【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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【10話】完成。本日より10日間、投稿致します。


第91話 モモの自覚。安心安全? ドッチボール対決

 モモは1人、彩南高校の中庭で考え事をしていた。事の発端は昼食の時、学年関係なくララ達にナナ共々誘われて食事をしていた時の事。

 

『そう言えばララちぃ。真白はまだ好きな人がいないって言ってたけど、ちゃんとアタックしてる?』

 

『うーん、そう言えば最近は何かした覚え無いな~。真白には振り向いて欲しいと思ってるけど、一緒に居られるとそれで満足しちゃうんだ!』

 

 里紗の言葉にララはそう言って笑顔を見せる。面と向かって大好きと言う事のあるララが真白の事を好いている事等、既に2年A組の誰もが知っている。だからこそ教室で何時もの声で告げるララの言葉に他の者達は驚きもしない。ララが真白の事を好きなのはモモとナナも知っている。『熱いね~』と未央がララの姿を見て呟く中、里紗が一緒に食事をしていたモモとナナに質問した。

 

『2人は好きな人とか出来た?』

 

『好きな人って言われてもなぁ、姉上とかシア姉とか上げたら切りが無くなるぜ?』

 

『ナナはお子様ね。そう言う意味の好き、じゃ無いわよ』

 

『はぁ? じゃあどう言う意味の好きなんだよ?』

 

『それは……』

 

 ナナの質問にモモは説明した。ナナの思う好きは親愛的なものであり、里紗の聞く好きとは恋愛的なもの。余りそう言った話が得意では無いナナは説明されるにつれて顔を赤くし始めるが、その後に続けた彼女の言葉でモモは固まってしまう。それは赤くしたナナを揶揄ったからこそ返された言葉。

 

『も、モモは好きな奴居ないのかよ!?』

 

 大人の様に「居ないわ」と返す事が出来れば、ナナの悔しそうな顔を見る事が出来ただろう。だがモモは何故かそれを言う事が出来なかった。一瞬浮かんだその顔が言葉を詰まらせ、だがそれは駄目だと振り払う様に首を横に振って考える。自分の心を。

 

「あれ? モモ、どうかしたの?」

 

「姉様……いえ、少し考え事をしていただけです」

 

「何か悩み? 私で良ければ相談に乗るよ!」

 

 考えるモモの前に現れたのはララであった。難しい顔で1人俯くモモの姿が気になって声を掛けたララ。心配そうにその顔を覗き込み、笑顔で続けた彼女の言葉にモモは少しだけ戸惑った後に口を開いた。

 

「もし、もしもです。自分の大事な家族が好きな人を好きになってしまった時、姉様ならどうしますか?」

 

「うーん……」

 

 例え話としてモモが告げた内容にララは顎に人差し指を当て乍ら考え始める。モモの中で自分が例え話に出て来た『自分』であるならば、身を引くべきだと彼女は思う。自分が諦めても、家族がその人を射止めれば傍に居る事は出来る。家族が幸せになり、自分はその人の傍に居られる。……それがモモが考える最善の選択。

 

「私は、諦めないかな」

 

「え……」

 

 だがモモの最善とララの最善は違う。ララの言葉に驚いたモモが目を見開いて顔を上げた時、ララは笑みを浮かべて続けた。

 

「家族がどんなにその人の事が好きでも、私は自分の好きを誤魔化したくない。負けたくないって思うから」

 

「で、ですが、それでは家族との仲が悪くなってしまうかも知れませんよ」

 

「う~ん、そうなのかな? 少なくとも私がその家族だったら、嬉しいよ!」

 

「う、嬉しい……ですか?」

 

「うん! だって、自分が好きな人を他にも好きになる人が居るって事でしょ? つまりそれだけその人は素敵な人だって思えるからね!」

 

 一般的な家庭ならララの様には行かないかもしれない。だがララだからこそ思える事がある。モモはララの言葉を聞いて驚きと共に大きな閊えが取れた様な気がして、立ち上がると同時に笑顔でララにお礼を言う。不思議そうな顔をし乍らも、晴れた様なモモの顔にララは笑顔で答えた。

 

「姉様。シア姉様の事、好きですか?」

 

「うん! 大好きだよ」

 

「ふふっ、そうですか……私もです♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くよ! それっ!」

 

 体育館にて、体操着姿のララは手に持ったボールを片手に目前で立つ真白へ声を掛ける。頷いた彼女の姿を見た後、ララは迷いなくボールを投降。地球人が出せない威力のボールが真白に迫り、だが難なく真白はそれをキャッチした。ボールの威力に見ていた者達の顔が一様に引き攣る中、ララは清々しい程の笑顔で告げる。

 

「うん! 大丈夫そうだね!」

 

「大丈夫な訳あるか! あんなのドッジボールで来たらキャッチ出来る訳無いだろ!?」

 

 彼女の言葉にクラスを代表してリトが告げる。これから始まるのはドッジボールであり、肩慣らしとして投げたララの投球は地球人である彼らにとって死の危険を感じさせる物であった。リトがララに力を抑える様に言い続け、ララもすぐに納得して笑顔で了承。不安を抱え乍ら試合は開始される。

 

「頑張ろうね、お静ちゃん!」

 

「はい! 頑張りましょう、春菜さん!」

 

「ララちゃんが居れば百人力。いや、万人力だぜ!」

 

「大丈夫なのかしら……激しく不安だわ」

 

 ララと共に戦うのはお静・春菜・猿山・唯の4人と他のクラスメイト達。対するのは真白・ヤミ・リト・里紗・未央の5人と他のクラスメイト達である。お互いを鼓舞し合う春菜とお静にララの投球で勝利を確信する猿山の姿を見て、外野に居た唯は頭を抱え乍ら呟いた。

 

「絶対に勝つよ!」

 

「外野は私達に任せて!」

 

 ララ達の背後でコート内に居る真白やリト達に大きな声で告げる外野の里紗と未央。2人の言葉にやる気を出すクラスメイト達を見て、リトも気を引き締める。遊びと思えば遊びかも知れないが、勝ち負けのある試合だと思えばそれだけで心構えは変わるもの。力を抑えたララを相手に何処まで善戦出来るかは分からないが、戦う以上彼も負ける気は無かった。……そして彼と同じ様に勝ち負けがある試合に置いて、甘んじて負けを受け入れる等許せない者が居た。

 

「真白、私から離れないでください」

 

「……」

 

 前と後ろの両方を警戒しながら告げる体操着姿のヤミを見て、真白はジッと彼女を見る。その表情は変わらないが、彼女の目は優しいものであった。現在は体育の時間に行われているドッジボールであり、ヤミの姿は真剣に授業を受けている様に見えなくも無いのだ。学生としての時間を満喫する様なヤミの姿は、真白から見て微笑ましいものである。

 

 体育の教師が笛を慣らした瞬間、ボールが放たれる。互いにボールを取っては相手に投球し、当てるか取られるかを繰り返し続けた一同。徐々に生徒達が外野に集まって行く中、コートの中に残ったのは5人であった。

 

「やりますね。お姫様(プリンセス)

 

「えへへ、負けないよ!」

 

 対峙するヤミとララの姿を怯えながら眺めるリトと、不安そうに見つめる春菜。真白もヤミに守られながら試合に参加していた為、当てられる事も無くコートの中に残っていた。現在ボールを持つのはララであり、対峙するヤミに満面の笑みを浮かべて投げる動作を見せる。彼女の行為にキャッチする為にヤミが構えた時、ララからそのボールは放たれた。だが力の抑えられたボールの速度はヤミから見れば低速でしか無く、片手で難なくそれをキャッチ。少し詰まらない様子を見せる。

 

「結城 リト。このままでは一生終わりませんよ」

 

「い、いや……でもな……」

 

 人よりも身体能力の高いララとヤミが人並みの力でボールを投げ合えば、軽々と取る事が出来る。それを繰り返していては永遠に試合は終わらない。ヤミの言葉にリトは頬を掻きながら困った様子を見せ、ララと共にコート内で立つ春菜へ視線を向けた。彼女はリトの視線に苦笑いを浮かべた後、口を開いた。

 

「ララさん。被害が出ない程度に抑える事は出来ないの?」

 

「う~ん、本気で投げて威力を分散させればどうにかなるかも!」

 

「威力の分散?」

 

「うん! ヤミちゃん! こっちに投げて!」

 

「色々と可笑しい気がしますが……どうぞ」

 

 春菜の言葉に思い付いた様子で告げたララはヤミへ両手を上げ乍らボールを譲ってもらう。戦っている相手へ渡す事に違和感を感じ乍らも、ヤミはボールをララへ転がす。それを受け取ったララはまた笑顔を浮かべた後、ヤミに片手でボールを向けて告げた。

 

「行くよヤミちゃん! 後ろに受け流すからね!」

 

「! そう言う事ですか……真白、私の横に居てください」

 

 何かに気付いた様子のヤミに言われ、彼女の横に移動した真白。やがてララがボールを放った時、それは肩慣らしに見せた剛速球と殆ど同じものであった。リトが驚く中、ヤミはそれを両手でキャッチ。途端に彼女の背後に猛烈な風が発生し、外野に居た者達の数名が大きく吹き飛んだ。

 

「はぁ!?」

 

「大丈夫です。当たっても怪我をする事はありません。威力をその後方に分散させているので」

 

「全然大丈夫じゃないよ!?」

 

 驚くリトにヤミが平然と告げるが、その言葉は後ろに広がる地獄絵図を無視しているからこそ出る言葉である。彼女にとって真白を初めとした者以外は有象無象なのだろう。関係ない人を傷つけない様に言われているが、こう言った場合の巻き込みは彼女の中で約束の範疇に無かった。春菜がヤミの言葉に思わず反応するが、時既に遅くボールは再び投球される。ララの投げ方を真似る様に威力を後ろへ分散させる投球。ララが笑顔でキャッチするその背後で、的目 あげるを初めとしたクラスメイト達が空へ舞い上がる。

 

「えいっ!」

 

「止めろララ!」

 

 リトが止めようとするもララは素早くボールを投げ返しており、それはヤミの上を通って外野に向かい始める。ボールが向かう先に居たのは唯であり、彼女は迫り来るそれにキャッチする事が出来ずに両手で身体を庇う。瞬間、彼女を襲ったのは痛みでも衝撃でも無かった。

 

「……え? !? きゃぁぁぁ!」

 

 恐る恐る目を開けた時、下を向いていた彼女の目に映ったのは自分の大きな胸であった。何も纏う事無く曝け出されたそれに驚いた彼女が自分の姿を確認すれば、身体の何処にも肌を隠す布が存在しない。……彼女の周りには弾けて使い物にならなくなった体操着の残骸が落ちており、現在彼女は生まれたままの姿であった。幸いな事に男子生徒はリト以外猿山も含めた全員がララとヤミの投球で吹き飛んだ為、気絶している事でそれを見られる心配は無い。が、何人かの女子生徒達にはバッチリ見られていた。……その後、彼女の悲鳴を最後にチャイムが鳴った事でドッジボールは終了。何とか制服に着替える事で唯は最初の被害のみで済むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……反省」

 

「はい」

 

「うぅ、足がぁ~!」

 

 その日、結城家で正座するララとヤミの姿があったのは余談である。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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