・作者の妄想から生まれた作品
・痛々しいまでの中二病表現
・拙い文章力
・達観したオリ主
以上の要素が苦手な方はブラウザバックすることをお勧めします。
それでもよろしければ、ゆっくり楽しんでいってくださいm(__)m
プロローグ
世の中には不思議なことがある。
科学的には説明できないような出来事など、よくTVで見ることもあるし、雑誌などで紹介されることもある。その大半が捏造であったり、夢幻であるなんて数えきれないが、それでも非科学的な実証不可能な現象は存在する。
まぁ、そんなことは普通の高校生である俺――
確かに俺の人生は普通とは言い難い。
小さい頃に両親を事故で亡くし、一人で住むには広すぎる二階建ての一軒家を拠点とする高校生。そして預けられた義理の父母が奔放的で海外で働いているせいか、自分のことは大抵一人でこなす『やけに達観した奴』と見られることもあったな。
奨学金やら保険やら遺産やらバイトの収入で不自由のない生活をしているが、それでも周囲の人間からは腫れ物でも扱うような立ち位置となっていた。自分がそう思ってなくても『親のいない可哀そうな奴』ってレッテルを勝手に張られているせいだろう。小・中学校では非常に苦労した。
普通に接してくれる友人なんて……昔から付き合いのある、あの
辛くなかったと言えば嘘になる。一人というのは正直寂しい。
けど、支えてくれる連中がいたから今の自分があると断言してもいいだろう。ソイツ等の前では口が裂けても言わないけど。
普通とは言い難い俺の人生。
だが、非科学的かと言えば……違う気がする。
不謹慎かもしれないが、小さい頃に親を亡くした経験のある子供が俺だけだとは限らない。国……いや、県内でも数人くらいは見つかるんじゃなかろうか。非現実的であろうが、非科学的ではない。
ならば何が普通ではないのか。
何が非科学的なのか。
そう、例を挙げるとすれば――
「――私の名前は八雲紫。以後お見知りおきを」
現在進行形で起こっている現象だろうか?
状況を説明しよう。
時計が0時過ぎを差している時間帯に俺は二階の自室で勉強をしていた。
教科は物理。お世辞にも得意教科なんて言えないし、ぶっちゃけ勉強なんざしたくない。しかし、課題をこなさないと奨学金を打ち切られる可能性があるし、何より担当の先生が煩い。
音楽をかけながら見たくもない数式を解いているときに、その人物は現れた。否、声だけが聞こえた。
唐突だからなのか、面倒な物理の課題を解いてるからなのか、反応が遅れてしまったのは言うまでもないだろう。訓練された軍人じゃあるまいし、想定外のことに瞬時に対応できるほど常識から外れてない。
「初めまして、夜刀神紫苑さん」
発せられた声は耳を刺激し、どこから聞こえたのかと周囲を見渡した。
しかし、人の姿は見当たらない。
当たり前だ。俺は独り暮らしなのだから。
幻聴かと首をかしげて勉強しようと机を向いたときに、また女性の声が聞こえた。
「こちらですわ」
刹那、俺の目の前に不思議な歪みが生まれた。
いくつもの『目』が奥に見える気持ち悪い歪みの中から、その声の主が現れる。
妖艶な美を醸し出す大人な女性。金髪の長い髪を靡かせて、俺の机の上に現れたのだ。状況が状況なら惚れてしまうかもしれない、美しい女性。
怪しげな笑みを浮かべた彼女は、手に持っていた扇子で口許を隠しながら自己紹介をする。
つまり先程の台詞だ。
「……え?」
「驚いているようね。無理もないけれど」
見下ろす俺に、見上げる女性――八雲紫。
俺は我が目を疑った。
ん? なんか描写がおかしい?
確かに『机の上に目を向けている』俺が『目の前の歪みから出てきた女性』と普通に会話すること自体がおかしいが、今は空間的問題があった。つまり女性は『机の上』にいるのだから、俺が見下ろすのは常識的に考えて間違っている。一般女性の身長が何センチなのかは知る由もないが、少なくとも目の前の女性は俺と同じくらいの身長をしている。
八雲紫さんが机で正座してても、視点は彼女が上になるはずだ。なのに描写は俺が見降ろす形。
ならば作者のアホが描写をミスったのか?
いや――今回はそうじゃなかった。
「……なぁ、色々聞きたいことがあるんだけど、一つだけ最初に質問に答えてもらってもいいか?」
「ええ、答えられるのなら」
では、早速質問しよう。
「――ちっさくね?」
「ですよね」
机に立つ身長7センチ程度の金髪美女は困ったように微笑んだ。
そう、俺は筆箱の横幅よりも少し大きい女性と会話してたのだ。
非科学的な現象云々よりも話し相手の身長を質問したのだ。これも現実では起こり得ない現象だから間違っている反応ではないだろうよ。本人は理由は後で話すと答えてくれなかったが。
課題の問三辺りに立つ女性に次は何を質問しようか迷っていると、八雲紫さんは深々とお辞儀をした。
どうも機械で出来てるようには見えない。
「実は貴方にお願いがあって来たの」
「お願い……?」
「初対面の相手に頼むことではないのは私でも分かるわ。それでも時間がないから貴方に頼むしかないの。つまり貴方以外にお願いできないことなのよ」
初対面で図々しいなって思わなくもないが、誠意を見せている八雲さんの頼みを却下できるかと言われたら、そこまで非情な奴ではない。この辺りで日付が変わっている弊害か、正常なリアクションが取れないでいるが、そこら辺は目を瞑って欲しい。
彼女の正体やらも気になったけれど、俺の前にわざわざ現れた理由を知りたかった。
しかし『願い』とは何なのか。
こういうときライトノベルでは『異世界の魔王を倒して欲しい』とか『転生する気ない?』なんて破天荒な頼みをするのが相場と決まっている。生憎、ここはラノベの世界じゃないから知らんけど。
俺にしか頼めないってことは、恐らく俺のできる範囲内の願いなのだろう。そうであって欲しいなぁ。
だから俺は聞いた。
わからないなら聞けばいい。
「お願いってのは?」
「簡単なこと……いえ、頷くのは簡単であるけれど、十中八九貴方に迷惑をかけてしまう事よ。でも頷いてくれないと――私はもう成す術がない」
んな悲痛そうな表情をしないで欲しい。
断れねーじゃんか。
「内容次第だと思うぜ。とりあえず教えてくれ」
「……わかったわ」
数分考えた後、決心したように八雲さんは頷いて、その願いとやらを口にした。
「ここに――幻想郷を作っても良いかしら?」
彼女の説明を簡単にまとめると以下の内容だ。
まず彼女は人間ではなく妖怪。しかも希少な種類の妖怪らしい。
そして彼女等が住んでいる『幻想郷』という場所は『現代から忘れ去られた者達の集まる楽園』なのだとか。現代社会で人々の記憶から消えた者や物が、俺達では目視することのできない幻想郷って場所に行きつくってさ。そして彼女は『幻想郷の賢者』とも呼ばれている創設者なのだと宣った。
そこで人とか妖怪とか神様とか住んでたらしいのだが、なぜか突然として幻想郷が崩壊してしまったのだと語る。八雲さんですら原因が分からず、それどころか原因を見つける暇もなく、彼女の作った幻想郷は跡形もなく消え去ってしまったわけだ。事実だとしても流れが急すぎて頭が理解に追いつかんけど。
幻想郷がなくなったら、そこに住んでいる人々はどうなってしまうのか? もちろん消えてしまう。
彼女は残された力を振り絞って彼女の能力で救えるだけの住人を『スキマ』という空間に避難させた。しかし、これは一時的な処置。幻想郷に住んでいた人間は仮死状態となり、八雲さんのような有力者は存在を保てなくなり小人化してしまった。なるほど、彼女の姿にも納得だ。
さて、このままじゃいけない。
この状況を打破するには八雲さんの力を回復させる『霊脈』ってパワースポットが必要らしい。
けれども霊脈は簡単に見つかるほど都合の良いものではない。しかも日本に点在するパワースポットの大半が、観光スポットだったり危険地帯だったり、小人となった幻想郷の住人が暮らせる環境ではないとか。
途方に暮れて、もはや消滅すら覚悟した幻想郷の賢者。
だが彼女は見つけた。見つけてしまった。
「貴方の家はちょうど『霊脈』の真上に建っているの」
「マジすか」
俺の家は『霊脈』という胡散臭いパワースポットなのだとか。
やっと見つけた数少ない霊脈。しかも外敵から身を守る建築物の存在というオマケ付き。
彼女は賭けに出ることにした。
自らの存在を外の人間にバラすことになるにも関わらず、八雲紫は夜刀神紫苑の前に現れたのだ。
「なるほどね。つまり八雲さんの力が回復するまでの間、この家を『仮の幻想郷』として小人化した住民を住まわせてほしいってワケか」
「話が早い男の子は好きよ」
「お褒めに預かり光栄の至り。けど賭けにはリスクが大きすぎじゃないか?」
「えぇ、貴方が話のできる人間で助かったわ」
他の人間ならどんな反応をするのだろうか?
思考回路が睡眠を欲している現在では、実験体としてモルモット扱いみたいなマッドサイエンティストな考えしか思いつかない。
なんて考えていると彼女は深々と頭を下げた。
いや、膝までついて彼女は頭を課題プリントに押し付けたのだ。
つまり土下座。
「私にはこれしかできない。恩は必ず返します。どうか――私達を救ってくれませんか?」
俺は絶句した。事の重大さを今さら自覚したのだ。
人生16年。今まで苦労したし様々な経験もしたが、何十何百?それ以上の命の選択を突き付けられたのは初めてだった。そもそも重要な選択を今この時間に突き付けてくるのか。だから金髪美女に何と言葉を返せばよいのか迷った。
よく観察してみると、彼女の身体は震えていた。
助ける? 彼女は家を明け渡せって言ってんだぞ。
断る? 今の話を聞いて断れるかよ。
何秒、何分、何時間。体感では非常に長かった。
よくよく考えた後――俺は口を開いた。
「三つ、質問させてくれ」
「えぇ」
彼女は頭を上げずに肯定した。
「一つ、俺はこの家を出ていかなきゃならないのか?」
「まさか。私達は貴方の生活を邪魔するつもりはないの。ただ住む空間だけを与えてくれれば」
「二つ、このことは外部に漏らしてはダメなのか?」
「……もし知られてしまったら、物凄く困る」
……後から考えたら、俺は答えを簡単に出し過ぎたのだと思う。
だって日付変わってんだぜ? 眠くて頭が機能していなかったし、働いてない頭で考えすぎた。限界がそこに迫ってる。
それも彼女の計算ならば称賛に値するよ。
「三つめの質問なんだが――俺の家なんかで良いのか?」
「――っ! えぇ!」
遠回しの移住許可。
それに気付いた彼女は頭をバッと上げて、満開の花のようにきれいに笑った。
それ以降は記憶がない。
何を言ったのかも覚えてない。
とにかく眠ったことと、物理の課題が終わってないこと。
俺が目を覚ました時には日付が変わっていたのだから仕方のないことだろう。
付け加えるのならば。
ぶっちゃけ起きた時にはそれどころじゃなかった。
裏話
紫「ゆっくり、音を立てずに運ぶのよ……!」
全員「「「「「断る」」」」」
紫「コイツ等……」
霊夢「┐(´д`)┌ヤレヤレ」