俺の家が幻想郷   作:十六夜やと

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 いやー、必修科目落としましたわ( ゚Д゚)
 ストレスも含めて精神ガタガタで、突拍子もなくオリジナル作品のプロローグを書き上げましたわw
 そのうち投稿できるといいですね(・∀・)


24話 竜の門

 遠出をするのに準備が必要なのは万国共通の認識であり、自分の家を約一週間離れるとしたら、家の戸締りやら電気・ガス・水道の確認は必須事項である。

 特に一人暮らしの長い俺には常識なのだが、今回の遠出に後半の確認動作は必要なかった。

 むしろ家に一週間分の食料を置いていく暴挙。何も知らない第三者視点なら「コイツ馬鹿なんじゃねーの?」と思うこと間違いなし。

 

 家の玄関で着替えなど一式を詰めたスポーツバッグを肩にかけ、バッグのサイドポケットから二人の幻想郷住民がワクワクした表情で顔を覗かせていることを確かめ、俺は宙に浮いている紫に振り向きざまに声をかける。

 他にも霊夢やレミリア、さとりなどが見送りに来ていた。

 個人的に珍しい組み合わせだが、着いて来る奴が奴なだけに納得はしている。

 

「――んじゃ、家のこと頼んだぞ。水道出しっぱなしとか、電気のつけっぱなしだけは勘弁してくれよ?」

「えぇ、ちゃんとこの家は幻想郷の賢者の名に懸けて守っ――」

「何度も同じこと言わなくても、子供じゃないんだから理解してるわよ」

 

 紫の堂々とした宣誓が、霊夢のプライドによって簡単に邪魔される。

 引きつりながら張本人を睨むスキマ妖怪と、どこ吹く風の博麗の巫女の姿に、カリスマが若干不足している方の吸血鬼と地霊殿の悟り妖怪の二人は溜息をつく。やべー方の吸血鬼と無意識幼女はクスクスを笑っていたが。

 そんな様子だから心配になるんだけどなぁ。

 

「ったく、これならALSOKの方が安心できるっての……」

「何? 喧嘩売ってんの?」

「じゃあ霊夢は吉田沙保里に勝てんのか?」

 

 勢いづいていた霊夢態度が霊長類最強の名によって止まる。

 この名前には玄関にいる幻想郷の住人全員が渋い態度を示した。彼女の試合の様子を映したニュースと動画サイトで見せたALSOKのCMを思い出したのだろう。

 特にかりちゅま吸血鬼のレミリア・スカーレットは「吉田……沙保里……三人……」と顔面を真っ青にしていた。この前新聞にALSOKの広告があったから、適当に吉田沙保里選手のところを切り取って自立できるよう補強し、紅魔館の庭に立て掛けたのがトラウマになってるのだろう。

 

 霊夢は冷や汗をかきながら「む、夢想天生だったら一人なら……」と呟いている様子に、彼女に対抗できる霊夢が凄いのか、規格外の能力を持つ幻想郷民と対抗できる吉田沙保里選手が強いのか分からなくなった。おそらく後者ではないかと予想するが。

 というか彼女を複数形で戦うことを想定するな。CMに影響されすぎ。

 

「はぁ……まぁ、いいや。紫、よろしく頼むよ」

「え、えぇ……」

 

 未だに霊長類最強の名に怯える面々。

 こんな様子で大丈夫なのか。俺は自分の家を離れるのが物凄く心配になった。

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

 三つほど駅から離れた隣町にやって来た俺とこいし&フラン。

 降りた駅から徒歩二十分に立ち並ぶ寂れた商店街の一角、一見どこかの事務所に繋がるコンクリートの地下へと続く階段の先に、龍慧が経営する『竜の門』がある。ここまで人気の少ない目立たない場所じゃないと学校側に見つかってしまう恐れがある、と経営者が語っていた。

 無人駅の改札近くの箱にチケットを投げ込み、鞄をあまり揺らさないよう歩く。

 

「えっと……ここら辺に……」

「誰か待ってるの?」

「あぁ、さな――」

「紫苑君!」

 

 太陽の光が当たらないよう鞄の中から声を発するフランに説明しようとしたとき、背中から俺の名前を呼ぶのが聞き取れた。

 声だけで誰かを判断できたので振り返る。

 

 そこには私服姿の早苗が走って来るのが見えた。

 LINEで『龍慧んとこに押し入る奴いる?』とグループに呼びかけたところ、なんと早苗が『行きたいです』と立候補してきたのだ。風祝の仕事がテスト期間前後になかったそうなので、友達の家で勉強すると親に言って来たらしい。うん、嘘はついてないな。

 服装は……えっと、今どきの女の子らしい上着とスカートだ。

 

 え? 服装の詳しい説明?

 俺に現代ファッションの話を振るな。伊達に未来から「ファッションセンス皆無。むしろマイナス振り切ってプラスに見えそうだがマイナス」と評価されてる俺じゃないわっ!

 それくらい現代のファッションには疎い。今着てる服だって未来に見繕ってもらったもんだぜ?

 

「待たせてしまいましたか?」

「いいや、俺も今来たところ。龍慧が飯買って来て待ってるらしいし、早くアイツん店行こう」

 

 人通りの少ない歩道を二人並んで歩いて龍慧の店へと向かう。

 途中コンビニに寄ったりもして時間が少しかかったけれど、俺には慣れた道だったため迷うことなく龍慧のへと通じるコンクリート製の階段前に到着。まだ真昼間なので看板も外に出しておらず、明かりもついていないため早苗が怖がっていたのは微笑ましかった。

 俺は躊躇せずに階段を降り、早苗もその後に続く。

 

 木製の扉を開けてカランカランと鈴の音色が響く中、薄暗い秘密の隠れ家的雰囲気を意識した、小奇麗な店内に足を踏み入れた。木製の椅子や机、ニスが照り輝くカウンター席に早苗は店内をじっくり見渡していた。

 彼女には新鮮かつ大人な雰囲気の場所なんだろう。

 ただの怪しい取引現場に使えそうな場所だよね

 

「紫苑、やっと来ましたか」

「うーっす」

「「うーっす!」」

 

 カウンターの奥から出てきたスーツ姿の龍慧に俺が適当な挨拶をして、幼女組も似たような挨拶をする。

 それに対して龍慧は胸に手を当てて礼儀正しくお辞儀をした。こういう態度が様になっているから、実年齢より上に見られるのではないだろうか?

 ぶっちゃけ俺達は彼女等より遥かに下なんだが。

 

 俺と早苗は龍慧に案内されてカウンターの奥へと通され、備え付けのエレベーターで地上に上がる。

 地上二階には生活感漂う空間が広がっていた。畳の敷かれた居間が龍慧や俺達が一般的に使うたまり場で、必要最小限の設備が秘密基地感を漂わせている。

 一階に入り口作らないのかと前に聞いたところ、「以前はあったのですが、少し組での厄介事が――」の部分で聞くのを止めた。深く聞いたら大変なことになると、俺の第六感が警報をガンガン鳴らしていたからだ。限りなくアウトに近いアウトだろコレ。

 

「す、すごいですね……」

「ここ来るの久しぶりだなー」

 

 入り口で靴を脱いで居間に上がる。

 16畳の畳が敷き詰められた空間は広々としており、ここの他にもキッチンや風呂場が別にあるのだから、秘密基地と言うには少々広い。

 荷物をそこら辺に置いた俺が折りたたまれた机を広げている間に、旅行鞄を適当な場所に置いた早苗はここの観察を行い始めた。

 

「ここの管理は龍慧先輩が?」

「あぁ、アイツ名義で借りてるぜ。株で儲かった分を維持費に費やしてるとか」

「やることが壮大ですね……」

 

 その株に俺も一枚絡んでいるのは内緒だ。

 いやー、株って結構儲かるんだな。初期投資がないから俺個人で始めるつもりがないし、そういう金絡みの博打は好きじゃないのも理由だけれど、ここ買った方がお得なんじゃないかなーって株はいつも急成長する。そういう意味で絡んでいるわけだ。

 ちなみに利益の一割を龍慧から貰ってる。貯金してるけど。

 

 とりあえず机を組み立てることに成功した頃、龍慧と早苗がキッチンから薄い紙製の箱を持ってきた。もしかしなくてもデリバリーピザである。

 恐らく龍慧が事前に頼んでレンジで温めたのだろう。

 

「ピザかー。デリバリーとか何年ぶりだろ」

「私は初めて食べるんですけど……紫苑君はピザ食べないんですか?」

「いや、食うけど。自分で作ったやつ」

「ピザ作れるんですか……」

 

 指先で生地を回転させながら広げるのって簡単だし、あとは石窯さえあれば作れるじゃん。

 時々作るけど、幻想郷民来てからはご無沙汰だな。今度焼いてやるかな?

 机の上にピザや小皿、頼んだらしいポテトの山を添えて、人間三人と小人四人は手を合わせる。

 

 

 

「いただきまーす」

「「「「「「いただきまーす(だぜっ!)」」」」」」

 

 

 

 ………。

 

お前等どっから出てきた

「ん? 紫苑の鞄からだぜ?」

「マジかよ」

 

 さも当然のように机の上に鎮座するキノコ魔法使いと人形遣いの少女達。

 どうやら俺の鞄の中に潜伏してついて来たようだ。

 

「ようこそ、我が家へ。魔理沙嬢にアリス嬢」

 

 このような不規則な事態にも俺の様に頭を抱えることなく、龍慧は上品にピザを咀嚼し終えて彼女等の訪問を歓迎していた。後で紫に報告しとかないとな。でも俺のタブレットって『永遠亭』とかに住む『姫様』って呼ばれてる奴が持ってたような。

 どうでもいい話だけど龍慧と早苗って上品に食べるんだよなぁ。ちゃんと左手を添えながら食ってるし、他の俺含むアホ三人みたいに豪快に食わない辺り、これが育ちの差なのかと実感させられる。させられるだけで俺は他二人のように真似することなく右手のピザを縦に折り曲げて零れないよう食らう。

 

「――で、何時まで勉強する?」

「――私は個人的に数学の復習がしたいです」

「――テスト範囲ってP18からP54までだよな?」

「――今晩の晩ご飯は任せました」

「――それノートからの出題が基本らしいですよ」

「――国語の古典が鬼門ですね」

 

 などと人間勢はワイワイと勉強やら晩飯について話し合い、

 

「――ここの探査とかしたーい」

「――眠くなってきた……」

「――アリス、ここドラクエあるらしいぜ!?」

「――これ美味しいわ」

 

 幻想郷民も彼女等で楽しそうに御喋りをしていたのだった。

 とりあえず分かったことは――晩飯は俺が作るらしい。

 

 

 

   ♦♦♦

 

 

 

「ふぅん……家主さん行ったのね」

「そのようですね」

 

 白玉楼は死者の漂う冥界にある――が、今は明かりのついていない部屋の一室に構える屋敷。四季の彩る美しい光景は見ることが出来なくなったものの、『クーラー』と呼ばれる機械によって夏や冬でも快適に過ごすことが出来るようになった。

 私――魂魄妖夢は、主の幽々子様が家主さんの外出を確認すると、思わせぶりな表情で白玉楼の縁側にゆったりとした態度で扇子を仰ぐ。あれは何かしらを企んでいるときの顔だ。ひとまずは彼女の後ろに待機しておく。

 白玉楼内の明かりだけが光源の部屋は不気味なまでに静かで、目を細めながら窓の外の月を眺める幽々子様に、私は何を考えているのかを探るために尋ねた。

 

「彼がいることに不都合でも?」

「そう、ね……。確かに不都合だわ」

 

 パタンと扇子を閉じる。

 

「幻想郷では紅霧異変というものがあって、その主犯は紅魔館の吸血鬼だった」

「はい」

「じゃあ、紅霧異変の次は何があったかしら?」

 

 吸血鬼達の起こした異変。

 確か次は春が来なくなる――

 

「――あ」

「そうね。彼女達が模倣してくれたのだから、私達もそれなりのやり方で異変を模倣するのが正しいと思うわ」

 

 でも……と幽々子様は目を伏せる。

 言いたいことは分かった。

 

「あんまり家主さんに迷惑をかけるのも考え物だわ。でも、相応の規模で行うのが異変の主犯としての義務だと思うのよ。仮にも幻想郷が新しい形で存在し、弾幕ごっこを廃れさせないためにも」

「しかし、ここには西行妖は……」

「えぇ、だから家主さんに用意してもらったの」

 

 幽々子様は優雅に微笑む。

 その瞳には何を映し、何を考えて行動するのかを知ることは出来ないが、白玉楼の庭師として幽々子様の助力を行うことは当然のことだ。

 その微笑みを崩した幽々子様は、今度は眉をひそめる。

 

「西行妖は良いとして、問題は雪……」

 

 窓から見える月。

 どうやら今夜は満月のようだ。

 

 

 

 

 

「どうしようかしら、ねぇ……」

 

 

 

 




裏話

早苗(三つ並べた布団の端を譲ってもらったけど、隣は紫苑君……緊張するなぁ。もももも、もしかして夜這いとかされたりっっっ!!??)|д゚)チラッ
紫苑「ZZzz……」(爆睡)
龍慧「ZZzz……」(爆睡)
早苗「そんなわけないか」
こいし「(・∀・)ニヤニヤ」

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