東方嫉妬姫   作:桔梗楓

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あなたが選んだのは?
→診療所へ向かう。
本当によろしいですか?
→YES
という訳で永琳ルートです。
最初と最後の文書は他のルートの使い回しですがご了承下さい。



番外編 バレンタインデー~八意永琳編~

 

僕は―――

 

「診療所に…永琳さんに会いに行こうと思います」

 

すると紫さんから―――

 

「……あら?永琳に?それは何故かしら?」

 

不思議そうに、こちらを見てくる紫さん。

 

「理由ですか?永琳さんには病気の時にお世話になってますし、それを無下にはできませんから…」

 

すると顎に指を当てて考える紫……何かをブツブツと言いながら……―――

 

「…あの時、私が料理できれば…いえ仕方がないわね。碧…くれぐれも気を付けてね?」

 

そして紫さんは部屋へと帰っていく……うーん、どうしたんだろう?

 

 

 

そして紫は……―――

 

「永琳が何もしてこないはずがない…でも、前に借りもあるし…手を出されたらどうしましょう……」

 

と、珍しく頭を抱えて焦っていた―――

 

 

 

さて、準備も出来たし…あまり待たせる訳にはいかないから行こう。

 

そして、スキマを潜り診療所へと向かう―――

 

 

さて、入り口に来たけど……永琳さん、いないな。

 

「とりあえず、声を掛けてみよう」

 

そう思い何度か声を掛けたけど、中から反応はない。

 

流石に不思議に思い入り口に手を掛けてみると―――

 

「あれ?空いてる?もしかして中で何か……?」

 

そのまま中に入ると――――

 

「うわっ?!…何この甘ったるい匂い…もしかして永琳さん…この奥に…?」

 

僕は匂いの発生源?と思われる場所へと進んで行く……この部屋って…永琳さんの実験室?

 

 

「永琳さん?いるんですか?」

 

 

そうして部屋の中に入ると……中に人が倒れていた…っ?!

 

慌てて駆け寄ってみると…―――

 

「え?……これって…誰?」

 

そう、倒れていたのは一人の女性………いや、女の子だった。

 

ブカブカの服と白衣……特徴的な銀髪……もしかして?

 

 

「あの…大丈夫ですか?!起きて下さい!」

 

すると女の子は軽く身じろぎして……―――

 

「う、ううん………碧…くん…?」

 

僕の名前を呼んだ……ということは間違いない。

 

 

「あの……永琳さん…ですよね?」

 

おずおずと聞いてみると―――

 

「?……変な事を聞くのね?どこからどう見ても……ってあら?」

 

起き上がろうとする永琳さんは自身の体の状態に気が付き―――

 

「これは……やったわ!実験は成功よ!」

 

喜びの声を上げる永琳さん……いや、それよりも実験て?!

 

「あの……今、実験って言いましたよね?」

 

すると喜んでいた永琳さんから―――

 

「えぇ。自分の肉体を過去の物に戻す……まぁ、所謂…年齢詐称薬?みたいなものかしらね。あ~、懐かしいわ…この体の感じ♪」

 

喜びを越えて浮かれきっている永琳さん―――いや、その前に……。

 

「えっと…それは分かったんですけど……何でそんな実験を?」

 

 

すると永琳から返ってきたのは意外な答え―――

 

「えっとね…その、笑わないで聞いて欲しいのだけど……」

 

と、永琳さんにしては珍しく言いよどみながら……―――

 

「…その…今日はバレンタインデーでしょ?それで碧君にチョコレートをあげようと思ったの」

 

なるほど、でもそれとその姿の関係は?

 

「でもね、普通にあげるのも面白味に欠けるかな?って思って……」

 

いや、普通で十分ですから?!

 

「…それで、碧君に近い背丈の頃の自分に戻って半日過ごしてから渡したいなって思ったのよ……」

 

なんというか…どこかずれてるなぁ…―――

 

「それで薬がやっと完成して碧君に連絡した後にすぐ飲んだのだけど……副作用でそのまま気絶しちゃって……迷惑掛けてごめんなさい…」

 

シュンとする永琳さん。

 

だけど今の永琳さんは僕よりも背の低い中学生くらいの女の子……罪悪感がすごいんだけど……。

 

「い、いえ…無事ならそれで良かったですよ。それにしても……永琳さんの作る薬って、本当にすごいですね…」

 

今僕の目の前に立っている永琳さんは、身長が140cmくらいの女の子。

 

普段の永琳さんの身長が170cmくらいだったから、その差は歴然だ。

 

その証に、着ていた白衣は当たり前として、いつも着ている衣類もぶかぶかになり、今にも脱げそうになっている(まぁ30cmも身長差があればそうなるよね)

 

しかし、そうならない理由として体の一部の大きさが成長後と殆ど変っていない。

 

その一部とは……まぁ、胸である。

 

大人の姿の時より多少は小さくなっているものの、今の背丈に対してはかなりの大きさを誇っている。

 

まぁ、いわゆるロリ巨乳と呼ばれる部類に入るんだと思うけど……。

 

 

「まぁ、でも実験に成功したし…後は碧君とデートをするだけね♪」

 

「え?!ちょ、ちょっと待って下さい!デートって?!」

 

すると可愛らしく首をちょこんと傾け―――

 

「だって、ただチョコレートを渡すのも味気ないでしょ?それに、私もこの姿で碧君と過ごしてみたいし…」

 

うーん……まぁ夜になる前までだったら良い…のかな?

 

「分かりました。デートって言って良いのかは分かりませんけど…夜になる前まででしたらお付き合いします」

 

「本当!?良かったわ♪……あ、それなら碧君。お願いがあるんだけど…」

 

お願い?何だろう?

 

「えっとね……折角、碧君と同じくらいの見た目になったんだから…その、できれば友達と接するみたいに話して欲しいの」

 

まぁ自分より年下?の女の子に敬語で話すのも…変なのかな?

 

「はい……じゃなくて、分かったよ。これでいいのかな?永琳?」

 

すると嬉しそうにする永琳さ…永琳。うん、何だかこういうのも良いな「それと…」…?

 

「あとね…永琳って堅苦しい感じじゃなくて……その…“えーりん”ってフランクな感じで呼んでくれると嬉しいな♪」

 

うっ…ちょっと発音が変わっただけなのに…なんだろう…かなり照れくさい。

 

永琳の方をちらりと見てみると……上目使いで、しかも少しうるうるとした瞳で見てる……あぁもう!

 

「え、えーりん……っ~~~///」

 

うわぁ……これ凄い照れるんだけど……肝心のえーりんは…?

 

「み、み“と”り“~っ!

 

突進するような勢いで抱きついてくるえーりん―――

 

「ごふっ?!」

 

いくら自分よりも背が小さいとはいえ、女の子の全力タックルは中々ダメージが大きい……。

 

「ありがとう!碧君!……ううん、碧!」

 

そのまま喜んだえーりんから抱きつかれる……こ、これはっ?!

 

いつもであれば、自分よりも背の高い人に抱きつかれる為、抱き合う…というよりも胸に顔をうずめている状態になるのだが、今のえーりんの身長は碧よりも低い。

 

その為、碧の胸元よりも下に…その大変ご立派なモノが押し付けられる体勢になる。

 

「こうやって男性の胸に包まれるっていいわね♪…ってあら?碧…ひょっとして照れてるのかしら~?」

 

ワザとか?!えーりん、ワザとやってるのか?!

 

でも、このムニュムニュっとした、マシュマロのような感触には抗えないのが男の性……。

 

「ふふっ♪碧も立派な男の子ですものね♪」

 

楽しそうに、上目使いでこちらを見てくるえーりん。

 

「もう!えーりん!分かってやってるでしょ!」

 

「バレちゃったわね♪そしたら着替えてくるから少し待っててね?」

 

そう言ってさらに奥の部屋への扉を開き―――

 

「あ、覗いちゃダメよ?まぁ碧にならいいかしら?」

 

「えーりん!」

 

「ごめんなさーい♪」

 

そして今度こそ扉の奥に入っていく……。

 

「はぁ…色んな意味で疲れるなぁ…。でも、あんな楽しそうなえーりんを見るのも、何だか新鮮でいいかも」

 

 

 

それから待つことしばらく――――

 

 

 

「ごめんなさい。待たせたわね」

 

扉からえーりんが出てきたのでそちらを見ると……―――

 

「ううん、女性は着替えに時間が掛かるか………ら?」

 

 

「ど、どうかしら?こういう服を着るのは初めてなんだけど、似合ってる……かな?」

 

思わず思考停止してしまった。

 

それくらい、今のえーりんの姿は綺麗だったから。

 

「…あ、あの…碧?」

 

今のえーりんの服装は、ワインレッドと黒を基調とした所謂ゴスロリ風の服で、胸元に黒いリボンがあしらわれている。

 

また、髪形もそれに合わせているのか、いつも三つ編みにして束ねている長い銀髪を、一部サイドテールにして赤と青の長めのリボンで括り、残りは全て下ろしている。

 

まるでビスクドールを思わせるその姿は、今の…子供体型(一部を除く)になったえーりんには、似合っている……いや、怖いくらい似合いすぎている。

 

「…ぇ……ねぇ…碧ってば!「はいっ?!」…もう、人が感想を求めてるのに、ボーっとしちゃって…」

 

しまった、それは悪い事をしたな―――

 

「ごめん!その……こう言ったら変かもしれないんだけど……今のえーりんの姿と服装が、怖いくらい似合いすぎてて…思わず見惚れてしまったんだ…///」

 

じっくり見たい衝動を抑え、軽く目を反らしながら頬をポリポリとかく……うーん、我ながらボキャブラリーの無さに呆れてしまうな。

 

「そ、そうだったの……えへへ♪うれしいわ♪」

 

あ、でも満足してくれたみたいで良かった。

 

「実はね……こういう服には少しだけ興味があったんだけど、大人の姿の私じゃ似合いそうにないから…」

 

ちょっと想像してみる……いや、普通に似合うと思うんだけど……その内見てみたいと思ったのは内緒にしておこう。

 

それにしても服を着替えたことで、より一層強調される胸部の大きさ……この位の年でこの大きさだったんだろか?

 

ちょっとデリカシーに欠けるけど、気になるな……―――

 

「えっと…えーりんは子供?の頃から、そんな体型だったの?」

 

するとえーりんは自分の体を触りながら―――

 

「えぇそうよ。確か…普通の人間で言う13~14歳くらいの頃の体型かしらね?」

 

そして、僕の聞きたい事についての意図が分かったのか、ニヤリと笑い。

 

「あ、そういうことね?それでさっきから胸に熱い視線を感じると思ったわ♪「ごめんなさい…」…くすっ♪正直でよろしい」

 

悪戯な笑顔を浮かべながら、たわわな果実をその手で持ち上げる……これがリアル乳袋の破壊力?!

 

「そうよ。この胸もちゃんと天然ものだから安心して頂戴♪確かに周りの娘に比べたらかなり大きかったわね……というか、その辺の大人よりも大きかったわね…」

 

ですよねー。

 

「まぁ、そのせいで周りの男子からはからかわれるし、女子からは妬まれて…まぁ大変だったわねぇ」

 

あっけらかんと答えるえーりんに、碧は少し驚いてしまった……そして続けるように―――

 

「でも、碧は…この胸をちゃんと魅力的に感じてくれているんでしょ?」

 

答えが分かっていて聞いてくるえーりん……いや、直接聞きたいのかな?

 

「う、うん…。その……とっても魅力的で、ずっと見ていたくなるよ…~~~///」

 

「ふふっ♪その答えが聞けただけで十分だわ♪」

 

そして、居住まいを正し―――

 

「さて、じゃあ改めて……本日のデート…よろしくね♪」

 

そう言いながらえーりんが僕の手を引き、無邪気な笑顔で診療所の外へと向かった。

 

 

 

 

「そういえば、今日はどこに出かけるの?」

 

二人で手を繋ぎ、迷いの竹林を歩いて行く。

(薬の副作用で空を飛ぶことができなくなっている為)

 

「そうね…まずは…「あれ?お客さんですか?」…ってあら?」

 

すると少し先に居たのは優曇華さん。

 

いつものように人里に薬を売りに行ってたのかな?

 

「あ、優曇華さん。お仕事お疲れ様です」

 

「碧さんでしたか、お気遣いどうもです。えっと……そちらの女の子はどちら様でしょうか?」

 

え?優曇華さん気が付いてないの?

 

「えっと…優曇華さん、この人は…「初めまして!私はリンネと申します」…っえ?!」

 

えーりん?何を?それにリンネって……あぁ、えーりんのアナグラムか……。

 

「リンネちゃんですか、私は優曇華といいます。よろしくお願いしますね」

 

そう言ってリンネ(えーりん)の頭を撫でる……えーりんって気が付いたらどんな顔になるんだろうか?

 

「よろしくね!うどんげお姉さん♪」

 

うわぁ…えーりんも楽しんでるよ……まぁ特に実害がある訳じゃないからいいかな。

 

「えっと、それで碧さん。リンネちゃんとはどういう関係なのでしょうか?」

 

え?そう聞かれると……何て答えれば?

 

するとえーりんは何か悪戯を思いついたようで……―――

 

「私はね、外の世界から来た碧の元恋人よ♪」

 

は?

 

「はい?」

 

その言葉に場が凍った。

 

 

 

いやいやいやいや!何言ってるのえーりんさん!あぁ、優曇華さんからの目線が冷たいものに……。

 

「えっと…紫さんからは特に何も聞いていなかったのですが……碧さん…そういう趣味だったんですか?」

 

あ、これ完全にロリコンと思われてる。

 

優曇華さんの視線が絶対零度に……。

 

「うどんげさん!酷いわ!私はこれでも碧と同い年なのよ!」

 

その言葉に固まる優曇華さん。

 

そしてえーりんからさらなる追撃が―――

 

「確かに身長は低いけど、胸はうどんげさんよりも全然大きいでしょ?ほら?」

 

と乳袋を持ち上げて、優曇華さんに見せつける。乳袋って持ち上げられるんだ……。

 

そして自分の胸をペタペタと触る優曇華さん……あ、優曇華さんの目から光が消えた…―――

 

「うぅ…どうせ私の胸なんてまな板ですよ…自分よりも年下の娘にまで言われるなんて…しくしく…」

 

あぁ!優曇華さんがどんどん縮こまっていく……ん?えーりんさん?

 

「そんな訳で、今から私達は再会を喜んでデートに行くの。くれぐれも言いふらさないでよね?」

 

「はい……分かりました……しくしく…」

 

鬼だ…天使の笑顔で、悪魔の所業をいとも容易く……怖いよ。

 

「えっと……そ、それじゃあ優曇華さん…僕達はこれで……」

 

気まずくなったので先に進むことにしたんだけど―――

 

「…しくしく……。あ、碧さん…その…色々と自重しないとうちの師匠から襲われますよ?」

 

「え?……それってどういう…「さ、行きましょ!碧!」…っと、すみません!今日はこれで!」

 

そう言ってえーりんに腕を引っ張られて行く。

 

 

 

 

それを優曇華は呆然とした顔で見ていたが、ふと思った。

 

「さっきの娘…どこかで見たような…?でもすごい胸だったなぁ…」

 

彼女がリンネの正体に気が付く日は来ない……多分。

 

 

 

 

駆け足で竹林を進んで行くえーりんと碧。

 

そして急にえーりんが止まり、碧もそれに合わせて止まる。

 

「はぁ…はぁ……あははっ!さっきのうどんげの顔見た?私だって気が付かずに、ホント笑いが止まらないわ♪」

 

えーりんは、見た目相応の無邪気な笑顔で、先程のやり取りを思い出していた。

 

「でもあれはやり過ぎ!優曇華さんへこんでたし…それに元カノとか言って、変に広まったらどうするの?!」

 

流石に洒落にならない気がする……。

 

「大丈夫よ。うどんげにはきちんとフォローを入れておくわ……それよりも、目的地が見えたわよ」

 

そして、竹林を抜けた先は……人里の入り口だった。

 

 

「ここは…人里。迷いの竹林からここに出れるんだね」

 

そのまま見上げてくるえーりん。

 

「そう、そして今日のデートの最初の目的地よ。自分の足で…しかも急患以外で人里に来るのなんていつ以来かしらね?」

 

感慨深そうな顔をするえーりん。

 

そっか、いつもは診療所もあるし…薬は優曇華さんが売りに行ってるから、じっくりと人里を歩き回るなんて事、そんなにないよね。

 

「それにしても…私がこうして男の子と、白昼堂々と手を繋いで人里を歩ける日がくるなんてね」

 

少し影のある笑みを浮かべるえーりん……彼女の過去で何か思う事があるのかな…。

 

でも、せめて今だけは、そんな顔をしてほしくない…だから―――

 

「行こう!えーりん。今まで楽しめなかった分…今日は存分に楽しまなきゃ!」

 

「え?!碧?」

 

そう、えーりんの影の払うように僕が取ったのは、彼女の手をぎゅっと握ってあげる事。

 

「それに、今日のえーりんは僕の元カノのリンネでしょ?だったら…立場を忘れて楽しまなきゃ…ね?」

 

僕の言葉を聞いたえーりんは、花が咲いたような笑顔で―――

 

「碧……うん!なら今日は、きちんとエスコートしてよね?」

 

そう言って僕の腕に抱きついてくる……ちょ?!胸の感触が腕に?!というか腕が完全に胸で隠されてる?!

 

「え、えーりん?!流石にこれは恥ずかしいから離れて…「ダメ…なの…?」…はぁ…分かったよ…じゃあ行こうか?」

 

「うん!」

 

そうして二人は寄り添いながら人里の中に入っていく。

 

 

 

人里に入って少しして……うん?気のせいかな?

 

そして、呉服屋や装飾品屋を回り、今は再び表通りを歩いているのだが……。

 

「ねぇ碧…なんだか私達…注目を集めてないかしら?」

 

えーりんも気が付いてたみたいだ。

 

「そうだね…うーん、そうだ。あそこのお団子屋に入ろう。丁度休憩もしたかったし…いいかな?」

 

「えぇ、私も少し疲れていたから…丁度いいわ。ふふっ♪ありがとう、碧…」

 

うっ、さりげなく気を遣ってみたけど…バレバレだったみたいだ……まだまだ精進が足りないなぁ。

 

 

そして、僕達は近くにあったお団子屋に入っていく。

 

幸い席も空いていたので、ゆっくりできる奥のスペースに座らせて貰った。

 

 

「ふぅ…それにしても、やっぱり碧って注目を集めやすいのねぇ」

 

へ?僕?

 

「いやいや、普段はこんなことないから!というか今日のは間違いなくえーりんのせいだから!」

 

 

 

そうしてお互いが主張する中、団子屋の店員は思った。

 

あんた達二人が目立ってるんだよ……と。

 

二人とも変わった服装…そして、二人とも人目を惹くような美少女(のように見える)…注目されないはずがない。

 

 

 

そして、注文した団子とお茶のセットが届いたんだけど、ここで―――

 

「ねぇ碧。せっかくなんだし食べさせ合いっこさせない?」

 

「はい?……え?……食べさせ合いっこ…?」

 

「えぇ…誰かに食べさせて上げることはあったけど、食べさせて貰う事ってなかったし……それに…デートならこれをしなきゃって……ダメだった?」

 

流石にそれは恥ずかしいんだけど……―――

 

「お願い…このお団子だけでいいから…ね?」

 

そんな顔をされて断れるわけないじゃないか……。

 

「分かったよ。それじゃ……あーんして?」

 

「むぅ…なんだか慣れてる?まぁいいけどさ……あーん……んむんむ……ん~♪おいし~♪こんな美味しいお団子食べたの初めてだわ♪」

 

なんだろう……えーりんの無邪気な笑顔を見ていると、心が温かくなる。

 

「じゃあ次は私の番ね?…はい…あーん」

 

「あーん……んぐ…んぐ…ふぅ……うん、恥ずかしいけど…照れるね///」

 

そんなやり取りを店の奥……人目に付かない場所でしばらく続けていた。

 

結局全ての団子を二人で食べさせ合ったんだけどね。

 

 

 

それから人里を離れ、えーりんに案内されるまま移動し、霧の湖へと来た。

 

普段にも増して人気のない場所を選び、目の前に広がる湖を、二人並んで眺める。

 

夕焼けを浴び、その湖面には煌びやかな光が、波によって散りばめられ、とても幻想的な雰囲気を出していた。

 

 

 

「今日はありがとう、碧」

 

僕の手を握ったまま、視線は湖を見ながら話す。

 

「本音を言えばね…こんなデートに憧れていたの…」

 

そして語り始める―――

 

「私の家系はね…代々続く薬師の家系だったの。だからかな、子供の頃からいつも自分の家でひたすら薬学の勉強をさせられていたの」

 

「それから、宮廷へと使えるようになり…月へ行ってからは………いえ、なんでもないわ…」

 

多分、僕には想像できない事が沢山あったんだろう。

 

そして、暗い雰囲気を振り払うように立ち上がり―――

 

 

「じゃあ、今日一日付き合ってくれた最後の締め…。私が作ったこのチョコレート…受け取って頂戴」

 

夕日のせいか顔を真っ赤にしながら、僕にチョコレートを差し出してくるえーりん。

 

「その……こういう経験も、今までしたことが無かったから……お願いします…///」

 

僕は立ち上がり、そのチョコレートを受け取る。

 

「ありがとう、えーりん。大切に…食べさせて貰うね」

 

そして、少しの沈黙の後…嬉しそうに笑顔を浮かべたえーりんが僕に近づいてくる……?

 

「ありがとう、碧…これは私からのお礼…」

 

そのまま抱きつかれ、顔を掴まれ……え?これってひょっとして…キスされようとしてる?

 

「ちょ?!えーりん?!これ以上は流石にマズイから!?」

 

しかし僕の顔を固定する彼女の手の力は緩むことが無く…そのピンクの唇を真っ直ぐに僕の方へと向けてくる。

 

あと10cm…そこで異変が起こった。

 

気のせいか。えーりんの顔が上に行ってる?

 

いや、違う…体が元の大人の姿に戻ろうとしてるんだ。

 

えーりんも目を瞑っているので気が付かない。

 

そして、えーりんの体が元に戻ると同時に、その音は聞こえた。

 

(ビリィッ)

 

その音と同時にえーりんの着ていた衣類が全て脱げ落ち…目の前には一糸纏わぬ彼女の姿が。

 

そして音に気が付いたえーりんは目を開け、自身の姿を見てフリーズした。

 

数秒の沈黙……そして―――

 

「ひにゃぁぁぁぁああ?!?!「むぐぅ?!」」

 

とても可愛らしい悲鳴を上げると共に、えーりんは僕に抱きついてくる。

 

いや?!なんで?!てか肌が…生の胸が顔に?!

 

身長差のあるえーりんに抱きつかれたら、こうなって当然。

 

僕は、急いで離れようともがくが……。

 

「むぐっ!むー!むーー!!」

 

「んひゃん!?み、碧…それ、だめぇ…ひゃん?!」

 

逆効果だった…。

 

これはもう、えーりんが落ち着くのを待つしかなかった。

 

そして裸のえーりんに抱きしめられて少しの時間が経った……。

 

正直かなり辛い…顔を挟むのは柔らかくて暖かい感触の巨大なモノ。

 

そして、えーりんからもとてもいい香りがしてクラクラする。

 

これはマズイと思っていると……。

 

「ご、ごめんなさい…私ってば慌ててしまって……えっと、ちょっと服を直すから目を瞑ってて頂戴…///」

 

そして、離れていく人肌……正直かなり名残惜しいけど…いや…やめよう。

 

ごそごそと音が聞こえてきて―――

 

「み、碧…もう良いわよ…」

 

そして、目を開けると……ぶっ?!

 

「え、えーりん?!なんでそんな格好に?!」

 

そう…今のえーりんの格好は破れた服を胸元と下半身に巻きつけただけのもの、正直目のやり場に困る。

 

「仕方がないでしょ?!どう頑張っても入らないんだから!それよりも、誰かに見つかる前に急いで診療所に帰るわよ!」

 

そういってえーりんは僕を抱きかかえる。

 

「え?!ちょ?!」

 

「最高速で飛ぶから舌を噛まないでよ!」

 

思いっきり抱き寄せられる。

 

うわっ…また柔らかな感触が…///

 

 

そして、高速で…かつ誰にも見つからずに診療所へと無事に帰ることが出来た。

 

うん…見られなくて良かったよ。

 

 

そして着いたそのまま部屋へと駆けこむえーりん。

 

僕はとりあえず別の部屋で待たせて貰う事にした。

 

「ふぅ…しかし、最後の最後で凄い展開だったなぁ…」

 

薬の効果が切れて…なんて、マンガの中だけだと思ってたけど…なんて思っていると、えーりんが部屋へと入って来た。

 

「えっと……その、色々とごめんなさいね……」

 

恥ずかしそうにするえーりん。

 

「まぁ…あれは流石に予想外だったから……「でも、しっかりと見たわよね?」…ごめんなさい…見ました…」

 

いくら事故だろうと女性の裸は安くはない。

 

「本当にごめんなさい…。できる謝罪なら何でもしますから…」

 

すると悪戯な笑みを浮かべるえーりん―――なんだろう、嫌な予感がする。

 

そう言えば出がけに、紫さんから気を付けるようにって言われてたけど……。

 

「碧。謝罪の方法は一つだけ……責任を取って、私を…その…お嫁にして頂戴♪」

 

「えぇっ?!いや、流石にそれは!「嘘…だったの…。なんでもするって言ったのに…」…いや、確かにするって言いましたけど?!」

 

「私の裸ってそんなに貧相だった?……そう、やっぱり碧の好みじゃないから…くすん…」

 

「いやいや?!そんなことないよ!えーりんの裸はとっても綺麗だったし、何より魅力的だったから…」

 

「なら、決まりね♪これから私は、あなたのお嫁さんを名乗る事にするわね♪」

 

「……はぁ…えっと…えーりんがそれで良いなら……大事にします」

 

その答えに満足したえーりんは―――

 

「やったぁ♪よろしくね…旦那様♪」

 

と言って僕に抱きついてきた。

 

 

 

余談だが、最初に診療所に倒れていた時から、薬の作用の切れる時間に至るまで、全てえーりんの計算のうちに入っていた。

 

これが月の頭脳の無駄に有効な無駄な使い方である。

 

本人が満足しているから良いのだが。

 

なお、この後パルスィや紫を巻き込んでもう一悶着あったが、全てえーりんの策略により解決してしまった。

 

 

 

 

 

これからどんな物語が紡がれていくのか―――

 

それはIF……有り得たかもしれない話―――。

 

歴史に埋もれた一端の出来事。

 

 





これは歴史に埋葬していいですね。
という訳で永琳編でした。
番外編なのに思った以上に長くなってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?
因みにえーりんの着ていた服を想像しにくい方は
ローゼンメイデンの水銀燈の服の白い部分をワインレッドにしたものをイメージして下さい。

ご意見、ご感想、アドバイスなど、よろしければお待ちしております。

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