機動戦士ガンダム00 変革の翼   作:アマシロ

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時間ができましたら、増量予定です(>_<)


第24話:終わりなき詩

 

 

 国連軍の輸送艦が星の海を航行している。ガンダム掃討作戦のために襲撃したGN-X二十六機、ガンダムアイシス五機、鹵獲した新型一機を乗せて戦闘宙域まで運んだ三隻の輸送艦。しかし、途中から現れた近接型ガンダムの猛追を受けてそのうちの二隻は撃沈され、最終的に残ったのは帰投してきた十一機のGN-Xのみ。

 

 生き残った旗艦のブリッジで、カティ・マネキン大佐は大型モニターから星の海を、多くの仲間が散っていった虚空を眺めていた。

 輸送艦二隻、GN-X十五機が散り、そしてガンダムアイシスの五機と鹵獲したガンダムも敵ガンダムとの相打ちに消えたとの報告を受けている。

 

 

 大敗だ。

 敵のガンダム二機を撃破したとはいえ、こちらに残った戦力は先の戦闘で敵のガンダムアイシスに無力化され、撤退してきた機体のみ。こちらの戦力は三分の一にまで減らされてしまっている。最も猛威を振るっていたガンダムアイシスを撃破したとはいえ、ユニオンのグラハム・エーカー中佐もガンダムアイシスとの戦いでの無理な機動によるGが祟ったとのことで既に戦線離脱してしまっている。

 

 

 

(……あんなものと交戦できたのは、彼とアイシスのパイロットくらいのものだが……)

 

 

 戦闘映像は見させてもらったが、『ロシアの荒熊』ことセルゲイ・スミルノフ中佐が絶句するほどの戦闘。専門外であるカティにも理解不能なレベルのものだと理解できるほどの、そしてスローモーションにしなければ何をしているのか分からない戦いだった。

 あんなものを見せられては、「ゆっくり休んで下さい」以外のどんなコメントもしようがないというものだ。

 

 そしてソレスタルビーイングの離反者から提供されたというガンダムと、専属パイロットだという少女も戻ってきていない。

 

 

 

 最も大きな戦力だった者たちが離脱した状況……実際のところ、あの赤く発光する特殊機能が発動されたガンダムに勝つ作戦が浮かばなかった。

 

 

 ブリッジのドアが開き、人革連所属部隊の隊長であるセルゲイ・スミルノフ中佐が現れる。彼はカティと軽く目礼を交わし、彼女の隣の指揮シートに腰を下ろす。各陣営の代表者のために設置された席であるが、先程も言ったようにグラハム・エーカー中佐が戦線離脱してしまったので一つは空席である。

 

 そして、モビルスーツ部隊の総部隊長でもあるセルゲイが口を開く。

 

 

「今後の作戦行動についてだが……三十二機中、残ったのはたったの十一機。鹵獲した機体も、提供された機体も失ってしまった。それに、ガンダムの新たな能力……マネキン大佐、私は現宙域からの撤退を進言する。このままではいたずらに兵を失うだけだ」

 

「私も同意見です。が……」

 

 

「が?」

「国連の司令部は増援を送ると言っています」

 

 

「増援だと? まさか、GNドライヴ搭載機がまだあるというのか」

「わかりません。到着次第、第二次攻撃を開始せよとのことです」

 

 

 と、そのとき。Eセンサーを監視していたオペレーターが声を上げる。

 

 

「大佐、本艦に接近してくるGN-Xを補足しました」

『――――すみません、大佐。やられちゃいました』

 

 

 モニターにサブウィンドウが開き、パトリック・コーラサワーの顔が映し出される。カティは僅かに微笑み、小さく呟く。

 

 

「心配させおって……バカ者が……」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

『指示通り、GN粒子を散布させつつ四つの衛星を四方に飛ばした』

「ありがとう」

 

 

 通信ウィンドウに映るイアンに、スメラギが答える。

 

『しかし……こんなんで敵さんを騙せるのか?』

「気休めです、アステロイド周辺は監視されているでしょうから」

 

 

 衛星は発見され、そして陽動だと看破されるだろう。

 それでも、国連軍は哨戒部隊を差し向けるはず。その報告を受けるまで、その僅かな時間でも稼ぎたかった。

 

 

「打てる手は全部打っておかないと……ガンダムの状況は?」

『キュリオスは背中の飛行ユニットを取り除けば出撃は可能だ。ヴァーチェは外装を取り払ってナドレで出撃させる。専用のシールドも用意した』

 

 

 そして、武器はアイシスの使っていたGNビームライフル……。

 僅かに浮かびかけた感傷を、無理矢理に押さえ込んで訊ねる。

 

 

「どのくらいで終わります?」

『最短で八時間はかかる』

 

 

「……六時間で、お願いします」

『……わかった』

 

 

 通信が切れ、スメラギはシートにもたれて大きく息を吐く。

 ……考えないようにしていたことが、頭をよぎる。

 

 ロックオンも、そしてセレネも帰ってこなかった。

 

 

 ロックオンは完全に生死不明。セレネはビームサーベルでコクピットを貫かれた。

 刹那が回収したアイシスのコクピットにぽっかりと開いた穴に、知らなければそこがコクピットだと分からない虚空。そして大破したデュナメス。GNアームズの砲台の残骸。

 

 方向性は違えど、プトレマイオスのムードメーカーだった二人が一度にいなくなってしまった。

 

 

 スメラギはなんとか意識を引き戻し、コンソールを操作してメインモニターに現戦力のデータを表示する。キュリオス、ナドレ、エクシア……。アイシスのGNパックは全て回収し、フォートレスパックを除けばどれもほとんど無傷ではあるのだが、セレネがいない以上は予備パーツくらいの役割しか期待できない。

 

 

(現戦力で期待できるのは、強襲用コンテナとエクシア、GNアームズ……頼みのトランザムも制限時間がある……)

 

 

 セレネが使用したGNパックによる強引な粒子回復は、GNパックの操縦をAIにやらせるのでは心もとない。頼りにできるか分からないものを頼りにトランザムを使い切って、失敗しましたでは済まされないのだ。仲間の命がかかっている。

 

 そして、エクシアも……アイシスの前で静かに涙を流していた刹那の姿を思い出すと、心配になる。ヤケになって刹那まで命を落とされては困るのだ。

 

 

 やはり、現行戦力で国連軍と交戦するのは、リスクが……。

 と、メインモニターに通信が入り、回線を開くとティエリアの顔が映し出された。

 

 

『スメラギ・李・ノリエガ……次の作戦プランを提示してください』

「……まさか、戦おうというの……?」

 

 

『もちろんです。敵の擬似GNドライヴ搭載型を撃滅させれば、世界に対して我々の力を誇示することができる。計画を継続できる』

「それは、そうだけど……リスクが大きすぎるわ。敵の援軍が来る可能性も……」

 

 

『わかっています。ですが、これは私だけの気持ちではありません。マイスターの総意です』

「……アレルヤと、刹那も……」

 

 

『頼みます』

 

 

 それだけ言って、回線が切れる。

 スメラギはしばしモニターを見つめ、静かに立ち上がる。

 

 

(……彼らは、決めた……)

 

 

 セレネとロックオンの仇討ち、ということもあるだろう。しかし、彼らは彼らの意思で選んだ。戦争根絶のために、戦うことを……。

 スメラギは、期待に応えなければならない。彼らの指揮を執る者として。戦術予報士として。仲間として。仲間の命が危険にさらされることが、予想できるとしても……。

 

 

 

 

…………………

 

 

 

 

 刹那は、誰もいなくなってしまったセレネの部屋を訪れていた。

 ……もしかたら、帰って来ているのではないか……そんな思いが、願いが捨てられなかった。

 

 ノックをしても、返事はない。

 扉が開くと、僅かに漂う花のような香りとともに、つい数時間前までセレネがいたのだろう部屋がそのままの姿であった。

 

 

 

「……レナ」

 

 

 呼びかける。ただ、もちろん何も反応などしてはくれない。

 セレネも……そして、ロックオンもいなくなってしまった。

 

 ふと、テーブルの上に赤い薄手のスカーフが置かれていることに気づいた。

 刹那は、何気なくそれを手に取り――――紙が一枚こぼれ落ちた。

 

 

「……っ」

 

 

 その紙を掴み取り、裏返すと。小さな、柔らかい文字で短く一言だけ綴られていた。

 

 

 

――――刹那へ。お礼、です。不恰好でごめんなさい。

 

 

 

 手作り、なのだろう。

 お礼ということは、刹那が蒼いスカーフをあげた頃から……。

 

 

(不恰好な、ものか……)

 

 

 唇を噛み締め、涙を堪える。

 拳が砕けそうなほど強く手を握り締め、呟く。

 

 

 

「……死の果てに、神は……いない……っ」

 

 

 たとえ神がいたとしても、人間を扇動したりはしない。

 死の先には、暗闇しかない。死をもって自らの理念を輝かせても、それは一瞬だけのものでしかない。すぐに忘れられ、暗闇の中に消える。

 

 ……そうだ。だから、俺たちは存在する事に意義があった…。

 

 

 

「……存在、すること……生きる、こと……」

 

 

 生きていて、ほしかった……。

 けれど、俺は……まだ……。

 

 

「………生きる……亡くなった者たちの想いを背負って……世界と、向き合う………神ではなく、俺が……俺の意志で……っ」

 

 

 スカーフを首に巻きつけて、呟く。

 

 

 

「……レナ……俺は、忘れない………忘れさせはしない……っ」

 

 

 

 俺は、生きている。

 存在している。ガンダムを託され、戦争根絶を求め。

 ロックオンの……そして、レナの命を背負っている。

 二人の想いを、背負っている。

 

 そうだ。だから、俺は……戦う。

 俺の意志で。

 

 

 

 

 

…………………

 

 

 

「そうっすか。刹那たちは戦う方を選んだんすか」

 

 

 プトレマイオスのブリッジで、どこかそうなると予期していたような、しかし撤退の方が気楽だったな、と言いたげな曖昧な笑みのリヒティが呟く。

 そして、ラッセがそれを読み取ってわざとらしく意地の悪い笑みを浮かべる。

 

 

「全員、覚悟を決めておけよ」

「おっかねぇの」

「でも、やるしかないのよね」

 

 

 ラッセの言葉が単なる脅かしではないことを察しているクリスティナは嘆息し、そして耳慣れない音が聞えて振り向き、フェルトがペンを使って何かを書いている事に気づいた。

 

 

 

「なにしてるの、フェルト?」

「……手紙を」

 

 

 フェルトは僅かに一瞥しつつそう答えた。

 

 

「手紙?」

「うん……天国にいるパパとママ……それから、セレネと……ロックオンに……」

 

 

 クリスティナはハッとしそうになる挙動をなんとか押さえ込む。フェルトがロックオンに淡い恋心を抱いていたことも、そしてセレネが大切な友達だったことも知っている。クリスティナだって辛い。けれど、フェルトはもっと……。

 

 しかし、プトレマイオス一のお調子者が悪ふざけめいた口調で言った。

 

 

「縁起悪いなぁ、遺書なんて」

「リヒティ!」

「―――違うの!」

 

 

 フェルトが珍しく大きな声をあげて、遮った。

 

 

「……私は、生き残るから……当分会えないから……ごめんなさいって……」

「……そっか……」

 

 

 クリスティナがフェルトの頭を撫で、ラッセがフェルトに言葉を投げる。

 

 

「その意気だ、フェルト」

「……ロックオンと、約束したから」

 

 

「守れよ、その約束」

「うん」

 

 

 

 

………………

 

 

 

 

 キュリオスが格納されているコンテナのレストルームに、ティエリアが訪れた。

 ……無論、本来は何らおかしなことではないが、なんとなく何らかの意図を感じたアレルヤはティエリアに問いかけた。

 

 

「ナドレの整備は?」

「終了した」

 

 

「……しかし、トライアルシステムもなく、粒子貯蔵量も少ないナドレでは……」

「それでもやるさ」

 

 

 ティエリアは、きっぱりと言い放つ。

 

 

「私はロックオンと、セレネの仇を討たねばならない……」

 

 

 アレルヤには、いささか気負いすぎなようにも思えた。けれど、ティエリアならきっと大丈夫だと、そう信じられた。だからこそ、穏やかに言う。

 

 

「あまり熱くならない方がいい」

「そういうわけにはいかない」

 

 

 予想通りの生真面目な答えに、アレルヤは苦笑を噛み殺した。

 

 

 

 

…………………

 

 

 

 

 強襲用コンテナの一つに、大破したガンダムデュナメスが横たわっていた。胴部と胸部を残してほとんどが失われており、コクピット部が消滅しているアイシスとは違った意味で痛々しい。

 

 デュナメスのGNドライヴは未だにその背面に装着され、コンテナを通じてプトレマイオスに粒子を供給している。

 

 

 そして、デュナメスのコクピットハッチ。その縁に立ち、パイロットスーツ姿の刹那がコクピットを見下ろしていた。コンテナ内に空気がないため、バイザーは下ろされている。

 

 

『……刹那』

 

 

 刹那のヘルメットに、少女の声が聞こえた。振り返ると、ノーマルスーツ姿のフェルトがこちらに近づいてきていた。

 

 

「フェルト・グレイスか」

 

 

 軽く手を取って着地を手伝い、訊ねる。

 

 

「どうした?」

『手紙を書いたの、ロックオンに』

 

 

 フェルトはそう言って刹那に手紙を見せた。少女らしい癖のある、しかし几帳面に書かれた宛名が見えた。フェルトはコクピットの中に入り、持ってきた手紙をそっとシートの上に貼り付ける。

 

 

『……刹那は、手紙を送りたい人はいる?』

 

 

 刹那は突然の質問に、表情には出さなかったが戸惑いを覚えた。

 手紙を送りたい人――――。

 

 もう、見ることは叶わない少女の笑顔。

 

 

「……ああ」

『……うん』

 

 

 フェルトも、刹那がそう答えることを望んでいたのだろう。悲しそうに、それでも確かに微笑んだフェルトに刹那は小さく頷き、言った。

 

 

「……だから。寂しいのは、あいつだ」

 

 

 フェルトが振り返る。

 あいつは、もう手紙を出す事もできない。想いを伝えることもできない。

 

 

「ハロ、そばにいてやってくれ。ロックオン・ストラトスのそばに……」

 

 

 手にしていたハロをそっとコクピットの奥に向けて放し、中にいたフェルトが受け止めた。

 

 

『……いてあげて、ハロ』

『了解、了解』

 

『ありがと』

 

 

 フェルトは微笑み、彼女の中の想いを託すかのようにハロを抱きしめた。

 強く、強く……。

 

 

 

『――――Eセンサーに反応、敵部隊を補足しました!』

 

 

 

 艦内に、警報音が響き渡った。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 敵部隊、総数十三機……戦闘可能宙域まで、六百三十秒。

 Eセンサーからのデータが次々とモニターに表示される。

 

 

 

『―――スメラギさん、十三機の中にとてつもなく大きいものがいます!』

「大きいもの?」

 

 

 

 クリスティナの報告にスメラギが顔を向ける。クリスティナはその表情を読み取り、言った。

 

 

『メインモニターに最大望遠映像、出します』

 

 

 そこに映し出されたもの。それを見てスメラギたちは息を呑む。

 それは――――巨大な金色の機体。左右に展開した十二機のGN-Xと比較するに、縦は二倍、横は四倍は軽く越えているだろう。機体の中央にはスリットがあり、その上には二門のビーム砲。そして、機体の向こうには赤いGN粒子の輝き……。

 

 

『こ、これは……』

 

 

 フェルトが驚嘆の息をもらし、リヒティが振り返ってスメラギに訊ねる。

 

 

『これ、戦闘艦ですか?』

「違うわ。あれは……擬似太陽炉搭載型の、モビルアーマー……!」

 

 

 

 その瞬間、無造作の金色の機体のスリットが開き、その奥から粒子ビームの砲口が現れた―――それに気づいた時には、メインモニターが閃光で埋め尽くされた。

 

 

『――――粒子ビームが来ます!』

「あの距離から―――!?」

 

 

 

 直後、リヒティの操艦で艦が大きく右へ傾き――――プトレマイオスが激震した。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

『―――第二出力部に、全ての粒子供給を回して!』

『第二射、来ます…っ!』

 

 

 

―――……ここは、どこだろう?

 

 

 

 わからない。わからないけれど、声だけが聞こえてくる。

 

 

 

『―――これ以上は、いかせない!』

『ハッハッハッハハァッ! 悪いな、アレルヤ! 俺はまだ死にたくないんでな!』

 

 

――――…わたしは………。

 

 

 

『……やらせない、やらせるものか…!』

『射程に入った!』

 

 

 

――――だれ…?

 

 

 

『へっ、どこを狙って―――』

『―――トレミーか!』

 

 

 

――――…ああ……。

 

 

 また、光がきえていく。

 命の輝きが、暗闇に呑まれて行く。

 

 

 

『スメラギさん、メディカルルームが……!』

『勝手に逝くな、馬鹿者が…っ!』

 

 

 

――――…まただ。また、涙が溢れてくる。

 

 

 

 

『システムに障害発生! GNフィールド、再展開不能っ!』

『くそ…っ!』

 

 

 

――――いやだ。こんな世界は。こんな……。

 

 

 

 

 

『―――プトレマイオスが……! よくも……っ! ――――トランザム!』

『フェルト、デュナメスの太陽炉に不具合があるわ――――』

 

 

 

 

『計画のためにも…っ! セレネの……そして――――ロックオンのためにも!』

『………フェ、ルト……もうちょっと……おしゃ…れ、気をつかってね………』

 

 

 

――――……いや、なのに…っ。

 

 

 

『………セレネと、ロックオンの分まで――――生きてね……』

 

 

 

 

――――……もう、わたしには……。

 

 

 

 

『………おねがい……』

 

 

 

 

『………お願い……世界を………変えて……』

『クリスティナ・シエラぁぁ―――っ!』

 

 

 

 声が、聞こえた。

 

 

 

『――――エクシア、目標を駆逐する!』

 

 

 

 

――――刹那……っ。

 

 

 

 あきらめ、たくない。

 せめて、せめて……とどいてほしい。

 

 これが、さいごになっても……。

 

 

 

 

………ガン…ダム………アイシス………もく、ひょう…を………

 

 

 

 

 

 

 

――――System complete……start “L7”――――

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 強襲用コンテナが金色の機体に大型粒子ビームを浴びせ、しかし相手のGNフィールドのあまりの強固さに虚しく弾かれる。

 

 間近から見ると金のエイのような形の敵モビルアーマーの背後に回ると、七基ものGNドライヴが搭載されているのが見え、刹那は苛立ちと焦りを込めて叫ぶ。

 

 

「攻撃が効かない!」

『なら、懐に飛び込んで――!』

 

 

 

 強襲用コンテナのコクピットに乗るラッセが叫び、強襲用コンテナが旋回し、敵に向けて突進していく。

 

 

『―――直接攻撃だ!』

 

 

 強襲用コンテナが前面にGNフィールドを集中展開し、敵の側面に向けて突っ込む。敵モビルアーマーが振り向き、互いのGNフィールドが正面から激突する。

 

 敵の強固なGNフィールドに、強襲用コンテナがじりじりと機首を押し込む。そして、コンテナに装備された粒子ビームの砲口がGNフィールド内に侵入を果たし―――。

 

 

 

 敵のモビルアーマーが動いた。敵機の両側面が開き、反転して腕になる。そして、その両腕の先端についた鋏状の手が強襲用コンテナの先端を掴む。

 

 

「なにっ!?」

『―――ふははははははっ!』

 

 

 突如、声が強制的に回線に割り込んでくる。おそらく……いや、間違いなく金色のモビルアーマーのパイロットの声―――!

 

 

『忌々しいイオリア・シュヘンベルグの亡霊どもめ……!』

 

 

 強襲用コンテナが軋む。敵が、コンテナを真っ二つに引き裂こうとしている。

 

 

『―――この私、アレハンドロ・コーナが、新世界への手向けにしてやろう!』

『冗談!』

 

 

 ラッセの声と共に、強襲用コンテナの粒子ビーム砲が火を噴く。しかし、ほぼゼロ距離からの射撃にも関わらず、何らかのコーティングなのか、装甲にまでGNフィールドを展開しているのか、敵モビルアーマーの腕には傷一つつかない。

 

 

『くそっ、刹那!』

「了解!」

 

 

 

 GNアームズのコクピットに移動したラッセが、強襲用コンテナから自機を分離。続いて、ガンダムエクシアが飛び出す。その直後、強襲コンテナが左右に引き裂かれ、爆発する。

 

 

 刹那はGNソードを展開し、金色のモビルアーマーに向ける。

 強襲用コンテナは、敵に何ら損傷を与えられなかった。敵のモビルアーマーの力は完全に未知数………だが……!

 

 

 それでも、俺は……!

 仲間たちの、ロックオンの、………レナの、ために……!

 

 戦争根絶のため、平和な世界のために……!

 

 

 

 

「―――――エクシア、目標を駆逐する…ッ!」

 

 

 

 

 

 




次回予告


キュリオスが散る、ナドレが散る、エクシアが散る。生と死が交錯していく……。
次回、「刹那」。破壊から再生へと至る変革に、願うものは何か。


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