東方嫉妬姫   作:桔梗楓

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あなたが選んだのは?
→守矢神社へ向かう。
本当によろしいですか?
→YES
という訳で早苗ルートです。
最初と最後の文書は他ルートの使い回しですがご了承下さい。



番外編 バレンタインデー~東風谷早苗編~

 

僕は―――

 

「守矢神社に…早苗ちゃんに会いに行こうと思います」

 

すると紫さんから―――

 

「あら?それは何故かしら?」

 

「早苗ちゃんは、僕の大切な後輩なんです。だから僕を呼んだのには、よほどの理由があるんだろうと思いまして……ダメでしょうか?」

 

顎に指を当てて考える紫……何かをブツブツと言いながら……―――

 

「うん、良いんじゃないかしら?パルスィちゃんには伝えておくし、守矢神社へのスキマは開けておくから好きな時に行きなさい」

 

そして紫さんは部屋へと帰っていく……うーん、どうしたんだろう?

 

 

 

因みに紫は……―――

 

「これで巫女さんルートが確定したわね……婿養子にするのだけは阻止しなくちゃね」

 

と一人で決意をしていたらしい。

 

 

 

さて、準備も出来たし…あまり待たせる訳にはいかないから行こう。

 

そして、スキマを潜り守矢神社へと着く―――

 

「早苗ちゃんは……本殿の方かな?」

 

階段を上り、鳥居を潜った先に彼女は立っていた。

 

しかし、目を惹いたのはその衣装だった。

 

それは、いつもの巫女服ではなく…高校の時の制服だった。

 

早苗ちゃんは僕に気が付いたみたいで―――

 

「あ!せんぱーい!来てくれたんですね♪」

 

とっても嬉しそうな声を上げてこちらに来てくれた……でも……―――

 

寒空の下、どれだけ待っていてくれたのか……彼女の頬は寒さで赤くなっていた。

 

「早苗ちゃん…待たせてごめんね…「いいんですよ。待つのも楽しみでしたから♪」…そっか、それと…何で制服なの?」

 

ふとした…いやかなり気になった事を聞いてみた。

 

「えっと……そうですね。先輩は、今日が何の日かはご存じですよね?」

 

「うん、バレンタインだね」

 

そういえば…―――

 

「先輩……高校の時、私がチョコレートを渡したのを覚えてますか?」

 

「うん、覚えてる。高校の時に唯一貰ったチョコだったから…義理でも嬉しかったなぁ「違うんです!」…?早苗ちゃん…?」

 

彼女にしては珍しく、強い物言い。

 

「あのですね……あの時、私はもう幻想郷に行くことが決まってたから…だから本当の事を伝えられなかったんです…」

 

早苗ちゃんは俯きながら語る。

 

「だから、先輩とこの幻想郷で再開出来た時…本当に嬉しかったんです!だから……」

 

そして、深呼吸した早苗ちゃんは―――

 

「先輩!私は先輩の事が大好きです!あの時渡したチョコレートも、義理ではなく本命だったんです!だから…だから、私と付き合ってください!」

 

 

頭がフリーズした―――

 

え?誰が?

 

好き?誰を?

 

義理じゃなくて本命?

 

そして、そんな混乱している僕に――――

 

「先輩…失礼します!んむっ!」

 

急に来た衝撃と、唇に感じる柔らかい感触。

 

いつまでも堪能したくなるような感触だったが、やっと混乱が収まってきた僕は―――

 

「…ぷはっ?!…ちょ、ちょっと早苗ちゃん?!」

 

それでもなお、抱きついてくる早苗ちゃん。

 

「私じゃダメですか?…先輩?」

 

うるうると涙を溜めた瞳で見つめられる……―――

 

「そ、その…早苗ちゃんの事は嫌いじゃないよ。でもね、僕にはパルスィさんが…「知ってます!」…早苗ちゃん…」

 

「それでも好きだから……抑えきれないから…んっ!」

 

まるで言い訳を許さないというように、再びキスをしてくる早苗ちゃん。

 

「んんっ!…ん…んはっ…」

 

そして離れていく唇……少し名残惜しいと思った自分を少しだけ恨みたい…――

 

「いいですか先輩?」

 

???

 

「ここは日本じゃないんです…幻想郷なんです!」

 

うん…それは知ってるけど…?

 

「幻想郷では常識に囚われてはいけないんです!そして、ここでは重婚なんて当たり前なんです!」

 

色んな意味で驚きが続く……そんな時、陰陽玉から連絡が来る……なんだろう…嫌な予感がする…。

 

『あ、碧…準備が出来たから家に来てほしいんだけど?』

 

案の定パルスィさんからだった…というか紫さん…説明してなかったんですか?

 

「えっと…その、ちょっと待ってね…」

 

非常にマズイ…早苗ちゃんは心配そうにこちらを見てくる。

 

うん、正直に伝えよう。

 

「あの……パルスィさん…実は……」

 

そして、今起こった事を全て伝える……―――

 

『はぁ…紫さんから聞いてたけど…やっぱりこうなったのね……いいわ、二人とも…今から私の家に来て頂戴』

 

そして通信が切れる……―――普通に怒られるよりも怖いんですけど…。

 

「あの…先輩…今更ですけど…大丈夫…なんでしょうか…?」

 

それはこっちが聞きたいよ…でも今は直ぐに…―――

 

「とりあえず、直ぐにパルスィさんの家に行こう?話はそれからだから……」

 

「そ、そうですね……」

 

若干重い足取りで、パルスィさんの家に向かったのだった。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

地底、パルスィ宅―――

 

時刻は夕方を回った頃、僕と早苗ちゃんはパルスィさんの家の前に来ている。

 

「さて…いつもならスッと入れるんだけど……」

 

「うぅ…すみません…先輩…」

 

すると中から―――

 

「誰かいるのかしら?ってあら、二人とも来てたのね?……入りなさい」

 

僕達二人だと分かると、途端に冷めた視線でこちらを見てくる。

 

そして有無を言わさない声……―――あぁ…とっても怒ってる…。

 

早苗ちゃんも先程の大胆さから一転して委縮してしまっている。

 

 

「そ、それじゃあ。お邪魔します…ほら、早苗ちゃんも…」

 

「は、はい……失礼します」

 

そして、居間へと通され席に着かされたのだが……―――

 

いつもは隣り合って座っているパルスィさんと今は対面で座っている……なんだろう、とっても居心地が悪い。

 

「さ、お茶でも飲みながら……“ゆっくりと”聞かせて貰いましょうかね?」

 

パルスィさんから放たれる、無言の威圧感……そして―――

 

「二人とも…私の言いたい事は分かるかしら?」

 

発せられる言葉……そして、それに対して答える早苗ちゃん―――

 

「パルスィさんの言いたい事…分かります。だから私も……私の本心を語らせて頂きます!」

 

そして、早苗ちゃんはゆっくりと語り始める。

 

「あの日…パルスィさんから神社で言われた事……」

 

あの日?……前に何かあったのかな?

 

「幻想郷に来る前に…先輩に想いを伝えたかった……でも、それができない自分が…別れる事を恐れていた自分が…とても恥ずかしかった……」

 

その言葉に、思う事があったのだろう…パルスィさんは黙って聞いている。

 

「だからこそ、先輩と再会できたとき、今度こそ気持ちを伝えようと思った……思いました…」

 

俯く早苗ちゃん……。

 

「でも、それよりも早く…先輩にはパルスィさんという彼女が出来ました…でも、あの日…パルスィさんはそんな私を鼓舞してくれました!」

 

「別に…そんなつもりじゃなかったのだけれどね…」

 

バツが悪そうにするパルスィさん……本当に何が?

 

「そして、今度こそ自分の気持ちをキチンと伝えようと思いました…でも、先輩はいつもパルスィさんと一緒で…全く付け入る隙も無かった…」

 

まぁ…確かに外出するときは殆どパルスィさんと一緒だったからなぁ…。

 

「だからこそ!今日、この日…バレンタインデーに…積りに積もった私の想いを伝えようと決意したんです!」

 

そして、早苗は立ち上がりパルスィさんをしっかりと見据えて宣言した。

 

「あの日言ったように…パルスィさんに負けるつもりはありません!私もパルスィさんと同じ……ううん、それ以上に、もっともっと…先輩の事を幸せにして見せます!だから!」

 

そう言ってパルスィとしっかりと目を合わせる。

 

そして、どれだけ見詰め合っていただろうか……―――

 

「はぁ……参ったわ。降参よ」

 

パルスィさんがため息を吐き、それから言葉を発し始める。

 

「ほんと、あなたの行動力には驚かされるわね。まぁ、私が願うのは碧と私の幸せ…そこにあなたが加わって、もっと幸せにしてくれるなら……願ったり叶ったりよ?」

 

その言葉を聞いた早苗ちゃんは、涙を浮かべ…―――

 

「パルスィ…さぁん……ぐすっ…ありがとう、ございますっ!」

 

たどたどしい言葉で…感謝を伝えていた。

 

「さて、色々とあったけど…今日はバレンタイン…折角作ったチョコが無駄にならないように、二人で碧に食べさせてあげましょうか?」

 

へ?……いや、え…?「いいですね!」…?!早苗ちゃん!?

 

そして、二人は用意したチョコレートを開け、それを手で持ち……―――

 

「さぁ碧…初めてのチョコレート…食べてくれるわよね?」

 

「せ、先輩…これからもよろしくお願いします///」

 

そして二人から同時に……―――

 

「「はい、あーん」」

 

口に入ったチョコレートは…とっても甘く、とっても幸せな味がした。

 

大切な恋人が二人に増えたけど……きっと大丈夫。

 

 

 

これからどんな物語が紡がれていくのか―――

 

それはIF……有り得たかもしれない話―――。

 

歴史に埋もれた一端の出来事。

 

 





ちょっと短めでしたが早苗編でした。
IFのお話…いかがでしたでしょうか?
パルスィはあくまで正妻の余裕と焚きつけた責任感が若干あったりします。

ご意見、ご感想、アドバイスなど、よろしければお待ちしております。

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