閻魔大王(真)と英雄王(偽)♀の物語   作:オキカ

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免許証を漸くゲットした…。

マジで長かった!


第三話

ーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーギルガメスsideーーーー

 

 

 

 

何やら、誰かの声が聞こえる。

 

 

「…ぃ、………」

 

 

 

 

………ん?

 

 

 

というか、何故か妾の視界が暗い。

 

 

「…イ、…き…」

 

 

 

…ぅん……っ?

 

 

 

 

あっ、少しずつマトモに聞こえて来た。

 

 

 

 

閻魔大王「オイ!起きろぉ!!」

 

 

 

 

ギルガメス「ーーぎゃああぁっ!!?」

 

 

 

妾は突如デカくなった声に驚いてしまい、はしたない奇声を上げてしまった。

 

 

 

ギルガメス「なっ、何じゃあ!?」

 

 

 

妾は咄嗟に身の回りを見渡して、そして隣に座る男ーー閻魔大王を見つけた。

 

 

 

閻魔大王「よぉ、起きたかよ…?」

 

 

 

ギルガメス「うっ…うむ。して、此処は…何処じゃ一体…?」

 

 

 

 

妾は周囲を見渡すと、まず最初に真っ白い風景が目に入った。

そして閻魔大王の背後には、かなり大きい黄金の扉が見える。

 

閻魔大王は、そんな妾を見て口を開いた。

 

 

閻魔大王「ーーー此処は“英雄王ギルガメッシュ”の“英霊の座”に続く門の前だ…」

 

 

 

ギルガメス「…っ!?」

 

 

 

 

妾は閻魔大王が告げた名前にビクッと反応して、自身の身体を震わせた。

 

 

 

ギルガメス「そんなぁ…嘘、じゃろ…?そんな…妾は未だに、…心の…準備がーー」

 

 

閻魔大王「ハイハイ、分かってる。緊張で不安なのも分かるが、そんな心構えなんざアイツには不要だ」

 

 

 

 

妾が“本物の英雄王”との邂逅を目前に恐怖しているのを、閻魔大王は落ち着いた様子で見つめていた。

 

 

閻魔大王「…大丈夫だって!お前のアイツに対するイメージよりかは、割と穏やかだからさ。そもそもアイツが不機嫌だったのは、冬木市に呼ばれた時だけだから!」

 

 

 

ギルガメス「…し、しかしーーーー」

 

 

 

閻魔大王「それに、最近のアイツは“とある目的”を成し遂げる為の手駒を求めている。もしかしたら、お前ならイケるかもな…」

 

 

 

 

ギルガメス「……?」

 

 

 

妾は閻魔大王の言う『ギルガメッシュが成し遂げようしている目的』に、少し興味が湧いて来た。

 

 

 

閻魔大王「まっ!取り敢えずは英雄王に会いに行くぞ。お前が『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』の使い方を会得してくれなきゃ、お前も俺も互いに困るだろ?」

 

 

 

ギルガメス「………うむ」

 

 

 

妾は閻魔大王の話を聞いて、英雄王と会う決心をつけた。

 

閻魔大王は、そんな妾の右手を取って握ると立たせてくれた。

 

 

閻魔大王「それじゃあ、行くぞ?」

 

 

 

ギルガメス「う、うむ!」

 

 

 

妾と閻魔大王は、黄金に輝いている巨大な門を開いて潜った。

 

 

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー

ーーーー

ーーーーーー

ーーーーーーーー

 

 

 

 

ーーー其処はまるで、妾が住んでいた古代都市のウルクとは異なる世界だった。

 

 

妾が生涯の大半を過ごしたウルクと同様に神秘は濃厚だ。

 

 

……………しかして、このウルクは、

 

 

 

 

 

 

ーーーなんと力強く輝いていることか!!

 

 

ーーーなんと熱く滾っていることか!!

 

 

ーーーなんと眩く煌めいていることか!!

 

 

 

 

 

 

 

 

此処は古代ウルクの王にして英雄王であるギルガメッシュの“英霊の座”。

 

今までの真っ白い風景とは一転して、その光景は正に黄金都市そのものだ。

 

 

 

ーーーーそして奥の玉座には『黄金甲冑を身に纏った男』が、その身が持つカリスマを惜しげも無く解き放っていた。

 

 

妾は、そのカリスマに呑まれない様に気を引き締めて話しかけようとした。

 

 

 

ギルガメス「…っ!あ、あのーー」

 

 

 

 

 

 

 

?????「…貴様か、地獄の統治者よ」

 

 

 

その男ーーギルガメッシュ王は、妾の存在を認識してない様な態度で閻魔大王に向けて口を開いた。

 

 

 

閻魔大王「…よっ、久しぶり!相変わらず、お前の“英霊の座”は異彩を放ってるな」

 

 

 

ギルガメッシュ「フッ、(オレ)を誰と心得る!古代ウルクの王であるぞ。そこらの凡夫な英雄共と一緒にされる覚えはない」

 

 

 

 

閻魔大王「…相変らずのデカイ態度だな。まぁ、今回はそんなお前に頼みがあって来たんだよ」

 

 

 

閻魔大王がギルガメッシュ王に頼みがある事を告げると、ギルガメッシュ王は視線を一瞬だけ妾に寄越して不機嫌そうな表情で答えた。

 

 

 

ギルガメッシュ「…もしや、そこな雑種の事ではあるまいな?」

 

 

 

閻魔大王はそんなギルガメッシュ王の態度など気にもせず、素直に頷いてみせた。

 

 

 

閻魔大王「おう、勿論さ。今回はーーー」

 

 

 

 

 

ーーーヒュンッ!

 

 

 

 

ガシッ!!

 

 

 

 

ギルガメス「………へ?」

 

 

 

………妾は今、何が起きたのか全く分からなかった。

 

だが、ギルガメッシュ王の背後に生まれた黄金の波紋と閻魔大王が握る宝剣『原罪(メロダック)』と『絶世の名剣(デュランダル)』を見て理解出来た。

 

妾は今、ギルガメッシュ王に殺されかけて閻魔大王に護られたという事を。

 

 

 

閻魔大王「…イキナリかよ、英雄王」

 

 

 

ギルガメッシュ「邪魔するな、鬼神め」

 

 

 

閻魔大王が『原罪(メロダック)』と『絶世の名剣(デュランダル)』を足元に放り投げると、光の粒子となって虚空に消えた。

 

ギルガメッシュ王は、その紅い赤眼に殺意と激怒の感情を灯しながら、閻魔大王と妾を睨みつけて来た。

 

 

 

 

ギルガメッシュ「…貴様、この(オレ)の目的を知った上での愚行か…っ!」

 

 

 

ギルガメッシュ王はそう言うと、その背後に20をも超える『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』の砲門を開いて、矛先を妾達に向けて来た。

 

 

 

ギルガメス「…ひゃあっ!!?」

 

 

 

妾は初めて見る本物の『王の財宝』の矛先を向けられて怯えてしまい、閻魔大王の背後に隠れた。

 

 

 

閻魔大王「…って、オイオイ。お前がアイツから隠れてどうすんだよ…?それでも、エアの娘ですかぁ!?このヤロー!」

 

 

 

ギルガメス「う、うるさい!妾とて好きで怯えておる訳ではない!ただ、あのギルガメッシュ王を相手にメソポタミア出身として、どんな顔して会えば良いのか精一杯に考えておるのだ!!」

 

 

 

閻魔大王「…どんな顔って、そりゃあエアの娘らしい面してりゃ良いだろ…?」

 

 

 

ギルガメス「きっ…貴様!?何という無礼な事を言うのだ!そんな真似したら、妾はギルガメッシュ王に殺されてしまうぞ!?というか、何故ギルガメッシュ王はあんなにも殺気を放っておるのじゃ!!?」

 

 

 

閻魔大王「あー…。今のアイツはな、ちとキレやすいんだよ。まぁ…何であんなにも怒り狂ってるのかは、自ずと分かるさ…」

 

 

 

妾達がそんな下らない言い争いを繰り広げていると、ギルガメッシュ王が不思議そうな目を妾に向けて来た。

 

 

 

ギルガメッシュ「ーーーむ…?オイ貴様、もしや今エアの娘と言ったか?」

 

 

 

ギルガメス「…へっ?」

 

 

 

妾は唐突にギルガメッシュ王に話しかけられて、間抜けた声を出してしまった。

 

ギルガメッシュ王はそんな妾を見て、質問の答えを急かして来た。

 

 

ギルガメッシュ「早く答えよ。もし虚言であるならば、その身体を串刺しにするぞ」

 

 

 

ギルガメス「うぅ…う、うむ!妾は確かにメソポタミアの豊穣神エアの娘じゃ!!」

 

 

 

ギルガメッシュ「…ほぅ」

 

妾はギルガメッシュ王に宣言するかの様に高らかに声を上げた。

するとギルガメッシュ王は座っていた玉座から立ち上がり、妾に向けて言い放った。

 

 

ギルガメッシュ「…オイ、雑種。特別だ、もう少し近くに寄れ」

 

 

 

ギルガメス「へ…?えっ?…え??」

 

 

 

妾はギルガメッシュ王に何を言われたのか一瞬分からなくなって、ギルガメッシュ王と閻魔大王を交互に見た。

 

 

 

閻魔大王「つまりは、『もう少し良く顔を見せてくれ』だとよ…。ほら、行きな」

 

 

 

ドンッ。

 

 

閻魔大王は妾にそう言って、妾の背中を押した。

 

 

 

ギルガメス「…っとぉ!?なっ、何をするのじゃ!!?」

 

 

 

閻魔大王「良いから、早く行きな」

 

 

 

閻魔大王はそんな妾を急かして、早くギルガメッシュ王の元に行く様に言った。

 

 

 

ギルガメス「…っ!む、むぅ…っ」

 

 

 

妾はゆっくりとギルガメッシュ王の元に少しずつ歩み寄った。

 

 

 

ギルガメス「…うぅっ…」

 

 

 

しかして、ギルガメッシュ王の近くに歩み寄る度に感じる王として風格。

 

 

 

ギルガメス「…っ」

 

 

 

 

呑まれまいと気を強く持つが、近づく度に感じるそれはさらに増大していった。

 

ーーーーそして、

 

 

 

ギルガメッシュ「ーーー何を躊躇っているのだ、雑種。早く来い」

 

 

 

ジャラララララッ!!

 

 

 

ギルガメス「…なぁっ!?」

 

 

 

ギルガメッシュ王は躊躇う妾の四股を銀色に輝く鎖で絡めて引っ張った。

 

 

 

ギルガメス「きゃあっ!?」

 

 

 

妾は突然の事に驚いて、生娘の様な声を出してしまった。

そして四股を縛る鎖の痛みに耐えかねて、妾は目を瞑ってしまう。

 

 

 

ギルガメッシュ「ほぉ…肉体は素晴らしい出来ではないか。その整えられた黄金比の肉体は、まるで(オレ)の性を反転させたかの様な容姿をしているな」

 

 

 

すぐ近くで、ギルガメッシュ王の声が聞こえてくる。

ふと目を開けると、ギルガメッシュ王の風貌が妾の目の前にあった。

 

 

 

ギルガメス「……うぅっ///」

 

 

 

妾はその美しい容姿と強い王の威圧に当てられて、少し顔が熱くなっていくのを感じてしまった。

 

妾はすぐにギルガメッシュ王から離れようとして精一杯に抗ってみるが、妾の身体を縛る鎖は『天の鎖(エルキドゥ)』。

神性を持つ者に対して絶大な拘束力を発揮する宝具。高過ぎる神性を持つ妾の身体では抜け出す事なぞ出来やしない。

 

 

 

ギルガメッシュ「……ん?これは…」

 

 

 

 

ーーークィ。

 

 

 

ギルガメス「…っ?」

 

 

 

 

妾の身体を見ていたギルガメッシュ王が、ふと不思議そうな表情を浮かべた。

ギルガメッシュ王は、妾の顎を掴んで目を覗き込んで来た。

 

………というか、コレって“顎クイ”…?

 

 

 

ギルガメッシュ「っ…!…っ!!?」

 

 

 

妾はソレを理解すると、頭の中が真っ白になって少しパニック状態になった。

 

だがギルガメッシュ王は、そんな妾の様子なぞ気にもせずに見つめ続けていた。

そしてギルガメッシュ王は、その双眼に静かな怒りを灯し始めた。

 

 

 

ギルガメッシュ「………どうやら貴様は、不躾にもこの(オレ)の身体と蔵を有しているようだな…!」

 

 

ーーーーゾクっ!!

 

 

 

ギルガメス「……ひぃっ!!?」

 

 

 

妾は至近距離でギルガメッシュ王の怒りに当てられて、かなり萎縮してしまった。

 

 

ーーーそして『殺される』と思った。

この恐怖の感覚は、覚えがある。

以前にも同様の恐怖を感じた事がある。

 

そう、アレは確か…怒り狂ったイシュタルに八つ当たりをされた時だ。

だが今回は、女神のソレとは比較にならない程の恐怖を感じた。

 

 

 

ギルガメス「…っ!」

 

 

妾は威圧に身を固めてしまい、終いには死の恐怖に怯えて目を固く閉じた。

 

 

 

 

ギルガメス「………っ?」

 

 

 

………しかして、その時は来なかった。

 

 

目を開けてみると、そこには相変わらずのギルガメッシュ王の顔があった。

だがギルガメッシュ王の表情には、怒りを感じられなかった。

 

 

……というよりも、コレはーーー、

 

 

 

ギルガメス「うぅ……?」

 

 

 

ギルガメッシュ「…ふむ。このまま殺してしまうには、ちと惜しい女だ」

 

 

 

ギルガメッシュ王は、妾を見つめながら何かを悩んでいるようだった。

そして、ギルガメッシュ王が妾を見つめる視線から感じるものは、それは決して怒りではなかった。

ギルガメッシュ王の視線からは、まるで妾を見定める様な感覚を感じる。

 

ギルガメッシュ王は長考の末に、妾を見定める様な目を向けながら問い掛けて来た。

 

 

 

ギルガメッシュ「ーーー貴様は、我が財宝をもって何を成したい?我が肉体をもって何に至ろうというのだ?返答次第では例え魔王に邪魔されようとも、その命は確実に刈り取るぞ」

 

 

 

ギルガメス「…妾が…成したい事、妾の…至ろうとする……」

 

 

 

ギルガメッシュ「雑種、貴様が願う表層の願いでは無いぞ。(オレ)が知りたいのは、貴様の最奥に巣食う願望だ」

 

 

 

ギルガメス「…妾の、本当の…“願望”…」

 

 

 

ギルガメッシュ「そうだ。貴様の最も強く願う願望。脆く儚く弱々しいが、しかして人間らしい欲望。最奥にある“ソイツ”をこの(オレ)に聞かせてみよ」

 

 

 

 

ギルガメッシュ王が問い掛ける妾の願望。悩む必要なんて無いのに…“考え”と“答え”が纏まらない。

 

 

 

 

 

 

 

妾は美男・美女のハーレムを……。

 

 

 

 

 

ーーーーずっと昔から欲しかった。

 

 

 

 

 

誰もが妾を褒め称える園を……。

 

 

 

 

 

ーーーー死ぬまで求めて止まなかった。

 

 

 

 

 

妾だけに優しく甘い愛情を……。

 

 

 

 

 

ーーーー忘れられる筈が無い。

 

 

 

 

 

妾が最も欲しているのは……。

 

 

 

 

 

ーーーー妾が本当に求めていた願望。

 

 

 

 

 

 

 

【妾が願う願望はーーーー】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルガメス「………………しぃ」

 

 

 

ギルガメッシュ「…ん?」

 

 

 

ギルガメス「妾は…………しい」

 

 

 

ギルガメッシュ「ーー聞こえぬ」

 

 

 

ギルガメス「妾…友………し…」

 

 

 

 

ギルガメッシュ「ーーー聞こえぬと言っている!!この(オレ)に然りと貴様のその願望を聞かせて見せろ!!!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルガメス「ーーー妾は…!!…友がっ!親しい友が…っ!!一緒にいてくれる友が欲しいのじゃあぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………言ってしまった。

父にも母にも言うまいと思っていた、妾の本当の願望。

誰にも聞かせたくなかった、妾だけの本当の欲望。

 

ーーーそうだ、妾はハーレムが欲しかったのでは無い。

妾が本当に欲しかったのは、

 

 

“妾と一緒にいてくれる親友”だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギルガメス「…う…っ、ゔぅ…!」

 

 

 

 

 

 

妾は顔を下に向けて泣いていた。

ギルガメッシュ王は何も言わずにいる。

閻魔大王も何も言わずにいる。

 

ただ、2人からは侮蔑の感情は無かった。

単に見つめられているだけだ。

 

そして、ついにギルガメッシュ王がその口を開いた。

 

 

 

ギルガメッシュ「……ソレが貴様の本当の願いか?貴様の最奥にある願望か…?」

 

 

 

ーーコクン。

 

 

 

ギルガメス「……ぅむ」

 

 

 

 

妾はギルガメッシュ王の問い掛けに対して頷いた。

妾は嗤われる覚悟は出来ていた。

エアの娘の願いが“親友”だなんて…。

きっと、嗤われる。嘲笑われてしまう。

 

 

ーーーーしかして、ギルガメッシュ王から聞こえてきたのは“嘲笑”では無かった。

 

ーーーーそれは、まるで、

 

 

 

ギルガメッシュ「…フハハハハハッ!!」

 

 

 

楽しそうな“笑い声”だったーーーー。

 

 

 

 

ギルガメス「……え?」

 

 

 

妾はギルガメッシュ王の高らかな笑い声を聞いて、顔を彼の王に向けた。

 

 

 

ギルガメス「何故、なのじゃ…?…何故、そんなにも…楽しそうに、笑える?何で、嘲笑わぬのじゃ…?妾の願いは…王の願いでは無いっ!妾の本当の願いはーーー」

 

 

 

 

 

妾がギルガメッシュ王に『何故そんなにも楽しそうに笑えるのか』を問うた。

しかし、その途中でギルガメッシュ王は、妾の言葉を遮って答えた。

 

 

 

ギルガメッシュ「ーーーまるで(わらべ)のような願いだ…か?」

 

 

 

 

ギルガメス「……っ!?」

 

 

 

ギルガメッシュ「……確かに貴様の『友が欲しい』という願いは、王者たる者の願いでは無い。はっきり言って、貴様の表層の願いである『酒池肉林(ハーレム)の形成』の方が凡骨な王の欲望とも言えるだろうよ…」

 

 

 

ギルガメス「ならば、何故…?」

 

 

 

『そんなにも肯定的に笑える?』

そんな意味を込めて、ギルガメッシュ王を見つめた。

 

ギルガメッシュ王は、そんな妾の視線を真正面から受け止めて、答えてくれた。

 

 

 

 

ギルガメッシュ「ーーーーだがな、貴様の『友が欲しい』というその願いは王としてではなく、人としての願いだ。貴様の願望は、実に人間らしい(・・・・・)贅沢な願望だ」

 

 

 

ギルガメス「…えっ?」

 

 

 

 

ギルガメッシュ王が何を言っているのか、妾は分からなくなって来た。

 

だがギルガメッシュ王は、そんな妾の動揺なぞ気にもせずに話を進めた。

 

 

 

 

ギルガメッシュ「貴様は今、あらゆるモノを手にしている。

『不老不死なる体質』

『エアの血筋』

半神半人の肉体(我が身体)

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)

これら全ては人間ならば、一度は求めては止まないモノだ。特に『王の財宝』は、(オレ)の蔵であるからな。世界中の凡夫共が欲しているだろうな。貴様も(オレ)の能力と身体を欲していたクチだろう…?」

 

 

 

ギルガメス「う、うむ…」

 

 

 

ギルガメッシュ「(オレ)が統べるこの世界とは異なる“異世界(外世界)”では、どうやら(オレ)の蔵ーーーつまり『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を求める凡俗な雑種が多いと聞く。しかも“異世界(外世界)”の神々共は、この(オレ)の許しも無く『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を勝手に雑種共に与えているそうだな…」

 

 

 

ギルガメス「……っ!」

 

 

 

妾は何も言えなかった。ギルガメッシュ王の言い分は、理解出来るからだ。

何よりも、妾も“その雑種共”と同じ穴の狢である。何かを言える立場でない。

 

 

 

ギルガメッシュ「…だが、そんな雑種共と貴様は“ある一点”のみ決定的に違う。凡俗な雑種共は、元が只の人間であるが故に“魂が脆すぎる”。ほんの些細な事で亀裂が入り、簡単に崩壊する。例えば…只の殺意のみ(・・・・・・)、とかな」

 

 

 

ギルガメス「…?殺意…?」

 

 

 

ギルガメッシュ「…どうやら気付いておらぬ様だが、(オレ)が貴様に向けた“殺意を乗せた殺気”は並の人間ならば即座に気を失うぞ。英雄であったとしても『常勝の騎士王(冬木のセイバー)』の様な少しでも魂に歪みが出来れば、立っては居られまい」

 

 

 

ギルガメス「…なっ!!?」

 

 

妾は今までギルガメッシュ王から向けられていた殺気に、それ程まで重い殺意が込められていた事に驚愕した。

 

 

 

ギルガメッシュ「…その様子だと、やはり気付いて無かったようだな。(オレ)が本気で殺意を剥き出しで殺気を放ったのは、盟友(エルキドゥ)が呪われた時以来だ。本来ならば、“凡俗な神”程度なら臆する程のものなのだがな…。もしや貴様、過去に神の怒りを買った事でもあるのか?…ん?」

 

 

 

 

どうやら先程まで浴びていた殺気は、ギルガメッシュ王の本気(マジ)の殺気だったらしい。

ギルガメッシュ王が後半部分については、ニヤつきながら聞いてきた。

 

 

 

 

ギルガメッシュ「……まぁ、それは良い。話を戻すぞ。貴様が手にした『(オレ)の身体』と『バビロンの蔵(王の財宝)』は、世界中の凡骨な雑種共が求める程の価値がある。そこいらの凡骨であれば、(オレ)の能力を過信して『友』という価値を見失う」

 

 

 

 

 

ギルガメッシュ王は話を戻して、先程の話の続きを聞かせてくれた。

 

 

 

 

ギルガメス「……『友』?」

 

 

 

 

ギルガメッシュ「…そうだ。そんな凡骨の雑種共は『友』を捨てる代わりに『女』や『男』を求める。奴等はな、『ただ唯一の盟友』よりも『何処にでもいる有象無象の雑種』を選ぶのだ」

 

 

 

ギルガメス「なっ…!?友を捨てるとは!何故、そう簡単に捨てられるのじゃ!?」

 

 

 

 

妾は驚きを隠せなかった。

妾がネットで拾った知識には、そのような輩は居なかったのだ。

『友』を捨ててまでも、『男』や『女』を求める者達。

 

其奴等は、何故…。

何故そんな簡単に友情を捨てられるのだ?

何故そんな簡単に友情を見失えるのだ?

 

 

だって…それは、妾が最も欲しいものだ。

 

妾を慕ってくれる下僕よりもーー

妾の両隣で愛でてくれる愛人よりもーー

妾に尽くしてくれる家臣よりもーー

 

妾が最も欲しい『友情』を何故そんなにも簡単に捨てられるというのだ…?

 

 

 

 

 

ギルガメッシュ「ーーーだからこそ貴様の願いは、信に値するのだ…ギルガメスよ」

 

 

 

 

ギルガメス「…え?」

 

 

 

 

ギルガメッシュ王はその瞳に静かなる怒りを宿しながらも、しかして妾の心を見透かしたかの様な視線を送って来た。

 

 

 

ギルガメッシュ「…そこらの凡骨な雑種が簡単に『友』を見失う中で、貴様は『友』を欲するという願いを求めた。確かにそれは王たる者の願いではないが…まるで(わらべ)のような願いではあるが、人としては贅沢な願いではあろう?」

 

 

 

 

ギルガメッシュ王の言葉はまるで妾が知るギルガメッシュ王ではないようで…。

しかしてその言葉には、人を捌いて導く王としての思いが込められていた。

 

 

 

ギルガメス「…!ーーう、うむっ!!」

 

 

 

 

妾の返事を耳にしたギルガメッシュ王の顔には『愉悦』の表情を浮かべた。

 

 

 

 

ギルガメッシュ「良い返事だ、雑種…否、ギルガメスよ。その身に秘めたあらゆる欲望、その眼に宿した生への渇望、その心に潜む貪欲な願望、この(オレ)が認めよう!我が肉体と財宝を扱う権限。本来ならば有り得ん事だが、貴様だけは特別に許そう」

 

 

 

ギルガメス「…へ?」

 

 

 

妾はギルガメッシュ王が発した言葉を耳にして、間抜けた声を出してしまった。

 

……というか、今ーーー。

 

 

 

ギルガメス「妾の名を……」

 

 

 

 

ーーーガチャンッ!

 

 

 

 

ギルガメッシュ王に妾の名前を呼ばれた事に驚いていると、今まで妾の身体を縛り付けていた鎖『天の鎖(エルキドゥ)』が解かれた。

 

 

 

 

ギルガメス「え?あっ…」

 

 

 

 

妾が呆けていると、今までずっと静観していた閻魔大王が話を切り出した。

 

 

 

閻魔大王「ーーーーさてと…そんじゃあ、本題に入るぞ。俺達が『此処(英霊の座)』に来た目的は、お前だけにしか出来ない事だからだ」

 

 

 

ギルガメッシュ「ほう…(オレ)にしか出来ない事だと?事の次第は理解しているが、ソレ(・・)(オレ)でなくとも解決出来る案件であろう?例えば…『雑種(ギルガメス)』の『父親(エア神)』とか、な」

 

 

 

閻魔大王「そりゃあ…そうだけど。お前の方が確実だし、『アイツ(エア)』はお前と違って『蔵』を持ってるだけだし…」

 

 

 

 

ギルガメス「……???」

 

 

 

妾は2人が何を言っているのか、少し分からなかった。

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』の話をしているのは理解しているが、2人の言い方ではまるで妾の父が『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』を持っているかの様な言い方である。

 

 

 

 

ギルガメス「…オイ、閻魔。先程から何を言っておるのじゃ…?まるで『エア(妾の父)』が、『英雄王の蔵(王の財宝)』を所有しておるような言い方ではないか…?」

 

 

 

 

妾は不思議そうに聞いてみると…、

 

 

 

 

 

閻魔大王「は…?何言ってんの?持ってるに決まってんじゃん。『アイツ(エア)』は、このギルガメッシュが“この世界”で誕生した時には既に『王の財宝』を手に入れてたんだよ」

 

 

 

 

…トンデモない事実を耳にした。

 

 

 

ギルガメス「…え?」

 

 

 

妾は驚き過ぎて、気の抜けた声しか出せなかった。

そんな妾を見てギルガメッシュ王は、さらに不思議そうな表情を見せた。

 

 

 

 

ギルガメッシュ「オイ…雑種(ギルガメス)。まさかそんな事も知らずに、ずっとウルクで生きていたのか?エアの娘であるならば…共に暮らしておれば、エアが『我が蔵(王の財宝)』を持っている事くらいは気がつくであろう…?」

 

 

 

 

ギルガメス「っ……!」

 

 

 

妾はギルガメッシュ王の言葉を耳にして、少し気分が悪くなった。

 

 

 

閻魔大王「…ん?おい、どうした?なんか顔色が悪いぞ…」

 

 

 

 

妾を気遣ってくれる閻魔大王に対して、妾は小さく呟いた。

 

 

 

ギルガメス「…緒……、…かっ…」

 

 

 

閻魔大王「…あぁ?聞こえねぇよ」

 

 

 

ギルガメス「一緒……、…かった」

 

 

 

ギルガメッシュ「聞こえぬぞ、『雑種(ギルガメス)』」

 

 

 

妾はギルガメッシュ王に促されてしまい、仕方無くちゃんと答えた。

 

 

 

ギルガメス「…一緒では、なかった…!」

 

 

 

 

閻魔大王「あ…?一緒じゃなかった?」

 

 

 

ギルガメス「………妾が幼かった頃の1年間だけ共に過ごしたが、妾がウルクの学び舎に通う頃には既に居なかった」

 

 

 

妾が正直に昔のことを話すと、閻魔大王もギルガメッシュ王も少し難しい表情を浮かべていた。

 

そしてギルガメッシュ王が、難しい表情を引っ込めて口を開いた。

 

 

ギルガメッシュ「……まぁ、知らぬならば仕方あるまい。気にするな…」

 

 

 

ギルガメッシュ王の言葉を聞いても、妾は未だ気持ちが晴れないが、それでも今回はこれ以上気にするのをやめた。

 

 

妾はこの気分を払拭する為、これから何をするのか聞いてみた。

 

 

 

ギルガメス「……して、閻魔大王よ。妾はこれから何をすれば良いのじゃ?」

 

 

 

 

閻魔大王「ん?あぁ…そう言えば、キチンと話してなかったな」

 

 

 

閻魔大王は妾の問いを聞くと、一度ギルガメッシュ王を見て答えた。

 

 

 

 

 

 

 

閻魔大王「ーーーーまず最初に、英雄王とタイマンで戦って欲しい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーギルガメスsideoutーーーー

ーーーーー




『原罪(メロダック)』
ランク:???
種別:???
レンジ:???
最大補足:???
各地に伝わる『選定の剣』の原典であり、『聖権』の象徴。『グラム』はこれの派生品とされ、そこからさらに流れていったのが『勝利すべき黄金の剣』とされる。
Fateルートにおいて、投影品の『勝利すべき黄金の剣』に対して使用され、これを粉砕した。
『約束された勝利の剣』には及ばないものの、触れるモノを焼き払う光の渦を放つ事が出来る。
名前の由来はメソポタミアにおける神々の王マルドゥク。

TYPEMOONwiki参照


『絶世の名剣(デュランダル)』
ランク:A(推定)
種別:対人宝具(推定)
レンジ:???
最大補足:???
フランスの叙事詩【ローランの歌】に登場する、絶世の名剣。“決して折れない”という逸話を持つ不滅の聖剣。
シャルルマーニュ十二勇士の筆頭、聖騎士ローランが所有し、もとは王が天使から授かったという。
三つの奇跡を持ち、所有者の魔力が尽きても切れ味を落とさない輝煌の剣。
トロイア戦争においても、トロイアの英雄ヘクトールが使用しており、彼は柄を伸ばす事で槍としても使用している。
ちなみに、ヘクトールが持つデュランダルの名前は
『不毀の極剣(ドゥリンダナ・スパーダ)』
または、
『不毀の極槍(ドゥリンダナ・ピルム)』
という。

TYPEMOONwiki参照+αの情報

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