君の名は・パニック   作:JALBAS

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久々に、ダナンの中で目覚める三葉・・・・
マオの好意に甘えて、部屋でのんびり休もうとしているところへ、事情を知らないテッサが現れます・・・・・・



《 第七話 》

かなめ達から、彗星落下とその避難計画を聞かされた翌日、私は、テッシーとサヤちんに全てを話した。

「なんやて?3年後の男と、入れ替わってた?」

「だ・・大丈夫やの、三葉?気は確か?」

まあ、予想通りの反応だ・・・いきなり信じてくれるとは、思っていない。

「ねえ!良く考えて!その狐憑きの私って、本当に私に思える?」

そう聞かれて、テッシーとサヤちんは考え込む。

「う~ん・・・・・」

「確かに、別人みたいやったけど・・・・」

私は、3年後の世界で見て来た事も、話してみた。

「それ、全部三葉の創作やったら、SF作家になれるで!お前!」

「だから、創作やないの!私にそんな才能あらへん!」

中々信じてもらえない・・・・ここに本物の相良くんでも居れば、説得力があるんだけど・・・・・

「お願いやから!私を信じて!頼れるのは、テッシーとサヤちんしかおらんの!」

もう最後は、目に涙を溜めて訴えた・・・・すると・・・・

「分かった!」

「・・・て・・テッシー?」

「俺は、三葉を信じる!で、何をやればええんや!」

「あ・・・ありがとう・・・テッシー・・・・」

「わ・・・私も、信じる・・・・」

「さ・・・サヤちん・・・・」

「こんな時に信じないで、親友なんて言われへんよね!」

「あ・・・ありがとう・・・サヤちん!」

私は、サヤちんに抱きついて、とうとう泣き出してしまった。

「ちょ・・・ちょっと、三葉・・・・・」

 

その翌日は、また相楽くんと入れ替わった。目が覚めたのは、例の潜水艦の中だった・・・・・相良くん、昨日はミッションだったのかな?

『宗介?起きてる?』

扉を叩く、マオさんの声。

「は・・はい!」

『ああ・・・三葉だったのね?』

返事だけで、マオさんは理解して、部屋に入って来る。

マオさんは、テッシーとサヤちんの説得がうまくいったかどうかを聞いてくる。私は、うまく説得できた事を説明する。

「ほんとに、ごめんね・・・あたしが、変な作戦しか思いつかなかったから・・・あんたのイメージが、あんな馬鹿と一緒にされちゃって・・・・」

「いいんです!・・・良く考えたら、どんな作戦立てても、相良くんの行動って変わりませんよね?・・・・結局、こうなちゃう運命だったんじゃないかと・・・・・」

そう話すと、マオさんは、更にすまなそうな顔をする。

「だったら、尚更ごめん!あの馬鹿のせいで・・・・・」

「ふふ・・・・でも、何か、相楽くんって、憎めないんですよね!」

「え?」

「やる事は滅茶苦茶で、頭にくるけど・・・何故か、すごくあったかい・・・優しいんですよね、彼・・・・正義感も強くて・・・・」

「ま・・・まあ、悪人では・・・無いわよね・・・・」

「散々文句を言ったけど、神社の不良の時は、巻き込まれてた妹の四葉を助けようとしてた・・・・町のチンピラの時も、最初は、絡まれてたクラスメイトを助けるためだった・・・・」

「やり過ぎちゃうのが・・・玉に瑕だけどね・・・」

「ふふふ・・・でも、そんな彼だから、かなめも、マオさんも、彼といつも一緒に居られるんですよね?」

「・・・・・今日は、あんたは体調不良って事にしとくから、ここでゆっくりしてなさい!」

「はい!」

そう言って、マオさんは部屋を出て行った。

 

しばらくして、また扉を叩く音がする。

『サガラさん!入っていいですか?』

女の人の声だ・・・でも、マオさんじゃ無い・・・・誰だろう?

「はい!」

そう返事すると、扉が開いて、小柄な女性が入って来た。でも・・・・え?この子も軍人なの?どう見ても、私より年下に見えるし・・・・だけど、着てる軍服って・・・これ、将校の服装じゃないの?

「体の調子が悪いと聞いたのですが、大丈夫ですか?」

「え・・・は・・はい、大丈夫です・・・」

「そうですか!良かった!」

そう言って、近づいて来るが・・・・・

「きゃああっ!」

何にも無いところで、いきなり躓いて倒れそうになる。

「あ・・危ない!」

私は立ち上がって、彼女を抱き留める。その時 ――――

 

急に、私の頭の中に、無数の声が流れ込む・・・・次第に、意識が遠のいていく・・・・・

軍服の少女は、気を失って私のベットに倒れ込む。その際に、彼女の服のポケットから、小さな鍵が飛び出し、床に落ちる・・・・私は、朦朧とした意識の中で、その鍵を拾い、部屋を出て、通路を歩き始める・・・・

何かに操られているかのように、通路を進む・・・・“艦長室”と書かれた部屋に入る。中に人は居ない・・・・私は、デスクの後ろにある壁の前まで行く。壁の一部がスライドし、隠し金庫が現れる。そこに先程拾ったカギを指し、暗証番号を入力する。何故か、指は勝手に知らない筈の暗証番号を、正確に入力する。金庫の扉が開く・・・・私はその奥にある箱を開け、中にある平たいプレートのような物を取り出す。その部屋を出て、更に艦内を移動する・・・そして、目的の部屋に到達する。

部屋の扉の上には、“艦長もしくは副官の許可無く、この部屋に入ることを禁じる”と書かれている。プレートはこの部屋のキーになっていて、それで扉が開く。中に入ると、そこはドーム状の部屋で、中央に、人がひとり寝る事ができる大きさのシートがある。そこまで歩いて行って、シートの横のパネルに手を触れる・・・・・

『アナタハ・・・テスタロッサタイサ、デハ、アリマセンネ・・・ドナタデスカ・・・』

頭の中に、このシステムのAIの声が響く・・・・・・

「私は・・・・三葉・・・・・・」

「相良軍曹!」

その時、部屋にひとりの将校が入って来る。長身の細身で、眼鏡を掛けている。

「ここで、何をしている?誰の許可を得て、ここに入った?」

その将校の顔を見ている内に、気が遠くなっていき・・・・・・私は、気を失ってしまった・・・・・

 

 

 

千鳥達から、三葉に全てを話したと聞いた翌日、俺は、また三葉と入れ替わった。

学校で、勅使河原と名取から、三葉に入れ替わりの説明を受けた事を聞いた。

「ほんまにあんた、3年後から来た、相良宗介いうんか?」

「肯定だ!今迄、黙っていてすまなかった!」

「ほんまやね、改めて見れば、別人にしか見えへん!」

その後、彗星落下当日の避難計画について、打ち合わせをした。まだ、当日に入れ替わりが起こるかどうか分からない。だから、俺だった場合、三葉だった場合、それぞれのケースについての役割分担を決めた。

最後に、勅使河原だけを呼び、ある事を伝えた。

「実は、ここに来始めた頃に、三葉を監視する、胡散臭い連中を2度ばかり見かけた!」

「な・・・なんやて?」

「俺が、最初にここに来た時、突然走り出した事があっただろう!」

「ああ、そういえば、そないな事あったな・・・・」

「それ以降、見かけていないが、少し気になる・・・俺が入れ替わっている時は心配無いが、三葉の時は・・・・お前が守れ!」

「あ・・・ああ・・・分かった!」

 

その翌日、何故か、俺はダナンの医務室で目を覚ます。そしてクルツから、事の詳細を聞く。

「殆ど意識を失っていた?」

「そうだ、それも、倒れる前にお前が居たところが、レディ・チャペルの中だ!」

「何だと?でも・・・どうやって、あそこに入ったんだ?あそこの鍵は、大佐殿しか持っていない筈では?」

「だから、テッサの部屋から、鍵を持ち出して入ったんだよ!」

「馬鹿な!何故、そんな事が三葉にできるんだ?」

「分からねえ?肝心の三葉に、聞く事もできねえし・・・・」

「大佐殿は、何と言ってるんだ?」

「まだ、意識が戻らねえ!テッサも、お前の部屋で気を失ってたんだ!」

「大佐殿が?どうして俺の部屋に?」

「お前の様子を心配して、観に来ていたらしい・・・三葉と入れ替わってたからな、体調不良という事にして、部屋に居させたんだよ。」

「宗介!」

マオが、医務室に入って来た。

「目が覚めたんなら、昨日の事を説明しろって、マデューカス中佐が呼んでるわ!」

「そんな事言ったって姉さん、昨日のこいつは三葉だぜ!何の説明も、できやしねえよ!」

「それでも、行かない訳にいかないだろう。」

そう言って、俺は立ち上がる。

「おい、宗介!」

「問題無い!知らない事は、答えようが無いからな。」

「ま・・まさか、入れ替わりの事を、説明するつもりか?」

「しても無駄だろう・・・“記憶がありません”で押し通す。」

「どっかの政治家かよ?お前は!」

 

その後、中佐にはこってり絞られたが、知らない事は答えようが無い。埒が明かないので大佐殿の回復を待つ事になり、俺は一旦、東京のアパートに戻された。

千鳥の部屋で、事の詳細を説明する。

「何で三葉が、ダーナへの行き方を知ってるの?」

「分からない・・・・・」

「ま・・・まさか・・・・」

「ん?どうした?」

「う・・・ううん、何でもない。(そんな事、ある訳無いか・・・・・)」

「とにかく、明日、もし俺が三葉と入れ替わったら、事の詳細を聞いてくれ!」

「うん、分かった!」

 

 

 

目が覚めると、自分の部屋だった・・・・何だろう?昨日の記憶が、はっきりしない・・・・まるで、本当に夢を見ていたみたいに・・・・はっきり覚えてるのは、部屋に、若い女性将校さんが入って来たところまで・・・・・その後、どこかの部屋に入っていったような・・・・・

「お姉ちゃん?どうしたん?」

布団の上で考え込んでいる私に、心配して、四葉が声をかけてくる。

「・・・ううん、何でもないんよ。」

もう、彗星落下まで日が無い。そんな事より、テッシー達と準備を急がなくっちゃっ!

 




彗星落下まであとわずか・・・・
そんな中、三葉とテッサに起こった異変は何か?
新たな謎が生まれる中、物語はクライマックスへ進んで行きます・・・・・

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