ギルド受付役として生きていく・・・が、ブラックだ 作:パザー
1ー01 この不憫な受付役たちにお酒を!
「えぇ~こちらのクエストはですね・・・」
冒険者ギルド。
モンスターを狩ったり、一般人から御国の偉い人まで十人十色な方々からの依頼をこなしたり。
そんな荒くれ稼業を生業とする職業・・・それが通称『冒険者』だ。
功績を上げた者は英雄として称えられ、様々な高報酬の仕事が流れ込んだり様々な保障も発生し、一躍時の人となって裕福に暮らせる。だがここ駆け出しの街アクセルでは流れ込んでくるのも決して美味しいとは言えない報酬のクエストや高難易度高報酬のクエストはそもそも攻略できる人間がいない・・・そんな現状だ。
なのでここでの冒険者は土木作業の日雇い労働とさして変わらない。
だがロマンを追い求めて冒険者を志願する者は中々に絶えず、今日も冒険者ギルドは騒がしい。
命をかける冒険者の報酬が日雇い労働とさして変わらない・・・通常の人が聞いたらあまり良くは思わないだろう。ブラックと揶揄する者も現れるかもしれない・・・だが!
そんな冒険者達を支える影の苦労人がいるのだ!
日々大量に流れ込んでくる冒険者に適切な仕事を斡旋し、士気を高める酒場の運営、捕獲されてきたモンスターの事後処理に依頼人へのクエスト完了報告、そして依頼集め・・・それら全てをまぁ多いとは言い難い人数でやらされる影の冒険者!そう!ギルド受付係だ!
今日も今日とてカウンターへ持ち込まれるクエストの処理をし、酒場の厨房でせっせと手を動かしやって来た冒険者達を大きな声で勢いよく迎える。
そんな急ピッチで進んでいく日常に目を回し翻弄させられる日々・・・全く以てブラックだ。
そんな事を張り付けた笑顔の内側で考えている。
接客業なので時々愛想笑いを浮かべ、その度に女性冒険者からは黄色い声が飛び、男性冒険者からは呪怨の視線が刺さってくる。
若干気まずい気持ちが胃の底から鉛の様な何かになって競りあがってくる感覚を味わいながらも俺は今日も今日とて全く変わらぬ日常を過ごしていくのだった―――――――――
~*~
すっかり日は傾き、白銀の月が顔を出そうとしている。
昼間とはうって変わって静寂と暗闇に包まれているギルドの一室、そこで俺はとある女性と話をしていた。
「ルナさん、今日もお疲れした」
その声に椅子へ腰掛け黄昏ていた栗色の巻き毛をした女性がこちらに振り向いた。
肩から胸元までが大胆にはだけている白の服に青色のショートパンツというひっじょ~にエr・・・卑w・・・そそる格好をしている。
白い肌に髪と同じような色をしている丸い真面目そうな印象を受ける目を見つめていたがハッとして本題を切り出す。
「久し振りに一杯飲んで行きませんか?」
「おぉっ!良いわね!行きましょうか!」
「それじゃ俺、表で待ってるんで着替えたら来てください」
「分かったわ」
ヒュー!ヤルジャネェカイロオトコー!
ヌケガケナンテズリィゾー!
後ろから他のギルド職員が茶化す声が聞こえてきたがまぁ
無視しておくことにしよう。
裏口の扉を勢いよく開けて外の空気を思い切り吸い込む。
肺に流れ込んでくる冷たい空気に身震いしつつも満点の星空を眺める。
漆黒のキャンパスの上でキラキラと無数に輝く大小の星に中心で堂々と輝く綺麗な円をした黄金の月。
そんな幻想的な風景に心を奪われそうになりそうになる。
が、そんなタイミングで日頃のストレスが噴き出してきて思わず大きな溜め息を吐いてしまう。
「モノノベ君ごめんね、待った?」
「あ・・・いえ、大丈夫っす」
白い肌の肩が露わになっている黒のワンピースを着たルナさんがドアを勢い良く開けて出てきた。
ギルド内でのみんなのお姉さんといった雰囲気から某エロゲーにでも出てきそうな清楚だが若干幼さが抜け切れていない幼馴染、そんな印象を与える姿だった。
そして当たり前だが思春期真っ盛りの童貞には刺激が強いので顔を若干赤くしながら上ずった声で応答してしまった。
「あれ、どうしたの?顔が赤いけど・・・熱でもあるのかしら?」
ちょ、ちょ・・・・近い!近すぎるんですけど!
しかも屈んでるからむ、胸が・・・!
それにでこに当てられてる若干ヒンヤリとしていて柔らかい手の感触も・・・!
「だ、だいじょうびです・・・それより早く行きましょ・・・?」
呂律が回らないまま俺たちは手頃な酒場を探して歩き出したのだった―――――
~*~
「ま~ったく以て何なのよあいつらは!どいつもこいつも胸ばっかり見やがってさあ!何なのよ!私には胸しか取り柄が無いっていうのかしら!?」
・・・・・酒癖悪すぎん?
あれ・・・?こんな酒癖悪かったっけこの人・・・
すっかり出来上がってしまったルナさん。
ベロベロに酔って真っ赤になってしまったルナさんは派手に酒の入ったグラスを机に叩きつけていた。
しかもその度に揺れる豊満な二つの白い果実・・・それから意識を逸らすのに俺もヤケ酒と言わんばかりに呑んだくれていた・・・が、流石にあそこまでは出来上がっていない。
「大体ねぇ!労働時間がおかしいのよ!何が悲しくて15時間もあんなむさ苦しい冒険者たちに胸を晒してニコニコしてないといけないのよ!こんな労働時間じゃプライベートも何も有りはしないじゃない!!」
「そ、そうですね・・・アハハハハ・・・」
正直・・・うん。まぁギルドの勤務時間は酷いとは思うよ?
それにシフトとかも組んでる訳でもないし勤務時間中はずっと同じ作業の繰り返しだし・・・
何か・・・腹立ってきたな・・・俺ももうちょっと呑んでおくか・・・
「よおしルナさん!一緒に一気飲みでもしますか!」
「良いわよ!さあ日頃の鬱憤込めてせーのーで!!」
その声に合わせて一斉に立ち上がって満杯のビールジョッキを口へ運ぶ。
喉へ、口腔へ、食道へと勢いよく流れ込んでくる黄金の液体。
若干クラクラする感覚に襲われるのを必死に堪えながら飲み続けた。
ジョッキが軽くなり姿勢が上へ上へと上がっていきようやくジョッキが空となった。
「プハアアアァァァ・・・・・!旨い!」
「良い飲みっぷりね!モノノベ君!」
「そちらこそ!」
「「―――――――マスター!ビールありったけ持ってきて!!」」
~*~
「おっぷ・・・激しい戦いでしたね・・・」
「そうね・・・・・」
店にあるビールの殆どを飲み干した俺とルナさんはすっかり更けてしまった夜の街を歩いていた。
・・・フラフラの体を互いに支えあいながら。
ひとまず、あても無くフラフラと彷徨い迷っていた。
「そういえばルナさん、これって何処に向かって・・・ルナさん?」
「スー・・・スー・・・」
日頃の苦労や酒が祟ったせいか、俺の肩にもたれながら穏やかな寝息を立てていた。
不用心だなぁ・・・・・幾ら多少付き合いの長い同僚とは言え年頃の女性が寝顔晒すなんて・・・
とりあえず俺の宿に運んどくか。
ルナさんの家の場所知らんし・・・・・・
・・・・・?
・・・・・・・・・・今時あんな光景見ねえぞ・・・
視線の先には数人の男たちに囲まれた少女がいた。
暗闇の中で紅く輝く大きな瞳に左右に分けた黒髪が特徴的だったのだが黒のローブにマントと言うファッションセンスも十分怪しかった。
あの見た目じゃ・・・ちょっと夜遊びしてみたくてフラフラしてたら絡まれた・・・そんな感じだろう。
ヘェイオジョウチャァン、オジサンタチトイイコトシヨウズエ・・・
イイカラダシテンネオジョウチャンチョットニャンニャンシヨウズエ・・・
「あ、あの・・・止めて・・・」
はぁ・・・これは物部さんが助け舟を出すしかないか・・・
懐から羽ペンを取り出しつつルナさんを担ぎながらあの変な一角へと近づく。
何とこの羽ペン・・・俺の転生特典でしてね・・・
「啼け『紅姫』」
アア!?ンダテメェスッゾコラアァン!?
アア!?ンダテメェスッゾコラアァン!?
こいつら面白いな・・・
まぁいいや。とっとと済ませよ。
いきなり羽ペンが細身の剣になった事に驚く紅目の少女とそんな事はお構いなしに突っ込んでくる馬鹿達。
こいつら剣向けてんのに突っ込んでくるとか・・・ルナさん担いでるから舐められてんのかな・・・
「ほい1!2!3!」
ギャン!
ピン!
チン!
綺麗に123で倒れていったチンピラを一瞥してから壁にもたれて呆然としていた少女に視線を向ける。
「あ、ありがとうございました・・・えっと・・・受付の人・・・?」
「物部朔だ。別に構わないさ。たまたま通っただけだし。あんたの名前は?」
「わ、わわ私のななな・・・名前は・・・ゆ・・・ゆんゆん・・・です・・・」
「そうかよろしくな。ゆんゆん」
どんどんと窄んでいくゆんゆんのか細い声。
名前を名乗るのを恥じらう紅魔族・・・初めて見たな。
あんな馬鹿な種族にもこんな常識人がいたのか。
「えっ・・・!?」
「どした?」
「いえ・・・私の名前を聞いて笑わなかったのが・・・」
「紅魔の里には一回行った事あるからな。べつに驚いたりしないさ」
「そうなんですか・・・」
まあそろそろ宿に向かうとするか・・・
背を向けてルナさんを担ぎ直す。ていうか・・・あんだけあっても起きないのか・・・
「ま、待って下さい!」
「ん?」
「私の宿に来ませんか?何かお礼がしたいし・・・」
「う~ん・・・んじゃあお世話になるとするわ」
こうして俺とゆんゆんでルナさんをかついで彼女の宿に向かったのだった――――――
~*~
「どうしてこうなった・・・」
俺、ゆんゆん、ルナさんの3人でシングルベッドに刺さっていた。
ありがとうございました!
ゆんゆん可愛いんじゃ~