ここまで、自爆しまくりで、目いっぱい三枚目を演じてきた宗介くんの、最初にして最後の見せ場です。
初めて見る、カッコイイ宗介くんに、三葉の心は・・・・・・
「大丈夫か?三葉?」
さ・・・相良くん?ど・・・どうして?3年後に居るはずの・・・あなたがここに・・・・
「伏せろっ!」
急に、相良くんが私を抱えたまま、地面に倒れ込む。その頭のわずか上を、銃弾が通過する。まだ、仲間がいたようだ。
相良くんは、すかさず反撃!拳銃を3発放ち、あっという間に、襲って来た3人を倒した・・・・す・・・すごい!
「宗介!」
林の中から、今度は、かなめが走ってくる。
「千鳥!三葉を頼む!」
そう言って、相良くんは私の背中を押す。私は、走って来た、かなめの胸に飛び込む形になる。そして相良くんは、また、林の中に走って行った。
「大丈夫?三葉!・・・今、解くからね!」
かなめは、まず、私の猿轡を外してくれる。
「か・・・かなめ・・・ど・・・どうして?」
「ふふ・・・本物の、あなたに会うのは初めてね!」
そう言いながら、かなめは、私の縄を解いてくれる。やっと、体が自由になった。
「?!」
途端、木が薙倒される音がして、前方の林の中から、巨大な人型兵器が3機現れる。
「あ・・・アーム・・・スレイブ?」
3機のASは、私達に向かってくる。思わず、悲鳴をあげそうになる私に、かなめが言う・・・
「大丈夫よ!宗介が守ってくれる!」
すると、林の中から、1発の砲弾が飛んで来る。それは、目の前のASを捉え、ASは瞬く間に炎に包まれる。
「え?」
そして、林の中からもう1機、白いASが現れる。
「あ・・・あれは?」
「アーバレスト・・・宗介の機体よ!」
時間は少し遡った3年後の未来、宗介と千鳥を迎えに来た、ミスリルのヘリの中で・・・・
「実は、この間のダナンでの一件、上から報告を求められたんで、信じてもらえないと思ったけど、入れ替わりの事話したのよ・・・そしたら、とんでも無い事が分かったの!」
「だから、それは何だ?」
「宗介、あんた糸守で、三葉を監視してる、胡散臭い連中と遭遇したって言ってたわよね?」
「ああ、肯定だ!最近は、全く姿を見せなかったがな!」
「そいつら、アマルガムの手先だったのよ!」
「なに?・・・じゃ・・じゃあ、三葉は?」
「そう、ウィスバードだったのよ!」
「ええ~っ?」
千鳥が、驚きの声をあげる。
「テッサが、宗介と入れ替わった三葉と接触した時、2人が意識を失ったのは、急激な共鳴現象が発生したためだったのよ!」
「え?・・・・でも、あたしと接触しても、何にも無かったけど・・・・」
「詳しい事は、私も分からないけど・・・・そこに更に、ダーナも干渉して来たらしいの・・・」
そうか・・・それで、三葉はダーナの所に行ったのか?
「記録上、3年前のティアマト彗星の落下で、三葉は死んだ事になってる・・・・でも、実は、三葉だけは生き残っていたの!彗星落下直前に、アマルガムの手先によって連れ去られていたの!」
「じゃ・・じゃあ、三葉は、今も生きてるの?」
その千鳥の問いに、マオは俯いて首を振る。
「残念だけど・・・・攫われた後、頭の中を散々引っ掻き回されて・・・・その苦痛に耐えかねて、自害したそうよ・・・・・」
「そ・・・そんな・・・・」
「待て、マオ!それでは、例え彗星落下から、糸守の住民が助かっても・・・・」
「そう、三葉だけは助からない!同じ歴史を歩む事になる・・・・・」
「そんな・・・な・・・何とかならないの?」
「無理だ!彗星落下は今日だ!今から三葉に伝える術は無いし、仮に伝えられても、相手がプロでは三葉ではどうすることもできない!」
「そんな・・・・そんな・・・・・」
千鳥は、既に泣き出しそうだ。
「それを、何とかするために、お前らを呼びに来たんだよ!」
「何?本当か?クルツ!」
「ああ、テッサが待ってる、急ぐぞ!」
「た・・・大佐殿が?」
ヘリは糸守・・・いや、かつて糸守だったところの、御神体がある山の頂上の、窪地の中に着陸した。中央にある巨木の所に、大佐殿とカリーニン少佐が立っていた。
「大佐殿!」
「サガラさん!」
「宗介!今からお前達には、3年前のこの場所に飛んでもらう!」
「え?」
「ええ~っ?」
俺と千鳥が、揃って声をあげる。
「時間が無いので、手短に説明します。ここの地下には、ある装置が埋まっていたんです。一言で言うと・・・そう、タイムマシンのような物が・・・・」
『た・・タイムマシン?』
ハモった。
「そうは言っても、かなり限定付の物です。移動できるのは同じ場所、時間間隔は1年単位で、移動していられる時間は30分、それを過ぎたら、強制的にここに戻されます。」
な・・なんだと?このブラックテクノロジーは、時までも越えられるのか?
「更に、使えるのは1度限り・・・・時を越えられるのは、ラムダ・ドライバを搭載した機体・・・・それも、ウィスバードが同乗している事が前提です。」
「はは・・・制約だらけじゃない・・・そんな条件、中々揃えられな・・・あ・・・」
「そうです!今、それができるのは・・・・かなめさん、あなたと相良さん、そしてアーバレストだけなんです!」
「た・・大佐殿、でも・・・何故、こんな物が、ここにある事が解ったのですか?」
「ダーナが教えてくれたんです!先日、サガラさんと入れ替わった三葉さんは、ダ-ナとコンタクトしました。その時に、三葉さんの隠れた記憶の一部が、伝わっていたんです!」
そ・・・そんな事が・・・・・
「急いで下さい!さっき言ったように、年単位でしか移動はできません。もう今の時間、三葉さんは、襲われてるかもしれない・・・・・
「了解しました!・・・千鳥!」
「う・・・うん!」
俺と千鳥は、輸送ヘリに積んで来たアーバレストに乗り込み、巨木の前に立つ。
「今から、装置を作動させます!ワープホールが目の前に現れますから、サガラさんは、3年前の三葉さんの所に行きたいと、ラムダ・ドライバを作動させて強く念じて下さい!」
「了解です!」
大佐殿は、手に持ったコントローラーのような物を操作する。すると、巨木を覆い隠すように、巨大な光のトンネルが姿を現す。
「いくぞ!千鳥!」
「うん!」
「アル!」
『イエス!相良軍曹!』
「待ってろ!三葉!今、助けに行く!」
アーバレストが、光の中に吸い込まれていく・・・・・・
そして、3年前、彗星落下直前の糸守・・・・・
「という訳で、助けに来たわよ!三葉!」
「か・・・かなめ・・・相良・・・くん・・・・」
目に、涙が溢れてくる・・・・・夢じゃ無い、現実のかなめと、相良くんが、ここに居る・・・
「み・・三葉・・・・」
ようやく、起き上がる事ができたテッシーが、辛そうに私に声をかける。
「て・・テッシー、今の内に、みんなの所へ避難してっ!」
「お・・・お前は?」
「三葉は、あたし達に任せてっ!必ず助けるから!」
そう答えるかなめに、怪訝そうにテッシーは尋ねる。
「あ・・あんたら・・・は?」
「せ・・正義の軍隊よ!」
代わりに、私が答える。
「せ・・・正義の・・・軍隊~?」
「お願い!私を信じて!必ず、私も後から行くからっ!」
「あ・・ああ・・・分かった!か・・・必ずやぞ!」
そう言って、テッシーはよろけながら、糸守高校の方へ走って行った。
残り2機のASは、アーバレストに銃撃を浴びせる。しかし、アーバレストはこれを難無く交わし、続け様に砲弾を放つ。あっという間に、残り2機のASも撃破される。
「す・・・すごい・・・・・」
目の前に聳え立つアーバレストを、私は放心して見つめていた・・・・・こ・・・これが、相良・・・宗介・・・・・・
「?!」
安堵も束の間、突然、アーバレストの銃が破壊される。その直後、林の中から、銀色で、頭に髪の毛のような物が付いたASが飛び出し、ナイフでアーバレストに襲い掛かる。
「くっ!」
アーバレストも腰からナイフを取り出し、敵ASの攻撃を受け止める。
「ベノムまでいたか?」
先程までの相手とは違い、一進一退の攻防が展開する。
俺は、ベノムの攻撃を防ぎながら、千鳥と三葉に叫ぶ。
「千鳥!お前達は先に逃げろ!」
「あんたを放っておいて、あたし達だけ逃げられる訳無いでしょっ!」
「そうです!相良くん!」
ベノムが、少し距離を置く・・・仕掛けてくる気だ!ならば!
「消飛べっ!」
ベノムは、ラムダ・ドライバで衝撃波を放つが、こちらの放つ衝撃波がそれをまとめて吹き飛ばす・・・・・・
「や・・・やった・・・・・」
ベノムは、粉々に砕け散る。だが・・・・・・・
頭の上には、赤い塊が、既に空全体を覆うくらいの大きさにまで広がっていた・・・・戦闘が長引き過ぎた!もう、逃げている時間は全く無い!
「アル?」
『何ですか?軍曹?』
「ラムダ・ドライバで、彗星の破片を破壊できると思うか?」
『無理だと思います!』
「はっきり言う・・・だが、それならば、やる事は決まったな!」
『はい!軍曹!』
「そ・・・宗介・・・」
「さ・・・相良くん・・・・」
下で、不安そうに見上げる2人に、俺は叫ぶ。
「千鳥!三葉!アーバーレストの足元から離れるな!」
「う・・・うん!」
「は・・・はい!」
「やるぞ!アル!」
『イエス!軍曹!』
「うおおおおおおおおおおおおおっ!」
俺は、ありったけの心をラムダドライバに込めた・・・・千鳥を、三葉を、絶対に守る!絶対に死なせない!
光が、アーバレストを包み込む・・・・・・・
彗星の破片は、宮水神社付近に墜落し、その衝撃波は、直径1kmの周囲を吹き飛ばす。湖の水は洪水のような流れを引き起こし、周辺の町を飲み込んでいく。落下地点には大きな穴が開き、そこにも湖の水が流れ込む。
「み・・・み・つ・は・・・・・・」
避難した糸守高校の校庭で、勅使河原と名取の2人は、呆然とその惨事を見つめていた。
「そ・・・そんな・・・みつは・・・・・」
名取はしゃがみ込んで、泣き出してしまう。
勅使河原は、ただ、呆然と立ち尽くしていた・・・・・・・
それから、どれくらい経っただろうか?2人にとっては、何時間にも感じられた数分間の後、辺りが静けさを取り戻すと同時に、勅使河原はある異変に気付く。
「あ・・・あれは?・・・・双眼鏡、だ・・・誰か、双眼鏡を貸してくれんか?」
勅使河原は、一緒に避難して来た人から双眼鏡を借り、覗き込む・・・・・
「み・・・三葉・・・や・・・早耶香!三葉や!三葉は、無事やで!」
「ほ・・・ほんまに?」
勅使河原が覗く双眼鏡の先、彗星落下で新しくできた糸守湖の、もうひとつの円のほぼ中央に、そこだけ、全く彗星の落下の被害を受けなかったかのように、小さな島が残っていた。そこには、白いASアーバレストと、2人の少女、三葉と千鳥かなめが立っていた。
「し・・・信じられない・・・彗星落下の中心に居たのに・・・・・」
「三葉!」
あまりの驚きに呆然としている三葉に、かなめが小さなメモを手渡す。
「え?・・・こ・・これは?」
「今の時代の、ミスリルの連絡先よ!これからも、あなたは今日のような連中に狙われることになる・・・だから、ここに連絡して、助けを求めて!・・・町のみんなとは、離れ離れになっちゃうけど、我慢して・・・今日みたいに、友達を巻き込みたくは無いでしょ!」
「う・・・うん!」
「千鳥!」
アーバレストが屈み込み、両手を合わせて掌を上にして、かなめ達の手前に降ろす。
「もう直ぐ時間だ!アーバレストの手に掴まれ!」
「わ・・分かった!」
かなめは、三葉の手を引き、アーバレストの掌の上に乗る。
「行くぞ!しっかり捕まっていろ!」
アーバレストは、湖の中の小島から大きくジャンプする。元々あったもう片方の円を飛び越え、瓦礫の塊と化した対岸に降り立つ。少し歩いて、被害の少なかった安全な所に、三葉だけを降ろす。
「三葉!」
コックピットが開き、宗介が顔を出す。
「さ・・・相良くん・・・・」
「お別れだ・・・三葉!」
「げ・・・元気でね!」
「か・・・かなめ・・・・」
次第に、宗介とかなめの体が、光り始める。その光は、アーバレストにも広がっていく・・・・
「・・・あ・・・ありがとう!相良くん!かなめ!私・・・・」
そこまで三葉が言った直後、幻のように、宗介とかなめは光の塊となって消えてしまった・・・・・
「・・・・・・・」
涙を流しながら、三葉は、2人が消えたその場所を、しばらくの間見つめていた。
「さ・・・3年・・・待てば、また・・・逢えるのかな?・・・・そ・・・その時は、私・・・・ご・・・ごめんね!かなめ・・・・・」
そして、3年後に戻った俺たちは、彗星落下後の履歴を検索し、糸守の住人が助かっている事を再確認した・・・・しかし、三葉の行方については、何の情報も得られなかった。ただ、アマルガムに拉致され、人体実験の挙句自害した事実は、完全に無くなっていた・・・・そうして、数ヵ月後・・・・・
「何で?あたしが、ダナンの新任将校に挨拶しなきゃいけないのよ!」
「俺に言われても困る!大佐殿から、お前も連れて来るように命令されたのだ!」
「テッサが?」
俺は、千鳥を連れてダナンに来ていた。大佐殿の特別補佐官として、ミスリルから、新しい将校が赴任した。その将校殿が、就任の挨拶の前に、俺と千鳥にどうしても挨拶したいと言って来たらしい・・・・・・
俺たちは、艦長室の前まで来た。
「大佐殿!相良軍曹、千鳥かなめを連れて、ただ今到着しました!」
『は・・入って下さい。』
「失礼します!」
中に入ると、大佐殿はデスクに座っていて、その前に、こちらに背を向け、新しい将校と思われる人物が立っている。ただ、その後ろ姿は女性だった。大佐殿と同じ、女性の将校か?
何故か、大佐殿は険しい表情をしている。
「相良軍曹、かなめさん、こちらが、この度ダナンに就任する事になった、宮水少佐です。」
“宮水?”どこかで、聞いた事があるような名前だが・・・・・
すると、その将校はこちらに向き直って、俺たちに敬礼をして来た。しかし、その顔を見て、俺達は揃って驚きの声をあげた・・・・・
『み・・・三葉~~~?!』
「お久しぶりです!相良くん!かなめ!」
こうして、宗介、かなめ、テッサの三角関係は、三葉を加え、四角・・・・では無く三角錐関係に発展していくのであった・・・・・・
最後まで読んで下さって、ありがとうございました。
やっぱり、フルメタル・パニックの世界とコラボするんだから、三葉にもそれなりの存在意義が無いと物足りないので、実は“ウィスバード”だったという事にしました。
最後は、どうしても宗介本人に三葉救出をさせたかったし、アーバレストで彗星落下から無事生還をやりたかったので、ASごとタイムトラベルまでさせてしまいました・・・・
ここまでやっちゃっていいのかとも思いましたが、まあ、私の妄想なんで、何でもアリということで・・・・・