次なる目的地、妖怪の山、守矢神社で出会うのは…。
当作品の諏訪子はロリっ子ではなく、トランジスタグラマーな女性です。
身長は碧より少し小さい位ですが、スタイル的には神奈子と同等以上です。
「先程は、お見苦しい所をお見せして、すみませんでした…」
「気にしなくていいのよ?…――まぁ…泣きついた相手が、あの閻魔っていうのが癪に障るのだけれど」
「あはは…すみません…。それで、今から向かう『守矢神社』では何が起こったんですか?」
話を変えるように、僕は聞いてみた…だって紫さん…ずっと不機嫌なままだもん…。
「はぁ…そうねぇ。今から向かう場所で起きた事は、異変と言うよりも、神社同士による、信仰心の取り合いって言った方がいいかしらね」
「信仰心の取り合い…ですか?」
「えぇ、幻想郷…いえ、外の世界もですけど、神々と言う存在は、基本的に人間からの信仰心を力としているの。つまりより、信仰心が高い神様の方がその力を存分に振るえる…此処まではいいわね?」
「はい。ですが幻想郷には、既に博麗神社があるはず…」
「良いところに気が付いたわね。そう、幻想郷には既に博麗神社があった。そして、後から幻想入りした守矢神社の神々はそれを知らなかった。そこで神々と巫女は考えたの…博麗神社を吸収して信仰心を一つに集めてしまえばいいと」
「何て言いますか…横暴な考えですね…。やり口が、手荒すぎます…」
「えぇ…そこで博麗の巫女、霊夢は神々と巫女へ弾幕勝負を挑み、無事に勝利した。まぁ、代わりに守矢神社の分社を博麗神社に置くことで妥協したみたいだけれども…。さて、この山を登れば守矢神社なのだけど…いるのでしょう?パパラッチ天狗と使い走りの狼!」
「あやや…ばれてましたか…流石は紫さんですね~」
黒い羽の少女と。
「だから、言ったのですよ…全部お見通しなんですって」
白銀の髪の毛の犬耳の少女が、目の前に現れた。
「まったく…付けるのなら、もっと上手くやりなさい?それで、今日は天魔はいるのかしら?」
「いえ、今日は出張で出かけているのですよ。ですので、ご用件があれば私が聞きますけど?」
「そう、なら、話は早いわ。てっとり早く伝えるわね。この前幻想入りしたこの子…私の所で預かることにしたのだけれど…手を出したら…山ごと消し飛ばすわよ…?」
すると凄まじいプレッシャーが紫さんから放たれる。
「ひぃっ?!ゆ、紫さん…?!何だか今日は雰囲気が怖いですよ~…」
多分さっきの映姫さんとのやり取りのせいだ…間違いない…。
「他の、河童や厄神、秋の神にも伝えておきなさい!この子を害する者がいれば、この幻想郷から消し去ると。…いいわね!」
「は、はいぃ!!!(ダメだ、下手な事を言ったら間違いなく殺されます!?)」
「り、了解しました紫様(これは…流石にまずいな…)当面の警備は我々が行います。何か問題が起こりそうなら、逐一連絡致しますので…よろしいでしょうか?」
「えぇ。それじゃあ後は頼んだわよ…行くわよ、碧」
「あ、はい!すみませんが、よろしくお願いします…ちょっと待って下さいよ!紫さん!」
そうして、紫と碧は頂上の神社を目指して進んで行く。
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「文様…」
「分かってるわよ…。あ~、まだ鳥肌が収まらない…流石は幻想郷の賢者…伊達じゃないですね~」
「この件はどうするおつもりですか?」
「もちろん、大天狗様に報告はしますよ。しかし、紫様が人間を…ですか…。取材のやり甲斐はありそうですけど…今回ばかりは、洒落で済みそうにないので暫くは、諦めますか…」
「今まで、接することがあまり無かったからでしょうけど…あれが大妖怪…しかも最高クラス…格が違いすぎますよ…」
「大天狗様も、紫さんには勝てないって言ってましたからね~。まぁ我々は連絡の件と哨戒の仕事を続けましょう」
そうして、彼女達は各部署や、其処に暮らす妖怪達へと注意して回った。よほどの事が無い限り、彼に害をなす存在は現れないだろう。
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「さて、時間も惜しいからここからは一気にスキマで移動するわよ」
そうして、スキマをくぐって行く。
「はい…まぁそろそろお昼過ぎですし…お腹も減りましたね~」
「そうねぇ。こんなことなら藍にお弁当を作って貰っとくべきだったわね…っとそろそろね。ここが次の目的地…幻想郷のもう一つの神社…『守矢神社』よ」
そうして、スキマを潜った先にはしめ縄や立派な鳥居など、(霊夢さんには悪いけど)博麗神社よりも大きな神社がそこにはあった。
そして、境内の先には掃除をしている巫女さんが…って、あれ?あの人って?
「こんにちわ。参拝の方です…か…?――…え?…嘘…?碧先輩…ですか?」
「うん…てことは早苗ちゃんで間違いないんだよね?引っ越したってきい「碧せんぱーい!」ゴフッ…?!」
「引っ越してから…ずっと心配だったんですよ?!…この力のせいで、私はいつも一人だったけど…それでも私に優しくしてくれて…それなのに勝手に引っ越して…でも…また会えました~…ぐすっ…」
「早苗…感動している所、悪いのですけど…説明と、二柱との面会を頼めるかしら?…後、碧君…気絶してるわよ?」
「え?!先輩?!すみませんでしたー!」
そうして、僕は紫さんから部屋へと運ばれ…そこで目を覚ます。
「ん…ここは…?」
「あら、目が覚めたのね碧君…此処は守矢神社の一室…あなたは気絶したのよ?まぁ原因はあの巫女のせいなのですけれど?」
「うぅ…すみませんでした…だって、先輩に会えたんですよ?…飛びつくなって方が無理ですよ…」
「だとしても、幻想入りして、神の力を行使できるようになった早苗の全力タックルを、普通の人間が喰らったらどうなるか分かっていただろう?」
赤い服を着た女性がそう言う。
「あーうー。神奈子…少しは早苗の気持ちも考えてあげなよ?あの辛い、外の世界で、唯一、自分が信頼できた人間なんだ。無理はないよ?」
その隣に居た青い服を着て蛙の様な目を付けた帽子の女性が答える。
「そうだね…それで、八雲紫殿…、今日はその青年のご挨拶と言ったところかな?」
「えぇ。この子は最近幻想郷に住むことになって、今日は、各有力者への、自己紹介を兼ねた挨拶回りをしているのよ。もっとも…早苗が碧君の事を知っていたのは正直予想外でしたけど…」
「それはこっちも同じだよ。外の世界で、早苗から良くお世話になった先輩が居た事は聞いていたけど…まさかその子までこっちに来ていたなんてね~。…ひょっとして早苗…能力を使ったの?」
「そんな事はしていませんよ諏訪子様!私達の事情に…先輩を巻き込む事はできませんでしたし…(連れてこれるのなら最初からそうしてます」
「早苗…心の声が漏れてるよ…。まぁいいさ、自己紹介をさせて貰おう。私は『八坂神奈子』この守矢神社の一柱。軍神とも呼ばれていたね。よろしく頼むよ」
「次は私だね!私は『洩矢諏訪子』土着神の頂点。それと…この神社で本来、祀られている神様だよ!でも気軽に諏訪子って呼んでおくれよ「私の事も神奈子でいいよ」…と言う事さ。さて、改めて君の事を聞かせて貰おうか?」
「は、はい!…僕の名前は、大神碧、この前幻想郷に入ってきました。よろしくお願いします。それで、本題なのですが…僕は、只の人間です…。皆さんの様に、特殊な能力があるわけでもない…弱い人間です。そこで…勝手なのは分かっています…それでも、僕の事を守って頂けないでしょうか!」
顔を見合わせる二柱…そして、言葉を発しようとした、まさにその時
「神奈子様!諏訪子様!失礼を承知でお願いします!どうか先輩を…碧先輩に協力させて下さい!」
早苗ちゃん?!何で…しかも、土下座までして?!
「ふぅ…顔を上げな。早苗…。私達は今までお前と、家族として接してきた――」
続ける様に諏訪子さんが…――
「――そんな早苗の頼みを断れる訳ないでしょ?それに…彼は早苗の恩人なんだろう?なら、断る理由なんてない…ううん、逆に今までの恩を、しっかりと返して上げなさい!守矢神社の一柱として命じます!」
「神奈子様…諏訪子様…ぐすっ…ありがとうございます!」
「と・こ・ろ・で~。二人はどんな関係だったんだい?…もしかして…恋人だったとか?」
「す、諏訪子様?!ち、違いますよ!……そうですね、先輩との事を話させて貰います」
そうして早苗ちゃんは語り始めた…。
「あれは、私が高校一年で、先輩が二年生の時でした。―――現人神として、地域の人達から敬われていた私は、周囲から浮き…孤独な学園生活を送っていたんです…。虐めこそ無かったものの、孤独な事に嫌気が差した私は学校をサボり、近くの公園でボーっとしながら時間を潰していました。このまま消えてしまいたい…そう思っていた私の頬に温かい物が当てられてビックリしました。慌てて隣を見ると…」
”大丈夫?体調を崩してるのなら体を温めて…えっと、それから…どうするんだっけ…”
「って慌ててる先輩が居たんです。私は可笑しくなっちゃって、久しぶりに心の底から笑っちゃいました。それから、先輩に、自分の悩みを聞いて貰ったんです…」
小さいころからクラスで浮いている事…。
孤独で、どこかに行ってしまいたいと思ってしまった事…。
自分の存在は、本当に此処に居ても良い存在なのかと思った事を。
「先輩は優しい顔で最後まで聞いてくれました。そして、言ってくれたんです…」
あの時…僕は何て言ったんだっけ…あぁそうだ…思い出した…。
”浮いてしまう事は誰だってある。僕も、あまり人付き合いが得意じゃないから、いつもどこかに行ってしまいたいと思ってしまう”
”でもね…君は違う。君は変われる力を持っている。だから、自分を信じて?”
”君が自分の存在を疑うなら、いつでも僕が相談に乗る…少なくともその間は――君は此処に居られるでしょ?”
”だから、いつでも頼ってきて。…僕の名前は大神碧…三年生…君は?”
「それが、私と先輩の出会いでした。それから、幻想郷に来るまでの間…先輩に相談に乗ってもらい、少しずつですけど友人も増えて行って…。でも、私がこちらに来ることを神奈子様と諏訪子様から持ちかけられたとき…本当なら…先輩の側を離れたくは無かったです…。ですが、私にも守矢の巫女としての役目があったので…結局、先輩とは分かれてしまったのですが…。でも、只の人間の先輩が…何で幻想郷に?」
「うん。僕の場合はね…世界から、存在が忘れ去られようとしたからなんだ…「―?!」だから、遅かれ早かれ、幻想郷には来てたと思う」
すると早苗ちゃんがぽろぽろと涙を流し始める…。
「世界からなんて…酷過ぎます…ぐすっ…。先輩は何も悪くないのに…、なんで先輩がこんな目に…」
僕は早苗ちゃんの頭を、あの時の様に、優しく撫でてあげた…優しく…優しく…。
「ありがとう…僕の為に涙を流してくれて…。早苗ちゃんが覚えてくれていた事は、僕にとってもすごく嬉しいことなんだ…。だから、笑って?早苗ちゃんは泣いてる顔よりも笑ってる顔の方が可愛いんだから…ね?」
「///…はい、先輩…///」
「二人とも…良い雰囲気ですけれど…。そろそろ話を進めるわよ?それで、守矢神社は、協力してくれるのですか?」
「あぁ、軍神の名において、その子を…碧を守ろう!」
「私も同じだよ!土着神の頂点として…早苗の保護者として…娘の信じた子を守るのは当然だよ!」
「神奈子さん…諏訪子さん…。二人とも…ありがとうございます!」
「気にしなさんなよ♪そうだ、紫に、碧はもうお昼は済ませたかい?良ければ家で食べて行かないかい?」
「あら?いいのかしら?こちらとしても助かるのですけれど…碧君…いいかしら?」
「えぇ…早苗ちゃんの手料理とか久しぶりなので、楽しみです♪」
「そういう事だ、早苗!きちんと胃袋を掴むんだよ!」
「はい!頑張ります!先輩!楽しみにしててくださいね!」
そういって厨房に向かう早苗ちゃん…。知り合いの女の子の手料理とか、久しぶりだから楽しみだな~。
「さて、じゃあ碧君には早苗との他のエピソードでも語って貰いましょうか?」
「ふむ、良いんじゃないか?私も学校での早苗は良く知らないからね」
「ふっふっふ…さぁ…覚悟はいいかな~?」
「えっと……お手柔らかにお願いします…」
そうして、早苗ちゃんの手料理に舌鼓を打ちながら、久しぶりに出会った後輩と、楽しく語り合いました。
―――――――――
昼食を済ませた私達は…。
「すみません。お昼をごちそうになってしまって」
「いいんですよ、先輩。良ければまた食べに来てくださいね?」
「うん!是非寄らせて貰うよ。その時はお願いね?」
「はい!」
「さぁ…碧君…名残惜しいとは思うけれど、次なる目的地…最期の場所…地底へと向かうわよ」
「はい!それでは早苗ちゃん…そして神奈子さん、諏訪子さん…今後ともよろしくお願いします…では、失礼します」
そうして、僕達は最後に異変の起こった場所…地底にある地霊殿へと足を向けた。
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「とても清んだ心を持った、良い子だったね~」
「えぇ…私の自慢の先輩ですから!」
「早苗…しっかり捕まえておくんだよ?」
「神奈子様…はい!今度こそ…絶対に離しません!」
「まぁ、早苗がダメだったときは、私が貰ってあげるから。心配しないでいいよ♪」
「す、諏訪子様?!…もしかして、先輩の事…?」
「ん~LOVE…の方ではないよ…少なくとも今はね。ただ碧の事は嫌いじゃないよ。それに…うかうかしてたら、他の子に取られちゃうよ?」
「あう~…がんばります…///」
碧達の去った守矢神社では、そんなやり取りがされていたそうな。
いよいよ次回は地霊殿。
パルスィとの再会はあるのか?