機動戦士ガンダム00 変革の翼   作:アマシロ

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多数のご感想、お気にいり登録ありがとうございます!
恐縮です><

稚拙な作品ですが、頑張って書かせていただきたいと思っていますので、どうかよろしくお願いいたします!
また、明日は更新できないかもしれません……。


第5話:報われぬ魂

「――――刹那、コクピットに戻って…っ!」

 

 

 どうして刹那はコクピットから出ているのか。そんな疑問を抱きつつも、高機動モードにしたアイシスで濃紺のイナクト目掛けて突進する。角度が悪くて刹那に当たらないように射撃はできないが、同じく救援に駆けつけたロックオンの狙撃がイナクトとエクシアの間を切り裂く。

 

 刹那がコクピットにもどり、2発、3発とデュナメスの粒子ビームが通り過ぎる。わざと外して敵機を威嚇しているのでしょう。もし直撃させれば爆発で刹那もただでは済みません。イナクトは間もなくフライトユニットをふかし、エクシアから離れる。

 

 

 即座に、ロックオンの本気の狙撃がイナクトを狙うが――――。

 

 

『…なっ!? 避けやがった!』

「―――いきます!」

 

 

 凄まじいキレの機動でロックオンの狙撃を回避し、丘陵の下に身を隠そうとするイナクトに、アイシスで突進する。二丁ビームライフルで弾をばら撒き、両脚と頭を狙う。しかし―――。

 

 

『そんな生っちょろい弾が当たるかよ!』

「―――っ!?」

 

 

 まるでこちらの狙いを読んでいるかのような動き。

 この距離で当たらない…っ!? それなら……切り裂きます!

 

 

「――――圧縮粒子、全開……ハイパーブースト!」

 

 

 コンソールの画面が切り替わり、圧縮粒子の充填率が表示される。先ほどからチャージしておいたおかげで既に数値は89%を示している。

 GNドライヴが唸りを上げ、ジェネレーターが輝く。

 

 そして次の瞬間、ウィングスラスターから緑の翼のようにGN粒子が噴出し、アイシスが消えた。いや、消えたようにしか見えなかった。イナクトのパイロットすらも驚愕する。

 

 

『なんだと…っ!?』

「……っにぅ!?」

 

 

 あまりの速さに制御しきれずにビームサーベルの軌道が逸れる。

 イナクトの頭が切り裂かれ、危うく地面で盛大に転びそうになったアイシスは咄嗟の判断で大空に舞い上がる。

 

 

『……ちっ、命あっての物種ってな!』

 

 

 イナクトは即座に変形すると、狙撃を避けて地上スレスレを凄まじい速さで飛ぶ。

 そしてアイシスはそれを追撃することはせず、中のパイロットの状態を示すかのようにふらふらと地上に降り立った。

 

 

『おい、セレネ!? 大丈夫か…!?』

『……セレネ!?』

 

 

 心配するロックオンと刹那の声がする。けれど――――。

 

 

「……ぅぅ……は、はきそう……です…っ」

 

『無茶しすぎだ、馬鹿!』

『………』

 

 

 と、そこでスメラギさんからの通信が入る。

 

 

『事情は後で聞かせてもらうわ! ミッション、続けられるわね?』

『了解』

 

 

 刹那は落ち着いて答え、特に異常は感じられない。もう平静にもどったみたいですね……よかったです……。安堵の溜息を吐きたいですが、いっしょにいろいろと出ちゃいそうですし……。

 

 そんなことを考えていると、スメラギさんが矢継ぎ早に指示を飛ばします。

 

 

『フェイズ5まですっ飛ばして6から続行。デュナメスはエクシアのサポートをお願い。……アイシスは、高機動モードの使用を緊急時以外禁止します。通常モードとバーストモードで対応して!』

 

「……バーストモードは、ここでは使わないです」

 

 

 

 思わず唇を噛み締め、呟く。

 バーストモードなら確かに一気に多数の敵を無力化できる。けれど、確実に相手のパイロットを殺めずに撃ち切る自信がなかった。

 スメラギさんはそれに対して小さく頷き、しかし厳しい目で言います。

 

 

『……貴女の腕なら、場合によってはそれが一番死者を少なくする方法よ。例え、貴女が人を殺めたとしても……酷いことを言っているのは分かってるわ。でも、覚えておいて』

 

「…………っ、ごめん…なさい。了解です……」

 

 

 

 ……そう、だった。

 言葉のところどころに、スメラギさんの辛そうな感情が篭っている。……人を殺めることに苦しんでいるのが、私だけであるはずがなかった。

 

 戦いはスメラギさんの指揮の、作戦の下で行われる。

 自分の指示でたくさんの……数百、数千の命が失われていくのは、どんな気持ちなのだろう。……きっとそれは、苦しくて、やりきれなくて――――でも、目を背けても世界に紛争がある限り人は死んでいく。

 

 ……スメラギさんは、できる限り死者を出さないために……?

 そのために、戦っているのだろうか。自分の指揮で人を殺し、それで被害を最小に抑えるために……。

 

 

(………わたし、は……)

 

 

 誰も殺さない。一人でも多く助ける。……けれど、誰も殺さずに10人を救うのと、1人を殺して12人を救うのは、それは……?

 

 

(私は……どうすれば…?)

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

――――フェイズ6。5機のガンダムは渓谷を抜けることで敵の司令部まで一気に向かい、そしてラストフェイズ。一気に司令部にいる戦力を壊滅させてカタをつける。

 

 

『まったく……こんなルートを通らせるなんて…』

 

 

 一番先頭を飛ぶキュリオスのアレルヤさんが呟きます。……それは確かに私も同感で、少し油断したら擦ってしまいそうです…。ちなみに、ウィングスラスターは可動式なので現在は後ろにたたんでいます。

 と、そこでロックオンが宥めるように言います。

 

 

『ボヤくなよ。敵さんは電波障害が起こっているポイントを重点的に狙ってる。隠密行動で一気に頭を叩くのさ。頼んだぜ、水先案内人―――ぅぉっ!?』

 

 

 その時、キュリオスの翼が岩壁をこすり、崩れた岩がデュナメスの頭に当たりそうになりました。ロックオンはなんとか避けましたが……。

 

 

『っぶねぇな、おい!』

『ヘタッピ、ヘタッピ』

 

 

 ハロにそこまで言われるなんて……。割とアレルヤさんってハロにキツく当たられてないです…? なんて考えていますと、アレルヤさんがあんまり悪びれずに言います。

 

 

『ドン・マイ』

『そりゃこっちのセリフだ……』

「……アレルヤさん、もっとガンダムは大切に扱ってください…」

 

 

 車と違って傷つかないからって、適当に操縦しちゃだめなのです…。

 

 

『あ、うん……悪かったよ』

『……セレネ』

 

 

 ロックオンが気遣うように呟いてくれますが、どうしても気分が暗くなってしまいます。殺すこと、殺さないこと。殺す覚悟を持って、多くの相手を無力化すること。

 どうするべきなのか、答えは見えなくて―――…。

 

 

 

『ったく、気にしすぎるなよセレネ。……ミス・スメラギは何もお前を否定しようとしたわけじゃねぇ。使うべきだと思ったら躊躇うな、そういうことだよ。オレたちはできることをやるしかないんだ』

 

「……ロックオン……ありがとう、です…」

 

 

 ……うん、きっとそう。

 心が軽くなるのを感じて微笑むと、モニターに映るロックオンも僅かに微笑みました。

 

 

『……お前は強いよ。恐れるだけじゃなく、立ち向かってるじゃねぇか』

「…………っ。…やっぱり、優しいです。ロックオンも……」

 

 

『女性限定でな。……で、オレ『も』ってことは他にも誰かいるんだろ?』

 

 

 優しい微笑みから一転。ロックオンが意地悪な笑みを浮かべてるのです…っ!?

 い、今のは特に誰かを意識なんて…っ。

 

 

「な、なにを言ってるのかわからないのです…っ!」

『そうか? それじゃあ試しに当ててみても――――』

 

 

「い、いらないのですっ! アレルヤさん、ロックオンに岩をお見舞いです!」

『いいのかい?』

『いいわけねぇだろっ!?』

 

 

 

 賑やかに騒ぎながらも、敵司令部はもうすぐです。

 

 

 

 

 

…………………

 

 

 

 

 渓谷を抜け、一斉に飛び出す5機のガンダム。敵モビルスーツ隊が出てきますが―――。

 

 

『……ヴァーチェ、目標を破砕する』

 

 

 ヴァーチェのGNバズーカとGNキャノンが極太の粒子ビームを放ち、敵基地を一直線に焼き払う。巻き込まれたMSが次々と爆散する。

 

 

『デュナメス、目標を狙い撃つ!』

 

 

 ロックオンのGNピストルが連続してビームを放ち、次々とヘリオンの腕や脚、頭が吹き飛ばされて無力化されていく。

 

 

『キュリオス、介入行動に入る』

 

 

 キュリオスのGNサブマシンガンが大量のビームを吐き出し、やはり次々と敵機を無力化する。

 

 

『エクシア、目標を駆逐する…!』

 

 

 エクシアのGNブレイドが閃くたびにMSの一部が吹き飛び、無力化されていく。

 そして、私は――――。

 

 

「……アイシス、目標を無力化します…!」

 

 

 速射モードの2丁ビームライフルが連続してビームを吐き出し、確実に敵機を無力化していく。……敵機の集中具合、そして機体性能を考慮。バーストモードを使う利点より欠点の方が多い……。そう、使うべきときに使えればいいから―――…。

 

 

「―――今はただ……狙い撃ちます!」

『っと、決め台詞を取られちまったな』

 

 

「リスペクトでオマージュなのです。……ロックオン、お手本をよろしくお願いします」

『了解だ、任せとけ――――狙い撃つぜ!』

 

 

 

 アイシスの2丁ビームライフルとデュナメスの2丁ビームピストルが絶え間なく火を吹き、その全てがヘリオンを撃ち抜く。――――そして、一機たりともコクピットを撃ち抜かれた機体は無かった。

 

 

『ゼンダンメイチュウ、ゼンダンメイチュウ』

『やるじゃねぇか、セレネ』

「……ロックオンの、おかげです」

 

 

 小さく、ほんとうに小さく呟く。

 ……聞えても、聞えなくてもいい。そう思った。けど、聞えていたらしいロックオンの笑みを見て私は少し頬を膨らませた。

 

 

『敵部隊、反応なし……』

 

 

 確認するように声を出すアレルヤさんに、ロックオンも呟きます。

 

 

『まだやるか……? それとも――――』

『―――…いや』

 

 

 そのティエリアの呟きを合図にしたように、降伏信号である白の信号弾が打ち上げられ、輝く。

 

 

『ハロ、ミス・スメラギに報告。敵部隊の白旗確認!』

「……ふぅ」

 

 

 

――――また、殺さなくて済んだ。

 

 

 今更のように震える手で操縦桿を握りなおし、大きく息を吐く。

 また一つ、戦争が終わった――――。

 

 

 

 ねぇ、アイシス……?

 

(……わたしは……わたしたちは、平和な世界に近づけているのかな……?)

 

 

 

 もちろん、答えはない。

 けれど、きっと―――――。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 MSWAD本部基地。

 窓辺に二人並んでコーヒーを飲んでいたグラハムとカタギリの前に、エイフマン教授がやってきて呟く。

 

 

「―――…終わったようだな」

「どうやら、AEUは賭けに負けたようです」

 

 

 姿勢を正し、答えるグラハムにカタギリはやや俯きつつ言った。

 

 

「それはどうかな……確かに25機以上のモビルスーツを失ったのは痛いけど、これでAEUは国民感情に後押しされて軍備増強路線を邁進する事になると思うよ。モラリアに貸しを作ったことで、PMCとの連携もより密接になるだろうしね」

 

 

 そこで、教授はコーヒーメーカーを操作しつつ呟く。

 ぴゅうっ、と間の抜けた音と共にコーヒーが出てくる。

 

 

「悲しいな……どんなに華やかな勝利を得ようとも、ソレスタルビーイングは世界から除外される運命にある……」

「プロフェッサーは……彼らが滅びの道を歩んでいるとお考えですか?」

 

 

「まるで、それを求めているかのような行動じゃ。……少なくとも、ワシにはそう見える」

 

 

 

 

 

 

 東京では、以前に重力ブロックの事故でソレスタルビーイングに助けられていた沙慈・クロスロードとそのガールフレンドであるルイス・ハレヴィが学校の大型モニターでモラリアでのソレスタルビーイングの武力介入のニュースを見ていた。

 

 

『――――まず最初は、昨日モラリア共和国で起こったモラリア軍とAEUの合同軍事演習に対するソレスタルビーイングによる武力介入のニュースについてです。非常事態宣言から無条件降伏までの時間は、僅か5時間あまりでした。現時点での死者は兵士、民間人含めて504名で、行方不明者の数を含めると犠牲者はまだまだ増えると予想されます』

 

 

「はぁー、もう終わってるし」

「秒殺かよ」

「すげーなガンダム」

 

 

 呟くほかの生徒たちの中で、ルイスはよく分からないと言いたげに呟く。

 

 

「沙慈、私たちってソレスタルビーイングに助けられたのよね…?」

「ああ、そうだよ……そうだけど……」

 

 

 沙慈には、ソレスタルビーイングの考えが理解できなかった。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 ミッションを終えた私たちはミッション開始前に合流した無人島に帰還――――したのですが、空気は重いものでした。モラリア・AEU・PMCトラストの各部隊を撃破し、合同軍事演習を阻止。AEUが軍備増強路線を邁進しても、モラリアが更に巨額の資金を軍事開発に回すとしても……どんな大部隊が相手だろうともソレスタルビーイングは、ガンダムは介入を止めないと示すことが必要。それが世界の変革の礎になる―――だから問題は、過程ではなく結果だった。

 

 

 夜の砂浜。ロックオンが刹那を呼び、ティエリアが無言で後に続き、私とアレルヤさんが慌てて追いかけてきた結果、ガンダムマイスターが5人集っていました。

 

 

 

――――そして、ロックオンが刹那を殴りつけた。

 

 肉を打つ湿った音が静かな砂浜に響き、刹那が砂浜に倒れこむ。

 

 

 

「――――刹那っ!?」

 

 

 慌てて刹那に駆け寄ろうとしますが、ロックオンは静かに腕で私を止めると首を横に振りました。

 

 

「……黙ってろ。お前も分かってるんだろ、セレネ」

「―――…っ! ……でも、理由も聞かずに殴らなくても…っ」

 

 

 理屈は分かっていた。

 尻すぼみに声が小さくなる私をロックオンはやんわりとどかし、刹那に声を掛ける。

 

 

「……刹那、殴られた理由は分かるだろう? ガンダムマイスターの正体は、太陽炉と同じSレベルでの秘匿義務がある。何故敵に姿を晒した」

 

 

 刹那は何も答えない。

 

 

「理由ぐらい言えって」

 

 

 何か思うところがあるのか、刹那は視線を逸らしたまま口を真一文字につぐんで何も言う気配がない。その反抗的にしか見えない態度に、ロックオンの眉がピクリと跳ね上がります。

 

 

「……強情だな。お仕置きが足りないか」

 

 

――――その瞬間、カチャリという音が響いた。

 

 

 銃を構える音。ティエリアが刹那に拳銃を向ける。その姿に躊躇いは感じられず――――。

 

 

「言いたくないなら言わなくていい。君は危険な存在だ――――」

「――――…やめてください…っ!」

 

 

 私は、咄嗟に銃口の前に飛び出していた。

 ティエリアさんの冷たい、刺すような視線に身体が震える。

 

 

「……そこを退け、セレネ・ヘイズ。邪魔をするのなら君も―――」

「―――…退け、セレネ」

 

 

 いつの間にか立ち上がった刹那が私を押しのけ、砂浜に尻餅をつく。

 刹那も銃をティエリアに向けていた。その瞳には、殴られていたときとは違う、揺ぎ無い決意のようなものが宿っていて―――。

 

 

「―――俺はエクシアからは降りない。俺は、ガンダムマイスターだ」

「そのマイスターに相応しくないと言っているんだ」

「銃をおろせ、刹那! ティエリア!」

 

 

 ロックオンの制止も聞かず、二人は互いの銃口に睨んで牽制しあう。

 

 

 

 

――――…どう、して…?

 

 

 どうして、私たちまで争わないといけないの…?

 涙が滲みそうになり、けれど必死に堪える。今は、泣いている場合じゃない。

 

 どうしてこうなったのか。刹那がコクピットから出た理由が分からないから。

 どうして刹那は答えたくないのか――――。

 

 

 

 再び、二人の間に飛び込む。……身体が竦む。

 けれど、必死に刹那の瞳を見て叫んだ。

 

 

「……おねがいします……こたえてください、刹那…っ! どうして、なにも言ってくれないのです……? 私も……私たちも…! ガンダムマイスターです…っ!」

 

「………っ」

 

 

 刹那が僅かに顔を俯け、銃口を下げる。

 僅かな静寂の後、聞えたのは小さな声だった。

 

 

「……俺はあの時、刹那・F・セイエイではなかった」

「刹、那……?」

 

 

 刹那は前に出ると私の横に立ち、未だ銃を構えるティエリアに向かって言う。

 

 

「……ティエリア・アーデ」

「……なんだ?」

 

 

「……理由を話すには、秘匿義務に抵触する」

「…………」

 

 

 

 刹那ではなかった。秘匿義務に抵触する。

 ………刹那・F・セイエイはコードネーム。マイスターになってからの名前。

 そしてマイスターには過去を秘匿する義務があり、仲間であっても無闇に話すものではない。つまり刹那は、あの行動が刹那の過去に関わるものだと暗に告げていた。

 

 顔を顰め、何かを考えるティエリアに、これまで黙っていたアレルヤが言う。

 

 

「命令違反をした僕が言うのもなんだけど……ぼくたちはヴェーダによって選ばれた存在だ。刹那がガンダムマイスターに選ばれた理由はある」

 

 

 ティエリアの銃口が僅かに下がる。

 しかしティエリアは刹那から視線を外すことはせず、言った。

 

 

「……これだけは答えてもらおう。戦争根絶―――我々の計画と君の過去、どちらを優先する」

「戦争根絶だ」

 

 

 即座に答えた、強い意志を秘めた刹那。

 ティエリアはまだ納得していないような表情で、しかし銃を仕舞う。

 

 

「……もしその言葉が偽りだったなら。次こそは君を庇う人間ごと躊躇わずに撃つ」

「…………」

 

 

 一瞬、ティエリアさんの冷たい視線が私に向けられ、足が震えた。

 ティエリアさんがそのまま背を向けて歩き出すと、私は砂浜に崩れ落ちて安堵の溜息を吐いた。

 

 

「………ぁぅ……怖かったのです……」

 

「ったく、無茶しやがって……」

「ハラハラしたよ」

 

 

 ロックオンとアレルヤさんもホッとした表情で呟き、私は刹那に顔を向けて―――。

 俯いた刹那が、小さく呟く。

 

 

「……もうあんな真似はするな」

「…っ!?」

 

 

 どういう意味なのか分からなかった。

 けれど、それは私が邪魔だったというような意味に聞えて―――。

 

 

「……刹、那……どうして…?」

「……俺を庇う必要はない」

 

 

「―――あります…っ! 私は―――…」

 

 

 仲間、だから?

 一瞬の逡巡。その間に、刹那は常になく強い口調で叫んだ。

 

 

「―――ない…っ! ……余計な真似は…するな」

「……っ」

 

 

 視界が滲む。

 どうしてか、堪らなく悲しかった。涙が止まらない。

 

 このまま此処にいたら、みっともなく色々なことを泣き叫んでしまいそうで、ゆっくり立ち上がった私は、森に向かって走った。

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「…………」

 

 

 涙を流して走り去ったセレネの背中を呆然とした様子で見送る刹那の頬を、再びロックオンの拳が殴りつけた。

 

 

「殴られた理由は分かってるだろうな、刹那」

「…………」

 

 

 再び答える気配がなく、しかし今度は単に呆然としているだけのような刹那に、ロックオンは呆れた様子を隠そうともせずに頭に手をやった。

 

 

「じゃあ、何であんなことを言った?」

「………」

 

 

「……ったく。まさかお前、本気で分かってないのか……?」

「………」

 

 

 ガンダム馬鹿め。と心の中で呟いたロックオンは、どうするべきか頭を抱えた。この調子だと、もう一人のガンダム馬鹿であるセレネも何を考えてるのか分かったものじゃない。ただ、間違えようも無いと思うのだが……。

 

 アレルヤに視線で同意を求めると、苦笑いしつつ頷いた。

 ヒントを出していいものなのか。少々悩んだロックオンだったが、本気で呆然としている刹那があまりにも不憫な気がしたので一言だけ呟いた。

 

 

「刹那、お前は自分がどうしてあんなことを言ったのか良く考えろ。……もう怒る気もしねぇ。いくぞ、アレルヤ」

 

「了解……刹那、とりあえずちゃんと休みなよ」

 

 

 

 一人、夜の砂浜に残された刹那は頬と、そして胸の痛みを感じながらしばらくそのまま転がっていた。

 

 

 

「…………俺、は……なぜ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




おまけ


キャラ崩壊警報(刹那)





イアン「お、おい大変だ! 世界の主要都市7箇所で同時多発テロが――って、刹那!? 他の奴らはどうした…!? というか何でそんな場所で寝とるんだ!?」

刹那 「……ガン、ダム」


イアン「………おーぃ? 刹那ー?」
刹那 「……ガン…ダム…っ」


イアン「………ちゃんとコンテナに戻って寝ろよ?」
刹那 「……ガンダム…っ」


イアン「……ダメだこりゃ」
刹那 「ガン……ダァァァァム…っ!」





刹那 「…………………セレネ」



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