東方嫉妬姫   作:桔梗楓

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秋と言えば食欲!
というわけで秋シリーズ第二弾です。
今回は少し短めになっております。



31話 食欲の秋~家族団欒~

あの後、秋の神様二人に見送られ八雲家へと帰って来た僕達。

 

その手には野菜や果物、秋の味覚が山ほどあった。

 

 

「こんなに貰っちゃって本当に良かったのかしら?」

 

隣で果物の入った袋を持ったパルスィさんが言う…そうだよね。

 

「だね、何だか悪い気もするけど……折角だから美味しく頂こう?それが、あの神様への感謝になると思うから…ね?」

 

 

スキマを抜け、八雲家の玄関へ入っていく…――

 

「ただ今帰りました」

 

すると奥から藍さんと橙ちゃんが迎えに来てくれた。

 

「おぉ、二人ともお帰り。今日は一日楽しめたかい?」

 

その言葉に、パルスィさんが笑顔で答える。

 

「えぇ、おかげさまで……秋の綺麗な風景も堪能できましたし…それから、こんなにお土産も貰ったんですよ?」

 

両手に抱えた袋を掲げて見せる…―――それを見た橙ちゃんが。

 

「わ~!なんだか一杯食べ物があるね~。お姉ちゃん、何を貰ったの?」

 

その言葉に笑顔で…――

 

「ふふっ♪秋の美味しい食べ物よ♪そうだわ、良ければ今日は私に晩御飯を作らせて貰えませんか?」

 

藍さんは、少しだけ驚いた顔をして…でも嬉しそうに―――

 

「いいぞ。ふむ……折角の良い食材だ、私にも手伝わせてくれないだろうか?」

 

するとパルスィさんも嬉しそうに……―――

 

「いいんですか!?藍さんと料理ができるなんて…ふふっ♪」

 

 

そんなやり取りをしていると…奥の方から、ふらふらと紫さんがやってきた。

 

「ふぁぁ~…二人とも、おかえりなさい。妖怪の山…秋の魅力は堪能できたかしら?」

 

食材を受け取った藍さんと橙ちゃんは、先に台所に向かった。

 

「あの……紫さん、実は今日…――」

 

 

それから、僕とパルスィさんは妖怪の山であった事を紫さんにありのままに話した……。

 

 

 

 

「そう…それで、あなた達二人は何を思い、何を感じたのかしら?」

 

それは…―――

 

「…綺麗なだけが秋じゃない…抽象的にはなりますが…美しさの裏にある物哀しさについて、色々と考えさせられました…」

 

隣のパルスィさんも同意見のようで、一緒に頷いていた。

 

「そうね、それが分かったのなら、あなた達もまた成長したと言うことよ…その心、考え続ける事を忘れないで頂戴?」

 

 

やっぱり紫さんには全てお見通しなのかな?……本当にこの人にはかなわないなぁ…。

 

「ふふっ…さ、二人とも。折角、秋の神様のおすそ分けを貰ったのだから、新鮮なうちに食べてしまいましょう……ってあら?これは……」

 

袋の一つの中を見て止まる紫さん……何かあったのかな?

 

 

「秋の神様も、中々粋な事をしてくれるわね…碧、パルスィ…これが何なのか分かるかしら?」

 

これ……野菜でもないし……草花?パルスィさんの方を見てみたけど、流石に分からなかったらしい。

 

―――こんなとき幽香姉さんなら知ってるんだろうけど…。

 

「これはね、秋の七草と言われる植物よ」

 

秋の七草?…春の七草なら聞いたことがあるけど……秋にもそんな物があったのか…。

 

「秋の七草は、それぞれ……女郎花(おみなえし)、尾花(おばな)、桔梗(ききょう)、撫子(なでしこ)、藤袴(ふじばかま)、葛(くず)、萩(はぎ)とあるの」

 

聞いたことのない物もあるな……。

 

「春の七草は知ってるわよね?七草粥なんて言われるけど…あれは本来、正月で荒れた胃腸を整える為に食べる物なのよ」

 

それはなんとなく聞いたことがある…。じゃあ秋の七草は…?

 

「そして秋の七草なんだけど…これらは全て、観賞用として使われるの…見て秋を感じる……さっきあなた達が感じた事にも通じるわよね?」

 

なるほど……それを見越して静葉さんと穣子さんはこれを持たせてくれたのか…やっぱり神様…こっちの考えは、お見通しって感じだったのかな?

 

 

「さて、鑑賞用と言っても尾花の根には解熱や利尿作用、撫子はむくみや高血圧に、藤袴はお風呂に入れると肌のかゆみをとる、桔梗や萩の根には咳止めなど、色んな効果があるのよ?特にクズから作る葛根(かっこん)は、風邪薬としても仕えるから、保存しておきましょう」

 

そんな効果もあるのか……凄いなぁ…。

 

「さて、じゃあパルスィちゃん。藍も待ってるみたいだし台所に行ってお手伝いして頂戴?」

 

ハッとした表情で…――

 

「は、はい!すぐに行きますね。頑張って作ります…碧?楽しみにしておいてね♪」

 

ちょっと顔を赤くしながら台所へと向かうパルスィさん……―――

 

「ふふっ♪愛されてるわね~」

 

悪戯そうな顔で笑う紫さん……。

 

「まぁ…少し照れますけど……その、嬉しいですから…///」

 

そういえば他には何を貰ったんだろう…?

 

「袋には松茸、栗、サツマイモ、カボチャ、新米、銀杏、柿、秋茄子……それに果物が梨、ブドウ、リンゴ、桃…良いチョイスね」

 

ナチュラルに心を読まないで下さい……。

 

どれも美味しそうだけど……茄子って夏場のイメージがあるけど…?

 

 

「紫さん、秋茄子ってそんなに美味しいんですか?なんだか夏野菜ってイメージがあるんですけど?」

 

「そうね、基本的には夏野菜に分類されるんでしょうけど、本当に美味しくなるのは秋になってからなのよ」

 

そうなの?初めて知ったよ…。

 

「茄子はね秋にかけてその旨味や栄養を凝縮する性質があるの、だから見た目は皮が柔くなって見えるけど、食べると本当に美味しいのよ?」

 

へー…普段そんなに茄子を食べないから知らなかったよ…「あ、それとね」…?

 

「秋茄子は、嫁に食わすな…って言葉があるの、知ってたかしら?」

 

そんな言葉が?

 

「いえ、初めて聞きました……ちなみに…どうしてですか?」

 

すると、再び悪戯そうな顔をした紫さんが……

 

「くすっ…秋茄子はね、体を冷やす作用があるの。子供を産む大事な嫁が体を冷やさないようにっていう戒めね…。パルスィちゃんにはあまり食べさせない方が良いかしら?…ふふっ♪」

 

顔が真っ赤になる……///

 

「ゆ、紫さん!?気が早いですよ!「あら?何度かお泊りしてるのに、まだそういう事はしていないのかしら?」……ノーコメントで……」

 

もう言ってるようなものだよ……うあー…恥ずかしい…///

 

女の子が親に赤飯を炊かれるって、こんな気分なのかな…?

 

 

 

そんな風に紫さんに、からかわれながら喋っていると……―――

 

「…でも、ほんと…いつか二人で…新婚生活みたいなのも憧れますね…」

 

すると、少し考える仕草をした紫さんが…―――

 

「ねぇ、碧君?あなた…「碧、ご飯が出来たから一緒に運んで貰っていいかしら?」…行ってあげなさい?」

 

なんだろう?何か言おうとしてたのかな?……まぁいいか、人数分運ぶのは大変だし急いで行こう。

 

 

それから出来上がった料理を次々と運んでいき、食卓には多くの秋の味覚が並んでいた。

 

一際いい香りをしているのは、松茸ご飯、栗ご飯…松茸とか生まれて初めて食べるけど…楽しみだなぁ。

 

それから、サツマイモの味噌汁、カボチャの煮つけ、焼き茄子、銀杏と椎茸を使った茶わん蒸し等、神様から貰った食材をふんだんに盛り込んだ料理が所狭しと並んでいった。

 

そして、どこからともなく紫さんが調達してきた秋刀魚を使った塩焼き……うーん、やっぱり秋って偉大だね。

 

準備もでき、みんなが席に着き紫さんの掛け声で……――

 

「じゃあみんな、秋の神様と食材に感謝を込めて…―――」

 

「「「「「いただきまーす」」」」」

 

それから並べられた料理を食べたのだが……―――

 

「んんっ?!うま!これが松茸ご飯なんだ…新米と合わせてこんなに美味しい物だったなんて…外の世界じゃ絶対に食べられないよ!」

 

その美味しさはパルスィさんも例外ではなかったみたいで…――

 

「碧、こっちの栗ご飯もホクホクで美味しいわよ。それからほら…この焼き茄子も美味しさが詰まってて、いくらでも食べられそうね」

 

すると、さっきの話を思い出した紫さんが……

 

「あらあら、パルスィちゃん。程々にしておきなさいな?」

 

何の事か分からないパルスィさんは、首を傾げながらも了承していた……―――うあー///これは内緒にしとこう…うん。

 

「藍しゃま!このお魚も、脂がのってて、とっても美味しいです!」

 

秋刀魚を食べていた橙ちゃんも、とっても喜んでる…うん、和むなぁ。

 

「こらこら、きちんとバランスよく食べなさい。ほら、この茶わん蒸しも美味しいぞ?」

 

そんなこんなで、思い思いの感想を言いながら食事は進んでいく。

 

 

すると、紫さんから…――

 

「――そう言えば、もう何度か、こうしてパルスィさんと一緒に家で食卓を囲んでいるけれど…もう、家には慣れたかしら?」

 

カボチャの煮つけを食べていたパルスィさんは、一旦箸を置き……―――

 

「……えぇ。八雲家の方々には色々として貰って、本当にありがとうございます…その、私も何か…お礼が出来ればいいんですけど…」

 

その言葉を聞いた紫さんが……

 

「気にしなくてもいいのよ?―――そうね…なら、あなたは碧と一緒に幸せになって頂戴?それが一番の恩返しよ?できるかしら?」

 

すると、パァッと表情を明るくしたパルスィさんが…――

 

「――はい!絶対に碧と幸せになります!」

 

その答えに紫さんは満足そうに笑みを浮かべ、うなずいていた……本当に頭が上がらないなぁ。

 

そして藍さんからも……―――

 

「あとは橙と遊んであげてくれ。パルスィなら良い姉役になってくれる…な?橙?」

 

藍さんの横でご飯を頬張っていた橙ちゃんが……―――

 

「うん!わたし、お姉ちゃんと一緒に過ごすの…大好きなんだ!だから、これからもよろしくね!パルスィお姉ちゃん!」

 

その言葉を聞いたパルスィさんは、少しだけ涙ぐみ……―――

 

「…橙ちゃん…ありがとうね…。うん!橙ちゃんの為にも、良いお姉ちゃんになるわね♪」

 

笑顔のまま食事を終え、デザートに果物を食べ…その日はお開きになった。

 

こうして秋を堪能するための一日が終わった…でも、秋はまだまだ始まったばかり、もっともっと…色々な事を楽しみたいな。

 

 




食欲の秋…の割には食事シーンが少なかったですかね?
ちなみに作者は松茸ご飯は食べた事ありません…美味しいのでしょうか?

ご意見、ご感想、アドバイスなど、よろしければお待ちしております。

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