉じてあの日の事を思い出しているのは唯一の生存者。

「感じる・・・放射能、熱、エネルギー・・・あの日のように」

思い出すのは、一家の運命が変わってしまった日のこと。

核により世界が滅んだ日のこと・・・周りに転がっている白骨はあの日、Vaultに入れなかった人々。

彼らはある意味、幸運だったろう。

次の瞬間、彼の頭に衝撃が走る。

放射能嵐で生じた雷に打たれたのだ。

 

『『っぐああぁぁ』』

時間も世界も違えど、二人の頭の中に何かのイメージが映し出される

伊丹耀司には美しい3人の女性の像が

111には、核爆発、燃え上がる街々、焼けただれのたうつ人々・・・

二人の違いがこの先、何をもたらすのか

 

 

War…War never changes

俺はショーンを失った…再び…

目を閉じると、あの懐かしい生活を思い出す

思い描いていた未来像は、一瞬で変貌することがある。

心の準備ができていなくとも

それは誰にでも人生のどこかで起こること

ここは俺が望んだ未来ではなかった…

だが間違いなく俺のいる唯一つの世界

連邦、わが故郷は、引き裂かれてそして今再び一つになった。

きっと家族を探し出せる,そう思っていた。

叶うならば、時計の針を戻し全てを元どおりに

だが分かっている、世界は変わりその先に待つのは険しい道

今度は覚悟ができている、俺には教訓があるから

War…War never changes…

 

 

2077年10月23日9時47分、中国がマサチューセッツ州を核攻撃

世界は滅んだ

それから210年間の月日が流れ

2287年10月23日、Vault111の奴が目覚める

異なる世界で伊丹三尉、銀座事件で避難誘導の功績により二尉に昇進。

帝国軍、アルヌスの門と同時期に開いた地下洞窟の門より別の異世界に侵攻。5000の兵力を持って侵攻。

侵攻部隊は48時間以内にカマドウマ、アリ、蚊、ゴキブリ、蝿、蟹、ザリガニなどに襲われ壊滅。

散逸した兵士たちはウェイストランドを彷徨ううちに次々と餌食になりほぼ全滅、運よく戻れたものも放射能に侵され特地(111はグリーンランドと呼ぶ)でフェラルグール化。

帝国軍は生き残ったものの報告から地下門の向こうは見渡す限りの荒野だという報告を受け、地下門を閉鎖しようとするが既に同時期のアルヌス門の向こうの壮麗な都市を重視し、放置。

荒れ果てた蛮地ゆえ大したことはないだろうと思っていたら溢れ出てきたアボミネーションが蔓延したために果たせず。

 

それから約3ヶ月、インスティチュートとBoSの戦争が

インスティチュートの勝利に終わる。

同時期、ヌカ・ワールドが本格的に再稼働

総支配人がマサチューセッツ州を完全支配下に置く

ほぼ同時期、自衛隊が特地に駐屯地を建設

アルヌスの丘を巡る戦いが始まろうとしていた・・・

 

「総支配人、ヌカ・ワールドがこうやって本格的に動き出し連邦を俺たちの影響下に置いたことでキャップがどんどんながれこんできてる」

どっかの斬撃サイボーグ忍者・・・ではなくゲイジがフィズトップマウンテンの総支配人室に報告にやってくる。

「キャップが入ってくるのはいいが、正直暇だな。

もっとこう・・・エキサイティングなヌカ・ワールド独特の催事はないか?

ああ、この前捕まえた変なレイダーでまた遊んでみるのはどうかな?

まだ残ってたろ」

「勘弁してくれよ、ボス。

この前はガントレットが死体で詰まって掃除に1週間はかかったんだ。

残ったやつもあんたが入るなり2秒で皆殺しにしちまってみんな逆に欲求不満なんだ」

 

「そうか、じゃぁ残ったやつはシンシア(Red Rocketで飼っているペットのアルビノ・デスクローの雌 2歳)の餌にでもしておいてくれ」

 

「ああ、それとだがボス。連中、妙な言葉を話してたろ。

それでパックスの連中がこの前面白がって外に放ってみたんだがな

連中、妙な洞窟の中に逃げ込んで行ったらしい

ここから離れているらしいんだが、もしかしたらVaultじゃないかっていう噂だ」

 

その話を耳にして我らがそして読者の中には総支配人をよく知るものもいるだろう。

この総支配人とはあなたでもあるのだ、具体的にいうとヌカ・ワールド総支配人兼インスティチュート所長のVault111のアイツである。

そしてVaultという話を聞いて総支配人も興味深そうになった。

「未発見のvaultだと?レイダーのアジトになっているのか・・・人手を集めろ、殲滅して新しい拠点にする」

「了解だ、ボス」

 

ゲイジがエレベーターでオペレーターズ、パックスに総支配人の命令を伝えに行く。

総支配人も壁にかけたレーザーガトリングにヌカ・ランチャー(個人携行核ミサイル)

そしてX-01クアンタムカラーを手早く着込んで50m程はある展望室から手っ取り早く飛び降りる。

何が始まるんだ?第四次世界大戦だ

総支配人がヌカ・タウンの町通りを行くにつれて大急ぎで駆けつけたレイダーが総支配人の眼前を汚さないようにと市民(奴隷)に火炎放射器を突きつけておきまりの言葉を吐く。

『ヒャッハー!おらー道を開けろ!総支配人様のお通りだぁ!膝まづけぇ!消毒されてぇか!』

『ヒャッハー!俺たちのヒーロー、総支配人様がまた大虐殺を始めるぜぇ!』

なんという世紀末の光景なのでしょう、実際世紀末なのですから仕方ありません。

弱者は奴隷、強者が総取り。

でも、いつの時代もそんなに変わらないですね。

ヌカ・レイダー達だって弱者を外敵から守ってやる代わりに物資を寄付してもらっているのですから。

そんなこんなでやってきたのはヌカ・ワールドの南あたり。

荒れ果てた荒野のど真ん中の核廃棄物処理場です。

処理場といっても戦前の企業倫理観を反映して高濃度核物質をそこらへんにポイ捨てしてるだけなので、当然ガイガーカウンターがチキチキ鳴りっぱなしです。

でも大丈夫、黄色いドラム缶や水辺に近づかなければ比較的許容範囲です。

こんなところにやってくるのはスーパーミュータントか、物好きなスカベンジャーか、グールかアボミネーションかアトム教徒くらいでしょう。

要するに普通の土地です。

「総支配人!ここです、あの妙なレイダーが逃げてったのは!」

そう、レイダーの一人が指差したのは廃棄場の奥の洞窟。

「ここは・・・ここから先は放射能汚染が酷い、俺が見てくるからお前達はRAD-Xを多めにもってこい」

そう言うなり、前へとずんずん進んで行く総支配人。

手にはレーザーガトリングを構え、いつでも撃てる状態に。

強敵に備え、腰につけた核爆弾もいつでも投擲可能。

パワーアーマーの動力は核、武器も核動力に核爆弾と文字通り全身核兵器。

ウェイストランド、そこは人が生きるということは誰かから奪うか、奪われるかという世界。

『全く、酷い世界だ・・・』

だが自分を制して悪に徹しなければ生きることすらできない世界だ。

そして総支配人の目の前に現れたのは・・・そう、銀座に現れた門とはまるで違う。

それは恐ろしく分厚い鋼でできていた。それは歯車の形をしていた。

それはあるものには忌まわしい過去、あるものには希望の象徴。

Vaultのゲートだった。

『セキュリティは・・・解除されているのか、珍しいな』

そしてそのゲートを開くと、総支配人は驚愕し持っていたガトリングを取り落とした。

青い空、緑の大地・・・流れる川・・・

 

日本はこう呼んだ、『特地』

 

111はここをこう呼んだ。

『グリーンランド』と


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。