東方嫉妬姫   作:桔梗楓

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バレンタインデーということなので特別編を書いてみました。
この話はあくまでもIFストーリーです。
本編との関係はございません。
なので、若干キャラクターが壊れます。
そして、この共通ルート編の後にそれぞれのルート編と、多少過激な描写の為R18指定作品の方に一つ投稿します。
年齢制限に引っかからない方はそちらも読んで下さい。
選択肢を選ぶ時間を考慮して続きは19時に纏めて投稿したいと思います。
また、メインヒロインのパルスィルートのみ20時投稿になりますがご了承ください。
これもまた、お遊び要素と思って楽しんでくれれば幸いです。



番外編 バレンタインデー~共通ルート編~

寒さも薄れてきた二月の上旬のある日―――

 

パルスィは、紫にこっそりと呼び出された。

 

そう…これは、幻想郷で起こった…歴史に名を残さなかった異変……。

 

後に、バレンタイン異変と呼ばれ、歴史の闇に埋葬された異変の始まりであった……―――。

 

 

 

 

「紫さんったら……急にどうしたのかしら?」

 

水橋パルスィは困惑していた―――

 

何故なら、普段彼女が呼ばれる際は、ほぼ必ずと言っていい程、碧とセットで呼ばれるからだ。

 

それが今日は、碧には内緒で……絶対にバレないように来て頂戴と言われた。

 

勘ぐらない方がおかしいと言うものだ……―――

 

 

そして、呼び出された場所に着く……

 

 

ここは、旧都から離れた場所にある小さな喫茶店。

 

辺鄙な場所にあるので、そこまでお客が多いわけでは無く、マスターの趣味で成り立っているお店だ。

 

「さて、紫さんとの待ち合わせ場所はここだから……「ようこそパルスィちゃん」きゃっ?!ゆ、紫さん!?急に現れないで下さいよ!」

 

「あら、ごめんなさいね…ふふっ♪」

 

相変わらず人をからかってくるのが好きなようだけど、それも含めて紫さんの良い所だから仕方がないのかしら。

 

「さて、それじゃあパルスィちゃん…中に入りましょうか?」

 

そう言って、手慣れた様子で店の中へと入っていく……ひょっとして常連さん?

 

店の中に入ると、レトロな雰囲気が漂う、とても落ち着ける内装だった…今度碧と一緒に来ようかしら?

 

「いらっしゃいませ……あら?紫様…ようこそ、いつもの席でよろしいでしょうか?」

 

店内にはマスターが一人だけ……予想してたよりもずっと若々しい女性のマスターがフォーマルな服を着てグラスを磨いている…何と言うか…とても様になっているわね。

 

「いえ、今日は連れがいるから……そうね、一番奥のカウンターでいいかしら?」

 

「はい、かまいませんよ。ではどうぞ奥へ…」

 

そして、紫さんに案内されるまま奥へと通される……あ、ここだと外からも姿が見えないし、こっそりと来たい時には良いかもしれないわね。

 

それから、マスターがおしぼりと水を持ってくる。

 

「紫様はいつもので?」

 

「えぇ、お願い。パルスィちゃんはどうする?」

 

「えっと…そうですね…マスターのおすすめは何でしょうか?」

 

色々と目移りするメニューだけど、ここは素直にマスターに聞いた方が良いと思う。

 

「そうですね。当店ではストレートの紅茶…アッサムになりますが…そちら等がおすすめとなっております」

 

「なら、それでお願いします「かしこまりました…少々お待ちください」…ふぅ…それで紫さん、こんな遠くまで来て、何の用時なんでしょうか?」

 

すると、隣で水を飲んでいた紫さんから……―――

 

「パルスィちゃん…一週間後、何があるか分かってる?」

 

一週間後……?あ、もしかして……―――

 

「ひょっとして……バレンタインデーのことですか?」

 

「正解よ♪」

 

そう、隔絶した世界であるこの幻想郷にもバレンタインデーという習慣はある。

 

人や妖怪……種族を問わず、女性が意中の男性にチョコレートを渡し、想いを伝えるという一大イベントだ。

 

 

無論、私も知らなかったわけではない。

 

去年まではそういった相手がいなかっただけなのだから。

 

でも、今年は違う。私の大切な彼氏……碧がいる。

 

想いは伝えあった仲だけど、普段の感謝も込めて彼にはチョコレートを贈るつもりだ。

 

「えっと……もちろん、碧にはチョコレートを贈るつもりですよ。あ、紫さんや八雲家の方も贈るんですか?でしたら別に私に言わなくても……「甘いわよ!」ひゃい?!……え?紫さん?」

 

するとおしぼりを握り絞めながら言葉を発する……―――

 

「甘い…甘いわ、シュガートーストにハチミツとシロップをかけるよりも甘いわよパルスィちゃん!」

 

珍しく力説してくる紫さん……というか胸焼けしそうな組み合わせですね……。

 

「えっと…甘い…といいますと?」

 

「ふぅ……良い事パルスィちゃん。確かにあなたと碧君の関係は幻想郷の誰もが認める仲……でもね、これを見てもそう言えるかしら?」

 

すると、紫さんはいくつかのスキマを開き、そこに映像を映し出す……―――

 

「って紫さん!?これってのぞき「特別編だからいいのよ」…あ、はい」

 

という事なので、大人しく映し出された映像を見ていくと……―――。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

東風谷早苗はウキウキしていた。

 

無論、碧にあげるチョコレートを作っているからだ。

 

「~~♪~~~♪」

 

彼女にしては珍しく、鼻歌を歌いながらチョコレートをボールに入れてかき混ぜている。

 

それもそのはず…かつて早苗は、高校時代に碧にチョコレートをあげたのだが、恥ずかしくて想いを伝える事が出来なかった。

 

そして、貰った碧も、それを優しい後輩からの義理チョコとして受け取った。

 

本当は本命だと伝えたかった早苗は、今度こそ…長年積み重ねた自分の想いと共にチョコレートを渡すつもりなのだ。

 

「今度こそ……絶対に先輩に…奇跡は起きます!起こして見せます!~~~♪」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

次のスキマに映されていたのは幻想郷の閻魔様―――

 

四季映姫は悩んでいた。

 

毎年、この季節になると浮かれて暴挙を起こす人間や妖怪(主に女性)がいる。

 

そういった人たちを見かけては、やれ浮かれるな、やれこれは単なる普通の日だ…など、お小言を言ってきたのだが……。

 

今年は違う。

 

そう、碧がいるのだ。

 

自分も一人の女性……バレンタインに憧れが無かったわけではない。

 

しかし、それと同時に閻魔である自分がそういった事に浮かれているのはどうなのだろうか?

 

散々説教してきた自分が、いざ相手が見つかった途端に行動するのは閻魔として模範にならないのではないだろうか?

 

考えれば考えるほど、悩みは尽きない―――

 

「うーむ…碧さんにはお世話になってますし、ここは義理として…」

 

「いやでも、そうしたら私の気持ちを伝える事は…」

 

あっちへうろうろ…こっちへうろうろ……ひたすら悩み続ける。

 

それをこっそり見ていた小町は……四季様も何だかんだで乙女だね~と心の中で思っていた。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

次に映し出された場所は永遠亭の診療所

 

彼女…八意永琳は微笑んでいた。

 

それだけ見れば、何か良い事があったのか?と思うが、周りの環境がそれを許さない。

 

何故なら彼女は自分の実験室で、ビーカーやフラスコに入った怪しげな色の薬品を調合しながら微笑んでいるのだから……。

 

「これを混ぜて……それと、こっちの薬もね……これが上手く配合できれば……うふふ♪」

 

訂正、どう見ても単なるマッドサイエンティストだ。

 

そして、影からこっそりと見ていた優曇華は戦慄した……。

 

何故ならこういった薬の実験台にされるのは、まず第一に自分だからだ。

 

「ひぃっ?!……こ、今度は何の薬を作ってるんでしょう…ざ、座薬だけは勘弁して下さい!?」

 

意味不明な事を言っていたが気にしてはいけない。

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

そして、映し出されたのは地霊殿

 

古明地さとりは女将さんに習いながら、チョコレートを作っていた。

 

「女将さん、温度はこれ位でいいでしょうか?」

 

「はい、丁度いいですね。次はこちらのチョコレートを合わせてみましょうか」

 

「分かりました。すみません…折角の休日にご足労頂いて…その…私事に付き合わせてしまって…」

 

申し訳なさそうにするさとり。しかし、そんなさとりに女将さんは……―――

 

「ふふっ…お気になさらないで下さい。さとり様にはお世話になっていますし…。それにしてもこのチョコレート……愛しの彼のためですか?」

 

すると恥ずかしそうに俯きながらも、しっかりと頷くさとり。

 

そんな姿は正しく恋する乙女のそれである。

 

「ならばしっかりと美味しいチョコレートを作って…彼の心をがっしりと掴みませんとね?……そうですね、こういうチョコレートなんてどうでしょうか?」

 

そして女将さんのアドバイスの元、美味しそうなチョコレートと、口説き文句を教授されるさとり。

 

「私も負けませんよ?パルスィ?」

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

そして再び喫茶店に戻ってくる……―――

 

「さて、以上が見て貰った結果だけれど……パルスィちゃん、この面子を相手に…これだけの手段を講じている敵を前にして、それでも普通のチョコレートを渡すと言うのかしら?」

 

この映像と、紫の言葉に、パルスィは衝撃を受けていた。

 

確かに碧はモテる…以前、早苗にも言ったはずなのに…まさかここに来てこんなにも障害が立ちふさがるとは考えてもいなかった。

 

(もっとも…そこで、碧をその日だけ他の女性から遠ざけるという選択肢を出さない辺り、紫も楽しんでいるのだが)

 

「パルスィちゃん!このままじゃ、碧が取られちゃうわよ!」

 

さらに煽ってくる紫にパルスィは……―――

 

「ど、どうしましょう?!このままじゃ…あぁでも今からこれを越えるなんて…ううん…諦めたら…でも…」

 

完全に慌てふためいていた。

 

それを確認した紫は、まるで計画通り…といった顔で……――――

 

「パルスィちゃん……実はね、とっても良い“秘策”があるんだけど…聞きたい?」

 

と、まるで悪魔のような囁きをした。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

バレンタイン当日―――

 

「ふぅ…ごちそうさまでした…と」

 

いつものように昼食を済ませる。やっぱりこうして、みんなで卓を囲んで食べるご飯は良いものだ。

 

すると、藍さんと橙ちゃん……そして、紫さんが僕の前に来る…?…どうしたんだろう?

 

「碧君、今日が何の日だか分かるかしら?」

 

???

 

「今日…ですか?…えっと……誰かの誕生日とか…?」

 

すると、目の前の紫さんが少し呆れた顔で―――

 

「はぁ…碧君。今日はね、バレンタインデーよ?外の世界にもあったでしょ?女性が意中の男性にチョコと気持ちを送る日」

 

言われて思い出す。

 

あぁ、そういえば今日は二月十四日……自分にはそこまで縁の無い日だったから忘れてたんだ。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

というのも、碧は外の世界に居た時、チョコレートを貰った事が殆どない。

 

最後に貰ったのは井上祥華からだが、祥華自身が日和ってしまい“お土産”と言って渡してしまったのだ。

 

余談だが、それを見ていた茜ヶ久保悟が大爆笑していた……祥華から股間を蹴り上げられて悶絶していたが。

 

さらに、その前に貰ったのは高校の時に早苗から貰ったものであり、これもまた早苗が日和って―――

 

「先輩、いつも相談に乗って貰ってありがとうございます」

 

と、肝心な言葉を伝えずに渡したので碧自身、可愛い後輩からの義理チョコだと思ってしまった。

 

二人とも本命チョコレートだったのだが、日和ってしまった事と碧の元来の鈍さが合わさり、未だに本命チョコを貰った事が無いと碧は思っているのだ。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

そんなわけで、今まではバレンタインとは無縁だったのだけど……。

 

「えっと…幻想郷にもバレンタインがあるんですね」

 

すると紫さんから―――

 

「そうよ。まぁでも碧君には本命がいるから……私達からは普段の感謝を込めてのチョコを贈ることにするわ」

 

そして、藍さんと橙ちゃんもそれに続く―――

 

「そうだぞ。碧にはいつも助けられているからな……さぁ、受け取ってくれ」

 

「いつもありがとうね、おにいちゃん♪これ、紫さまと藍さまと橙で、がんばって作ったの!パルスィお姉ちゃんのチョコの後で良いから食べてね♪」

 

と、嬉しい事を言ってくれる。

 

「橙ちゃん、藍さん……それに紫さん。ありがとうございます!本当なら早速食べたい所ですけど……」

 

すると紫さんがほほ笑みながら―――

 

「いいのよ?さっき橙も言ったけど、最初に食べるのは本命のチョコからが良いわよね♪」

 

「すみません。そっか……今年はパルスィさんがいるんだ…初めて本命チョコを貰えるんだ、楽しみだなぁ」

 

しかし、ふと考える。

 

今日はパルスィと会う約束はしていない……あれ?本当に貰えるんだろうか?

 

「ふふっ♪心配しなくても大丈夫よ?パルスィちゃんは準備に時間が掛かるから、出来次第、碧君を自宅に送るように頼まれてるの……そうねぇ…夜には準備ができるんじゃないかしら?」

 

夜か……楽しみだな♪

 

すると、陰陽玉から連絡が来る(連絡手段として一部に普及している)……?誰だろう?

 

映像を映し出すと―――

 

『あ、先輩!お久しぶりです!元気にしてましたか?』

 

早苗ちゃんからだった。

 

「うん、久しぶり。最近そっちに行けなくてごめんね。僕は元気にしてるけど、早苗ちゃんは元気かな?」

 

『はい!守矢の巫女は、いつでも元気です!えっと…それでですね、先輩…今日、この後ってお時間ありますか?』

 

この後……パルスィさんから連絡が来るのは夜って言ってたけど…早まったら悪いし…。

 

少し考え込む僕を見て、早苗ちゃんから―――

 

『あ、無理にとは言いません。お時間が無ければ、別の日でも構いませんので。良ければ、この後、守矢神社に来てください…それでは失礼します!』

 

そういって通信が途絶えた……うーん、どうしたんだろう?っと、また通信が来た。

 

『あ、碧さん。この前はお仕事の手伝い有り難うございます。少々お時間宜しいでしょうか?』

 

映姫さんからだ。珍しいなこんな時間に……いつも、仕事の連絡だったら、夜か朝に来るのに。

 

「映姫さん、いえこちらこそ、色々と勉強になってます。それで、今日はどうされたんですか?」

 

すると、通信越しに少しだけ言いよどみながら……―――

 

『えっと…その……よし!碧さん、この後なんですが、お時間はありますか?良ければなのですが、無縁塚まで来てほしいのです。都合が悪ければ来なくても大丈夫ですので…そ、それでは、失礼しました…』

 

と、慌てて通信を切る映姫さん。

 

そして、続けざまに再び通信が来る。

 

『こんにちは、碧君。体調は崩してないかしら?』

 

今度は永琳さんから……まさか…?

 

「え、えぇ……おかげ様で、元気ですよ。それで、永琳さんから連絡って珍しいですけど…どうされたんですか?」

 

すると何となく予想はしていたけど―――

 

『そう言えばそうね。えっと…この後、時間を貰えないかしら?碧君の都合が悪ければ別の機会で良いのだけれど……そうね…着て貰えるなら診療所まで来て頂戴。それじゃあね♪』

 

うーん…ここまで来ると作為的な物を感じる…ってまたか!

 

 

『あ、碧さん…今、お時間よろしいでしょうか?』

 

さとりさんからだ。地底と行き来する関係上、さとりさんと連絡を取ることも少なくはない。

 

でも、この流れだと……。

 

「はい、大丈夫ですよ。それで、どうしたんですか?」

 

すると、照れくさそうな顔をして―――

 

『えっと…碧さん、この後少々お時間頂けないでしょうか?良ければ地霊殿でお待ちしておりますので…では///』

 

………もう、これって間違いないよね?

 

紫さんの方に視線を向けると……―――

 

「えっと……まぁ、その…何の用事か言ってなかったから…遅くならないなら、行ってみるのも良いんじゃないかしら?パルスィちゃんには私から伝えるから…選ぶのは碧君次第って事で…ね?」

 

若干苦笑いをしているが……まぁ紫さんだし…仕方がないのか…―――。

 

さて、色んな人達から連絡が来たけど……どうしようか?

 

 

→守矢神社へ向かう。(早苗ルート)

 

→無縁塚へ向かう。(映姫ルート)

 

→診療所へ向かう。(永琳ルート)

 

→地霊殿へ向かう。(さとりルート)

 

→どこにも行かず家で待つ。(パルスィルート)

 

僕は……――――

 

 




という訳で遊び半分で考えたルート選択。
最後は展開が早くなりましたが番外編ということでご容赦下さい。
それぞれの選んだルートの話を読んでください。
個別ルートは全部読んでくれると作者が嬉しいです。
なお、パルスィルートのみR指定の話がございます、気になった方は作者のページから東方嫉妬姫~番外編~に飛んでください。

ご意見、ご感想、アドバイスなど、よろしければお待ちしております。

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