東方嫉妬姫   作:桔梗楓

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バレンタイン特別編や、コラボ企画が終わり今回から本編に戻ります。

ここまで来るのが長かったですが、ようやく秋の話です。
秋と言えばあの二人ですよね。




30話 紅葉デート~神々との遭遇~

日本には、“四季”という独自の概念が存在する。

 

それはこの幻想郷も例外ではない―――

 

 

 

 

「うわぁ……間近に来ると本当にすごい!この山だけ一際鮮やかに色付いてるよ」

 

季節は秋……山の葉は赤や黄色に色付き、時候的にも過ごしやすいこの季節。

 

僕とパルスィさんは妖怪の山に来ている。

 

「えぇ…。これは何て言うのかしら……圧倒されるくらい、綺麗な紅葉ね……まるで、山そのものが色絵錦の陶器のような感じ…」

 

 

僕達二人は、秋の妖怪の山に初めて来たのだけど……その紅葉の余りある美しさに魅了されていた――

 

 

「……うん、これもデートだし…山を背景にして二人で写真を撮ろうよ」

 

「…えぇ、賛成よ。でも、この”せるふしゃったーりもこん”?だったかしら、便利で良いわね」

 

そう、実は天魔様に貰ったこのカメラ…かなりの高性能なデジカメで様々な機能が付いていたりする。

 

何でもカメラを集める事と、自撮りをするのが密かな趣味らしい………部下には絶対に黙っていてくれと頼まれたんだけど…―――

 

 

「じゃあ山を背景に……パルスィさん、もう少し左に「この辺かしら?」…うん、オッケー。後は僕が隣に行って……」

 

位置につくとパルスィさんが僕に抱きついてくる……ある意味お約束みたいな感じになってるけど…――そうだ…

 

「パルスィさん。すっかり抱きつくのに慣れたね~「へっ?そ、そんなことないわよ?!…恥ずかしいけど…落ち着くっていうか…///」えい!」

 

慌てふためくパルスィさんを写したくて、そのままシャッターを押す。

 

「え?!ちょっと!今の撮ったの?!…うぅ……碧のいじわる……」

 

それでも、写真を消してと言わないのが、彼女の可愛らしい所……――

 

―――それだけ、一つでも沢山、僕との思い出を作ろうとしてくれてると思うと彼氏冥利に尽きるなぁ。

 

「ごめんね。可愛いパルスィさんを撮りたかったんだ「~~~///」さ、じゃあ次は普通に撮ろうか?」

 

こく…と頷き、何も言わず抱きついてくるパルスィさん……―――この人と出会えて本当に良かった。

 

 

それから何枚か写真を撮り、僕達は山の方へと入って行った…もちろん手を繋いで。

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

「こうして、山の中に入ってみると本当にすごいわね…」

 

さっきまでは山の赤、空の蒼…とそれぞれの色が際立って見えたが、今は見渡す限りの赤一色……―――

 

―――いや、赤を基調として、様々な鮮やかな色が無駄なく入り混じり、それぞれを引き立たせている…。

 

「うん…外の世界でも紅葉を見た事はあるけど……ここまで綺麗な景色は初めて見たよ…」

 

外の世界……いや、幻想郷の中でもさらにこの妖怪の山の紅葉は美しいと思う…何かここだけ違うんだろうか?

 

 

 

それから、しばらく歩いていると……―――

 

「あら?碧さんにパルスィさんじゃありませんか?」

 

と木々の奥……川沿いの方から声が聞こえてくる……この声は…――

 

「雛さんじゃない、今日も厄々しいわね」

 

パルスィさん…それ褒めてるの?

 

「パルスィさんこそ……――そんなに嫉妬心がありませんね?…まぁデート中ですし…むしろこっちが妬ましいと言うべきでしょうか?」

 

エメラルドグリーンの髪を胸元で一つに束ねた独特のヘアスタイル――

 

全身を包むのは真っ赤なドレスのような服――

 

彼女の名前は『鍵山雛』

 

種族は”厄神様”で、この妖怪の山に入ってくる人間に注意を促す、親切な神様の一柱だ。

 

「あら?”妬ましい”は私のアイデンティティなのだけど?」

 

こうして、憎まれ口にも聞こえる会話だが…実はこの二人、とても仲が良い。

 

「くすっ♪ごめんなさいね。あんまりにも二人が楽しそうだったから…嫉妬しちゃったわ」

 

 

”嫉妬心を操る”パルスィさんと”厄をため込む”雛さん―――

 

負の念と関わっているのか、二人は初対面でシンパシーのようなものを感じていたらしい。

 

「まったく…。あ…そうだわ、この山で秋を楽しむのに良いスポットを知らないかしら?」

 

すると雛さんは…――

 

「―――なるほど、紅葉デートですか。羨ましいですね♪」

 

僕達を見てとても微笑ましそうな顔をしていた……―――まぁそうなんだけどね。

 

「雛さんも女性的な魅力は高いんだから、その内良い人が見つかるわよ?」

 

すると、妖しい目をした雛さんが……

 

「お世辞でも嬉しいわね。……そうですね…私の全てを受け入れてくれる殿方……どこかに居ませんかねぇ?」

 

―――そこで、こっちの方を見られても…痛っ?!…パルスィさん…つねらないでよ…。

 

「くすっ♪冗談ですよ?…秋……そうですね、私は管轄外なのですが、秋の神様に直接聞いてみるのはどうでしょうか?」

 

―――秋の神様?

 

「そんなのもいるの?今まで会った事がなかったのだけど……」

 

僕も知らない……一体どんな人なんだろう…?――すると雛さんが…

 

「今から案内するから着いて来て頂戴?あの二人に会うには、特殊な道を通ってしか行くことができないのよ」

 

まぁ、神様だし……そんなに簡単には会えないよね。そしてそのまま雛さんの案内で、紅葉に彩られた木々の中を進んで行く―――

 

 

 

「あの、雛さん……秋の神様って…どんな人なんですか?…やっぱり神様って言うくらいだから、カリスマに溢れた人なんでしょうか?」

 

すると、雛さんはクスリと笑い……―――

 

「いえ、あの二人はカリスマ……まぁ、良い意味ではあるのでしょうけど、そんなに恐れる必要はないわよ」

 

この答えにはパルスィさんも予想外だったみたいで…

 

「そうなの?それに二人って……一人じゃないの?」

 

そう、それも気になってた。秋を司る二人の神様……。

 

「まぁ、それは実際に会ってみてのお楽しみね♪……ん、この先ね……」

 

そして、木々を潜り抜けた先には……―――農園?

 

え、ここ山だったよね?…それがいきなり農園?

 

「パルスィさん……」

 

「えぇ…。ここって…どう見ても…農園よね?」

 

 

 

面喰ってる僕達を見た雛さんは…―――

 

「ふふっ♪驚いてくれたみたいで何よりだわ……さて、二人は…あ、居たわね」

 

すると、雛さんは農園の方に進む……僕達も続いて行き……―――あ、農作業をしてる二人組がいる…もしかしてこの二人が…?

 

「静葉、穣子…お邪魔するわよ?」

 

作業をしていた二人が振り返る…―――

 

ウェーブのかかったボブの金髪に、同じく金色の瞳の女性――

 

「あら雛?珍しいわね、それに……お客さんかしら?」

 

帽子を被り、前の方向にカールしたボブの金髪に、こちらは赤い瞳の女性――

 

「ん?どうしたのお姉ちゃん?あ、雛さんだ!」

 

そして、二人がこちらにやってくる…―――

 

「雛、久しぶりね。元気にしてたかしら?それと…そちらの方達は?」

 

すると、雛さんから目配りされる…―――

 

「初めまして、僕は大神碧って言います。雛さんの友人で、今日は秋の妖怪の山のオススメの場所を教えて貰いたくて、ここまで連れてきてもらいました」

 

同様にパルスィさんも自己紹介する―――

 

「初めまして、水橋パルスィです…地底の妖怪で、こちらの彼の……その、恋人です…///「クスクス♪」何よ雛さん!…ったくもう…あ、よろしくお願いします」

 

すると目の前の二人も自己紹介をしてくれた。まずは、ウェーブがかった髪の女性から…―――

 

「あぁ、そういう事ね。…私は『秋静葉』雛の友人で秋を司る神の一柱よ。秋の魅力ならたっぷりと教えてあげるわ♪」

 

続いて帽子を被った女性が…―――

 

「次は私だね。私は『秋穣子』同じく秋を司る一柱で静葉お姉ちゃんの妹だよ。よろしくね、碧、パルスィ!」

 

大人しい姉と活発な妹……とても仲の良い姉妹みたいだ…。あ、でもちょっと気になる事が…―――

 

「あの、不躾な質問なのですけど……季節を司る神様って何人もいるんですか?」

 

すると、お姉さんの……静葉さんの方から答えが返ってきた。

 

「そうねぇ、古来より八百万の神様って概念があるでしょう?一つの季節を取ってみても、その中には様々な事象が複雑に絡み合っているの」

 

???…どういう事?

 

「うーん…何て言えばいいのかしら…?たとえば夏で言うと、”日差しを強くする”、”気温を上げる”、”夏しか咲かない花の成長を促す”…挙げればキリがないのだけど、そういった事象…全てが一つになって”夏”という季節を形作っているの…理解できたかしら?」

 

あぁ、そういう事か…。

 

「はい、つまりそれらの役割を担っているのが、最初に出てきた八百万の神様って事でいいんでしょうか?」

 

すると、静葉さんは笑顔で……―――

 

「はい、よくできました♪…それを踏まえた上で私達の事について説明するわね。まず私の能力なのだけど…”紅葉を司る程度の能力”…まぁ書いて字の如く…なんだけど、この幻想郷、全ての紅葉は私の意志で彩られ、形作られたの」

 

なるほど……確かにそれは神様にしかできない事だ。

 

「次に妹の方ね…こちらは”豊穣を司る程度の能力”…幻想郷の農作物、全ての出来不出来を自在に操る事ができるの…まぁ秋限定なのだけどね」

 

あ、そういえば前に夏祭りでやってたのは豊穣祈願の舞…つまり、あの舞はこの二人に向けられたものだったのかな?

 

「そんな訳で、秋を司る神様の代表として私達が祀られているの。他に何か聞きたい事はあるかしら?」

 

うーん、大丈夫かな……?あ、でも…―――

 

「あ、なら…ここに来た目的…その、秋の楽しみ方について教えて貰えませんか?「秋の楽しみ方だね!オッケーだよ!」っ?!びっくりした…」

 

いきなり声を上げられたからびっくりした……。

 

「碧さん、ごめんなさいね。うちの妹…秋の…自分たちで創り上げた物がとっても好きなのよ…まぁ、それは私もですけどね♪」

 

そう言って優しい目をして妹を撫でる静葉さん……人も神様も…こういうやり取りは変わらないんだな…「ところで」…?

 

「ここに来るまでに、秋の代表…紅葉を目にしたのでしょう?……その、良ければ感想を聞かせて欲しいのですが…」

 

 

そっか…自分の創り上げた物…人から見たらどう感じたか……なら思った事を素直に伝えるだけだね…―――

 

「稚拙な言葉で申し訳ないのですが……――木という木が銅色や金色、燃えるような朱色に染まる美しい秋の森……こんなにも美しい紅葉を見たのは生まれて初めての経験でした……視覚から入る秋…その一歩目としては十二分すぎるくらいに素敵な紅葉です」

 

 

どうだろう?自分の感想…思いは伝えられただろうか…?……静葉さんの方を見てみると…―――

 

 

「そっか……君がそう感じてくれたのなら…良かったわ♪……でも…クスッ…そんなセリフをいつも彼女さんにも言ってるのかしら?」

 

自分で言った事を思いだしてみる………―――うん、我ながら恥ずかしいセリフを言ったなぁ…///

 

「大丈夫ですよ静葉さん。言葉に出さなくても、私には彼の伝えたい事…思い…きちんと伝わってますから…。それに……」

 

パルスィさんは一呼吸置いて……―――

 

「そんなセリフを言われるのも、女冥利に尽きるってものですから……///」

 

照れながらも、堂々と答えるパルスィさん……なるほど、恥ずかしいけど……心地良いな…。

 

「アツアツね♪聞いてるこっちが照れちゃったわ…///」

 

「「~~~///」」

 

それを聞いた僕とパルスィさんは二人して照れてしまう……これじゃ単なるバカップルだ…まぁ間違ってはないんだけど。

 

「いいわ、あなた達の事は信頼させて貰うわ。それに、もっと色んな秋の魅力を楽しんでもらいたいし……そうね、二人さえ良ければ、ここで果物狩りなんてどうかしら?秋の果物は格別よ♪」

 

 

それはとっても魅力的な提案だ…けど…。

 

「嬉しいんですけど……いいんですか?」

 

すると、静葉さんは……―――

 

「えぇ…素敵な秋を求めて、ここまで来てくれた……そうね感謝の気持ちってところかしらね?」

 

むしろありがたいのはこっちなのに……パルスィさんも同じみたいだ…でも、折角ならご厚意にあずからせて貰おう。

 

「ありがとうございます!…じゃあ…その、おすすめの果物って何がありますか?」

 

すると今度は穣子さんが…

 

「梨、桃、メロンとベリー系なんて今がまさに旬だよ!あとは、うちの果樹園自慢の葡萄酒もオススメだね!」

 

へぇ…葡萄酒も造ってるんだ…。

 

「なら、良ければ果物狩りの後に…それを飲ませて貰ってもいいですか?」

 

それを聞いた穣子さんは……

 

「ぜひぜひ!良ければ持ち帰り分も用意させて貰うから!」

 

何から何まで、至れり尽くせりだな…。

 

それから、穣子さんの自慢の果樹園に案内して貰った。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

あの後、雛さんは帰っていった。そして僕達はというと……―――

 

 

「じゃあまずは秋の味覚の代表、梨からだね!」

 

そういって案内された梨園には所狭しと、多くの梨の樹が栽培されていた…へぇ…樹に生ってる梨を見るのは初めてだ…。

 

「うちで栽培してる梨はどれも美味しいけど…そうだね、折角だから良い物を食べて貰いたいから……うん、見分け方を教えとくよ!」

 

やっぱりそういうのもあるんだ…分かるかな…?

 

「なに、そんなにも難しいものじゃないよ?形がよく果皮に張りがある物……果皮に色ムラがなく表面がツルツルとしたものが熟した梨だよ」

 

それなら……これとかかな?

 

さっそく一つ取って……うん、どうせなら今すぐ食べたいよね。―――という事で穣子さんからナイフを借り皮を剥きその場で実食してみたが…

 

 

「っ?!……んぐっ……。なにこれ?!すごいシャキシャキしてる!それに瑞々しさもすごいし、何より甘みが段違いだ!今まで食べた梨とは比べ物にならないくらい美味しい!」

 

うんうんと頷く穣子さん……―――あ、そうだパルスィさんにも…

 

 

「パルスィさんも食べてみてよ!…切り分けたやつを……はい、あーん」

 

パルスィさんの小さな口に梨が入っていく…しゃくしゃくと音を立てて食べていき……―――

 

 

「?!…ほんと!こんなにも美味しい梨…初めてだわ…ここに来て良かったわね♪ほら、碧も食べなさいな?あーんして?」

 

そうして梨を食べさせ合う僕達……すると―――

 

 

「あー…お二人さん…仲が良いのは分かったから……程々にしてくれると助かるんだけど…///」

 

あ……いつもみたいにしてたけど…穣子さんと静葉さんも居たんだ……人前で…~~~?!

 

「二人の季節はいつでも春みたいに穏やかで夏みたいに熱いのねぇ♪」

 

うん、人前では気を付けよう…。

 

 

 

それから、他の果樹園を回り色んな果物を食べて回ったけど、どれも美味しかった……

 

 

その後は紅葉のスポットに行くため穣子さんとは別れた……別れ際に大量の果物と自慢の葡萄酒を頂いた…帰ってからが楽しみだなぁ。

 

 

「ふふっ♪あの子ったら久しぶりの来客でよっぽど嬉しかったんでしょうね」

 

前を行く静葉さんから声を掛けられる…――

 

「そうなんですか?いつも明るそうな感じに思えましたけど?」

 

すると立ち止まる静葉さん……―――静葉さん?

 

「あの子にとって…人間からの感謝っていうのは、されて”当然”の事なの…。豊穣を司る…人の生活を豊かにするのも苦しくするのも自由自在…」

 

あぁ……そういう事か、人は豊穣を祈願するために神へと祈りを捧げる…でも、それはあくまで…こちらの願いの押し付け…。

 

「あの子の機嫌を損ねれば、人は貧困に陥る…だから決してそれはしない。そして作物が出来た事だけを喜ぶ……」

 

そして、再び歩き始める静葉さん……もしかしたら、穣子さんは……―――そんな僕の考えを見透かしたかの様に……。

 

「多分、あなたの考えてる通りよ。…あの子はね、ただ…自分の育てた食べ物を…美味しいと言って貰いたいだけ……そこに余計な能力が入ったせいで…あの子は自分の心の在りようを変えなくてはいけなかった……。さて、この先にお勧めのスポットがあるのだけど…」

 

立ち止まり、僕達を進ませるように促す静葉さん……?

 

「ここから先へは二人で進んで下さい」

 

「それは…どうしてですか?」

 

すると少し寂しげな表情を浮かべた静葉さんは…

 

「私がいる事で、紅葉達も一層その輝きを強くするでしょう。ですが、それ以上にあなた方には幻想郷の、妖怪の山の、私の培ってきた…”ありのままの紅葉”をその眼で見て欲しいんです…それが、私の…神としてではなく『秋静葉』としてのお願いです」

 

その言葉を言い、静葉さんは去っていきました…僕達は静葉さんに目礼をしつつ木々の先へと進んで行った……。

 

 

 

 

「これは……」

 

パルスィさんも思ったようだ…

 

「……言葉に出来ないって…こういうものなのね…」

 

夕暮れに照らされる紅葉、凋落の時まであと幾日かと思えば、こちらまで紅く染まりそうな色にもひとしお、感慨深いものがあった。

 

「ねぇ…碧…」

 

なんとなく…言いたい事は分かる…

 

「うん…さっきの話…だよね…」

 

「えぇ……人と妖怪…神は全然違う考えを持つものだと思ってたわ…。でも違うのね…その根本はみんな同じ…ただ、立場に縛られて、在りようを変えなければならない……でも、そうしなければ世界は回らない……悲しいわね…」

 

それも世界の在り方……どうしようもない事…だけど…。

 

「ただ、それを選ぶのは僕達じゃない……彼女達なんだ。彼女達は選択した…だから僕達にできる事は、ひと時でもいいから…そんな彼女達を、縛られた鎖から解放してあげる事じゃないのかな?」

 

自分でも分からない……ただ、誰かが笑顔でいられる最善の選択があるなら……その選択をする。

 

四季が移れば、彼女達の在りようもまた変わるだろう。

 

同じ季節、同じ時間でも、同じ景色なんてものは存在しない……。

 

僕達も変わっていくだろう…だけど…それは何も悪い方向にじゃない。

 

僕が幻想郷に来たように、パルスィさんと出会えたように……出会えたことで、二人が変われた様に……。

 

沈む夕焼けに照らされる燃えるように真っ赤な紅葉……あぁ…何て美しくも哀しい季節なんだろう……残酷なまでに…。

 

………―――完全に夕日が落ちるまで、その日はそこに二人で佇んでいた…。

 

 

 

やがて来る冬…それは”静寂”を連想させる季節……

 

そして、秋…色鮮やかな景色が見える反面…その先にある”静寂”を一番に感じる…哀しい季節……

 

秋の哀しさを知ることもまた、秋の魅力を本当の意味で知ることに必要な事なのだろう……―――

 

 




最初は単なるデート回にしようと考えてましたが、書いてるうちにこうなりました。
オチに関しては今回あえて落としどころを書いておりません。
考えに関しては個人それぞれだと思ったので、具体的に書いてしまうと固定概念にとらわれてしまうかな?と思ったからです。

ご意見、ご感想、アドバイスなど、よろしければお待ちしております。

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