東方嫉妬姫   作:桔梗楓

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今年最後の投稿になります。

結ばれたパルスィと碧。
これからの事を話すため、紫や、他の人達の元へと向かう。


16話 紹介~立ちふさがる壁~

パルスィさんと結ばれた翌日、今僕達二人は、地霊殿に居る。

 

そして、目の前には…神妙な顔をした紫さんとさとりさん。

 

どうしてこうなったのかと言うと、時間は昨夜に遡る…。

 

―――――――――――――――――――――

 

キスを惜しむように僕とパルスィさんは、お互いに離れた。

 

「碧…今日は、この後どうするのかしら?…泊まっていく?///」

 

非常に嬉しい相談だけど…。

 

「嬉しい相談だけど…今日は帰る事にするよ。あんまり遅くなると、八雲家の人達も心配するし…。それに、パルスィさんと恋人になった事を報告したいんだ」

 

(あれからパルスィさんは「恋人なのだから、同じ立場で話して?」…と言ってくれたので口調を変えた)

 

「そう…それなら仕方がないわね…。私も…友人に報告したいし…。名残惜しいけど…今日はここまでね…」

 

少し寂しそうな顔を浮かべるパルスィさん…それなら…。

 

「パルスィさん…良ければ、僕の渡した簪…受け取って貰えませんか?離れていても…いつでも一緒に居るって事の証の為に」

 

驚いた顔をしたパルスィさんは…。

 

「いいの?これって大切な物なんじゃ…?」

 

確かに、僕が外の世界から持ってきた数少ない物ではあるけど…。

 

「いいんです。大切な物だからこそ…大切な人に持っていて欲しい。そう思うのは…僕のエゴなのかな…?」

 

するとぶんぶんと顔を振るパルスィさん。

 

「そんな事ないわ!これを見ているととっても落ち着くの…だから、あなたと会えない時は、いつでもこれを見ているわ♪」

 

幸せそうな顔で言われると…なんだろう…恥ずかしいけど…凄く嬉しいな///

 

「じゃあ、話してると…キリがないんで、今日はこれで…また、直ぐに会いましょう!」

 

そうして、僕は転移札を使って八雲家へと帰った。

 

―――――――――――――――――――――

 

帰ったら、丁度夕食時だったみたいで、その席で僕は皆にパルスィさんと付き合う事を報告した。

 

「そうか、それはおめでとう!良かったな碧!」

 

と喜んでくれる藍さん。

 

「本当に、よかったね~。お兄ちゃんにも春が来たんだね~♪」

 

そして喜んでくれる橙ちゃん…。

 

「おめでとう。まぁ碧君なら、心配ないと思っていたけど…でも、そうね…碧君、明日…地霊殿に行くわよ」

 

少し、何かを考えるかの様な紫さんから言われる。

 

…地霊殿に?

 

「あの…地霊殿で…一体何を?」

 

「まぁ…それは明日になったら分かるわ。今日は疲れたでしょう?ご飯を食べて、お風呂に入ったら、早めにお休みなさい?」

 

そうして、僕は言われた通りに早めに就寝する。でも…本当に今日は嬉しいことが沢山あったなぁ…。

 

―――――――――――――――――――――

 

翌日、準備を整えた紫さんと僕は、地霊殿へと向かった。

 

そして、この前の様にお燐さんに連れられ、応接室に通されると…

 

「さとりさんと…パルスィさん…?」

 

何でパルスィさんが此処に?

 

「碧さん…話は伺っています。そちらにお掛け下さい…」

 

そうして、パルスィさんの隣の席に案内される。

 

僕とパルスィさんは、紫さんとさとりさんの二人と向かい合う形で座ることになった。ここで今の状況と繋がるのだが…。どうしたんだろう?

 

「碧君…そして、橋姫…水橋さん…まずは二人とも、おめでとう…と言わせて貰うわ」

 

「私からも、親しい友人同士が結ばれて、とても嬉しい限りです」

 

ありがたいけど…でもそれなら、何でこんな席を用意したんだろう?それに…二人の顔も心なしか神妙だし…。

 

「そうね…碧君の言いたい事も分かるから…説明させて頂きますわね。…碧君は人間、そして水橋さん…あなたは妖怪…これがどういった事か理解できていますか?」

 

種族の違い…っていう単純な話じゃなさそうだ…。すると隣に居たさとりさんから…。

 

「恋人になって嬉しいのは分かりますが…単刀直入に言わせて頂きます。人間と妖怪…その壁は二人が思っている以上に厚いのです」

 

そして、畳み掛ける様に紫さんが続ける…。

 

「妖怪は、殺される…または忘れ去られれば存在が消える。でもね、人間は違う。”寿命”と言う明確な終わり…壁が…そこには存在するの…理解できるかしら?」

 

そうか…パルスィさんはこれからも生きていける…でも僕は違う…確実に…死という運命を辿っていく…。

 

そうなるとパルスィさんはどうなる?人間にとっての一生でも、寿命という概念の無い妖怪からしたら…それは一瞬…。

 

ほんの一瞬の為に、パルスィさんを永遠に悲しませる?そんなのは僕は望んでいない…。でも…。

 

「八雲様、さとり…二人の言いたいことは分かっているわ。一瞬の気の迷いで、永遠に私を苦しめる事になる。今ならまだ傷の浅い内に解決できる…そう言いたいんでしょう?」

 

二人は黙って頷く…。パルスィさんも分かっているんだ…それならやっぱり…僕たちは…結ばれるべきじゃなかったのかな…「でもね!」…パルスィさん?

 

「でもね、それが何よ?たとえ一瞬かもしれない…泡沫の夢のような物かもしれない…。それが何?ここで、彼と…碧と結ばれなければ、その想いですら無かったことになる…そんなの私は嫌よ!碧が居なくなる…死んでしまう事を考えたら…確かに、それこそ死にたくなるくらいに辛いわ…」

 

そうして、パルスィさんは一息ついてさらに大きな声で続ける。

 

「それでも!満たされない永遠よりも、泡沫の夢を私は選ぶわ!私の事を受け入れてくれた碧…こんな人と出会えることなんてない!永遠に苦しむ?それなら碧が死んだら私も死ぬわ!碧の存在以上に…今の私にとって大切な物なんてこの世界には無いの!…たとえ碧が年をとっても…どんな姿になっても…一緒に生き続ける!これが私の…橋姫ではなく…妖怪でもなく…水橋パルスィ個人としての”覚悟”よ!」

 

その言葉に、僕は胸を打たれた…あぁ…やっぱり…僕の選んだ人は素敵な人だったんだ…――なら、僕も…覚悟を決めなきゃ…――

 

「我儘かもしれない…パルスィさんを苦しめるかもしれない…。それでも…僕はこの人と…愛するパルスィさんと生きていきたいんです!例えそれが茨の道になっても…パルスィさんとなら…きっと幸せを掴めるから!」

 

テーブルの下で、僕とパルスィさんはお互いの手を握り締める。

 

そんな僕達の言葉を聞いた、紫さんとさとりさんは…ふっ…と微笑みながら言ってくれた…。

 

「二人の想い…覚悟…確かに聞いたわ…。これなら心配いらないわね、さとり?」

 

「えぇ…私も…異論はないわ紫さん。……二人とも…安心して頂戴?二人の仲を引き裂こうなんて思っていないから…。私達は、それぞれの代表として聞いておきたかったの…二人の覚悟を…」

 

「それと…碧君にもまだ言ってなかったのだけれど…。あなたが幻想になった瞬間に、あなたの寿命は無くなっているの。正確には、成長しなくなった…とも言えるのだけれどね」

 

え?…それじゃあ…?

 

「碧と…ずっと一緒に居られるってこと…?」

 

「えぇ…そうです。ただ…あくまで寿命が無くなっただけで、病気や、殺されたりしたら、死んでしまうから…注意してね?」

 

「その辺をフォローするために紫さんと私が話し合ったの…。地底の妖怪には病気を自在に操れる者もいるし、地上には天才と呼ばれる医者も居る。後は、あなた達二人の覚悟と想いを聞いておきたかったの…許してね?」

 

「許すも何も…。これで…これからも、パルスィさんとずっと二人で過ごせるって事ですよね?…こんなに嬉しい事なら…むしろ感謝します…紫さん、さとりさん!」

 

「いいのよ…家族の幸せが、私の幸せなのですから…ねぇさとり?」

 

「えぇ…先程も申した様に、大切な友人同士が結ばれてくれたのです…その幸せを守る事こそ…私の役目…ですからね?」

 

紫さん…本当にこの人には、頭が上がらない…。そして隣に居たパルスィさんも…。

 

「さ…さ”と”り”~…ぐすっ…」

 

涙声になりながら、さとりさんに抱きついていた。

 

「こらこら、パルスィ?!恥ずかしいから…///ほら!碧さんも見てますし!」

 

「良いの…それでも良いの!ありがとう…本当にありがとうねぇ…ぐすん…」

 

あんな風な関係も…ちょっと妬けちゃうな…。

 

でも、これから築いて行けるんだ…パルスィさんと二人で…。その為には、僕も頑張らないとな。

 

―――――――――――――――――――――

 

地霊殿での報告が終わった後、紫さんはパルスィさんに陰陽玉と転移札を渡していた。

 

「転移札は家への直通、陰陽玉は私と、碧…二人に繋げてあるから、デートする時はいつでも連絡してあげてね?」

 

「八雲さん…「紫で良いわよ?」…えっと…紫さん///本当に、何から何まで、ありがとうございます…」

 

「いいのよ…。その代わり…碧の事…私の大切な家族の事をよろしくお願いね?パルスィ?」

 

「は、はい!私…頑張ります!頑張って…碧と二人で幸せになります!」

 

「うん、よろしい。二人とも…今日は好きに過ごしなさい?それから…泊まる時は、ちゃんと連絡は入れて頂戴ね♪」

 

そう言ってスキマの中に入って行く紫さん…それって///

 

パルスィさんを見ると同様の考えだったみたいで、同じく顔を赤らめていた…。

 

「さとりさんも…ありがとうございました…それから、これからもよろしくお願いします」

 

隣に居たさとりさんに声を掛ける。

 

「いいのですよ…。ですが…気を付けて下さいね?あなたを狙う人達は沢山いるのですから?」

 

うん。パルスィさんの為にも、僕は生きる…その為には…。

 

「分かっています。頑張って力を付けて…ずっとパルスィさんと居られるようにします」

 

すると困ったような表情をしたさとりさんが…。

 

「えーと、そういう事じゃなかったのですけど…まぁいいです。今日はパルスィと一緒に居てあげて下さいね」

 

「??…えと、分かりました?」

 

そうして、僕はパルスィさんの元に向かった。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

二人は行きましたか…。

 

「やれやれ…そういう意味じゃ無かったのですけどねぇ…」

 

紫さんに聞いた話によると、碧さんは、少なくとも数人は無自覚に落としていると言う…まぁかく言う自分もそうなのですけど…///

 

「二人の仲を邪魔する訳じゃないですが…私ももっと、アプローチを掛けてみましょうかね?」

 

そうして、さとりは決意する。自分も彼と生きようと。彼の為に、持てる力を使おうと―――

 

 




幻想になる=そこで時が止まる…といった解釈をしています。
もっとも、幻想郷に住む普通の人間は適用外だと思いますが…。

次話は年明け三日に投稿したいと思います。
それでは皆様、良いお年を…。

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