機動戦士ガンダム00 変革の翼   作:アマシロ

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タグにアンチ・ヘイトを追加させていただきました。
保険的な意味合いが強いのですが……。

理由といたしましては、本来のヒロインであるマリナ姫とセレネが非常に相性が悪い可能性があると感じたためです。アンチをしたいというわけではありませんが、そのように感じる方がいらっしゃるかもしれないと思い、勝手ながら今回からタグの追加をさせていただきました。

まことに申し訳ありません…。



5月19日:タイトル修正


第6話:無差別報復

 

 

 中東の小国、アザディスタン。

 かつて豊富な石油資源で財を築いた中東は太陽光発電システムの普及と、それに伴う大幅な石油の輸出規制によって財政が逼迫する国が多数あり、アザディスタンもその中の一つであった。隣国の吸収などを行って地域治安を求め、最終的に王政を復活させることで国民の意識を一つに纏めようとし、しかし議会で保守派と改革派が対立していることもあってお世辞にも上手くいっているとは言えなかった。

 

 古い宗教や戒律を守ろうとする保守派と、慢性的なエネルギー不足を打破するために太陽光発電システムを取り入れようとする改革派。両者の溝は深まるばかりで、国内治安の悪化もあいまって一触即発の事態であった。

 

 

 そして、改革派に近い考えを持つアザディスタン王国の第一皇女であるマリナ・イスマイールは、技術支援を行ってくれる国を探す為に飛び回っていたのだが―――。

 

 

 マリナはフランスのホテルで深く溜息を吐く。

 今日の外交も失敗に終わったのだ。フランス外務省の外務次官は丁寧に対応してくれ、友好的な関係が築けるかもしれないと期待を抱いたものだが、アザディスタンの情勢が不安定であり、派遣する技術者の安全が保障できないとして断られたのだ。

 

 ……国と国との関係で見返りのない行動というのは有り得ず、そしてアザディスタンには何の利益もない。だから、援助してくれる国なんて……。

 そこまで考えてマリナは慌てて首を横に振り、どこかに援助してくれる国があるはずだと考える。国の情勢さえよくなれば、平和になると信じていた。

 

 

 と、部屋に備え付けの端末が鳴り、皇女となる以前からの付き合いである秘書のシーリンの顔がモニターに映し出された。

 

 

『ごきげんよう、姫様』

「シーリン……」

 

『諸国漫遊の旅は満喫してる?』

「それ、皮肉?」

 

『そう聞えなかった?』

 

 

 シーリンが微笑み、マリナは苦笑する。

 慣れたやりとりが心地よかった。

 

 

『それで、やっぱり食料支援しか得られなかった?』

「そんな当然のことのように言わないで」

 

 

『だって当然のことでしょう。AEUはモラリアとの軍事演習でソレスタルビーイングの武力介入を受けて25機以上のモビルスーツを失った。そんな状況の中でAEUに所属する国々から色のいい返事を貰おうなんて虫が良すぎるもの』

「それは、そうだけど……」

 

 

『それより、ニュースは見たの?』

「いえ、今日はまだ……」

 

『世界各地でテロ行為が活発しているそうよ。ソレスタルビーイングの武力介入に対する報復行動みたい』

「報復……」

 

 

『気に入らないんでしょう、彼らが』

「だからって、武力を使って言う事を聞かせようだなんて……」

 

 

『それがテロ組織というものよ。もし訪問国でテロが起こったら、その時点であなたの外交の旅は終わりになるわ』

「そんな……」

 

 

 ここでも、ソレスタルビーイング……。

 モラリアのときも、ソレスタルビーイングの武力介入が始まれば国に帰ってもらうかもしれないとシーリンに言われていた。マリナには、彼らが行く先々で自分の邪魔をしているようにしか思えなかった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「……………テロ」

 

 

 輸送用コンテナ内に用意されたベッドで、目を泣き腫らしたセレネは小さく丸まって布団を被りながら端末に届いた情報を見ていた。

 世界の主要都市七箇所で起こった多発テロ。テロ実行犯から出された犯行声明では「ソレスタルビーイングが武力介入を止め、武装解除しない限り今後も世界中に無差別報復を行う」という。先ほどマイスターに集合がかけられたのだが、セレネは体調不良を理由にしてベッドに篭っていた。

 

 

「……刹那の、ばか……」

 

 

 小さく呟くと、少しだけ気持ちがすっきりしたような気がした。それでも、端末を流れるテロの被害予測などが心に重く圧し掛かる。……死んだ。無関係な人がたくさん死んだ。私たちの活動で。それに対する理不尽な報復で。

 

 

(………おかあ、さん)

 

 

 自慢げにガンダムについて話してくれたお母さんの笑顔と、冷たくなってしまって動かない姿がフラッシュバックして、セレネは小さな拳を握り締めて震えた。

 

 

(………おとう、さん)

 

 

 いつもお母さんの隣で微笑んでいた優しいお父さんと、冷たいお母さんの隣で悲しむお父さん。………そして、溢れんばかりの緑の光が――――。

 

 

「………ぅ、く………」

 

 

 嗚咽を堪えるように自分の身体を必死に抱きしめる。

 ………さむい。とても、さむかった。

 

 

『―――テロが憎くて悪いか…ッ!』

 

 

 テロが起こっている、そのことにロックオンが怒っているのが、悲しんでいるのが感じられるような気がした。

 

 

『……テロという紛争を起こすのならば、武力で介入するのがソレスタルビーイングだ』

 

 

 戦争を根絶する、刹那の強い決意も。

 きっと二人とも、今頃―――…なのに、私は……。

 

 

「…………テロは」

 

 

 テロは、根絶しないといけない。

 私が殺す事を躊躇って、その影響でテロを止められなかったらどうなるか。

 

 なら、テロを起こす人は殺していいの…?

 

 答えは出ない。……けれど、そんなことを自分の価値観で決め始めたら何かが決定的に間違っている。そう思った。

 

 

 

『ガンダムは、みんなが幸せになれる世界を――――お互いのことを分かり合って、思い合える、そんな世界を―――…』

『……お前が……母さんの望んだ世界を創るんだ』

 

 

「……………ひとりは、いや…だよ……っ」

 

 

 

 誰にも相談なんてできない。

 みんな、覚悟を持って戦っている。罪を背負っても世界を変える覚悟を……。

 

 一人でも助かる人を増やす。甘い願いなのは分かっていた。

 けれど、無差別テロをするような人間を赦すなという思いが煮え滾るように溢れてくる。殺してしまえと、それが平和な世界のためだと考える自分もいることが堪らなく悲しくて、そして怖かった。

 

 

「………どう、して……」

 

 

 

 どうしてテロは起こるのか。どうして無関係な人を巻き込むのか。

 分かり合えない。……そうとしか思えない自分が、それを否定できない自分が堪らなく悲しかった。

 

 

 

「……わたしは、ガンダムマイスター…なのに……」

 

 

 

 戦争根絶を体現するガンダムを操る者。

 セレネがガンダムに、マイスターに願うのは世界を変えること。

 …………もう、失わないように。そして、平和を……幸せを……。

 

 

「………せつ、な…」

 

 

 なんとなく、私と刹那の望むものは近いと感じていた。……戦争を止められる存在。イオリアが、お母さんが、私が、ガンダムに求めた理想を実現したい。

 違いは、殺す覚悟があるかどうか。

 

 殺す覚悟ではなく、殺さない覚悟を。

 ガンダムマイスターを志した時に目指したそんな願いは、もう……。

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 

 翌日、スメラギさんとフェルト、クリスさんの乗ったリニアクルーザーが私たちのいる孤島に到着しました。

 早速、一度全員で甲板に集ることになった……のですが。

 

 

「……ク、クリスさん…? な、何か御用でしょうか……?」

 

 

 どういうわけか私だけ先にクリスさんとフェルトに船に拉致……もとい、連れて行かれるそうです。しかも、その理由が……。

 

「大丈夫よ、セレネ。私たちでちゃんと選んであげるから!」

「い、意味が分からないのです…っ!?」

 

 

 どういうわけか水着を着たクリスさんと妙に疲れきった表情のフェルトに嫌な予感が爆発します。フェルトに目線で助けを求めると、微妙に黒い笑みを浮かべてフェルトは小さく呟きます。……三十六計逃げるに如かずです…っ!

 

 

「……セレネもがんばって」

「―――GNシステム、リポーズ解除! プライオリティをセレネ・ヘイズへ! アイシス、ブローディングモードでスタンバ―――」

 

 

「セーレーネ?」

「……にがさない」

 

 

 ガシッ、ととてもいい笑顔のクリスさんに肩を掴まれ、小型インカムを無表情なフェルトに没収されます。一瞬、格闘術で二人を無力化しようか本気で検討しましたが、その前に数世紀前の捕獲された宇宙人のイメージよろしく両脇を掴んで持ち上げられてしまいました。

 

 

「―――っ!? は、はなしてください…っ!?」

「セレネ、ちょっと軽すぎじゃない…? よし、それじゃあ行くわよフェルト!」

「……了解」

 

 

「い、いやぁぁぁっ!」

「こら、駄々をこねないの!」

「……ふ、ふふ」

 

 

 く、屈辱です! 今ほど自分の小ささを恨んだことはないのです…!

 必死にバタバタと抵抗しますが、まさか二人に蹴りを入れるわけにもいかず。なんだか楽しそうなクリスさんと、「……セレネも私と同じ苦しみを」みたいな黒いオーラを発しているフェルトが怖いのです…っ!

 

 

「だ、誰か…っ! ロックオン! アレルヤさん! ティエリアさん! ……刹那! たすけてください…っ!」

 

 

 せめてもの抵抗として必死に助けを呼び―――コンテナから外に引きずり出されたところで隣のコンテナから刹那が出てきました。

 

 

「……何をしている」

 

 

 イマイチ表情の読めない刹那は、しかし相変わらずの視線の鋭さでクリスさんとフェルト、そして捕獲されている私を順に見て、首謀者だと当たりをつけたのかクリスさんに視線を注ぎました。

 

 こ、これは助かるかもです…っ!?

 そんな僅かな期待を、クリスさんは笑顔で粉砕します。

 

 

「ちょっとね、セレネに新しいお洋服を着せてあげようと思って。刹那もセレネの着替え見る?」

「………」

 

 

 刹那は無言で首を横に振ると、スタスタとコンテナに戻ってしまいました。……た、たしかに着替えは見られたくないですけど! その着替えが嫌なのです!

 

 

「ま、待ってください! クリスさんを止め―――」

「さぁ、行きましょうセレネ! ……ふふっ、セレネはフェルトはまた違った可愛さだから腕が鳴るわ♪」

 

 

「い、いやぁぁぁっ! 誰かぁぁぁっ!」

 

 

 

 アレルヤさんが一瞬ちらりと見えた気がしましたが、苦笑いすると「触らぬ神にはなんとやら、だね」とでも言いたげに去っていきました。

 

 

 

 

…………………

 

 

 

 

「ダメじゃないセレネ。プロフィールに嘘の身体情報を記入なんかしちゃ」

「……セレネは150cmもないもの」

「ぅ、ぅぅぅぅ~~~っ! あります! あるのです…っ!」

 

 

 「フェルトが教えてくれなかったら危なかったわ」と神妙に頷くクリスさんは、無慈悲にも私を船室のベッドに縛り付けています。………逃走に失敗した結果ですが。

 ガンダムマイスターとして一応会得してある縄抜けで逃げ出そうとしますが、その前にフェルトがメジャーを取り出しました。

 

 

「……測る?」

「あ、グッジョブよフェルト!」

「うわぁぁぁん…っ、いやぁぁぁ! メジャーが、それがこわれてるのです…っ!」

 

 

「………新品だけど、そもそもメジャーってどう壊れるの?」

「えーと、141? って、本当に9cmも嘘吐いてる!」

「欠陥品はメジャーの数字が10cmズレるのです! 今の世界は切り上げ方式なのですよぉ~~…っ!」

 

 

 ………おわった。

 女の人は実年齢を言われると老けるとかいうそうですが、私は実身長を言われると泣きたいのですよ……。ぅぅっ、もう何もかもどうでもいい―――…。

 

 

「大丈夫よ、セレネ! ちゃんと貴女にあわせて水着を買っておいたから!」

「……そういえば、パイロットスーツってどうしてるの…?」

「イアンさんたちは、ちゃんと150って言ってくれたのです…っ!」

 

 

「ああ、なるほど」

「……それじゃあ、この水着も150cm用」

「うわぁぁぁん、フェルトのばかぁぁ!」

 

 

 それはどう見ても子ども用の水着なのですよ…っ!

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 そういうわけで、全員がクルーザーの甲板に集った。

 アレルヤは今朝の騒ぎで大体の事情を悟っていたが、一応流れというものがあるので目の前のスメラギたちの格好を見て呟いた。

 

 

「なぜ、そんな格好を……」

 

 

 スメラギ、クリスティナ、フェルト、セレネの4人は水着を身につけていた。特に前3人はバカンスにでも来たような出で立ちである。

 

「カモフラージュよ、カモフラージュ」

 

 スメラギが指を立てて説明し、どうやらテンションが元にもどったらしいクリスティナが苦笑する。

 

「ちょっと、趣味が入ってるかも……」

「………」

 

 なんだか妙にスッキリした無表情のフェルトもあわせて、なるほど確かに3人はソレスタルビーイングの一員というより外洋クルージングにきた三人組という印象だ。

 

 

「………ぅ、ぅぅ~~…っ!」

 

 

 そして涙目で怒りながら肩を震わせているのは、紺色のピッチリした水着―――スクール水着を着た、いかにも水泳の授業を受けていますといった雰囲気のセレネだった。黒髪と真っ白な肌の対比が目に眩しいのだが、こんな水着になった原因は身長以外も数値を盛ったセレネと、それをクリスに知らせなかったフェルトにある。……幼馴染であるフェルトもそこまで知らなかった可能性も否定できないが。

 

 

「えーと……今がどういう状況か分かってるんですか。スメラギさん?」

「わかってるけど、今は王留美が放ったエージェントの情報を待つしかないもの。ああ、それにしても暑いわね。冷えたビールとかないのぉ」

 

 

 どうみてもジュニアスクールの学生にしか見えないセレネに苦笑しつつも正論を言ったアレルヤをスメラギはスルーし、船室へ向かう。

 

 

「神経が太いというか、何というか……」

「強がってんだよ……ったく、やれやれ」

 

 

 呆れたようなアレルヤにロックオンは小声で言い。フェルトに突っかかりながら地団太を踏む、微笑ましいとしか言いようの無いセレネを見て苦笑する。……もしかすると、これを狙ってミス・スメラギはセレネに水着を着させたのかもしれない。そんなことを考えつつもほんの僅かだけテロから気分が逸れたロックオンは、テロ実行犯の居場所が分かれば容赦しねぇと思いつつも僅かに肩の力を抜いた。

 

 

「……ぅ、ぅぅー、フェルト~~…っ」

「……似合ってる」

 

 

 スクール水着が似合って嬉しいわけがないのですっ!

 

 

「誰が小学生なのですか…っ!」

「言ってない」

 

 

 秘匿義務さえなければ年齢をいえるのに……とがっくりと膝をつくセレネ。しかしどちらにせよ同い年であるはずのフェルトと自分の決定的な違いをフェルトの水着に見出してしまったセレネは涙を呑んだ。

 

 

「い、いいのです……胸のサイズの違いが戦力の決定的な差ではない……はずです…っ! そんなの、ガンダムマイスターには必要ないのです…! 身体が小さい方が対Gも有利だって聞いたことありますし…っ!」

 

「……そんなこと言ってると育たないかも」

 

 

「ぅぁぁぁん、ごめんなさいぃぃ…っ!」

 

 

 セレネを弄ってフェルトが常になく楽しそうだ。

 本当に仲がいいんだなーと思いつつも、クリスティナは小さく呟く。

 

 

「こっちからエージェントに連絡できればいいのに……」

 

 

 待つだけは辛い。そんな気持ちの篭った呟きだったが、ティエリアは冷たく言い放つ。

 

 

「実行部隊である我々が、組織の全貌を知る必要は無い」

 

 

 実行部隊は敵に捕まる危険も高いわけで、余計な情報は計画そのものの命取りになりかねない。そんな意味も篭った正論ではあったのだが、アレルヤはフォローの意味も込めて呟く。

 

「ヴェーダの采配に期待するさ」

 

 

 

 そんな中、刹那は一人船首近くで黄昏ていた……いや、そのはずだった。

 昨日の夜からセレネと気まずく、しかし今朝方助けを求められてそんなことを気にせずに駆けつけた……までは良かったのだが。

 

 『刹那もセレネの着替え見る?』と笑顔で言うクリスティナと、顔を真っ赤にするセレネが思い出される。……動揺した。ガンダムマイスターであるこの俺が……。

 アリー・アル・サーシェスと出会ったときと同じ、あるいはそれ以上に動揺してしまった刹那は結果的にセレネを見捨ててしまい、更に気まずい気分を味わっていた。

 

 そして、どういうわけか気がつくと水着姿のセレネを目線で追っていることに気づいてしまった刹那は自身の異常としかいえない行動の理由が分からず。黄昏ているように見せてその実、悶々と悩んでいた。

 

「よぉ、どうしたんだ刹那?」

「……ロックオン、か」

 

 

 なにやら常になくニヤリとした笑みを浮かべるロックオンが船首近くにやってくる。どうやら刹那の異常に心当たりがあるらしいロックオンだったが、刹那がセレネを泣かせたことを怒っていたのでそう簡単には助けてはくれないのだろう。

 

 

「で、刹那はセレネの水着に興味津々なのか?」

「……………」

 

 

 ジロリ、と睨みつける刹那にもロックオンは肩を竦めるだけで、全く気にした様子はなく続ける。

 

 

「セレネがいないと寂しいんじゃねぇのか?」

「………」

 

 

 違う。そう呟こうとして、しかし何故だか言葉が出てこなかった。

 

 

『刹那、刹那! お洋服を買いましょうっ!』

『今日の晩御飯はカレーにしたのです!』

『……あ、甘口は人類に優しいのですよ…っ!』

『……ありがとう、です。刹那……』

 

 

 振り返っても小さな少女の姿が、笑顔が無い。

 それだけのことで、どうしてこんなにも胸にぽっかりと穴が開いたように感じるのか。生きている、そして近くにいるのに。話しかけようと思えば話せるにも関わらず。

 どうしようもなく、遠く感じる。

 

 

 刹那は、かつてゲリラの少年兵として戦ってたくさんの仲間を失った。それはきっと、寂しかったのだろう。けれど、失ってもいないセレネがそれと同じように……下手をすればそれ以上に寂しく感じられるのが何故なのか、分からない。

 

 

 ロックオンは「まだダメか」と呆れたように呟いてから、真剣な瞳で刹那を見据えながら呟く。

 

 

「……いいか、刹那。お前も分かってるかもしれねぇが、失ってからじゃ遅いんだよ。しっかり自分の気持ちを伝えて、さっさと仲直りしろよ」

「………ロックオン」

 

 

 怒っているのではなかったのか。

 どう考えてもアドバイスだと思われる言葉を言ったロックオンに僅かに刹那が目を見開くと、ロックオンは苦笑いし、ひらひらと手を振りながら離れていく。

 

 

「……仲間だからな。これくらいはしてやるさ」

「………」

 

 

 刹那は、何と言葉を発すればいいのか分からなかった。

 ちょうどその時、ビールを手に船室から出てきたスメラギ・李・ノリエガが言った。

 

 

「今回の事件を起こした国際テロネットワークは、複数の活動拠点があると推測されるわ。エージェントの王留美がその正体と拠点の割り出しを急いでくれているけど、いまだ確定情報は届いてない。相手が拠点を移す前に攻撃するためにも、ガンダム各機は所定のポイントで待機してもらいます。いいわね?」

 

「「「「「了解」」」」」

 

 

 ガンダムマイスター全員が声を揃え、それからスメラギはふと思い出したように付け足した。

 

 

「そうそう、セレネはしばらく療養ね」

「……えっ!? ど、どうしてです…っ!?」

 

 

「集合をすっぽかした罰よ。体調が悪いならちゃんと休む。気分転換も大切よ」

「………ぅぅ」

 

 

 

 

 「……刹那のばか」と小さく呟くセレネに、どういうわけか心が痛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




おまけ(設定)



ウィングアイシス

 第4のGNパック、機動力特化の『ウィングパック』を搭載したガンダムアイシス。蒼い翼のような形をしたウィングスラスターが最大の特徴であり、高濃度圧縮粒子を推進力に変える。特に圧縮粒子を全解放する『ハイパーブースト』では、既存のモビルスーツでは考えられない加速力を実現する。ただしその操縦は困難を極め、高機動戦に特化したセレネ・ヘイズでなければ制御しきれない―――とされている。
 腕と脚にも追加のスラスターがあり、更にはウィングスラスターも可動式であることからセレネの求める奇想天外な動きもおおよそ実現可能。
 また、通常モードと高機動モードの他に、セレネ曰く『隠し玉』である『バーストモード』が搭載されているらしい。ただ、燃費の悪さはヴァーチェに次ぐレベル。


 ・GNビームライフル:威力を抑えて速射が可能な高出力ライフル。銃口からビームサーベルを出す事もできる。セレネは主に2丁同時に扱う。

 ・GNビームサーベル:特に変更点はなし。


 なお、その他の武装は不明。
 ちなみにアイシスのコクピットは身長の低いセレネのためにカスタムされているので他のパイロットが操縦するのは大変である。

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