読んで下さった方々に感謝です。
今回は妖怪の山でのお話…その続きです。
さて、あの後僕達は当初のカメラを貰うという目的を達成したので、帰宅しようかと思ったけど。せっかくなので、引き続き山デートを続ける事にした。
改めて見ても、妖怪の山は風光明媚な場所で、秋にはさぞかし美しい紅葉が見れるのでは…と期待してしまったくらいだ。
それから、天魔様の勧めでもあった河童の里に行って見たのだが、哨戒天狗と遭遇した時と違い、とても交友的にこちらを受け入れてくれた。
僕の想像していた河童と違い、青い帽子にブラウスを共通とした服を着ており、常に工具等の道具が入った大きなリュックサックを背負っている。
何でも、話を聞いた『河城にとり』さんの話では…――
「これは河童という種族…技術者としての証なんだよ。それから人間は盟友だ。何か困ったことがあったら気兼ねなく来ておくれ」
と言ってくれた。地底の妖怪に対しても、偏見は少ないようで、これにも安心した。
―――そして今は、にとりさんと別れ山の頂上近くでパルスィさんとお昼を食べている。
「よく、お弁当を持ってきてたね?ひょっとして、ここまで予想されてたの?」
すると照れた彼女が…――
「まぁね、あなたとの付き合いもそこそこ長くなってきたし…その…これくらいわね…///」
本当に良くできた彼女だ…。それにお弁当も、どこでも食べやすい様にサンドウィッチにしてくれている…。
「こんな景色のいい場所で、パルスィさんと食べる手作りのお弁当…本当に幸せだなぁ…」
「ふふっ…あなたと二人だから幸せなのよ?それに…こうして手料理を作ってあげるのは、あなたにだけなのだから。感謝してよね♪」
あー、もー!…なんでこんなに可愛いの?!
それに髪型を変えてる事もあって、ちらちらと見えるうなじ…なんて魅力的なんだろう…。うなじフェチの人達の気持ちが分かった気がするよ…。
「いつでも、感謝はしてるよ?それにしても、さっきはホント驚いたよね」
「紫さん達の事かしら?…そうねぇ、あれは私も驚いたわ…。というか碧、あそこに居たのって幻想郷の中でもかなりの力を持った人達よね?私達…何で、あそこまでの庇護を受けれるのかしら?」
多分、紫さんを通して、色々な方面に協力を仰いで貰ってるって言うのは分かるんだけど…――
「うーん…単純に…僕達二人に幸せになってもらいたいのかな?…さとりさんも応援してくれたし…その辺でも何か働きかけがあったのかも…ってパルスィさん?何で少しむくれてるの?」
そう、ほんの少しだけ顔を膨らませたパルスィさん…何で?
「その気持ちは嬉しいのだけど…。多分、別の理由があるわよ…。特に、閻魔様とお医者さん…それにさとりも…」
映姫さんと永琳とさとりさん?…なんだろう?
映姫さんは仕事で一緒に働いた仲で、さとりさんは話しやすい友達…永琳さんとはまともに話したのは今日が初めてなのにね?
「こっちはあんまり心当たりが無いんだけど…パルスィさんから見て、その三人はどう見えたの?っていうか何か知ってるの?」
少しだけ考えるパルスィさん…やっぱり何か心当たりが…?
「まぁ…正直に言うわね。その三人…多分…いいえ、間違いなくあなたの事が好きよ?」
「……へっ?」
予想外の答えに変な声が出てしまう。だってそうでしょ?好きって…――
「その反応だと、全然気が付いて無いみたいね…はぁ…相変わらず天然たらしの鈍感なんだから…」
て、天然たらしの鈍感……。まさか自分の彼女にそんな事を言われる日が来るなんて…。
「さとりについては…その、私があなたと初めてデートをする前に聞いていたから知ってるの。閻魔さまは…この前の…その覗き見の時にね…。ただ、お医者さんに関しては全く分からないのだけど…心当たり…ないかしら?」
そうだったんだ…そう考えたら何だか恥ずかしくなってくる///……――映姫さんとか思いっきり抱きしめたし…///
「あの……聞かなかった事にしていい…?「ダメよ」…ですよね…。もう、あの三人と顔を合わせ難くなったじゃない///」
「彼女の私が言えた事じゃないけど…きちんとみんなの気持ちに向き合ってあげて?私達の為に態々来てくれるくらいに、思ってくれているのだから…ね?」
パルスィさん…――
「うん、分かったよ。彼女達から何か言われたら、きちんと返せるように僕も自分の考えを出しておく。それと、安心して?僕の心はもうパルスィさんで予約済みなんだから?」
すると、顔を赤くしたパルスィさんから
「も、もうっ!そういう事じゃないの!……でも、その…――嬉しいわ♪」
それから暫くの間、二人はゆっくりとした時間を過ごした――
―――――――――――――――――――――
「ねぇ碧、この後はどうするのかしら?山の探索もある程度済ませたけど…?」
「そうだね…。あ、折角だから守矢神社に行ってみない?諏訪子さんにさっきのお礼と、早苗ちゃんに僕達の事を報告しておきたいんだ」
そう、あの後諏訪子さんだけ、いつの間にか居なくなっていたのだ…お礼を言いたかったんだけど…まさか自分の所に来ることまで計算して?
「早苗ちゃん……守矢の巫女で、あなたの外の世界での後輩だったかしら?……初めて聞いたときは嫉妬しちゃったけど…そうね、私も挨拶したいわね」
「そうと決まれば、さっそく守矢神社に行こうか。確か、この先を抜ければ見えてくるはずだから――」
そして、僕達二人は守矢神社へと辿り着く…すると前の様に早苗ちゃんが箒で掃除をしていた。
「こんにちわ、早苗ちゃん」
こちらに気が付いた早苗ちゃん
「あ、先輩!お久しぶりです!……えっと、そちらの方は?」
そっか、早苗ちゃんとパルスィさんは初対面なんだよね…。なら、きちんと紹介しなくちゃ。
「えっと、彼女は『水橋パルスィ』さん…地底の妖怪で……その、僕のお付き合いしている人なんだ…///」
すると驚いて、箒を手放してしまった早苗ちゃん…。あれ?そんなに変な事言ったかな…?
「……そう…なんですね…。おめでとうございます先輩!…これでやっと、先輩にも春が来ましたね!」
何だか変な感じだけど…祝福してくれてるんだよね…?
「ありがとう。それと、さっき諏訪子さんに助けて貰ったんだけど…居るかな?」
「諏訪子様に…ですか?あぁ…それであんな弾幕が…。でしたら、奥の部屋に居ます……私は此処の掃除を済ませてから行きますので。先に行って下さい」
やっぱり何だか変だ…けど…それが何なのか分からない…。
「うん…。それじゃあまた後でね。行こうかパルスィさん…?パルスィさん…?」
するとその場を動こうとしないパルスィさん…どうしたんだろう?
「碧…悪いんだけど先に行ってくれないかしら?私はこの子と少し話したい事があるの…」
本当なら二人で行きたいんだけど…何か理由があるんだろう…。頷いて僕は先に行くことにした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
彼が行った後…私と守矢の巫女だけが、その場に残される。さて――
「あの……改めまして、紹介させて頂きます。私は『東風谷早苗』です。この神社で巫女をしています」
うん…感じのいい子ね。でも、私が聞きたいのはそれじゃない。
多分、藪蛇になるんでしょうけど――
「私は『水橋パルスィ』よ。地底の橋姫…碧の彼女。よろしくね」
「はい。よろしくお願いします…それで、水橋さん「パルスィでいいわよ」…分かりました、なら私の事も早苗とお呼び下さい。パルスィさん…此処に残って…私に何かご用でしょうか?」
来たわね…――
「えぇ…。間違っていたらごめんなさい…。早苗…あなた……碧に惚れているのかしら?」
すると彼女はハッと息を呑んだ…やっぱり…間違っていなかったのね。
「えっと…何故、そう思われたのでしょう?」
それでも態度を崩さない彼女…。
「最初に碧から、私の事を紹介した時の態度…あれは単に驚いただけじゃなかった。そうあって欲しくない…その願望が崩された驚きだった…そう感じたのよ」
すると俯き…それから再び顔を上げた彼女の瞳には、涙が溜まっていた…。そうよね…。
「あなたに…あなたに何が分かるって言うんですか!?先輩は、私にとっての太陽だった!私が居る事の証明だった!憧れだった!……それなのに…ぐすっ…」
やっぱりね……私にとっての拠り所が彼だったように、彼女にとっての拠り所も彼だった。同じ男を好きになったから分かってしまった。
「そうね…出会いが違えば、私と彼は結ばれてなかったでしょうね…。そして、逆の立場になってたかもしれない…」
「だったら何ですか!憐みですか!そんなの…勝者の自慢にしかなりません!「聞きなさい!!」…っ?!」
彼女としては間違った事なのかもしれない…でも…――
「私と彼は確かに結ばれたわ。でもそれが何?彼の事を想う人は他にも居る…そして、その人達は、それを聞いても諦めていない!」
すると、泣き顔から一転して驚愕の表情を浮かべる早苗…それでいいのよ――
「あなたの…碧に対する想いがそれまでだと言うなら、別にそれでもいいわ。単にライバルが減るだけですもの?」
すると彼女は俯き…そして、答える。
「私は…私の想いは…っ!先輩を諦めたくない!もう二度と…離れ離れになりたくない!他にライバルがいる?……幻想郷には常識なんて無い!なら、先輩の心をあなたから奪います!そして……そして、私の事を一番に考えてくれる様にして見せます!奇跡ではなく…自分自身の力で!」
はぁ…私もお節介になったものね…。でも…――
「良い顔になったわね。でも、彼の事を想うのなら…それくらいの気概がないとね。「パルスィさん…」今日から、あなたと私はライバルね?私は負けないわよ?」
「わ、私だって負けませんから!……でも、ありがとう…ございます///」
泣いたカラスがなんとやら…すっかりとその顔に、気力を取り戻した早苗と私はその後ゆっくりと奥の部屋へと向かった。
早苗と楽しく話しながら…――
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
奥の方…本殿の裏手にある家に向かうと、神奈子さんと諏訪子さんが雑談をしていた。
「あ、神奈子さーん!諏訪子さーん!」
すると僕に気が付いた二人が…
「おや、碧じゃないか?さっきは大変だったらしいね…大丈夫だったかい?」
「あ~ひどいな~、私が付いてたから大丈夫だったよ!全く、失礼しちゃうよね~」
「えぇその節はありがとうございます…その事でお礼が言いたくて、こちらに来たんです」
「いいって事だよ~。それよりも彼女さんはどうしたんだい?それに、早苗も居ないみたいだし…」
それについては先程の事を説明した。すると二人は何かを納得したような感じで――
「なるほどね…なら、今頃は…。ふふっ…良い彼女さんじゃないか?」
「全くだよ。大切にしてあげなよ?でも、もちろんうちの早苗の事もね?」
??二人は直ぐに理解したようだけど…。なんだろう?僕じゃ分からない事なのかな?
「えっと…まぁ、早苗ちゃんは大切な後輩なので…。それから、パルスィさんも…その…お互いに幸せになるって誓ったんで///」
すると、少し呆れた顔の神奈子さんと、笑いを堪えてる諏訪子さんが――
「はぁ…こりゃ早苗も大変だね…」
「ふふっ…まぁ飽きなさそうで、これからが楽しみだよ♪…っと、二人も来たようだね。うん…見てごらん?あの二人の楽しそうな顔を…」
振り向くと、パルスィさんと早苗ちゃん、二人共楽しそうに話しながらこっちへと向かってくる…。まるで、ずっと前からの知り合いだったように。
「あ、先輩!お待たせしてすみません!お掃除も、パルスィさんが手伝ってくれたので、直ぐに終わりましたよ」
「そんな事無いわよ?それから…守矢の神々よ…先程は助かりました…ご助力に感謝致します」
恭しく頭を下げるパルスィさん…そうだよね。二人とも気さくだけど…本来なら神様…会話する事すら畏れ多い存在…。
「なに、聞いていたよりも、ずっと良い女みたいでこっちも安心したよ。そうだろ?諏訪子」
「私はさっきのを見てるからね~。でも、本当に…大切にしてあげなよ?」
神様二人から言われているんだ…頑張らなきゃね。
「はい!……そう言えば、さっきから二人とも、随分仲良くなったみたいだけど…あの後何かあったの?」
「せ、先輩…それはですね…」
すると指で何かを言おうとした早苗ちゃんの唇を塞ぎ…
「女同士の内緒の話よ…ね、早苗?」
とっても魅力的な笑顔でそう答えてくる。
「そう言われると、益々気になるけど……早苗ちゃん?」
するとパルスィさんと顔を見合わせた早苗ちゃんが、二人で笑い合い…――
「「碧(先輩)には、内緒よ(です!)」」
そうして、境内には二人の笑い声が響き渡るのだった――ホント…何があったんだろうね?
この幻想郷では常識に囚われてはいけないのですね!という事で書いてみました。