ギルド受付役として生きていく・・・が、ブラックだ 作:パザー
どうも、桜の木の下に埋められることが確定しましたパザーです。
一応10日以内に大体のは書けたんですけど、締め方に迷走して結局6000字超とそれなりに長くなりました・・・
ところで桜の木の下に埋められたら亡霊っていうか地縛霊的なのになってテレビデビュー出来たりするんですかね?
「なぜ、私なのだ?こういうのはアクアの専売特許だろうに」
件の屋敷へ向かう道すがら。ふとダクネスが口を開く。
昼前の陽気に当てられ、眠気が襲って来ていたちょうどいいタイミングで来てくれた。話がてら眠気覚ましだ。
「そりゃまあ、腐ってもクルセイダーだしな。お前」
「腐っても!?腐ってもとは何だ!ちょっとそこら辺の話を詳しく聞こうじゃないか!」
「じゃあ、ドMで変態なお前が腐ってない理由を簡潔に説明してみなさいよ」
「うぐっ・・・サクまでカズマの毒舌に当てられたのか・・・!?」
「そんなこたないさ。別に右手が痛くて少しばかり八つ当たりしてるとか、決してそんなのじゃない」
「いや確信犯だろ貴様・・・というか、その右手はどうしたのだ?ひどく丁重に手当てされてるが・・・・」
そう言い彼女は視線を落とし俺の包帯とガーゼで棍棒のようになった右手を見つめる。
正直、バカなぽかしてこんな大惨事になっただなんて言いたくない・・・
「・・・・あれだ。仕事柄って奴だ。うん」
「元冒険者だが、ギルド職員のはずだろう!?ハッ!まさか危ない裏稼業とかで・・・それでもししくじって敵に捕まってあんな事やこんなことを・・・!サク、お前にそんな危険な事は任せられな」
「何勝手に妄想はべらせた上に、自分の欲求満たそうとしてんだバカ!それに裏稼業なんてねぇよ!!」
「そ、そうか・・・・・」
露骨にしょげやがって・・・何を自爆しとるんだ。
荷物を粗方纏めた荷車を押しながらそんな他愛もない頭の悪い会話を繰り広げる。
街の喧騒を通り過ぎ、のどかな平野を抜け、小さな丘にたどり着く。すると、そこには日本で見た屋敷。それよりも数段広く、高い洋館があった。
洋風の石垣と鉄柵に囲まれた石造りの屋敷には長いこと放置されたのか、ツタが要所要所に絡まっている。
が、元の建造物の造形美と言うものの力だろうか。ツタという頭を抱える様な障害でさえも、洋館はオシャレに着こなしている。
「こんな屋敷を捨てるなんて貴族様ってのはまぁ・・・」
「あぁ・・・そうだな・・・」
「まっ、俺ら庶民が知ったこっちゃないな。悪いがダクネス、荷物下ろすの手伝ってくれ」
「・・・へっ?除霊は・・・・・どうするのだ?」
「そりゃもちろんするさ-------だが、ここをキャンプ地とするのだ!」
「幽霊屋敷に住むとは・・・中々にタフだな」
「?・・・・・もしかして、カズマ達から聞いてないのか?お前」
「・・・なんだか嫌な察しが付いたが、何をだ?」
「カズマ達・・・俺もだが、悪霊の風評被害が消えるまでこの屋敷を貸し出すってのが報酬・・・ならもう除霊しながらも、噂が絶えない様ないい塩梅で寸止めして、生涯のマイホームにするっつう寸法だ」
「ま、まさか・・・住むのか・・・・!?下手したら幽霊だらけの屋敷に・・・!」
「まぁそういうこったな」
そういうとダクネスは青い顔で頭を抱える。
幽霊がそんなに応えてるのか?意外や意外、だねぇ・・・幽霊を見ても新しい性の扉を開きそうなもんだが・・・・・
若干薄汚れた扉を開き、念願のマイホームの内装とご対面する。
照明は付いてないが、窓から差し込む日光が全容を照らし出し、おそろしく幻想的な空間を演出する。
大きなソファ並べられ、目下には様々な調度品に頭上では豪勢なシャンデリアが拵えてある。そして何より大きな暖炉。
煉瓦造りの壁に囲まれ、外の煙突と繋がっている暖炉が頼もしさと豪華さに更に磨きをかける。
「こいつはまぁ・・・豪勢なこって・・・スゲェ・・・」
「カズマやめぐみん達が向かった屋敷・・・というか私達の屋敷もこんな感じなんだろうか・・・それにしても、幽霊やそんな類のものは一切感じないが・・・」
そう彼女が言いかけた瞬間。頭上のシャンデリアに火が灯る。それどころか、所々にある細々とした照明にも明かりが。
だが、決してランダムで付いているわけじゃない。何処かへ誘う様に、道順を示しながら1つ、また1つと明かりが灯る。
「ヒィッ・・・!な、なんなのだこれは・・・!」
「何・・・・ってのは分らねぇが、行って見るほか無い・・・よな?というか、その為のお前だぞ。多少なりとは神聖な力的なアレ、頼りにしてるぜ?」
「うぅっ・・・い、嫌だ・・・・・!おばけ・・・・」
そう小さな、震える声で唸りながら俺の腕に泣きつくダクネス。
・・・ったく、こんな弱点が・・・・・しゃあなし・・・・俺が今ここで適当なスキルを習得するか・・・?
流石にそれなりに冒険者をやったんだ。適当な除霊か対亡霊、アンデッド系のスキル、1つや2つ習得可能になってるだろ。
▶︎エクスプロージョン
▶︎花鳥風月
▶︎ドレインタッチ
・・・おいおい。なぜに1面がネタスキルに染まってやがる。しかもドレインタッチなんてリッチーのスキル、習得したら何を勘ぐられるか分かったもんじゃないぞ・・・まだ、続きのページがあるな・・・えっと何々・・・
▶︎フリーズ
▶︎セイクリッド・クリエイトウォーター
▶︎ライト・オブ・セイバー
▶︎フローズンレイ
・・・実用性があるもの、揃えときました。じゃないんだよ俺の冒険者カードよ。なんかあるだろとか言ったけど、知ってるんだよ?
バッチリあの駄女神の『ターンアンデッド』見たから覚えられる筈なんだよ?どうしてこうも焦らすんだ全く・・・
そんな冒険者カードのイタズラに会いながらも何とかターンアンデッドの項目を見つけ出し、習得する。
久しく味わっていなかった、根本的な部分-------遺伝子や魂に新しく何かが刻まれていく感覚。一瞬で過ぎ去ったその感覚の後には何も残らないが、確かに習得できたのだろう。
「悪いダクネス、待たせた-----------何やってんだ?」
「お、お前がターンアンデッドを習得したなら、別にもう私は用済みだろう!?ほ、ほら荷ほどきとかあるだろうし、私はそっちに・・・!」
「申し訳ないけどよ・・・俺みたいな貧乏人にこんなデカイ屋敷の構造なんて分かったもんじゃないし、習得したと言ってもまだまだ未熟だ。だからこそ、クルセイダーのお前が来てくれるだけでありがたいんだが・・・」
「・・・・・?・・・・むぅ・・・分かった。付いていけば良いんだろう?・・・・・ホントに、付いて行くだけだからな?」
屋敷の入り口、扉の後ろで震えていた彼女が出てくる。ひどく怯えた姿に彼女がなんだかめぐみんやラヴィーの様に幼く見えてくる。
・・・本当に申し訳なくなって来た。何かしら埋め合わせ・・・・上等な酒・・・・いやこいつの場合は武具・・・いやいや・・・まぁ今考えてもキリがないか・・・
〜*〜
「-----------さてさて、ここに入れと」
「地下・・・結構広そうだな・・・・・」
床の取っ手がついた板を開けると、そこには下へ伸びる
冷気とともに、申し訳程度のランタンが確かにまだまだある先を示している。
コツコツと響く足音と空気の音だけが永遠と繰り返される廊下。歩き続けていると、ランタンの行く先はなんの変哲も無い壁の前。
いや、なんの変哲も無い、それは違う。うっすらと消えかかっているが確かに描かれた魔法陣と、それを彫ったのか、小さな凹凸が何とか見てとれた。
「な、なんなんだ?ここは・・・何も無いではないか・・・・」
「いいや・・・どうやら、なんかあるっぽいぜこの先・・・さてこの魔法陣・・・まいったな、俺もお前も魔法に関してはからっきしだってのに」
手持ちのランタンで座りながら色々と石壁を触っていじる。
だが、そこからは何も返ってこない。後ろで辺りをせわしなくキョロキョロと見回す彼女を尻目に冷たい石と悪戦苦闘する。
すると、俺の発言に何か引っかかったのか。彼女が口を開く。
「・・・ん?サクお前、魔法を使えないのか?」
「使えないって程じゃないが、精々10数種類。それも、魔法陣だったりの媒体がないと使えないのが殆どだ・・・それにしても、触れても魔力を注いでみても何の反応もない。しゃーなしか・・・啼け、『紅姫』」
「お、おい!まさかとは思うが・・・!」
「大きすぎず、俺たちが少し余裕を持って入れる程度に加減はするから・・・大丈夫だ多分!」
いつも通り、羽ペンから紅姫を起こし構える。
たかが石とは言え、どんな厚さをしてるか分かったもんじゃない。刃こぼれなんてしようものなら目も当てられない。
だからこそ、慎重に狙いを定める。
脳内でいくつも軌跡を描き、より良いものを取捨選択し続ける。
目を座らせ、息を吐き、腰を落とし、集中を針の様に尖らせる。
ピンと張り詰めながらも、脱力が最高潮に達した瞬間。
探訪の鍵を振るう。
「-------せいッ!!・・・・・フゥー・・・久々にこんな集中して斬ったな・・・」
「す、すごいな全く・・・お前の技術もさる事ながら、剣の方も凄まじい斬れ味だな」
「ん?あぁ・・・いい刀だろ?これ・・・・・っと、これはこれは・・・」
斬ったのが、床から少し離れた場所だったからだろうか。斬りつけた石は落ちてこず、未だに壁にハマっている様な状態で留まっている。
ダクネスの感嘆の声を背中で聴きながら軽い自慢をする。
そして石を取り去り、地面にゴトンと無作法に落とす。穴をランタンで照らすと、俺たちを出迎えたのは恐らく、6畳ほどだろうか・・・書斎とも研究室ともつかない、狭い部屋だった。
「そこらかしこに本や瓶が並べてあるな・・・どれもひどくボロボロだが」
「だな------それにこいつは・・・日誌か?・・・・・ん?」
各所の棚をガサゴソと漁りながら、部屋を探索していると、隅に小さな椅子や明かりだった物と、机の上に廃れた本を見つける。
----------いや待て、俺は今ナチュラルに日誌だと判断した。理由はそう書いてあるから。至極単純だ。だが、この文字はこの世界のじゃない・・・・・日本語、だよな?
『にっき』
と、汚いミミズが這った跡のような日本語が、確かに書かれていた。
色々となんだかキナ臭いが・・・中身の確認が優先かな。万一にでも罠があったりしたら事だし・・・
経年劣化なのか枯れ葉の様な感触のそれを手に取り、慎重にページを1枚めくる。時間がかかりそうだし、斜め読みで済まそう・・・そう、思い最初の1行に目を通す。
『この世界には、性玩具が足りないとおm』
「は〜〜っくしょお"お"お"ん"ん"ん"!!!」
・・・確信した。これ書いた奴は俺やカズマと同じ転生者。それに、3億パーセントロクな野郎じゃない。字も汚いし・・・・・だが、頭は働くらしい。
「サ、サク!?どうしたのだいきなり本を破いたりして!」
「あぁ、こりゃ・・・あれだよ。ホントはこの本はこの世界の物じゃないから、本来のあるべき姿に戻そうって言う、世界の修正力的なアレで本意ではないんだけど、クシャミの勢いで『偶然』引き裂いちまったんだよ」
「何なんだそれは・・・まるでめぐみんみたいな事を言うな、お前は」
「別に俺はそんなつもりは無かったんだが・・・まぁいい、ひとまずここを出ようぜ。結果、何も無かったわけだし」
「あぁ、そうだな。早く出よう。そう、早く!」
帰ろうと提案した瞬間、ダクネスが顔をキラキラさせる。
薄明かりの中だろうと御構い無しに彼女は背中をグイグイと押し、俺を先頭に出口へ戻る。
「・・・悪かった。無理させて、それも無駄足に終わって・・・」
「・・・ん?まぁ、たしかに怖かったが構わないさ。それに、お前の方が年上とは言え、私はクルセイダーだ。困ったお前から頼まれた事を断るわけもないだろう?」
(・・・こうしてれば、ホントに一世一代の聖女だのとか呼ばれそうなものなのに・・・・)
通路を抜け、ハシゴを登りながらそんな事を思う。
「ほれ、掴まれ」
「あぁ--------すまない」
先にハシゴを登りきった俺が彼女に手を差し伸べる。
勢いよく彼女を引っ張り上げる。
だが、勢いのせいなのだろうか。彼女の全身が上がりきる直前、何かガッと引っかかる音が鳴る。
「うわっ--------あっ--------」
「えっちょっ・・・なに・・・・ぷげぇ!」
引き上げたダクネスが、そのまま前倒しに崩れてくる。大きな屋敷の、広い廊下の弊害と言うべきなのか。周りに手をついて彼女を受け止めるなんて事も出来ず、無様な声を上げながら頭を派手に地面へ打ち付ける。
頭の痛みとは別に、胸板から伝わってくる柔らかい感触。
ここ最近で、何故だか味わう機会が嬉しいことに増えた感触だ。
「〜〜〜ッ!------だっ、大丈夫かサク!?」
置かれている状況を知覚した途端、ダクネスの顔が茹でダコの様に赤くなる。が、それよりもこちらの心配を先にし、上半身を持ち上げる。
重さから解放された喜びと、あの感触が離れた寂しさが同居する中、今度は顔周りを彼女の美しいブロンドの髪がカーテンの様に囲みこむ。
女性特有の柔らかな髪の匂いが鼻腔を刺激し、自然と全身を火照らせる。火照る体に比例する様に紅潮していく顔を感じ、唾を飲み込む。
少しだけ余裕を取り戻し、正面にある彼女の顔に目をやる。するとそこには混乱のせいかまるで見えていなかった彼女の顔。
鏡を見させられている様に、彼女の顔は俺と同じ様に目を丸くし顔を赤くしている。
「--------わ、悪い・・・っしょっと・・・んと・・・た、立てる・・・か?」
お互い、とても恥ずかしい状況に置かれていることを自覚しどうにか脱却しようとあたふたする。
床を蹴り彼女の髪の包囲網から抜け出す。そして顔を冷却する様に息を吐きながら立ち上がり、彼女に再び手を差し伸べる。
混乱が俺よりもひどいのか未だに四つん這いのままでいる彼女を半ば無理やり立たせる。
「あ、あぁ・・・すまない・・・ず、随分時間を割いてしまったな!は、早く本題に取り掛かろうじゃないか!さて〜!どの荷物を運べば良いのだ!?」
「ダクネス・・・・・わざわざ取り繕わなくて良いぞ」
言葉をいつもの様なハッキリとした物言いから遠く離れた、詰まりながらの言動とぎこちない動きをしながら、ダクネスは玄関へ向かう。
俺が声をかけると彼女は石化したように急停止し、ゆっくりとこちらに向き直る。
「うぐっ・・・!そ、その・・・すまなかった・・・それに、その・・・ああしてマジマジと見つめられるのも慣れてなくて・・・」
「俺だって慣れてないさ・・・元はと言えば、俺の雑さ加減が招いたあのハプニングな訳だし謝るのは俺の方だよ・・・・・」
「な、慣れていない・・・だと・・・!?」
「・・・そんな意外か?」
「あの紅魔族・・・ゆんゆんと言ったか・・・と、親密にしてるそうだからてっきり・・・・・」
そう言いバツが悪そうに顔をそらす。
その一言で恥ずかしいあんな思い出とかが思い出されるが、最近ゆんゆんとは言葉を交わしていない。
そのせいだろうか・・・大人気なく、何故だか彼女をからかってやろうと思ってしまう。
「仲良くしてるからって、別にそんな事ないさ・・・・なぁ?ララティーナ『お嬢様』」
「------ッ!?な、何故それを知ってるのだ!まだカズマたちにも明かしていないのに・・・!」
「ハハッ------俺はギルド職員だぜ?あそこのギルドで登録した冒険者たちの名簿には一通り目を通してある。カズマたちがお前の事をダクネスなんて言う名前で呼んでるから、何か事情があると思って合わせてたが、今ここには俺たちしかいない。別に問題ないだろ、ララティーナ嬢?」
「〜〜〜〜ッ!!その名前で呼ぶなぁ!!」
さっきの数倍顔を紅潮させ、プルプルと震えだすダクネス。
どうやらこれは彼女の中では中々に恥ずかしい話らしい。
彼女のリアクションに笑いをこぼしながらももう少しばかりからかってやろうと口を開く。
が、口を開いた途端、顔の真横に風が駆け抜けた。恐怖で顔は引きつりながらも、ゆっくりと何かが飛んでいった背後を見る。そこには投擲のせいで粉々になった何か。大方、適当なその辺りの調度品だろうか・・・いやそんな事より!
「や、やめろララティーナ!一応俺の新居だぞ!廃墟にする気かぁ!」
「うるさいうるさい!その名前で呼ぶな!!ぶっ殺してやる!!」
「うぉっ!!待て待て!危ないじゃないかララティーナ!!」
「その名前を----------呼ぶなぁあああああああぁぁぁっ!!」
「待て!机!!机はあかんだr------------ギャアアアアアアアアァァァァァァッッ!!」
こうして、俺の引越しは大惨事になりながらも何とか幕を閉じた--------------
そう言えば私事ではあるんですけどDDLCをひとまずユリちゃんルートを3周ほどプレイしました。
無料であそこまで作りこまれてるの凄いですねホント。まぁ、見事に1周目のあのシーンでトラウマを植え付けられたのですが・・・
見事にユリちゃんに惚れてどハマりしてしまったのでヤンデレ物の奴をこの作品のサイドストーリー的な感じでプロットを急いで練っておりますどうかお楽しみに・・・