俺の家が幻想郷   作:十六夜やと

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 更新が遅れてすみませんでしたm(__)m
 こんなタイトルですが内容を読めば理解できるかと思います。

 ……イベントなら是非もないよねっ!





3章 春雪異変?~西行オリーブの木~
23話 忌まわしき祭典


 まだ入学して半年も経っていないけれど、前期の中盤に差し掛かってくる現在、この高校の生徒は非常に頭を悩ませる時期であることをご存知だろうか? いや、学生だったことのある方ならば嫌でも経験のあるビッグイベントが到来することを察するだろう。

 恐らく全国の大半の高校生が嫌いな行事。

 

 

 

 

 中間テストであるっ!!

 

 

 

 

 まぁ、こればっかりは避けることが出来ないので、おとなしく勉強するなり、部屋の隅っこでガタガタ震えるなり、カンニングペーパーを作成するなり……それぞれの方法で乗り切るほかないだろう。それが今後を左右する『評定』に大きく影響することを頭に入れるべきだが。

 この時期になると一学年の教室前の廊下は大きく賑わう。

 そりゃ高校入学試験以来初めてのテストなわけだから、不安やら動揺やらを隠しきれないのは理解できる。そんな時間有ったら勉強するのが一番賢い選択であり、明らかに頭良さそうな連中は自学自習に取り組んでいた。

 

 当の俺もテストは好きじゃない。

 中学時代も試験はあったのだから、それと同じ感覚で挑めばいいのは当然だ。適当に試験範囲を勉強して、分かるものは解けばいいだけの話。

 テスト勉強をしていることが前提ではあるけどね。

 

 さて、テスト期間が迫っているということは、部活動休止期間に差し掛かったと受け取ってもらって構わない。勉学が本分の高校生活なので、それを阻害する要因は排除しておこうという学校側の粋な計らいである。余計なお世話と思う人も少なくないだろうけど。

 じゃあ俺の所属している美術部が活動休止するのか?

 ぶっちゃけ駄弁るだけの部活を貴重なテスト期間を使ってまで行うことなのか?

 答えは否だ。どう考えても奨学金を受け取っている俺が優先すべきなのはテストであり、こんなしょーもない部活に通う理由が

 

 

 

 

 

「おいおい、兼定なんでカレスコつけてんだよ。☆5イベ礼装はよ」

「紫苑だって何でイベントボーナスの鯖をサポート設定してないのさ。周回回数が増えるんだけど」

「不満あンなら龍慧の孔明でも使ってろ」

「お、イベ礼装落ちました。今日は運がいい」

 

 

 

 

 

 そんなことはなかった

 いつものように放課後は美術室に集まり、今回は某ソシャゲのイベント周回をしていた。この四人は同じゲームをしているので、こうやって協力(?)をしながらイベント完走を目指している。安心と信頼の無意識幼女が見えるように机にスマホを置きながらプレイしているのだ。

 え、テスト?

 イベント期間と重なったのが悪い(暴論)。

 どうせテスト期間間近でバイトのシフトは入ってないし、幻想郷の住人達の騒音をBGMにテスト勉強をすればいいだけの話。

 

 いつも通りゲームで遊んでいると、扉の開く音がした。

 こんな部室に入ってくる人間なんて限られてくるが、今回ばかりは割と驚いた。

 

「こんにちは……」

「ん? 早苗か。テスト期間中だから来ないと思ってたぜ」

 

 尋ねて来たのは我が部活の紅一点。

 守矢神社の風祝の東風谷早苗さんだ。部活動をやっているか分からなかったから、小声の控えめな挨拶で入ってきたのだろう。

 

「えっと……何をしているんですか?」

「「「「ゲーム」」」」

「そう、ですか……」

 

 なんだその『あぁ、いつもの彼等だ』と言いたげな表情は。

 もしかしたらテスト勉強をしている可能性だってあったはずだろ!? ノートや教科書なんて一冊も開いてないから説得力皆無ですけどね!

 ……あと確証は持てないが、今日の早苗は元気がないように見える。時々遠くを見つめたり、切なそうな顔をすることがあるため、言い切ることはできないけど、それを差し引いても違和感を覚える。あの初対面の絶望的なオーラを醸し出していない分、遥かにマシではあるが。

 

 特徴的な緑色の髪を揺らしながら俺達の輪に近づいてきた彼女は、俺の隣の席に座りながら荷物を床に置いてはいるが視線を合わせようとしない。

 しかし、それは数秒のことであって、意を決したように早苗は俺に尋ねてくる。

 

「……その、テスト期間中の部活動の話なのですが」

「あぁ、そう言えば早苗には説明していなかったな」

 

 どこも同じかもしれないけれど、我が校のテスト期間中における部活動は例外を除き全面的に禁止されている。あ、テスト期間前の『休止』とテスト期間中の『禁止』は違うからな? 簡単に説明すると、全国大会間近とかでもない限りは、テスト期間中に部活動はしちゃいけない決まりになっている。

 これは美術部でも同じだ。

 高美展(K高校美術展の略。野球の甲子園予選みたいなもん)に参加するような技量を持ち合わせていない俺達には関係ないので、もちろんテスト期間中に部室の使用は出来ない。

 

 なんてことをソシャゲをする手を止めず説明すると、予想だが受け入れがたい……という曖昧な表情を浮かべた。その表情で俺等は察する。

 早苗と家の関係だ。仲がすこぶる悪い。

 だからテスト期間中は部活がなければ家に戻らないと行けないことがショックなのだろう。しかし、俺は言わなければいけない。

 

「つわけでテスト期間中の部活動は中止。なんせ部室が使えねぇし――」

「そう、ですよね……」

「――って思うじゃん?」

「え?」

 

 俯きかけていた早苗が顔を上げる。

 いや、ね? この部活に常識なんて通用しないんだよ?

 

「後でLINEのグループ招待と同時に送るんだけど、この部活には『第二部室』ってのが存在するわけですよ。正確には俺達がオフで集まる場所で、中学の時にはテスト期間中にそこで勉強したり遊んだりしてる」

 

 正式な活動じゃないからこそできる荒業。

 名ばかりではあるが――口実には最適だろう?

 

「そんな場所があったなんて……!」

「本当ならば紹介制でしか入れない場所なのですが、早苗さんなら気兼ねなく来てもかまいません。……私の経営しているショットバーですが」

「え゛」

 

 実はこの胡散臭い龍慧は、その胡散臭さに見合うアウトすれすれのアウトな事業を裏で展開している。様々な人間から胡散臭い言われ続けて吹っ切れたと言い換えてもかまわないが、身長も高くコンビニで身分証明書を見せなくても酒が買えそうな外見のコイツはショットバーを経営しているのだ。

 高校生が飲酒関係の店の経営が出来ないのは知ってはいるが、そこんところを詳しく聞くと日本の裏を知りそうになるので詳しくは俺も聞いてない。

 偽名戸籍偽装はデフォルトとか本当に高校生かよ。

 

 少なくとも表立って宣伝できない如何わしいお店を経営している龍慧に、守矢の風祝さんは引きつった表情を浮かべていた。バラされた龍慧にいたっては「それがどうしました?」と言いたげに首を傾げている。

 さすが美術部一の腹黒男。

 

「だから早苗ちゃんが心配してるであろう長期休暇期間も部活動は行えるのさ。龍慧が捕まらない限り」

「そうヘマはやらかしませんよ」

「知ってるか、秘匿は公開に劣るんだぜ?」

「待って下さい兼定、マジで洒落になりませんから」

 

 とか言いながらもソシャゲを動かす手を止めない俺達。

 早苗の表情に若干の笑みが戻ったところで、話題を変えるように俺の携帯を覗く。

 

「……ところで皆さんは何のゲームをしているのですか?」

 

 基本的に美術部で行われる俺達のゲームは、ボードゲームやカードゲームなどのデジタルに頼らない遊びが多い。部活外ならオンラインでプレイできるゲームをふんだんに使用するのだが、どーせ学校にゲーム機を持ち込めないなら、そういうのに頼らない娯楽を全力で遊ぶのも一興……という考えからだ。

 だがスマホは持ち込めるので、イベントとも重なったことも踏まえて、今回はソシャゲで遊んでいるわけだ。

 それが早苗には珍しく映るのだろう。

 

 未来が今回遊ぶ道具を持ってこなかったせいでもあるが。

 お前さー、昨日バスケットゴール持って来るって言うたやん。

 

「最近流行っているスマホのゲームなんだけど……早苗ちゃん知らない? テレビでもCMが放送されてたり、Twitterのトレンドとかにも挙がったりするんだけど」

「ごめんなさい、私そういうのに疎くて」

「オマエってそういうの知らなさそうだよな。スマホは持ってンだろ? 紫苑に教えてもらいながらインストールしてみろよ」

 

 電話するときに早苗がスマホを持っているのは知っていた。

 あんまり使いこなせていないよう見受けられていたが、話題作りや新しいジャンルの遊びを教える意味も込めて、兼定は不器用ながらも早苗に指示を促す。

 ガラケーからスマホに乗り換えたばかりのおばちゃんを彷彿させる操作で画面を弄る早苗に、俺は自分のやっているゲームのインストール方法をこいしと一緒に教える。ぶっちゃけ俺より無意識幼女の方が教え方が上手かったように見えるのは気のせいだろう。そうだと思いたい。

 補足だが、このゲームを幻想郷民も俺のタブレットでやっているという噂もある。どっかの姫様らしいけど……誰なんだろう?

 

 このゲームはインストールと更新の時間が長い。

 というわけで待ちながら軽い雑談。

 

「――ってなわけでさ、俺はテスト期間中は龍慧のとこでお世話になるぜ」

「こいしさんとフランさんも着いて来るそうですよ。私のバーが賑やかになるのは大歓迎です」

「あれ? 幻想郷……紫苑君の家から長期間離れるのは大丈夫なんですか? 以前霊脈がどうのこうのって話を耳にした覚えが……」

 

 その話は麻雀のときか? よくもまあ覚えてたもんだ。

 

「幻想郷の賢者様曰く、俺の身体には長い間霊脈の上で暮らし続けてきたせいなのか、よく分からん不思議パワー的何かが流れてるらしい。それのおかげで数日ぐらいなら俺の近くにいることが条件で、紫が手を加えなくても家の外に出ても大丈夫とか言ってたぞ」

「不思議パワー的何かって曖昧だなオイ」

 

 兼定に正論なツッコミを頂いたが、俺は肯定も否定もせず肩をすくめた。

 紫の説明は現代の高校生には理解できない単語の羅列だったため、俺自身が納得できる言葉に変えて皆に説明しただけだ。彼女は一生懸命に『俺の家の真下にある霊脈の凄さ』を語っていたが、んなこと俺に言われてもしょーがねーだろうが。

 俺の身体の状態が『常時博麗大結界を持ち運んでいるようなもの』とか言われてもさっぱりだし、凄くても自分で自由に使えない力とか意味なくない?

 

 その説明してる時に同席していた霊夢の顔だけは忘れはしないけどね。

 ソウルイーターのエクスカリバーを見るような表情をしていたと言えば分かりやすいだろうか。知らない人はぜひ検索してみて欲しい。

 ひどく曖昧な説明をした自信があったけど、早苗はそれを聞いて逆に納得したように頷いていた。

 

「確かに紫苑君に会った時から、なんか不思議な雰囲気な人だなーってのは思っていました。他の人と在り方が違うというか、纏っている霊力が違うというか……」

「え、マジ?」

 

 ……もしかして俺ん家って意外に凄いのか?

 そこらへんを詳しく尋ねようとしたタイミングで、早苗のスマホのゲームがインストールを終える。

 『俺ん家の謎<ソシャゲの勧誘』なので思考を切り替えた。

 

「ここをこうすると……そうそう、ゲームがスタートする」

「あ、本名は入力しないほうがいいよ! これ不特定多数の人間に見られる名前だからハンドルネーム……うん、あだ名みたいなものを入れるべきだね」

「料金は発生すンのかって? 基本はスマホゲーは無料だ。特にこのゲームは時間さえかけりゃあ、最後まで遊べるンだぜ」

「これがソシャゲ名物の『ガチャ』というものですよ。……はい、最初は高レア確定なので初心者は安心して序盤を進められます」

 

 古参勢は新規に優しいからね、ゲームにもよるけど。

 でも……共通のゲームをみんなで情報交換しながらワイワイやるのって楽しいよね? 少なくとも俺はそう思う。

 特に龍慧(廃課金勢)のガチャに関する厳重注意は見物だった。経験がここまで説得力を生む例として感想文が書けるくらいには。

 

 こうして今日の部活動は新規の早苗を入れてゲームをするのでした。

 テスト前なのにな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この諸葛孔明さんとオジマンディアスさんとジャックちゃんって強いんですか?」

「十連で☆5鯖3体……何なのこの子」

「☆5排出率って1%だったよな?」

 

 ジャックに50万円溶かした龍慧は白目を剥いて倒れたそうな。

 

 

 

 




裏話

某姫様「え、ちょ!? バーサーカー狙わないでよ!」
某医者「姫様、どうなされました?」
某姫様「FGOやってるんだけど……あー! 私のマシュちゃんが……(´;ω;`)」
某医者「……(´・ω・`)」

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