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ーーーー閻魔大王sideーーーー
俺の目の前にはメソポタミアの豊穣神エアが佇んでいる。
閻魔大王「それで、何の用だ?」
ハーデス「アンタ程の高位な神がこの地獄に降りて来るとは珍しい…」
俺とハーデスさんは、取り敢えずエアに疑問をぶつけた。
エア「…今回俺が訪ねたのはお前に用があるからだ、閻魔大王」
閻魔大王「俺にだと?」
俺は珍しい態度を取るエアに懐疑の視線を向けながら睨み付けた。
エア「ああ。だがその前に一つ、お前に尋ねたい事がある」
閻魔大王「…何だ?」
エア「お前は一時期、人間の娯楽にハマっていた様だが、その時に『二次創作』なるものに興味が湧いたらしいな?」
閻魔大王「あぁ、そうだな。でもアレは、かなり昔の事だぞ?」
エア「まぁ、構わん。そこでお前、その二次創作とやらに『神様転生』というカテゴリがあったのを覚えているか?」
閻魔大王「あ、あぁ。確かにあったな…」
………先程から、どうにも腑に落ちない。こいつは一体、何が言いたいんだ?
ハーデス「『神様転生』ってアレか?俺達が人間に能力を与えて異世界に転生させるって内容だったか…?」
エア「ーーーそう、ソレだ」
俺はいよいよ変になったエアに本題を促す様に言った。
閻魔大王「つまりだ、エア。アンタは何が言いたいんだ?俺に何をさせたい?」
エアは俺の視線に自分の視線を合わせると話し始めた。
エア「今回のお前に頼みたい事はソレだ。『神様転生』とやらだ」
閻魔大王「…はぁ?」
イマイチ俺はエアが何を言いたいのか理解出来ない。
閻魔大王「どういう事だよ?」
エア「実はな、100年位前に人間界に降りて日本で遊んでいた時に、少しばかりやらかしたな…。興味本位で入った風俗の娘を孕ましてしまった…」
閻魔&ハーデス「「…はぁっ!?」」
…ちょっと待て!?
コイツ今、なんて言った!?
閻魔大王「………って、待て待て待て!?最高位の神性を持つアンタが、人間の女を孕ませただと!?」
ハーデス「アホか!アンタは!?ゼウスの野郎と同じ穴のムジナじゃねぇか!!」
そもそも最高位の神性を持つ神は、そんな易々と下界に降りられない。
それこそ世界最古の神話の神、エアともなればメソポタミアの神域から出る事すらも許されない。
俺は溜息を吐いて、エアを睨み付けた。
閻魔大王「はあ…。まぁ、この際だ。出来ちまったモンは仕方無い。地獄の統治者としては簡単に“殺せ”とは言えん」
ハーデス「……俺も激しく同意だ」
俺はハーデスさんと頷き合いながら、エアの用件を聞いた。
閻魔大王「それでアンタはどうしたい?」
エア「…まぁ、不本意とはいえ俺の子だ。他の神々にバレたら即処分だろう」
……だから俺等の所に来たのか。
エア「そこでだ、俺の子を『神様転生』とやらで異世界に転生させてほしい」
閻魔大王「…。って、ちょっと待て。転生させてほしいって言われても、その子供の魂は此処に来ているのか?
まさか、100年も前に生まれた子供の魂を今から探すのかよ?」
流石に生まれて1世紀も経ってたんじゃあ、既に死んでいるだろうし生きていたとしてもかなり衰弱しているだろう。
半神半人とはいえ半分は人間だ。寿命は人間と同じだし、死ぬ時はちゃんと死ぬ。
エアは俺の問い掛けに対して自信満々な表情で答えた。
エア「案ずるな。俺の子の魂ならば、先程この地獄に着いた時に回収をした」
そう言って、エアは掌に人間1人分の魂を乗せて見せて来た。
閻魔大王「はっ…?何時の間に!?」
勿論、勝手に死んだ人間の魂を掬い上げるのも立派な掟破りである。
無断現界と霊魂贔屓。
前者はともかく、後者は本当にマズイ。
霊魂を勝手に弄るのは大罪だ。昔、地獄を治めてたハーデスさんの後輩が霊魂を弄って遊んでたのがオシリスの旦那にバレて、深淵に叩き落されたのを見た事がある。
閻魔大王「オイ、エア!マズイっての!!霊魂贔屓は大罪だぞ…!」
ハーデス「もしバレたら、オシリスの旦那に殺されちまうぞ!!」
俺達はエアに止める様に促した。
そしたら、エアは意地悪い笑みを浮かべて俺達の肩を叩いた。
エア「安心しろ。オシリスの坊やにはちゃんと許可取って来た。ホレ!」
そう告げたエアは1枚の紙を俺達に見せた。俺達はその紙を見て驚愕した。
ハーデス「コイツは…っ!」
閻魔大王「霊魂操作の許可書だと!?」
オシリスだけが発行出来る許可申請書。
本来なら原罪に匹敵する程の霊魂操作を、この許可書さえあればやむ得ない場合のみ許される。
ハーデス「発行日時は!?」
閻魔大王「今日の1時間前だ!」
俺はエアに視線を向けて問い質した。
閻魔大王「オイ、アンタ。オシリスの旦那をどうやって説得したんだ?事が事だけにマトモな理由付けたって貰えないぞ!」
エア「なぁに、簡単さ。ちょっとオシリスの隠し事を、エジプトの神話体系にバラしただけだよ」
………オシリスの旦那、御愁傷様です。
俺はオシリスの旦那の苦労を一瞬だけ考えた後にエアの右手に乗る魂を見て答えた。
閻魔大王「………はあ、分かったよ」
エア「うん?」
閻魔大王「アンタの子を転生させれば良いんだろう?分かったから早くその子を転生させる準備を済ませな」
エア「ーーーーああ、分かった」
エアは手早く右手に乗る子供の魂を転生させる準備に取り掛かった。
ハーデス「はあ、仕方無いか。おい閻魔、天獄門で良いのか?それとも地獄門か?」
閻魔大王「天獄門でよろしく…」
俺達はその子の魂の器を作ったり、異世界への扉の開門をしたりと準備を始めた。
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閻魔大王「ふう、出来た…と」
ハーデス「天獄門なんて開くのは久方振りだからな、かなり時間が掛かった」
俺達は久方振りに見る馬鹿でかい鳥居の前に立っていた。
エア「おーい、此方も終わったぞ」
すると、エアが黄金に輝く魂を持って俺達のもとに駆け寄って来た。
…………って、オイ。
閻魔大王「アレ??なんか可笑しくない?半神半人の魂にしては輝き過ぎじゃね?」
ハーデス「つーか、この輝き。どっかで見た様な気がしてならないんだが…」
ハーデスが零した呟きを聞いたエアは、何やら変に良い顔をして答えた。
エア「ーーだって、英雄王ギルガメッシュの能力と肉体を与えたからな」
…………………………………。
閻魔&ハーデス「「はっ??」」
……えーと、つまり半神半人ってだけじゃなくて、もしかして『Fate/』の英雄王ギルガメッシュの能力と肉体を与えたって事?
エアは呆然としてる俺達を放っておいて、黄金に輝く魂を人の形に顕現させた。
エア「さあ、出て来な。
黄金に輝く魂は、光り輝きながら人の身体を形成していき、そしてその姿を現した。
?????「ーーーふぅ、漸くか…」
その姿は、金髪のロングヘアに赤眼の瞳。黒いシスター服を身に纏い、胸元には金のロザリオが提げられている。
……………はい、どう見ても姫ギルです。ありがとうございました。
ただし所々が違う。金髪だが、その先端に赤いメッシュが入っている。
そして眼は確かに赤眼だが、右目は紅色に対して左目は翠色をしている。
閻魔大王「えー、マジかよ…」
ハーデス「そんなのアリか……?」
俺達2人は、エアの子の容姿を見て少し引いてしまった。
?????「ぬ?なんじゃ、貴様等は?」
閻魔大王「……(口調は違うのか…)」
ハーデス「……(というか姫様口調?)」
俺達が呆然とその子を見ていると、横からエアが割って入り、その子に挨拶をした。
エア「おはよう、ギルガメス」
ギルガメス「ん?あぁ。おはよう、父上」
エア「さっきも話したけれど、お前はこれから異世界に転生するんだ。良いな?」
ギルガメス「うむ、構わん。それで其奴等はなんじゃ?」
その子ーーーギルガメスは俺達を指差してエアに聞いた。
エア「ん?ああ。彼等はお前の転生を行ってくれる者達だ。銀髪がハーデス、黒髪が閻魔大王だ」
ハーデス「あ、ああ。よろしく」
閻魔大王「…よ、よろしく」
ギルガメス「うむ、よろしく頼むぞ!」
俺達は少し気圧されながらギルガメスと挨拶を交わした。
するとエアが横から俺の肩を叩いて来た。
エア「なあ、少し良いか?」
閻魔大王「ん?何だよ?」
エアは少し真剣な表情をして話し始めた。
エア「実はな、お前にはギルガメスに着いて行って貰いたいんだが…」
閻魔大王「はっ?…いや、無理だろ。俺は地獄を治めなくちゃいけない。幾ら何でも流石にーーーー」
エア「おっと、こんな所にオシリスの坊やからの伝令書が…」
閻魔大王「ーーーー無理…………は?」
俺はエアが差し出して来た紙を見ると、そこにはオシリスからの命令が書かれていた。
『ヤマラージャーー閻魔大王へ。
今日付で地獄の統治者から解任する。
オシリスより』
閻魔大王「……………ナニコレ?」
エア「まぁ、という訳で頼むぜ!」
エアは中々に良い笑顔で何やら口走っていたが、俺の耳には全く入らなかった。
そして、ふと後ろから服を引っ張られる感覚がして振り返ると、ギルガメスが俺を見てアレコレ言い始めた。
ギルガメス「良いか、閻魔。お主は今から妾のパートナーじゃ!今後は妾の手となり足となり、頑張るのじゃぞ!!」
閻魔大王「えっ?……マジで?」
俺は動揺しまくりの視線を泳がせてハーデスさんに向けると、ハーデスさんは同情めいた表情を見せていた。
ハーデス「うん、ガンバ…………」
閻魔大王「えっ?いや、えっ?うそ!」
ギルガメス「ーーーさあ、行くぞ!」
ギルガメスは焦る俺を引っ張り天獄門に向けて歩き出した。
エア「行ってらっしゃぁーい!」
ハーデス「取り敢えず、いってら………」
エアもハーデスさんも、俺を救う気は微塵も無いらしい。
閻魔大王「えっ!?ちょっ、マジでか!」
ギルガメス「さあ!ギルガメス、参る!」
そして俺はギルガメスと共に天獄門を潜り抜けた。
ーーーー閻魔大王sideoutーーーー
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『地獄門』
異能の能力を持つ者だけが通れる門。何処に繋がるかは分からないが、大抵は魔界か人間界に繋がる。
『天獄門』
人間だろうが神だろうが悪魔だろうが誰でも通れる門。この門は、他の門と違って次元を超えた世界とも繋がる。何処に繋がるかは本当に誰も分からない。