ギルド受付役として生きていく・・・が、ブラックだ 作:パザー
作者は部活が体育系から文化系の部活になったので休日は殆どフリーなのです。やったぜ。ですので今までよりも少しだけ更新頻度は上がるかもしれません。どうにかGW中に2本ほど更新したいと思っております。
実質休日編最終回みたいな感じになってしまいました。
それではどうぞ!
「あ・・・あ・・・あ、あぁ・・・・・!ああああああああああああああああああああああああああああッッ!!!」
「チッ・・・この程度で喚きやがって・・・・・これだからガキャ嫌なんだ」
「・・・・殺すっ!!」
狂乱、嘲笑、激昂。
全てがそれらの色へと塗り尽くされる。
激昂に支配されたキノアから溢れ出す魔力。肌を刺すような殺気と流れる魔力が彼女を中心に1つの渦を作り出していた。
精神的にも肉体的にもその場に存在させる事を許さないような渦中の中、男は確かに笑っていた。それも、声を大にして。
「ハハハハハハハハハハッッ!!良いぜェ!!もっとだ!!もっと騒げェ!!
「キノアさん!!」
辺りが、ウィズの一喝で静まり返った。
取り巻いていた渦も嘘のように消え去り、場の主導権は彼女に握られた。
「キノアさん、落ち着いて下さい。ここはもうじき戦場になります。今はモノノベさんを連れて・・・」
「ふざけないで!!こいつは2度も!!2度も私の全てを奪った!!それなのに大人しく手を引けなんて!!手を引け・・・なんて・・・・・ッ!!」
尻すぼみになっていく言葉と溢れ出していく涙。
それは怒りに身を任せていながらも理性が現状を受け入れ始め、感情が溢れ出し、止められなっている証拠だった。
「それに、この状況をどう変えるかどうかは今、私たちに懸かっているんです!」
「・・・・え?」
「今・・・なんて言いました?・・・店主さん・・・助かるんですか!?サクさんは!!」
「ひとまずは離れましょう。それからです。ミツルギさん、モノノベさんを頼みます」
「りょ、了解です」
冷静さ。この状況で最も欠落していたそれを最速で取り戻したウィズが次々と指示を飛ばす。
それに伴って周りにも伝染していった冷静さはようやくキノアやゆんゆんの激情を沈めていく。
〜*〜
「こいつは・・・思いがけないチャンスだな」
さあ・・・お出ましか。
「これまた手酷くやられたらしいな・・・俺」
「皮肉のつもりか?笑えねぇな・・・・フヌケ」
「ハッ・・・・だがよぉ・・・気付いてるか?」
「・・・何がだ」
「まぁ、気付かねぇのも無理はねぇか・・・お前の口調、最初の方は俺となんら変わらなかった・・・そしてバニルにギーク戦の時はすっかり変わっちまってた・・・んで今、段々とだが・・・戻ってきてるぜ?」
「そいつぁ・・・ッ!」
「な?」
「クソッ・・・!!」
・・・来るな。
ガラリと雰囲気が変わり、俺に向けられていた怒りは殺意へと変わった。
ぞわり。首筋を泡だ立たせるような感覚。幾度となく味わった死が隣席した時の物だ。
研ぎ澄まされた白刃を向けられた様な息の詰まる殺気。混じりっ気の無い純粋な殺気というのは、それだけで戦意を挫けさせられそうになる。
だが・・・俺もそう易々と死んでやるつもりは―――――
「ねぇんだよっ!!」
「チィ―――――ッ!?」
何とか・・・読めたぞ。多分あいつと一体になりかけてるからあの目の性能の一部だけは今俺の物になってるのか・・・だがまぁ・・・
「これで―――ようやく同じ土俵に立った訳だ」
あいつの急接近に何とかローキックをかまして思い切り吹き飛ばした。
数メートルは回転しながら飛んでった訳だが・・・こんなんじゃまだまだだろうな・・・
「どうしたぁ!?そんなもんじゃねぇだろ!?」
「当たり前だ・・・・・そら見ろ」
速ェッ!!クソッ・・・これは・・・・・
一瞬で背後を取られた。時が圧縮され、意識の加速に体が置いていかれる。
何とか体を捻り、腕を防御の為に構える・・・が、その時にはもう漆黒の鞭がしなり、迫っていた。
「ガッ・・・グッ・・・・・」
「・・・お返しだ」
視界が激しく回転し、視界の端に捉えていたあいつが急激に遠ざかって行った。
頭がグラッグラッする・・・意識が飛びそうだ・・・それに左腕の感触が薄い・・・・・ん?あいつの腕・・・
「お互いに・・・これで片腕は無くなったわけか・・・」
「その様だな」
「「・・・・・ぶっ潰してやる」」
ハイキックからのローキック。そこからの胴を狙ったジャブ・・・全部分かってる。
首を狙った手刀、フェイントをかけての回し蹴りだって・・・全部防がれるって分かってた。
俺なんだから。
「「ラアッ!!」」
ハイキックがぶつかり合う。ただの蹴りとは言え、至近距離、それもかなりの速度だ。
ビリビリとした衝撃が肌を撫でる。
・・・・・あぁ。楽しい。
何でだろうな・・・・・いや、そんな事考えるのは無粋だろ・・・なぁ?
目の前の俺も、瞳の中の俺も、笑いを浮かべていた。歯をむき出しにしてまるで子供みたいな様相になって、俺達は殺しあっていた。
不思議と蹴りを当てられようとも、拳を打ち込もうと何も浮かび上がってはこなかった。
怒りも焦りも憎しみも。ただただある種の悦楽がどこからか湧き出て来るだけ。
「「フフフ------ハハハハハハハハハハハ!!!」」
「最高だ!!もっと!もっと踊ろう!!このまま終わらすなんてもったいねぇ!!」
「奇遇だな!------激しく同意だ!!」
傍から見たら狂人であるんだろう。狂気しか伝わらないんだろう。そして恐れしか覚えないんだろう。
だが、俺の目に映るこいつは・・・ひどく幼く、無邪気で純粋な子供に見える。どうせ・・・お前も同じ事考えてんだろ?
〜*〜
「「ッハァ・・・ハァッ・・・ハァッ・・・!」」
「お互いロクに四肢も動かない・・・どうする気だこれ以上」
「そいつぁこっちのセリフだぜ・・・それに俺には切り札っつう物があってな・・・」
「皮肉だな・・・生憎様だが俺にも切り札ならある・・・」
「へぇ・・・そいつは・・・是非、お聞かせ・・・願いてぇな・・・!!」
次が最後の一撃だ。
軋む全身を震わせ、体を立たせる。それでもひどく不恰好な状態でしか立ち上がれねぇ・・・あっちも同じ事だがな。
正直、今みてぇに軽口叩くだけでも精一杯なんだよこっちは・・・!
一歩。そしてまた一歩と。ひどく重く感じる足を、ズルズルと体を引きずって距離を詰める。
お互いの吐息が掛かる位置まで接近し、静止する。こうするとホント鏡合わせだなこりゃ・・・・・
俺たちは切り札の為に頭を大きく振りかぶった。
「「ああああああああああああああああッッッ!!!」」
ゴチンと、鈍い音が辺りに大きく響き渡り、俺たちは額を激しく打ち付けた。なんでこんなカッコワリィ・・・最後、なんだろうな。
「ハハ・・・どうやら仕事で殴られまくってたのが・・・効いたらしい。俺の方が・・・石頭だったわけだ」
「・・・・・フッ」
そう言って、目の前の俺がゆっくりと崩れ落ちて来る。
力尽きたその体を何とか受け止め、背中に腕を回す。
「・・・・・何をしている?」
「ちょっと・・・・お話がしたくてな。なぁ・・・ようやく分かった気がするよ。
「・・・・あぁ」
「だけどよ・・・人を頼るのが下手くそな俺にこう言うのも何だが・・・頼ってこそ、助けがあるんだ。別に助けを乞いても良かったんだ。だが、自分で拒絶してしまったから・・・1人で生きていく事になった。別に責めてる訳じゃない。こうして冷たい過去や辛さがあったからこそ、今の幸せ、未来への希望っていうのは眩く映るし、強く強く実感できる。分かるだろ?俺は、
「・・・あぁ」
「だから、この世界を信じていいんだ。もう怖がらなくていいんだ。頼っていいんだ。
「仲間・・・か・・・・・なら・・・」
突然、突き飛ばされた。そして何故だか今まで立っていた地面をすり抜け俺は際限なく落ちていく。
「なっ----------!?」
「その仲間達がお呼びだ。俺たちの希望である奴らなんだ。あんまり待たせて、悲しませてやるんじゃねぇよ。行け、
「あいつめ・・・格好つけやがって・・・・・だが--------任せとけ!!兄弟!!」
遠ざかる俺の姿。そこに一筋、涙が走っている様な気がした--------
次回の話は続きをちょっと書いてプラスアフターストーリーみたいな事になると思います。それで一旦休日編は打ち止め、次話から『厨ニ病でも魔女がしたい!』編に入ります。
それが終わったら次は現代入りとかとか考えています。というかこのペースだと5巻のゆんゆん主役巻の前に100話超えるかもですねぇ・・・どこぞのワン◯ースレベルの展開の遅さですね。
なるべく展開は速くしたいですがなるべく中は薄くならない様にしたいのでやっぱり更新頻度は変わらないかもしれませんw