ギルド受付役として生きていく・・・が、ブラックだ   作:パザー

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思ったより長くなっちまってるよ・・・やべぇよ・・・やべぇよ・・・

あ、本文中に挿絵あります。相変わらずのアナログですが・・・

【追記】
お気に入り500件突破・・・本当にありがとうございます!


exー08 とある精神世界で

「なんか・・・見えづらいかと思ったら・・・あの野郎、目勝手に弄くりやがったな・・・」

 

 

バニルを下し、満天の星空に黄昏ている青年。

うわ言の様にそう呟くと右手を抜き手の形に構えた。

 

一切、躊躇いのない、淀みない動作でその抜き手を目の前に持っていくと恐怖という、行動のストッパーが存在しないのか。勢い良く抜き手で目玉を潰した。

 

殆どが水分である眼球が潰れ、グチャグチャと不快な音を立て、その原形は見る影も無くなってしまう。

 

 

「卍解・・・観音開き紅姫改メ・・・ッ!?」

 

 

突然、頭痛と共に意識が遠退いていく。既に光が失われ、真っ暗な世界が遠退いていく。

そして、彼の意識はブラックアウトし、体はその場にまるで糸の切れた人形のように、倒れ伏した―――

 

~*~

 

「―――い!―――――ってんだよ!―――いこら!」

 

「・・・?・・・・・あぁ、お前か・・・フヌケ」

 

 

ゆっくりと覚醒した意識。根底の中からその意識をサルベージした声の主を認識すると、うんざりした声を上げる。  

目の前には全く同じ容姿の、声色を持った、自分の姿が。だが、冷たい、冷酷な雰囲気を漂わせる青年とは違い、目の前の自分は何処か飄々とし、軽快な印象を醸し出ている。

 

 

「おい俺、人の体で好き勝手やってんじゃねえぞ」

 

「こいつは俺の体だ。どう使おうと俺の勝手だろ?・・・俺」

 

「ハァ・・・お前、ホントに俺なのか?何でおんなじ俺同士の筈が、ここまで食い違う・・・」

 

「それはこっちが言いたいな。・・・どうしてそこまでフヌケた。何故、今の俺から貴様のような俺が発生する?」

 

 

体は同じ。だが、決定的に二人を分かつもの。それは魂。一方は冷酷無慈悲な伝説の冒険者、骸王。一方は人に好かれやすいただのギルド職員。一体何が、彼から目の前の彼を生んだのか。

 

それは彼ら同士、疑問に思っていること。恐ろしく簡単で分りやすい筈なのに。

 

 

「さあな・・・そいつぁ、俺にも分からねぇ。どうすりゃ、分かるだろうな」

 

「芝居はよせ・・・どうすれば、答えが見つかるか等と言う事、お互いに分かっている筈だろう」

 

「ハッ!・・・そりゃそうだな・・・不器用同士、簡単で分りやすいコミュニケーション方法があるじゃあねえか」

 

 

そう言うと両者がまるで何かに取りつかれた様に。積が切れたように、高笑いを始める。

だが、お互い、目だけは冷たく刺さるような視線で一切笑うこと無く、相手を見据えている。

 

そして次の瞬間、火蓋は唐突に切って落とされた。

 

 

「テメェのその腐った道徳心・・・」

 

「貴様のフヌケに落ちぶれた野心・・・」

 

「「叩き直してやる」」

 

 

両者の右拳が、両者の顔面を捉えた。

しかし、やはり両者とも引こうとはしない。寧ろ拳を振り抜こうとますます顔に相手の拳を埋めながら前へ前へと渾身の力を込める。

 

だが、そんな完璧に拮抗した状態はほんの少しで崩壊を始めた。

 

 

「フンッ!!・・・やはり、落ちぶれたな」

 

 

立っていたのは、骸王だった。振り抜かれた拳に吹き飛ばされた朔は倒れ伏し、中々立ち上がろうとしない。

 

 

「ハッ・・・確かに、俺はお前に比べりゃ落ちぶれただろうよ・・・だが・・・搾取を続けるテメェには死んでも・・・敗北は認めねぇ・・・!弱者の・・・抵抗者の・・・執着ナメんなよ・・・!!」

 

「そうか・・・なら、その執着とやらを・・・見せてみろっ!!」

 

「上等だよ・・・!テメェのそのしかめっ面一発と言わずボコボコにぶん殴ってやっからよぉ!!」

 

 

上段回し蹴り。からの身を沈め放つアッパー。

身を反り、サマーソルトを降り下ろす。着地の体勢のまま、地を蹴り懐へと切り込む突進。

 

全てが全て、分かっている攻撃。自分がやることだから。一向に有効打は決まらない。

 

時に受け止め、時にいなす。時に大きく動き、時に虚を織り交ぜ緩急を作り出す。

 

そんな攻防が続いていながらも徐々に状況は変わりつつあった。

関節を決めようと朔が腕を掴み脇固めの動作を取る。が、腕を捉えられた瞬間にその意図を読み取り骸王は掴まれた腕を軸に大きく身を翻しがら空きの背中へと肘鉄を放つ。

 

前方に倒れていくが当然、只では倒れない。倒れながらも位置を予測して後ろ蹴りを何とか骸王の右腕へと当てる・・・しかし、ここで彼が口を開く。

 

 

「終いだ」

 

 

放たれた後ろ蹴りが右腕を打つ瞬間。思いきり腕を後ろへ引き、そのまま体を大きく回転させる。

 

朔が右足のみで何とか踏みとどまった一瞬の硬直。そこに回転のエネルギーがたっぷりと詰まった回し蹴りが直撃する。

 

回し蹴りで目で追えない程の速度で地面へ叩きつけられた朔が轟音と共に倒れ伏す。

 

 

「やはり・・・フヌケはフヌケだ・・・まぁいい、これでコイツの精神は死んだ・・・好きにさせてもらうとしよう」

 

 

そう言うと突然、辺りが目も開けられないような明かりに包まれる。辺りが完璧に明転、それと同時に再び彼の意識の糸は途切れた―――

 

~*~

 

「よし・・・これで・・・良く見えるな」

 

 

天を仰ぎ、寝転がっている男がゆっくりと上体を起こす。まるで幽霊の様に希薄な雰囲気とは裏腹に手のひらから覗かせている左目は異彩をこれでもかと放っている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

十字架を象った様な黒目、そしてそこから溢れ出す紫の靄とバチバチと爆ぜては消える軌跡。

彼から見えている視界はどうなっているのだろうか。それは本人のみぞ知るところなのだろうが、常軌を逸しているのは間違いない。

 

そして、彼はゆっくりと歩き出す。周囲に、畏怖を撒き散らしながら。歩くだけでも抑止力となってしまう今の彼に、何かしらの措置がなされるだろう。彼はそれを承知の上、いや、それを求め宛も無く放浪していく。

 

~*~

 

あぁ~・・・・痛ェ・・・ったく、自分にあそこまで躊躇なく蹴りかませるか普通・・・

 

星空でも、青空でも、世界に存在するどんな言葉を使っても定義出来ないような淀んでも、澄んでもいない空。どこまでも続くそれを仰ぎながら俺は痛む後頭部を擦っていた。

 

現在、俺の体は絶賛乗っ取られ中。全くどうしてくれるんだか・・・というか俺強すぎだろ。まるで歯が立たん。

ここ・・・精神体だけの世界なら武器とかも使えないし何とか・・・って思ってアイツの意識をこっちに引き摺り込んだはいいが・・・・・案の定ボコボコにされて体を取り戻すどころか、若干俺という人格が消え始める始末だ。

 

あんだけ啖呵きっといて情けない・・・恥ずかしい・・・アクアがいたら腹抱えて笑われるだろうな・・・・・つうか、結局どうなったんだ?あの後。

 

多分、ウィズが事情を説明してくれてるとは思うが・・・殊更に追うのを躊躇うだろうな・・・ミツルギ辺りはどうにか探し当てそうだが・・・正直、アイツじゃ歯が立たんだろ・・・よしんばラッキーパンチが当たっても・・・・・ねぇ?

 

恐らく・・・さっきみたいにアイツをこっちに引き込めても後2・・・いや、1回が限界だろうし・・・ドンドン俺は弱体化していく。そんな状態でどうあの化物に勝てってんだ・・・・・ウィズやミツルギが何とか弱らせてくれれば少しだけだが俺が顔を出せる。その時に何とか・・・最悪の時も考えておかないとな・・・躊躇しないように。

 




エフェクト描くの難しい・・・練習しとかないと・・・幸い時間はたっぷりありますし。

後、朔の容姿はこれからもちょいちょい小出ししていこうかな・・・と、感じています。ツイッターとかやってれば進捗報告とか出来るんですが、如何せん苦手なんですよね・・・

あ、大雑把ですが、オリキャラのキノア、下書きを一応描きました。(アナログですが)↓

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