君の名は・パニック   作:JALBAS

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朝起きると、三葉は見ず知らずの男の子と体が入れ替わっています。しかも、その男の子と自分は同い年ですが、時間軸がずれています。本来は、その相手は瀧くんなのですが、このお話でのお相手は、都立陣代高校2年B組、傘係兼ゴミ係の相良宗介だ!


《 第一話 》

「ん・・・んんっ・・・・・」

な・・・どこ?ここ・・・・・・

私は、見たこともない、殺風景な部屋のベッドで目が覚める。もしかして・・・・これも夢?体を起こして、部屋を見渡す・・・・家具が、殆ど無い・・・・窓際にある机の上には、なにやらごつい無線機のような物が置いてある。

ふと、体にも違和感を感じる。喉が妙に重い、視線を体に落としてみると・・・・胸が・・・無い?・・・逆に下半身には・・・・何かある?ええ~~っ?

起き上がって、鏡を探す・・・・ようやく見つけて、覗き込む・・・・・?!そ・・・そこには、ボサボサ頭に、頬に大きな傷のある、危ない感じの男の子の顔が映っている・・・・・

『宗介っ!』

「えっ?」

いきなり、女の人の大きな声が聞こえたと思ったら、その後にドン!ドン!とドアを叩く音が続く。

『いつまで寝てんの!学校に遅れるわよっ!』

更に、ドアを叩く音が激しくなるので、私は慌ててドアを開ける・・・・そこには、長髪の、超ミニの制服を着た女の子が立っていた。

「あ・・・あの?」

「何?まだ、着替えてないの?宗介!」

「そ・・・宗介?そ・・・それ、私のこと?」

「いつまで、寝ぼけてんのよっ!」

巨大なハリセンで、頭を叩かれる・・・・・い・・・痛い・・・・・・・

 

女の子に堰かされて、壁に掛けある学生服に急いで着替える。その子に連れられてアパートを出て、町に出る。

「うわ~~っ!」

そこには、夢に見た東京の町があった。

「東京やあ・・・・」

「宗介っ!何呆けてんのよっ!」

見とれていたため、またハリセンで頭を叩かれた・・・・・い・・・痛い・・・・・

最寄の駅から電車に乗り、仙川駅で降りて、その後は徒歩で学校へ。ずっとその子に連れられて来たから迷わずに来れたけど、この子の名前が分からない・・・・・でも、そんな事聞くと、またハリセンで叩かれると思って聞けなかった・・・・・

「おはよう、カナちゃん、相良くん。」

後ろから来た、お下げでメガネの女の子に声を掛けられた。

「おはよう、恭子。」

カナ・・・この子、“カナ”っていうの?それとも、“カナ子”?・・・恭子ちゃんみたいに、“カナちゃん”って呼べばいいのかな?・・・“相良くん”は私のこと?・・・・じゃあ、私は、“相良宗介”っていうの?

「カナちゃん、そういえば、今日って避難訓練があるよね?」

「ひ・・避難訓練~っ?」

急に声のトーンが下がり、カナちゃんは私の方を向く・・・・何か、目が怖い・・・・

「宗介!あんた、今日は大人しくしてなさいよっ!」

「は?・・・・」

「は?じゃないわよ!訓練って言っても、軍隊の訓練じゃないんですからね!拳銃持ち出したり、手榴弾持ち出したりしないでよねっ!」

「え~っ?な・・・何で、私がそんな事・・・・・」

『わ・・わたし?』

2人、声を揃えて、怪訝な顔をする。

「え?・・・ぼ・・ぼく?」

『はあ?』

更に、怪訝な顔をする。

「お・・・俺?」

『うん、うん・・・・』

2人とも、相槌をうつ・・・・・

 

教室に入り、カナちゃんと恭子ちゃんは自分の席に着く。しかし・・・・私は、どこに座ればいいんだろう?

「何やってんの?宗介、あんたも、早く座りなさいよ。」

「は・・はい・・・・・」

カナちゃんに堰かされて、仕方無く、目の前の空いている席に座ろうとすると・・・・

「おい、相良、何俺の席に座ってんだよ?」

「あ・・・ご・・ごめんなさい・・・」

前から歩いて来た、男子生徒に怒られたので、その隣に座ろうとすると・・・・

「相良君、何で私の席に座るの?」

今度は、後ろから来た女子生徒に怒られてしまう・・・・・

「宗介!」

ついには、カナちゃんのハリセンが・・・・・・

「あんたの席は、あたしの後ろでしょーがっ!」

い・・・痛い・・・・・

席に着くと、先生が入って来てて、HRが始まる・・・・・・

「・・・・・という訳で、本日は避難訓練があります。が!・・・・・・」

そこで、先生は私の方を睨みつける。すると、先生だけでなく、クラス全員が私の方を向いて、睨み付けてくる。

「さ~が~ら~くん!軍隊の訓練じゃ無いんですから、おかしな事は絶対にしないように!いいですねっ!」

「は・・・はい・・・・・」

ちょ・・・ちょっと、この相良宗介って男の子・・・・いったい、どういう男なのよ~~~っ?

 

散々だった1日が終わり、私は疲れ果てて、カナちゃんと一緒にアパートまで帰って来た・・・

「ねえ?どっかおかしくない?宗介?」

「え?・・・・」

「だっていつもだったら、あたしが何言ったって、“問題無い”とか言って、構わず拳銃ぶっ放したりするじゃん。」

え~っ?そ・・・それの、どこが普通なの?私には、そっちの方が、よっぽどおかしいんですけど・・・・・・・・

「ん~っ・・・まあ、今日は、ゆっくり休みなさい。おやすみ、宗介。」

「お・・・おやすみなさい・・・カナちゃん・・・」

「か・・・カナちゃん?」

帰りかけたカナちゃんが、何やら凄い恐ろしいものでも見たような顔で、振り向く。

「あ・・・あんた?ほんとーに、いったいどうしちゃったのよっ?」

「え?だ・・・だって・・・カナちゃん・・・でしょ?」

「あ・・・あんたに“カナちゃん”なんて呼ばれると、気色悪いのよっ!いつも通りに“千鳥”って呼びなさいよっ!」

「ええっ?だ・・・だって恭子ちゃんは“カナちゃん”って・・・名前違うんですか?」

「何、言ってんのよっ!あたしの名前は、“千鳥かなめ”でしょっ!」

あ・・・ああ・・・そういう名前なんだ・・・・・

「あんた?ほんとに、大丈夫?」

全然、大丈夫じゃ無いです・・・こんな夢、お願いだから、早く醒めて~~~~っ!

 

 

 

朝、目が覚めて、直ぐに体の異変に気付く・・・・何か、体が妙に軽い・・・・それと、胸のあたりが何か重い・・・・・・

目を開け、起き上がると・・・・何だ?俺の部屋では無い!さては・・・寝ている間に、何者かに・・・まずい、武器は?・・・・

と、胸のあたりを触ると、妙な感触が・・・柔らかい?何だこれは?

「何しとんね?お姉ちゃん?自分の胸が、そんなに珍しいん?」

気が付くと、右手の襖が開いていて、そこにひとりの幼女が立っていた。何者だ、この幼女は?いや、外観に騙されてはいかん!この齢でも、やり手の傭兵かもしれん?・・・ん?この幼女、今、何と言った?

「お・・・お姉ちゃん?」

俺は、自分を指さして問う。

「他に誰がおんねん!ご・は・ん!」

そう叫んで、幼女は乱暴に襖を閉めて、下に降りて行った。

お・・・俺がお姉ちゃん?何を言ってるんだ、あの幼女は?俺はどう見たってお姉ちゃんには見えない・・・・・・

と、その時、目の前にある姿見に、自分の姿が映った

「な?!」

俺は愕然とした・・・そこに映っているのは、高校生くらいの女の姿で、完全に俺の姿では無かった・・・・・

ま・・・まさか、敵に捕らえられ、整形されたのか?だが、体も全然違うぞ、完全に女の体だ!で・・では、脳を移植されたのか?・・・いかん!まずは、ダナンに連絡を・・・・

部屋中を見回すが、通信機の類は無い。それはそうだろう、これが敵の策略なら、そんな物を置いておく訳が無い。携帯は枕元にあるが、どうせ使えないだろう・・・・

試しに起動してみるが、完全に偽装されている。アドレスは、俺の知らないものばかりだし、日付が3年前になっている・・・・・・

駄目だ、完全に孤立した・・・・どうする?待っていても、助けは望めない・・・・ここは、敵の出方を伺うしかないか?その内に、ボロを出すかもしれん・・・・・

俺は、部屋の中で武器になりそうな物を探した・・・それらを懐に潜ませ、壁に掛けてあった制服を着て、下に降りた。

「お姉ちゃん、おそいっ!」

さっきの幼女が怒鳴る。その横には、老婆がいる・・・俺がお姉ちゃんだとすると、この老婆はお婆ちゃんか?・・・・敵の出方が分かるまでは、合わせておくしか無いな。

「大丈夫だ、問題無い!」

そう言って、俺は座って、飯を食べる・・・・毒は入っていまい。ここで毒殺するなら、こんな体にして生かしておく訳は無い・・・・・

 

妹役の幼女と、通学の為に家を出る。幼女とは途中で別れ、ひとりで高校まで向かう事になるが、田舎の狭い町なので、道に迷う心配は無い。高校は、湖を挟んで家の反対側の高台にあり、目視で確認できる範囲内だ。

「三葉ーっ!」

何か、後ろから、誰かを呼ぶ声がした。

「三葉ってばーっ!」

しつこく叫んでいる。三葉というの奴も、返事くらいすればよいのだ!何をやっている!・・・・・

「ちょっと、何で無視すんの!」

2人乗りの自転車が、俺を追い越し道を塞いでくる。何だ、この連中は?さっさと三葉という奴のところに、行けばいいだろう!

「おい!どないしたんや?三葉?」

自転車を漕いでいた、男の方が俺の目を見て言う・・・・何だ・・・三葉というのは、俺の事だったのか・・・・そうか!この体は女だったな・・・・・

「三葉?何かあったん?」

自転車の荷台に跨っていた、女の方が話しかけて来る。

「いや、問題無い!」

「?!」

2人が、怪訝そうな顔をする・・・何だ?何かおかしな事でも言ったか?

「ねえ、あんた・・・・三葉よね?」

「肯定だ!」

「?!」

また、怪訝そうな顔をする。何なのだ?いったい・・・

「あら?三葉、その頭・・・どうしたん?」

女の方が、俺の髪を見て聞いて来る。

「問題無い!長くて邪魔だから、纏めただけだ!」

「でも、いつもみたいに結ってないやん!」

「それじゃ、まるで侍みたいやな!」

「肯定だ!」

俺もそう思うので、そう答えて、俺は歩き出す。

「え?」

「お・・おい、三葉っ!」

 

その後、学校の教室に入り、その男女と会話を交わした結果、俺の現在の名前が宮水三葉、がたいの良い坊主頭が勅使河原克彦、おさげの女が名取早耶香で、この三葉という女の親友という設定だという事が分かった。

だが、妙だ・・・どうも、この連中の言動を見ていると演技では無く、宮水三葉という女は実在し、俺がその女そのものになってしまっているように思える。そもそも、この連中には殺気が全く無く、傭兵やスパイ独特のニオイもしない・・・・もしこれが全て演技なのだとしたら、とてつもなく恐ろしい連中だが・・・・・・・

これが現実だと仮定すると、俺をここに連れて来た連中は、この三葉という女を殺し、その女に俺の脳を移植したのか?何のために・・・・・まさか?俺を千鳥から遠ざけるためか?だとしたら・・・・・

「千鳥が危ない!」

「ど・・・どないしたんや三葉?」

俺が急に立ち上がったので、驚いて勅使河原が声を掛ける。

「ち・・・千鳥って?・・・・」

「い・・・いや・・・何でもない。」

待て、安易に結論を出すのは危険すぎる・・・・俺が、何者かの策略でここに送られたのだとしたら、今も監視されている筈だ・・・・うかつな行動をすれば、千鳥はもちろん、ここの連中だって危ない・・・・今は、敵の情報が無さ過ぎる、もう少し、様子を見るしか無い・・・・・・

「ほんまに・・・大丈夫なんか?三葉~・・・・・」

 

昼休み、勅使河原達に誘われるままに、校庭の隅で昼食を取る。ここなら、見晴らしが良い、監視者を探すのにも好都合だ・・・・・・

「ねえ?あなた・・・・本当に三葉?」

「肯定だ!」

「まあ、確かにここ校庭やけど・・・いや、そうや無くて・・・・・」

「待て!」

勅使河原の言葉を、俺が遮る。急に大声を出されたためか、2人は固まってしまった。

「貴様、何者だっ!」

遂に見つけた!3本先の木の陰に、こちらを伺っている怪しい影を見つけた。そいつは、俺に気付かれた事を悟ると、一目散に逃げ出した。

「待て、逃がさん!」

俺は、椅子から跳ね上がり、全速力で目標を追い始める・・・・・・

「ど・・・どうしたん?三葉~~っ?」

「あかん!あれは、完全に狐憑きや~~!」

相手も全速力で逃げているが、大丈夫、この距離なら追い着ける・・・・筈だった・・・・が・・・・・

「し・・しまった!慣れない女の体で・・・思うように走れない!」

相手との差はどんどん開き、とうとう見失ってしまった・・・・・・

失敗だ・・・今の現状認識が甘かった・・・・奴らも、同じ失敗は2度はするまい・・・・この次は、こちらも策を練らねば・・・・・・・

 




男の子に入れ替わった三葉の行動が異常で、周りがおかしく思うのがいつものパターン・・・・しかし、入れ替わった相手が相良宗介だと、普段が異常なので、逆に正常だとおかしく思われてしまうというお話でした・・・・・
一方、女の子に入れ替わった宗介は・・・・・当然、入れ替わったなんて思う筈も無く、全てを敵の策略と思ってしまいます・・・・・・
ちなみに、三葉の髪の毛ですが、宗介なら“動くのに邪魔だ”とか言ってばっさり切っちゃうかもとか考えましたが、それではあまりにも三葉が可哀想なのでやめました。
さて、この2人、これからどうなるのでしょうか?

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