閻魔大王(真)と英雄王(偽)♀の物語   作:オキカ

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第二話

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ーーーー閻魔大王sideーーーー

 

 

 

俺は今、猛烈に頭が痛い。

 

何故かって?それはーーーー、

 

 

 

 

ギルガメス「なぁ、閻魔大王よ!早く妾に『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』の開き方を教えるのだ!」

 

 

 

 

ーーーーこのマヌケ姫の所為だ…。

 

 

 

 

閻魔大王「…はぁ。お前さ、『王の財宝』の開き方も知らねぇで一体どうするつもりだったんだよ…?」

 

 

 

俺がギルガメスに呆れながら聞くと、ギルガメスは何故か無駄に形の良い胸を張りながら自信満々に答えてくれた。

 

 

 

 

ギルガメス「決まっておろう?お前に指南してもらうつもりだったのだ」

 

 

 

ギルガメスは何故か自信満々に答えてくれたが、残念な事に俺は『王の財宝』の開き方なんざ知らないし、そもそも俺は教えるなんて一言も言ってない。なんならコイツの転生に付き合うつもりすら無かった。

 

 

 

ギルガメス「そもそも妾は豊穣神エアの娘にしてメソポタミアの姫であるぞ?父上から教わった事は剣と槍と弓の戦闘技術だけである。それ以外は何も教わっておらん」

 

 

 

 

閻魔大王「……(じゃあコイツは何をする為に転生したんだろう?)」

 

 

 

俺はギルガメスの話を一通り聞いて、もう何も考えたく無くなった。

 

そもそもなんでコイツは俺が同行する事を知ってたんだろうか。

もしかして、エアの奴に教えてもらった?それとも、コイツ自身が希望したのか?

 

俺はもう何だか面倒になって、取り敢えずコイツの問題を最短で解決する最善策(?)を考えた。

 

 

 

閻魔大王「……(そもそもコイツは何処まで自分の能力を理解出来てるのか…)」

 

 

 

俺は何故か笑顔のギルガメスを見ながら、この阿保の問題を解決出来る方法を考え抜いていた。

 

 

 

ギルガメス「なんじゃ?何をそんなに妾の顔を見つめておるのだ?もしや貴様、妾の美貌に惚れたか!?」

 

 

 

ーーーなんてふざけた事を抜かすコイツの頭の中はどうなっているんだか。

 

とは言え、肉体と能力は英雄王でもソレを依代にしている奴がこれじゃあ…なぁ。

 

 

ーーーーん?肉体と能力は英雄王…?

 

 

 

閻魔大王「あっ……そうか、思い付いた。なんだよ、簡単じゃないか…」

 

 

 

ギルガメス「む…?どうしたのだ?」

 

 

 

ギルガメスが何やら俺の顔を覗き込んで来るが、そんなのは放って置いて…。

ーーーギルガメスの問題を解決する最善策が見つかった。

ぶっちゃけ上手く事が運ぶかは分からないけれど、多分いけるだろう…。

 

 

 

閻魔大王「…オイ、ギルガメス」

 

 

 

ギルガメス「うん…?なんじゃ?」

 

 

 

何故か機嫌が良いギルガメスは俺の呼び掛けに反応した。

…何でそんなに機嫌が良いのかは知らんが悪いけど一緒に怒られに行くぜ。

 

 

 

 

閻魔大王「……悪いが俺は『王の財宝』の開き方なんざ知らないし、知らないものを人に教えるなんて無理だ」

 

 

 

ギルガメス「なっ!?なっ…ならば、妾はどうすればーー」

 

 

 

閻魔大王「そこで、だ……。これから俺と一緒に『王の財宝』の使い方を知ってる奴に会いに行くぞ」

 

 

 

ギルガメス「ーー良いのだ!?……え?」

 

 

 

俺は呆けたギルガメスを放置して、左手の親指を犬歯で噛み切った。

そして切れた親指から垂れる血を地面に落とすと、俺はそこに魔力を注ぎ込んだ。

 

 

 

閻魔大王「『天獄門』ーーー開門…」

 

 

 

すると俺の目の前に、馬鹿でかい白い鳥居が顕現した。

前回と違って行く場所は固定出来るから、今回は割と楽に『天獄門』を展開出来る。

俺は『天獄門』の行き先を定めて『とある英霊の座』へと繋いだ。

 

 

 

 

閻魔大王「ーーさて、行くか…」

 

 

俺はギルガメスの手を掴んでその鳥居に向けて歩き出すと、我に返ったギルガメスが力強く踏み止まった。

 

 

 

ギルガメス「ーーーま、待て!行くって、誰に会いに行くというのだ!?」

 

 

 

ギルガメスは酷く狼狽しながら、これから会いに行く奴について聞いてきた。

俺はギルガメスの問い掛けに対して、少し曖昧に答えた。

 

 

閻魔大王「だから言ってるだろう…。お前に『王の財宝』の使い方を教えてくれる奴だって…。まぁ…ちっと不安かもしれないが、多分大丈夫だろ…」

 

 

 

ギルガメス「…多分!?多分じゃと!!?絶対にイヤじゃっ!妾はそんな不安になる様な輩とは、絶対に会いとうない!!!」

 

 

 

閻魔大王「ーー大丈夫だって。基本的に怒らせる様な事しなきゃ殺されないから…」

 

 

 

ギルガメス「殺される!!?其奴は怒ると殺すのか!?イヤじゃあっ!!!妾はまだ死にとうない!!せっかく手に入れた念願の自由じゃぞ!こんな僅か一日程度で諦めたくないわ!!!」

 

 

 

そんな事を叫びながらギルガメスは俺の身体にめっちゃ全力で抱きついて来た。

……つーか、結構力強い…っ。

ちょっと、肋骨とか痛いんだけど!

 

 

 

 

ギルガメス「…うぅ、ぐずっ…!!」

 

 

 

 

……はあ、全くしょうがない。

 

 

 

俺は泣きベソかいているギルガメスの身体を持ち上げた。

 

 

 

ギルガメス「ぐずっ…!行かんぞ…!絶対に妾は行かんぞ…。殺されとうない!」

 

 

 

ギルガメスは未だに泣きベソかいてるが、俺はそんなギルガメスの前髪を後ろに流して顔を覗き見た。

 

 

 

 

閻魔大王「ーーーーギルガメス。良いか、よく聞け…」

 

 

 

俺はギルガメスの涙を拭って、少し優しめに接しながら言い聞かせた。

 

 

 

閻魔大王「これから会いに行く奴は、別に悪い奴って訳じゃないんだ。ちょっと性格がキツいだけなんだ…」

 

 

ギルガメス「うぅっ…!…だがっ!!……其奴は、怒らせてしまうと…っ、殺すのであろう…?」

 

 

閻魔大王「怒らせなきゃ良い話さ。なに、大丈夫だ。怒らせたって、今回は俺が居るだろ?ちゃんと守るから、なっ?」

 

 

 

 

ギルガメスは俺の言葉を聞くと、顔を伏せながら小指を突き出して来た。

 

 

ギルガメス「………ならば、指切りじゃ。もし守れなければ、深淵に叩き落とす…」

 

 

 

閻魔大王「はいはい…了解」

 

 

 

俺はギルガメスの小指と俺の小指を絡めて指切りをした。

 

 

 

ギルガメス「約束じゃぞ!絶対にだぞ!」

 

 

 

閻魔大王「分かってるって…」

 

 

 

俺はギルガメスと指切りをした後、ギルガメスを地面に下ろした。

そして俺達は『天獄門』に足を向けた。

 

 

 

閻魔大王「……それじゃあ、行くぞ?」

 

 

 

 

ギルガメス「………う、うむ」

 

 

 

 

ーーーー俺とギルガメスは、『天獄門』を一緒に潜って『王の財宝』の使い方をこの世で1番良く知ってる奴に会いに行った。

 

 

 

『古代ウルクの王・ギルガメッシュ』に。

 

 

 

 

ーーーー閻魔大王sideoutーーーー

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ーーーーギルガメスsideーーーー

 

 

 

 

妾ーーギルガメスーーは今、何もない空間を歩いている。

ーーー妾の隣を歩く男に手を引かれながらではあるが。

 

 

 

妾の手を引いているのは『閻魔大王』。

 

インド神話や仏教などに置いて高い知名度を誇る大魔王だ。

転生する時に父上から護衛として紹介されたのだが、メソポタミアの神域でしか生活した事がない妾からしてみれば『こんな男が本当にあのティアマトやフワワ等よりも強いのか?』と思う。

 

 

父上は『困った事があったら、閻魔大王に頼ると良い。きっと助けてくれるからな』と言っていたが、こんなに幼い容姿をしている男が頼り甲斐があるのか。

見た目はまるで17歳程度の(わらべ)である。

 

 

……まぁ、確かに此奴はカッコいい風貌はしているのだが。

 

 

妾はドンドン先に進んで行く閻魔大王に手を引かれながら、何も無い空間を2人だけで歩み続ける。

かれこれもう3時間は歩きっ放しだ。

 

妾は少し退屈になって来たので、閻魔大王に何か話をするように声を掛けた。

 

 

 

ギルガメス「のう、閻魔大王よ…」

 

 

 

閻魔大王「んぁ?何だよ…?」

 

 

 

ギルガメス「妾は少し退屈になった。何か話せ。出来れば面白い話が良いな…」

 

 

 

閻魔大王は妾の要望を聞いて、思案したかの様な態度をとった後に口を開いた。

 

 

 

閻魔大王「……俺の娘の話でも良いか?」

 

 

 

ギルガメス「…ぬっ?娘じゃと…?お主、子などおったのか?」

 

 

 

閻魔大王「まぁ、昔は結構な頻度で吉原に出入りしてたからな…。そこで俺の子を身籠もる女もいたんだよ」

 

 

 

ギルガメス「なぬっ!?という事は、お主もハーレムをーー」

 

 

 

閻魔大王「ーーそんな訳あるか、ボケ…。吉原の花魁は基本的にプロだぞ。身篭ったのは、自分から望んで孕んだ奴だけだ。実際には僅か4人しか孕ませて無いしな。生まれた子達は、1人を除いて純粋な人間として生まれている」

 

 

ギルガメス「それでも、4人も孕ませておるではないか!!しかも自分からじゃと!?なんと羨ましいシチュエーションだ…!」

 

 

閻魔大王「………まぁ、ともかくその娘の話だけどな。今、1人を除いて純粋な人間として生まれた…って言ったよな。その1人ってのが、その娘なんだよ…」

 

 

閻魔大王は歩く速度を変えずに進みながら話を続けた。

 

 

 

閻魔大王「アイツは、神の血を1/3も引いて生まれた。基本的に俺達みたいな高位の神は、人間との間に子を成す事が難しい上、生まれる子だって大半が純粋な人間の子供として生まれる。どうしたって普通の人間は、神の血を耐え切れるだけの肉体を持たないからだ…」

 

 

 

ギルガメス「ぬ…?しかして妾は半神半人として生まれたぞ…?」

 

 

 

それを聞いた閻魔大王は不思議そうな顔をした後、妾の母について聞いてきた。

 

 

 

閻魔大王「…ギルガメス、お前の母親の人種と出身地は分かるか?」

 

 

 

ギルガメス「…う、うむ。母上は日本人とシリア人のハーフじゃ。生まれはシリアのアレッポと聞いておる。ちなみに、日本で育ったそうだぞ……」

 

 

 

妾が少し母上の身の上をしたら、閻魔大王は何やら納得した様な表情を浮かべた。

 

 

 

閻魔大王「…成る程な。だからエアの血を引く子を産めたのか…」

 

 

 

ギルガメス「…?何が“成る程”なのだ?」

 

 

 

閻魔大王「お前が半神半人として生まれた理由だよ…。ーーまぁ、ソレは置いといて俺の娘の話だったな。取り敢えず、そんな低確率でしか生まれない子供として生まれたアイツはお前と同じ様に俺の神域のみで、その生涯を過ごした」

 

 

 

ギルガメス「ふむ……続けろ」

 

 

 

閻魔大王「………だけど、完全な半神半人じゃないかったアイツの生涯は、僅か20年で終わった。俺の神域はメソポタミアの神域と同等の神秘性を誇る“インドの神域”。メソポタミアとインドの神域は、普通の人間なら入った瞬間に即死するレベルの神秘性の濃さだ。ちなみにメソポタミアやインドみたいに、神代の頃と全く変わらない環境の神域を“絶対神域”って言うんだよ。完全な半神半人であるお前は完璧に適応出来ていたんだろうが…。生憎と俺の娘は中途半端に人間としての血が多かった所為で、神域に適応が出来なかった」

 

 

 

 

ギルガメス「なっ…!?神域とは、安全で安心出来る絶対の不可侵領域ではなかったのか!!?」

 

 

 

妾が神域の知らない一面に驚いていると、閻魔大王は『やはり』と言った顔をした。

 

 

閻魔大王「やっぱり、何にも教えて貰えてなかったんだな…お前」

 

 

ギルガメス「じゃ…じゃがっ!なら何故、母上は80年も神域で生きておった!?母上が妾を産んだ時の年齢は15歳。人間ならば老衰で死んでも可笑しくなかろう!母上は妾が死ぬその時まで息災であったぞ!!」

 

 

閻魔大王「…それ、生きてたんじゃなくて死者として住んでたんじゃね…?人間の女は神の血を引く子を産む時に、かなりの高確率で死産するらしい。実際に『菖蒲(あやめ)』の母親は産んだ直後に死んじまった…」

 

 

 

ギルガメス「『菖蒲』…?」

 

 

 

閻魔大王「さっき話した俺の娘だよ…」

 

 

 

先程の話にあった閻魔大王の娘は『菖蒲(あやめ)』という名らしい。

……それよりも此奴は今、聞き捨てならん事を言った。

 

 

 

ギルガメス「母上が死者だと…?」

 

 

 

閻魔大王「それ以外には考えられないな。何の能力も持たない生きた普通の人間は、メソポタミアやインドみたいな神秘性が濃厚過ぎる“絶対神域”で暮らす事が出来ない。もしも、普通の人間が“絶対神域”で暮らせるとしたならば、やはり死後でなければ入る事すら叶わない…」

 

 

 

ギルガメス「そ、そんな………」

 

 

 

閻魔大王は、緩めていた足の速度を戻してまたドンドンと進み始めた。

 

 

 

閻魔大王「…まぁ、とにかく俺の娘の話はコレで終わりな。少し長話になったけれど取り敢えずは、もうちょっとだけ歩くぞ。もう少しで着くからな…」

 

 

 

 

そこで妾は、ふと思った。

“そういえば、これから妾はこれから会う輩の名前を聞いてない…”

妾は閻魔大王に、これから会う輩について問い質した。

 

 

 

 

ギルガメス「そういえば閻魔よ…。妾はこれから会う者の名を聞いておらぬ」

 

 

閻魔大王「ん…?そういや、アイツの名前とか言ってなかったけ…?」

 

 

ギルガメス「そもそも、妾達は一体何処に向けて歩っておる?妾はこんな場所をメソポタミアの神域でも歩った事は無いぞ…」

 

 

閻魔大王「それも言ってなかったか?」

 

 

ギルガメス「そうじゃ。はよ言わんか!」

 

 

 

妾が早く答える様に急かすと、閻魔大王は妾の顔を見つめて答えた。

 

 

 

 

 

 

閻魔大王「ーーーーこれから俺達が向かう場所は、“英霊の座”っていう場所だ。

そんで此処は、“多次元世界”と“英霊の座”を繋ぐ“境界通路”だ。“英霊の座”がある世界にこの通路は存在しないが、その世界と他の世界の間に“境界通路”は存在する」

 

 

 

ギルガメス「“境界通路”……」

 

 

 

閻魔大王はこの何も無い空間を通路と呼んでいるが、妾には全く通路に見えない。

というかこの空間が仮に通路だとしても、何故この男は道を間違えずに進める…?

妾が見渡す限り、この空間には何も無い。当たり前ではあるが、標識も看板も地図も案内人も無い。

本当にこの空間には何も無いのだ。

 

 

 

…………というか、ちょっと待て。

 

 

 

ギルガメス「ーーー貴様、先程“英霊の座”と言わなかったか………?」

 

 

妾が引き立った表情で先程聞いた行き先を確認すると、閻魔大王は不思議そうな顔をして頷いた。

 

 

閻魔大王「え…?あぁ、言ったな」

 

 

 

王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』の扱い方を知っている…

 

行き先は『英霊の座』…

 

悪い奴ではないが性格がキツい…

 

 

 

ーーーーあれ…?もしかして…。

 

 

 

ギルガメス「もっ…もしや、わ…妾達は、あの、ウ…ウルクの王に、会おうと…」

 

 

 

 

 

 

閻魔大王「ーーーおう、そうだぞ。俺達がこれから会う奴は『英雄王』だ。世界最古の英雄『ギルガメッシュ』にな…」

 

 

 

 

ーーーー妾はその名前を聞いたのを最後に意識が途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーギルガメスsideoutーーーー

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