大隊指揮官殿が鎮守府に着任しました   作:秋乃落葉

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プロローグ2

二人の少女、吹雪と夕立は話し合いの末、彼女らが長門と呼ぶ上官を呼ぶことにしたらしい。吹雪はここに残り、夕立が軍港へかけてゆく。

「今長門さんをお呼びしますから、ちょっと待ってくださいね、えっと・・・」

「何だね?」

「お名前、お聞きしてもいいですか?」

 そうか、まだ私は名乗りもしていなかったな。

「私のことは少佐と呼んでくれたまえ。以前の所属の階級だ。名は名乗らなくなって久しい」

「少佐さん、ですか・・・?」

 吹雪は疑わしそうな目でこちらを見ている。親衛隊に入って以来幾度と無く疑われたことだ。所属に疑いをかけられるのは最早慣れたものである。

「さて、お嬢さん(フロイライン)。よろしければ私に艦娘とやらが何なのか、ご教授願えるかね?君は海軍属の兵士か何かなのか?」

 彼女から発せられた『艦娘』という言葉。やはり一番気になる点はここである。

「兵士というか、その、私は特型駆逐艦一番艦の吹雪です」

「駆逐艦だと?それは、駆逐艦の乗員ということではなさそうだが、一体どういうことだね?」

「えーっと、だから私が駆逐艦の吹雪なんですが・・・」

 吹雪の説明は、このような感じで五分ほど続いた。根本の理解の違いから噛み合わぬ点が多く話が難航していたが、やっとのことで輪郭が掴めてきたようだ。彼女の話をまとめると、彼女達は人類の敵である『深海棲艦』に唯一対抗することのできる戦力であり、彼女達の中にも駆逐艦や巡洋艦、戦艦などの艦種の違いがある。そして深海棲艦の正体は一切不明であるということが、なんとなくわかった。

「深海棲艦、か。く、くく、クハハハッ!あッはッはッはッ!!」

 突然の高笑いに吹雪は狼狽しているようだ。だが、笑わずにいられようか?

「素晴らしい!全く持って素敵だ!やはりここは私の逝くべき戦場であった!敵は化物!深海棲艦!そうだ、そうでなくては!!」

 愉悦が抑えきれない。新たな戦争が、未知なる戦場が世界に広がっている!

「おーい、吹雪ちゃーん!長門さん達呼んできたっぽーい!」

 どうやら夕立が上官をつれて戻ってきたようだ。その後ろには黒い長髪の女と茶髪でショートカットの女の二人が見える。

「長門さん、陸奥さん!こちらの方です!」

「ああ、吹雪、ご苦労だった。・・・私が当泊地の現秘書艦である長門だ。御無礼を承知の上でお願いする。まず貴方の身体検査をさせていただきたい」

 黒髪の女、長門が私に言った。ということは茶髪の女が陸奥ということだろう。

「この島は全域が海軍の敷地だ。その格好は軍装のようだが、貴方の素性がわからない以上最低限の確認は確保させて欲しい。理解いただけるだろうか?」

「よかろう。当然の権利だ」

 長門はうなずいて、身体検査を始めようとする。

「武器の類は?拳銃など所持していれば先に出してくれ」

「そんなものは持っていない。当たった例がないからな」

 長門は少し釈然としない様子で検査を始めた。上半身を調べ、下半身に入ったところで、右ポケットから折りたたんだ紙を見つけたようだ。しかし、私自身この紙に覚えは無いが。

「中身を確認していいか?」

「どうぞ自由に確認したまえ」

 長門は紙を開き、何か書かれている内容を確認すると、あからさまに驚いた表情をしている。

「おい、陸奥・・・これを」

 長門はその紙を陸奥に手渡した。そしてまた陸奥も同様に驚いている。

「偽造された書類ではなさそうね・・・」

 なにやら小声でやり取りしている。それが二、三続いた後、急に彼女らは姿勢を正し、私に敬礼して見せた。

「大変失礼いたしました。ご着任、お待ちしていました、提督」

 陸奥が私に言った。提督だと?あの紙になにやら書かれていたようだが、いったい・・・。いや、ひとつだけ思い当たることがある。

「・・・あの男か」

 そうだ、思い当たることなどひとつしかない。ここに来る前に扉だらけの通路で出会った男。あの男しかいまい。あの男め、確かに、私の逝くべき戦場へ送り出してくれたようだ。

 敬礼している彼女らに対して、私もして返し、

「出迎えご苦労。では案内してくれたまえ。新たなる戦争の、その指揮をとるべき場所へ」

 こちらへ、といって長門が先導してくれるようだ。そうして彼らは軍港、『鎮守府』へと向かって歩き出した。

 

「・・・あの人が、ここの提督さんなんだね」

「・・・なんか、本当にやばい人っぽい?」

 


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