【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第94話 芽亜の急襲。メアへの強襲

 6限目。1年生とグラウンドを分けて体育の授業を別々に行っていた2年A組は、授業の終わりと同時に使っていた道具を戻す指示を受ける。真白とヤミは別々の場所を指定されてしまい、不服そうにし乍らもヤミは真白の元を離れる。そして数人のクラスメイトと体育倉庫で道具を片づけていた時、真白は驚いた様に振り返った。

 

「ふふ、こんにちは。真白先輩♪」

 

「……芽亜」

 

 1年生の中にはナナやモモも居り、彼女達が手を振る姿を見ていた真白は芽亜の存在にも当然気付いていた。芽亜は手を振る事無く唯真白達へ微笑んだ後、普通の女子生徒として授業に参加。真白は何事も無いと思っていたが、授業が終わったと同時に彼女は接触して来た様である。気付けば芽亜の力でクラスメイト達は体育倉庫から居なくなっており、彼女は入って来た扉を後ろ手で閉めると内鍵を簡単に掛ける。何かをしようとして居るのは明らかであり、真白は僅かに距離を取って警戒した。が、再び気付いた時。彼女は自分の背後に立っていた。

 

「遅いですよ、真白先輩」

 

「!」

 

 彼女の声を聞くと共に目の前でゆらゆらと揺れるおさげに真白の目は見開かれる。動かそうとしても自由に身体を動かす事が出来ず、芽亜は楽しそうに笑った。

 

「私の力、精神侵入(サイコダイブ)の応用です。今、私と真白先輩は繋がっている。実は私達が繋がるの、2回目なんですよ? 気付いてました?」

 

 1回目は真白が眠っていた時であり、霧が掛かった様に不明確な記憶であった。故に芽亜の言葉に驚いた真白だが、彼女に言葉で答える事は出来ない。身体が自由に動かせないと同時に口もまた、動かす事が出来ないのだ。しかし繋がっている芽亜には真白の考えている事が伝わり、その思いを知る事が出来た。楽しそうに真白の前へ移動した芽亜が軽くその肩を押せば、真白の身体は軽々と後ろに倒れてマットの上へ横になる。

 

「本当に真白先輩も私が人に成れると思ってるんだ。あんな事した私を受け入れようとしてるんだ」

 

 繋がっているからこそ、芽亜は真白の本心を知る事も出来た。何度か仕掛けた事があるにも関わらず、彼女の中にあるのは自分を受け入れようとする心。まだ危険と感じている部分があるのか、その中には微かに敵意も存在する。だがそれすらも霞む様な何かが逆に自分の中へ入って来る様に芽亜は感じた。

 

「素敵……何処まで私を受け入れてくれるか、試して見たくなっちゃった♪」

 

 そう言って芽亜は仰向けに倒れる真白の上に跨る様に座ると、何処か淫靡な表情を浮かべて真白の腹部に手を伸ばす。現在の服装は体育の後と言う事もあり、当然乍ら体操着。伸ばされた芽亜の手は容赦なく真白の着ていた服を捲り上げ始めた。抵抗する術を持たない真白は意図も容易く一番上まで持ちあげられてしまい、芽亜は再び裏のある笑みを浮かべると真白の身体が勝手に動き始める。そして芽亜が捲り上げた体操服を真白の口元に持って行けば、自らの歯で噛んで落ちない様に固定してしまう。

 

「!」

 

「驚いてるのが分かるよ。でもお楽しみはこれから」

 

 自分の口で服を固定して下着を曝け出す真白の淫らな姿は芽亜を昂らせるのに十分なものだった。驚きと共に芽亜の心を感じる真白は彼女が次に何をしようとしているのかも理解して嫌がるが、その意思を受けても芽亜は止まらない。真白の身体を抱きしめる様に身体を倒すと、着けていた真っ白な下着のホックを背中に回した手で外す。後は下着を持ちあげるだけで晒される状態となり、芽亜は身体を起こして真白と目を合わせた。

 

「ほら、このままだと真白先輩の大切な場所が私に見られちゃうよ?」

 

 流れ込んで来る真白の心を芽亜が理解した時、今度は彼女が目を見開く事となった。彼女が求めていたのは拒絶。自分(兵器)とは違う生き物である彼女の心は屈辱を受ける等すれば簡単に心変わりすると期待していたのだ。一度でも拒絶する心を持てば、後はそれを増幅させるだけで受け入れる事を止める。それを期待した芽亜だが、現実は彼女に残酷だった。襲われて快感等に抵抗する姿はあり、されるであろう行為を拒否する心もある。だが芽亜自身への拒絶だけは生まれない。あくまでも真白は芽亜を人として、新しい自分と関わりのある人物として受け入れようとし続けている。

 

「! だったらもっとしてあげる!」

 

 真白の中に芽亜の焦りが流れ込み始める。それと同時に彼女の不安もまた流れ込み始め、真白は芽亜が以前ティアーユとの話をして以降、彼女の主であるマスター・ネメシスと連絡が取れていない事を知る。自分を受け入れようとする者達に心が揺れ、ネメシスに目が覚める様な言葉を掛けて欲しい。……そんな彼女の心が。

 

 下着を手に持った芽亜はそれを横へ放り投げ、真白の身体に再び覆い被さる。2つの膨らみを両手で掴み、その内片方に顔を近づけて舌を這わせる。途端に真白の身体は跳ね上がるが、声は出ない故に喘ぎ声が響く事は無かった。が、芽亜には真白が感じている事が良く分かる。それは彼女と繋がっているからでもあり、感覚を共有している為でもあった。……つまり自分がした行為は芽亜自身にも返って来るのである。

 

「ふ、ぅ……ん……はぅ! 気持ち、良いっ!」

 

 突起を舐め扱きながら膨らみを揉むだけで痺れる様な快感が2人を襲う。芽亜はその快感に悶えながらも攻め続け、真白は身体を跳ねさせて芽亜の中で喘ぐ様に反応する。だがどれ程彼女が真白を責め続けても、屈辱を与え続けても、その心は変わらない。……が、快感に震える芽亜の思考は既に別の事で頭が一杯になっていた。

 

「もっと……!?」

 

 蕩けた表情で真白の下腹部に手を這わせながら近づけた時、突然聞こえた轟音が芽亜の行為を中断させる。芽亜が振り返ればそこには天井の無くなった体育倉庫の下で煙が舞っており、一瞬ヤミかと思った芽亜は違う気配に冷たい視線を向けた。そこに居たのは明らかに地球人では無い3人の男達。

 

「ようやく見つけたぞ、赤毛のメア」

 

「ひひっ、お楽しみ中か?」

 

「テメェを殺しに来てやったぜ?」

 

「……」

 

 宇宙人であろう男達は真白の上に跨る芽亜の姿を見て下卑た笑いをしながら口を開いた。彼女からすればこれから盛り上がるところを邪魔された訳であり、視線だけですら殺せそうな冷たい目で男達を見つめる。思わず怯んだ男達だが、彼らはすぐに立ち直って目を睨み始める。

 

「はぁ……」

 

「! ……め……ぁ」

 

「ヤミお姉ちゃんの情報を集める上で賞金稼ぎみたいな事してたからさ、結構私も命を狙われてるんだよね。ふふ、大丈夫♪」

 

 溜息と共に繋がりが解除され、弱々しく真白が芽亜の名前を呼べば彼女は振り返って微笑みながら真白へ告げる。その瞬間、彼女の背後に武器を振りかぶった男が立っていた。真白が目を見開く中、芽亜の姿はその場から一瞬にして消える。そして男の真上に現れた芽亜はヤミと少し違う戦闘服(バトルドレス)を着た状態で男の顔面を踏みつけた。が、男は踏みつけられたまま再び下卑た笑みを浮かべると芽亜の足を掴む。

 

「おらぁ!」

 

「!?」

 

「あぁ?」

 

 物凄い力で放り投げられた芽亜の身体はまだ残っている体育倉庫の壁へ向かい始める。だがその壁に激突するよりも早く、真白が横から芽亜の身体を攫う様に現れてその身体を受け止めた。下着は芽亜に取られて放られてしまった為に着けていないが、口元が自由になった事で服を戻す事は出来る。故に真白は傍から見れば何も変わらず体操着を着ている様に見える状態だった。

 

「何で……」

 

「……怪我、無い?」

 

「! 下がってて。これは私の敵だから。私が……殺す(・・)

 

 助けられた事に信じられない様子だった芽亜は真白の言葉ですぐに傍から離れると、彼らに向ける様な冷たい目線で真白に告げて駆け出した。3人の男達を前にヤミの様な戦い方を見せる彼女は何かを感じている様で、だがそれが明らかに良く無い物だと真白は感じる。

 

「どうして私の居場所が分かったの?」

 

「ネメシスとか言う奴が情報をばらまいたのさ! そいつもお前を相当恨んでるんだろうよ!」

 

「ふ~ん、そっか。主が……そう言う事。これなら、思い出せそうかな! !?」

 

「ぬおぉぉぉ!」

 

 戦いながら聞いた芽亜の言葉に男の1人が笑いながら答える。芽亜はその答えで何かを理解した様に笑みを浮かべると、攻撃を仕掛けようとする男へ容赦なく髪を刃にして向けた。だがその髪が男に触れるよりも前に間へ入った真白が刃になっていない部分を掴んで止め、代わりに前へ出た真白は男を蹴り飛ばす。突然の強襲に避ける事も出来ずに男は体育倉庫の壁へ吹っ飛んだ。

 

「下がってて、って言ったよね?」

 

「……殺させない」

 

「私は殺す為の生物(兵器)だよ? 当然の事をしてるだけ」

 

「……違う」

 

 割り込んだ真白へ芽亜が怒気を込めながら話すが、帰って来た言葉に今度は苦虫を潰した様な表情を浮かべる。何があっても自分が信じていた生き方を否定する真白の姿に調子を狂う様な感覚を感じ乍らも、芽亜は男達へ視線を向けた。

 

「赤毛のメアに仲間が居るなんて聞いて無かったが……俺達の邪魔をするってんならテメェもぶっ殺してやるよ!」

 

「……来る。……気を付けて」

 

「誰に言ってるの、真白先輩? 先輩こそ、死なないでよね!」

 

 一気に迫って来る男を前に並んで互いを見ずに話した2人は同時に構える。崩壊した体育倉庫は一瞬にして戦場となり、その音を聞いた数名が駆けつけるのはもう少し後の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 轟音が響く彩南町の一角で空を飛ぶ芽亜を追う様に2人の男達が建物の屋上を跳躍する。少し離れた場所では彼女と付かず離れずの距離で同じ様に屋上に足を着けては跳躍する真白の姿があり、彼女を追う様に1人の男が移動する。彩南高校から離れた2人はやがて住宅が並ぶ十字路で止まり、その中央で背中を合わせた。

 

「逃げるのはお終いか? 赤毛のメア」

 

「そっちの女も地球人じゃ無い様だが、恨むなら赤毛のメアと関わった自分を恨むんだな」

 

「はぁ~、馬鹿な人達。本当に私に勝てると思ってるんだ?」

 

「! こ、小娘がぁぁ!」

 

「……」

 

 3方向から囲む様に近づいて話し掛ける男達の姿に余裕そうな表情で芽亜が口を開けば、一瞬にして怒り狂った男が急接近する。芽亜は楽しそうに笑ってその男に迎え撃つために動き出し、真白は2人の間に入ろうとして自分に迫った手を回避する。残り2人の男達は話をすると、片方が芽亜と戦う男に加勢する事で話が付いたのだろう。戦う2人の元へ飛んだ男に真白が止めようとするが、先程と同じ様に自分へ迫る攻撃に遮られてしまう。

 

「っ!」

 

 自分へ近づいた男へ真白は蹴りを放つ。だが男は両手を顔の前に交差させてその蹴りを受け止めた。地球人とは違う真白の蹴りは高威力の筈だが、男は交差した腕の間からニヤリと笑って見せる。嫌な予感を感じて素早く距離を取れば、無傷の男が余裕そうに口を開いた。

 

「俺は赤毛のメアにやられて全身をサイボーグ化した。お前みたいな小娘の攻撃、痛くも痒くも無いわ!」

 

 そう言った男の姿が消えた時、真白は急いでその場から離れる。振り返れば先程まで立って居た場所の背後に男は立って居り、両手の拳を合わせて振り降ろす姿がそこにはあった。また轟音が響き渡り、先程真白が立って居た場所が一瞬にして陥没。煙を上げる手を軽く振りながら、男は避けた真白へ視線を向ける。

 

「外したか。だが次は外さない!」

 

「……」

 

 構える男に真白は何もせず唯ジッとその姿を見つめ続ける。何を考えているのか分からず、だが今度は避けようともしない真白の姿に観念したと男は考えた。そして真白の立つ位置へ真上から出現して攻撃をしようとした時、それが真白に当たる前に突然急接近した鉄球に吹き飛ばされた事で男は地面を何度も跳ね乍ら転がる事となる。

 

「がっ! な、何が……!」

 

「待たせました、真白」

 

「……お願い」

 

 口から微かに血を流しながら顔を上げた男に見えたのは、真白の前に佇む金色の髪をした黒衣の少女。芽亜が嘗て男達に初めて出会った際、彼女の目的は金色の闇を探す事だった。地球に居る理由までは知らなかった男は今ここで初めて、金色の闇が地球に滞在していた事を知る。そして自分が手を出した相手が彼女にとって琴線であった事は、これから知る事実である。

 

 2人の男達と戦っていた芽亜は楽しそうな笑みを浮かべて彼らの攻撃を避ける。当てられない事に苛立ちを見せる男達を前に、芽亜は家の屋根に立って余裕そうに口を開いた。

 

「ほらほら、手加減してあげてるんだからもっと楽しませてよ?」

 

「ちっ!」

 

「おい、そっちはまだ……なっ!」

 

 更に苛立つ仲間の横で真白の相手をしていた男を呼ぼうとした者は、そこにあった光景に思わず絶句してしまう。仲間だった男は白目を剥いて引きずられており、それを引きずるのは金色の闇であった故に。芽亜を相手に苦戦する自分達が彼女以上に名を馳せていた金色の闇に勝てる訳が無い。ヤミが引きずっていた男を放り投げて2人の男達へ渡すと、彼らは悔しそうな顔でその場を撤退し始める。……後に残されたのは一部が崩壊した十字路に真白とヤミ、そしておさげが解けた芽亜3人だった。

 

「あ~あ、詰まらなかった。でも改めて感じられた。私は戦う為の道具(兵器)だ。ってね?」

 

「…………」

 

 戦いを終えた芽亜は残念そうな表情で呟いた後、今度は楽しそうに告げる。彼女を変えるつもりだった2人は少しだけ離れてしまった様に感じてしまい、やがて真白が口を開こうとした時。彼女よりも早くこの場には居なかった4人目の人物が声を出した。

 

「め、メア……?」

 

 それは黒咲 芽亜という初めての友達に喜んでいた少女……ナナの声だった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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