甲斐奮闘記!   作:兵太郎

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どうも、初めての方ははじめまして。それ以外の方はこんにちは。兵太郎です!

好きな武将は上杉謙信、最近真田丸の影響で後期の人にも興味が湧いてきたり?

好きなキャラクターは小早川隆景ちゃんです!(11巻で一気に好感度を持っていかれた感)



0話 次の世界に

気がつくと、俺は何もない場所にいた。

 

あたりは真っ黒に……いや、真っ黒とは言えないのかもしれない。眼が見えない人がその閉じた視界の色を言えない様に、俺も目の前も、遠くも、360度全てを塗り潰した色の名前を言うことはできなかった。ただ、暗い闇がそこにはあった。それしかなかった。

「どこだ……ここ……」

しばらくそこでぼうっとしていた俺だったが、何十分かの長考の末にようやくその言葉を捻り出した。しかし、自分が喋っている、という感覚がまるでなかった。言葉が発せているのかもわからない。

が、そこで何もない世界に一つの光が生まれた。

色の正体は淡い水色。四角い長方形のパネルの様な物が空中に浮かんでいる。俺はそこに近づいていく。走っている様な感覚はなかったものの、だんだんとパネルの方へと近づいていく事ができた。

近づいてパネルを覗き込む。そこに書かれてあったのは日本語。これがもしフランス語とかスペイン語とかで書かれていたら、俺は情報の飢えで発狂していたかもしれないから、日本語で安心した。そこには、こんな風に文が綴られていた。

 

『貴公はこの世界から別の世界へと渡る権利を獲得しました。以下の注意規約等を読んだ上で、好きな世界をお選び下さいませ』

 

意味がわからない。いや、文章の単語の意味は理解しているんだが、それを文章として繋げた時にこの文章の意図が全くと言っていいほどわからない。とりあえずこの文章の意味を探るため、俺は更に文章を読み進めていく。

 

 

 

『権利証明及び注意規約

 

1.記憶の保持……次の世界(以下甲)に移る際に、前の世界(以下乙)の記憶をそのまま受け継ぐ事を可とする。(任意)

2.身体の変更……甲によっては現在の身体では不十分な事が多々有り、甲に行く際に適した身体に変更する事を可とする。(任意)

3.〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

……長い。こんなに説明書的なものが長いと読む気をなくしてしまう。とは言っても、読まなければ先に進めなさそうなので、俺は頑張って全てに目を通す。注意規約とか書いていたから下手に読み飛ばしたりすれば騙されたりする可能性がある、なんて事を思ったりしながら、なんとか読み切る事ができた。

注意規約の最後の文は、こう書かれていた。

 

『55.帰還の不可……貴公は諸事情により乙に戻る事は不可能である』

 

乙……つまり、前の世界に戻る事ができない。嘘だろ、と最初思った。次に、これは夢だと思った。しかし、いくらそこにいても夢が覚める事はなかった。現実のベッドの上に戻る事はできなかった。

 

注意規約の下には、『以上を踏まえた上で、世界への移動を行いますか?』という簡単な質問文と、選択肢が用意されていた。

 

『はい いいえ』

どちらかを選んでしまったらそこで何かが変わってしまうのがわかった。しかし俺は、そこから逃げる事ができない。多分、選ばないといけない事を本能的に理解しているんだと思う。

『いいえ』を選択してみたい、とも思った。それを押せば、元の平和な日常に帰って行けるような気がした。これは変な夢を見たなぁ、程度で笑っていられる様な考えが頭をよぎった。しかし、そこで注意規約の一言が再び脳内に出現し、それらの楽観的考えを一掃した。

俺は、数分迷った挙句、『はい』を選択した。

 

すると、自分の周りに沢山の風景が出現した。

例えば、人の様に二足歩行をする生き物達と擬人化した食べ物が生活している風景。

例えば、中学生位のサッカー選手が、試合でありえない様なオーラを纏った必殺シュートを放つ風景。

例えば、高いビルが並ぶ都会の道路の真ん中で、バーテンダーの服を着た男が道路標識を振り回している風景。

 

……それらを見て、俺は何となく意味がわかった。

次の世界ってのは新天地って訳じゃない。前の世界でいうところの漫画とかゲームとかアニメみたいな、創作された世界の事だ、と。

二足歩行で歩く生き物や食べ物が暮らしているのは、『アンパンマン』の世界。

超次元シュートを放っているのは、『イナズマイレブン』の世界。

バーテンダーが暴れまくってるのは、『デュラララ!!』の世界。どれも俺が今まで生きてきた中で、触れた事のある作品だった。全部実写映画の様に三次元の映像だったから、特に『アンパンマン』なんて違和感しかなかったけど……

つまり、見た事があるアニメとかの世界に行く事が出来るのか!俺は興奮する。そういう世界に行くのは叶わぬ夢だと思っていた。

どうやらこの中から一つを選べ、という事らしいので、俺は周囲の世界を改めて見直す。

 

行ける世界の中で、これはあってほしいな、なんて思うものが俺にはいくつかある。

 

俺は小学校から高校まで約十年間、サッカーをしていた。だからサッカーの世界に行ったら楽しいと思う。

また、父親の影響で戦国時代にとても興味を持っている。だから戦国の世というのも実に興味を惹かれる。

更に、高校の友達の影響でラノベにもハマっているから、つい最近も『あんな世界に生まれてればなぁ』なんて思うほどにはその世界にも憧れている。

 

で、その三つを統合していった結果……

 

俺は、一つの風景を選ぶ。そこに映っているのは沢山の人間、馬、そして日本刀。今は戦の真っ只中の様だ。

その戦いの中で目立つのは、鎧兜を身に纏い馬に乗った美女。それも一人では無く戦場に十人や二十人はいる。

 

俺が選んだ世界、その元ネタになる作品のタイトルは『織田信奈の野望』。俺は今までに、既刊である計十一巻(外伝一つ含む)を読んでいる。あとは、アニメも見たかな。

この話は戦国時代を元ネタとしたラノベだから、戦国時代色にもラノベ色にも浸れるし、確か既刊の中には『本猫寺(ほんびょうじ)』とかでサッカーをしたりしてたはずだ。つまり、俺の要求する物を三つとも満たしている素晴らしい作品。良くこんな俺の趣味に合う作品を見つけていたな、と過去の自分を褒めてやりたい気分だ。

 

 

で、次に見た目。体格とかも変えられるんだっけ?下手したら性別も変えれるのかな、なんて思ったけどそれじゃあラブコメできない、なんて思ってそれは見送った。

見た目ってのをイメージしづらいな、なんて思っていたけど、そこで俺はいい案を思いついた。

同じ絵師さんの他の作品のキャラを三次元の見た目にして、それを俺の外見にしよう、と。

幸い、俺は同じ絵師さんの他の作品を一つ読んだ事がある。あれは戦国時代では無く、その後の話。確か秀吉が史実より長生きして凄い爆弾か何かを使って家康を倒して豊臣幕府を開いた、その何百年後……なんてストーリーだったな。だから正直戦国時代の顔と一致するかはわからないけど、同じ絵師さんだからしっくりは来るだろう。

その作品のタイトルは『大奥のサクラ』。俺の姿はその主人公、『豊臣秀影(とよとみひでかげ)』の姿を頂戴した。

 

それを三次元の見た目にして、見てみると……やだ……カッコいい……。

俺はその見た目であっちの世界に行く事に決めた。

 

 

『次の世界』も決まった、容姿もバッチリ。他に準備する事は無いようだ。良くみるとパネルが、『準備完了? はい いいえ』という二択を迫ってきていたから、俺ははい、を堂々と選ぶ。

すると、急に暗かった世界が動き出した!自分の周りに亀裂がどんどんと入っていき、できた割れ目から光が飛び出してくる!俺は久しぶりに見たその眩しさに、目の前に手をやって光から目を守ろうとする。

 

と、そこで。

 

俺の足元にも亀裂が走り、立っていた場所に大きな穴が空いた。

 

「はっ?」

 

その一言を残して、俺は引っ張られるようにその光で溢れた穴へと落ちていくーー

 




主人公……転生者。名前はまだ無い。原作、1〜10巻+『伊達政宗外伝』既読。
サッカーをしているおかげで運動は得意。反面、勉強は得意ではない。
戦国時代が好きだがオタクというほどでも無く、マイナーな武将や戦いの名前、また戦いとは全く関係の無い武将の伝承的なんかを言われた時は良くわからずうろたえる。ラノベ知識にしても同様。
女の子は割と興味がある方。

主人公のプロフィールはこんな感じですねー。

次回、『名前を考えよう!』

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