マオの好意に甘えて、部屋でのんびり休もうとしているところへ、事情を知らないテッサが現れます・・・・・・
かなめ達から、彗星落下とその避難計画を聞かされた翌日、私は、テッシーとサヤちんに全てを話した。
「なんやて?3年後の男と、入れ替わってた?」
「だ・・大丈夫やの、三葉?気は確か?」
まあ、予想通りの反応だ・・・いきなり信じてくれるとは、思っていない。
「ねえ!良く考えて!その狐憑きの私って、本当に私に思える?」
そう聞かれて、テッシーとサヤちんは考え込む。
「う~ん・・・・・」
「確かに、別人みたいやったけど・・・・」
私は、3年後の世界で見て来た事も、話してみた。
「それ、全部三葉の創作やったら、SF作家になれるで!お前!」
「だから、創作やないの!私にそんな才能あらへん!」
中々信じてもらえない・・・・ここに本物の相良くんでも居れば、説得力があるんだけど・・・・・
「お願いやから!私を信じて!頼れるのは、テッシーとサヤちんしかおらんの!」
もう最後は、目に涙を溜めて訴えた・・・・すると・・・・
「分かった!」
「・・・て・・テッシー?」
「俺は、三葉を信じる!で、何をやればええんや!」
「あ・・・ありがとう・・・テッシー・・・・」
「わ・・・私も、信じる・・・・」
「さ・・・サヤちん・・・・」
「こんな時に信じないで、親友なんて言われへんよね!」
「あ・・・ありがとう・・・サヤちん!」
私は、サヤちんに抱きついて、とうとう泣き出してしまった。
「ちょ・・・ちょっと、三葉・・・・・」
その翌日は、また相楽くんと入れ替わった。目が覚めたのは、例の潜水艦の中だった・・・・・相良くん、昨日はミッションだったのかな?
『宗介?起きてる?』
扉を叩く、マオさんの声。
「は・・はい!」
『ああ・・・三葉だったのね?』
返事だけで、マオさんは理解して、部屋に入って来る。
マオさんは、テッシーとサヤちんの説得がうまくいったかどうかを聞いてくる。私は、うまく説得できた事を説明する。
「ほんとに、ごめんね・・・あたしが、変な作戦しか思いつかなかったから・・・あんたのイメージが、あんな馬鹿と一緒にされちゃって・・・・」
「いいんです!・・・良く考えたら、どんな作戦立てても、相良くんの行動って変わりませんよね?・・・・結局、こうなちゃう運命だったんじゃないかと・・・・・」
そう話すと、マオさんは、更にすまなそうな顔をする。
「だったら、尚更ごめん!あの馬鹿のせいで・・・・・」
「ふふ・・・・でも、何か、相楽くんって、憎めないんですよね!」
「え?」
「やる事は滅茶苦茶で、頭にくるけど・・・何故か、すごくあったかい・・・優しいんですよね、彼・・・・正義感も強くて・・・・」
「ま・・・まあ、悪人では・・・無いわよね・・・・」
「散々文句を言ったけど、神社の不良の時は、巻き込まれてた妹の四葉を助けようとしてた・・・・町のチンピラの時も、最初は、絡まれてたクラスメイトを助けるためだった・・・・」
「やり過ぎちゃうのが・・・玉に瑕だけどね・・・」
「ふふふ・・・でも、そんな彼だから、かなめも、マオさんも、彼といつも一緒に居られるんですよね?」
「・・・・・今日は、あんたは体調不良って事にしとくから、ここでゆっくりしてなさい!」
「はい!」
そう言って、マオさんは部屋を出て行った。
しばらくして、また扉を叩く音がする。
『サガラさん!入っていいですか?』
女の人の声だ・・・でも、マオさんじゃ無い・・・・誰だろう?
「はい!」
そう返事すると、扉が開いて、小柄な女性が入って来た。でも・・・・え?この子も軍人なの?どう見ても、私より年下に見えるし・・・・だけど、着てる軍服って・・・これ、将校の服装じゃないの?
「体の調子が悪いと聞いたのですが、大丈夫ですか?」
「え・・・は・・はい、大丈夫です・・・」
「そうですか!良かった!」
そう言って、近づいて来るが・・・・・
「きゃああっ!」
何にも無いところで、いきなり躓いて倒れそうになる。
「あ・・危ない!」
私は立ち上がって、彼女を抱き留める。その時 ――――
急に、私の頭の中に、無数の声が流れ込む・・・・次第に、意識が遠のいていく・・・・・
軍服の少女は、気を失って私のベットに倒れ込む。その際に、彼女の服のポケットから、小さな鍵が飛び出し、床に落ちる・・・・私は、朦朧とした意識の中で、その鍵を拾い、部屋を出て、通路を歩き始める・・・・
何かに操られているかのように、通路を進む・・・・“艦長室”と書かれた部屋に入る。中に人は居ない・・・・私は、デスクの後ろにある壁の前まで行く。壁の一部がスライドし、隠し金庫が現れる。そこに先程拾ったカギを指し、暗証番号を入力する。何故か、指は勝手に知らない筈の暗証番号を、正確に入力する。金庫の扉が開く・・・・私はその奥にある箱を開け、中にある平たいプレートのような物を取り出す。その部屋を出て、更に艦内を移動する・・・そして、目的の部屋に到達する。
部屋の扉の上には、“艦長もしくは副官の許可無く、この部屋に入ることを禁じる”と書かれている。プレートはこの部屋のキーになっていて、それで扉が開く。中に入ると、そこはドーム状の部屋で、中央に、人がひとり寝る事ができる大きさのシートがある。そこまで歩いて行って、シートの横のパネルに手を触れる・・・・・
『アナタハ・・・テスタロッサタイサ、デハ、アリマセンネ・・・ドナタデスカ・・・』
頭の中に、このシステムのAIの声が響く・・・・・・
「私は・・・・三葉・・・・・・」
「相良軍曹!」
その時、部屋にひとりの将校が入って来る。長身の細身で、眼鏡を掛けている。
「ここで、何をしている?誰の許可を得て、ここに入った?」
その将校の顔を見ている内に、気が遠くなっていき・・・・・・私は、気を失ってしまった・・・・・
千鳥達から、三葉に全てを話したと聞いた翌日、俺は、また三葉と入れ替わった。
学校で、勅使河原と名取から、三葉に入れ替わりの説明を受けた事を聞いた。
「ほんまにあんた、3年後から来た、相良宗介いうんか?」
「肯定だ!今迄、黙っていてすまなかった!」
「ほんまやね、改めて見れば、別人にしか見えへん!」
その後、彗星落下当日の避難計画について、打ち合わせをした。まだ、当日に入れ替わりが起こるかどうか分からない。だから、俺だった場合、三葉だった場合、それぞれのケースについての役割分担を決めた。
最後に、勅使河原だけを呼び、ある事を伝えた。
「実は、ここに来始めた頃に、三葉を監視する、胡散臭い連中を2度ばかり見かけた!」
「な・・・なんやて?」
「俺が、最初にここに来た時、突然走り出した事があっただろう!」
「ああ、そういえば、そないな事あったな・・・・」
「それ以降、見かけていないが、少し気になる・・・俺が入れ替わっている時は心配無いが、三葉の時は・・・・お前が守れ!」
「あ・・・ああ・・・分かった!」
その翌日、何故か、俺はダナンの医務室で目を覚ます。そしてクルツから、事の詳細を聞く。
「殆ど意識を失っていた?」
「そうだ、それも、倒れる前にお前が居たところが、レディ・チャペルの中だ!」
「何だと?でも・・・どうやって、あそこに入ったんだ?あそこの鍵は、大佐殿しか持っていない筈では?」
「だから、テッサの部屋から、鍵を持ち出して入ったんだよ!」
「馬鹿な!何故、そんな事が三葉にできるんだ?」
「分からねえ?肝心の三葉に、聞く事もできねえし・・・・」
「大佐殿は、何と言ってるんだ?」
「まだ、意識が戻らねえ!テッサも、お前の部屋で気を失ってたんだ!」
「大佐殿が?どうして俺の部屋に?」
「お前の様子を心配して、観に来ていたらしい・・・三葉と入れ替わってたからな、体調不良という事にして、部屋に居させたんだよ。」
「宗介!」
マオが、医務室に入って来た。
「目が覚めたんなら、昨日の事を説明しろって、マデューカス中佐が呼んでるわ!」
「そんな事言ったって姉さん、昨日のこいつは三葉だぜ!何の説明も、できやしねえよ!」
「それでも、行かない訳にいかないだろう。」
そう言って、俺は立ち上がる。
「おい、宗介!」
「問題無い!知らない事は、答えようが無いからな。」
「ま・・まさか、入れ替わりの事を、説明するつもりか?」
「しても無駄だろう・・・“記憶がありません”で押し通す。」
「どっかの政治家かよ?お前は!」
その後、中佐にはこってり絞られたが、知らない事は答えようが無い。埒が明かないので大佐殿の回復を待つ事になり、俺は一旦、東京のアパートに戻された。
千鳥の部屋で、事の詳細を説明する。
「何で三葉が、ダーナへの行き方を知ってるの?」
「分からない・・・・・」
「ま・・・まさか・・・・」
「ん?どうした?」
「う・・・ううん、何でもない。(そんな事、ある訳無いか・・・・・)」
「とにかく、明日、もし俺が三葉と入れ替わったら、事の詳細を聞いてくれ!」
「うん、分かった!」
目が覚めると、自分の部屋だった・・・・何だろう?昨日の記憶が、はっきりしない・・・・まるで、本当に夢を見ていたみたいに・・・・はっきり覚えてるのは、部屋に、若い女性将校さんが入って来たところまで・・・・・その後、どこかの部屋に入っていったような・・・・・
「お姉ちゃん?どうしたん?」
布団の上で考え込んでいる私に、心配して、四葉が声をかけてくる。
「・・・ううん、何でもないんよ。」
もう、彗星落下まで日が無い。そんな事より、テッシー達と準備を急がなくっちゃっ!
彗星落下まであとわずか・・・・
そんな中、三葉とテッサに起こった異変は何か?
新たな謎が生まれる中、物語はクライマックスへ進んで行きます・・・・・