【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第8話 見掛け倒しな宇宙人

「真白! 一緒にお弁当食べよ!」

 

 今日も今日とて学校に着て居た真白は、お昼時になると同時に突入して来たララの存在に目を細める。ララの登場にクラスの男子たちが湧き、真白の傍に居た唯は少し眉を顰めてララに視線を向ける。だが、そんな注目を集めて居る事に特に関心を持たないララは迷う事無く教室の中へと侵入しようとし始めた。本来なら他クラスに入る事は駄目な事。それを行おうとするララに唯が更に目つきを悪くすると、真白は静かに立ち上がってララの傍に近づく。

 

「……入っちゃ……駄目」

 

「ふぇ? あ、そっか。じゃあじゃあ、廊下で一緒に食べよ! 階段とかなら座れるよ!」

 

 ララの言葉に静かに振り返った真白。その視線の先には唯が居り、唯はララの行動を注意して居る真白の姿にもう前日の様に苛立ちを感じる事は無かった。そして向けられた視線に小さな溜息の後、理解した様な仕草をすると徐に立ち上がって自分の席へと帰り始める。『別に良いわよ』。そんな風にも見えたその唯の答えに真白は頷いた後、ララと共に廊下へと出始める。と、そんな2人の元にとある生徒を注意する先生の声が聞こえる。

 

「こら! 廊下を走るな!」

 

「?」

 

 真白はその声に注意する先生を。そして【必死な形相で走るリト】の姿を見る。ララは「どうしたんだろ?」とリトの姿に不思議がり、真白は少し考えた後にリトの去って行った場所へ向かう為に足を進め始める。家族である事を知って居るララは、リトも誘う気なのだろうと理解してそんな真白の後を追い始めた。

 

 リトの向かった場所は屋上にある部屋であった。後を追った真白たちには彼がその中へと突入する様に入って行く姿が見えた。普通ならそんな場所に用事など無い筈の彼が一体どうして中へ入ったのか……気になりながら真白はその扉の近くに近づき始める。そして中を覗いた時、真白は思わず目を見開いた。中にはリトの他に1人の男の姿と、気を失って居るのか目を瞑って触手に吊るされている女子生徒の姿があった。その女子生徒は以前、リトが隠れ乍ら見たり真白に挨拶をした少女である。

 

「真白? 何がんん!?」

 

「……」

 

 真白は普段の声音で喋り掛けて来たララにすぐにその口を塞いで空いた手で自分の口元に指を1本立てて見せる。驚いた様に目を開けながらも、ララは自分の口元にある手と真白の行動に小さく小刻みに何度か頷いて見せた。と、突然何かが破れる様な声が聞こえて真白は再び中を覗く。そこにあったのは、リトと女子生徒。そして明らかに人間では無い怪物の姿をした何かが存在して居た。

 

「俺の名はギ・ブリー。結城リト、ララから手を引いて貰おう」

 

「は?」

 

「!」

 

 怪物の言葉に訳が分からないとばかりに返すリトと、その言葉の意味を分かって居たが為に再び目を見開いた真白。『銀河中に【結城リト】の存在を知らしめた』。昨日ザスティンによって持ってこられたメッセージから伝えられたデビルーク王の言葉である。そして今の現状が、どうして出来上がったのか真白はすぐに理解出来てしまった。昨日の夕時、詳しく説明をしなかったのは巻き込まずにどうにかしようと考えて居たから。しかし真白のその考えはすぐに崩れ去ってしまったのだ。

 

「恍けるな。お前が新しい婚約者候補なのはもう分かってるんだよ」

 

「婚約者……候補!? 俺が!?」

 

「あぁ? 何を驚いてやがる。とにかく、ララから手を引かなきゃこの女は返さないぜ?」

 

 ギ・ブリーの言葉に驚き、動揺するリト。そんな彼の姿にギ・ブリーは違和感を感じて居る様子だが、特に気にする様子も無く女性生徒を人質に取り続ける。そして徐に持って居た何かの機械を動かし始めた。……それは女子生徒を吊って居た触手と連動し、女子生徒の服などが無残にも破かれる事となる。純情なリトはそれとは別の理由もあり、その光景に狼狽え始めて居た。真白からは見えないが、その表情は赤さを通り越して居るだろう。しかしその間にもギ・ブリーの要求は続く。

 

 狼狽えて居たリトはやがて女子生徒を見ない様にし乍ら、拳を握り締め始める。ギ・ブリーの行動は卑怯極まり無い物であり、ララを振り向かせるための行為では到底ない。その事に怒りを露わにしたリトだが、彼の言葉にギ・ブリーは吐き捨てる様に告げる。そしてそれは全て私利私欲に寄る物であった。ララの事も身体目当て、結婚すれば銀河を統一した物の継承者。自分が決めた事は絶対とでも言うかの様な言葉に、その拳が更に握られる。既に強すぎて、指の甲は白くなり始めてすら居た。

 

「お前に取っちゃ、ララも春菜ちゃんも道具って事かよ……!」

 

 リトの言葉にそれではまるで自分が悪者見たいだとあざけ笑いながら言うギ・ブリー。そして怒りが頂点に達した時、リトは大きく「あぁ、最低だ!」と告げる。その姿は後姿故に見えないが、もうそこに恥ずかしさなど無いのだろう。そしてギ・ブリーは一瞬だが、リトの言葉にその悍ましい姿をビクつかせる。全体を見て居た真白は、それに気付くと静かに後ろへ振り返った。

 

「……ララ……手を貸して」

 

「一体何が、ってギ・ブリー!? 何であいつが……! 春菜!」

 

 真白の行動に声を潜めながらも中を様子を伺ったララ。しかし中の様子を。そして女子生徒の姿を見てララは思わず大きな声を出してしまう。そしてその事に一瞬とは言え、リトもギ・ブリーも突然現れたララの姿に驚く。と同時に真白は部屋の中へと一気に足を踏み入れた。誰かが気付く間もなく入り込んだ真白は、触手に吊るされる女子生徒の傍に駆け寄ると一気にそこから手際よく解放する。

 

「なっ!?」

 

「真白!」

 

 人質が取られた事。真白が現れた事で両者ともに驚く中、真白はすぐにその場から離れて横抱きに抱えながらその女子生徒を救い出す。既に人質が無くなったギ・ブリーは焦った様子を見せ、リトは助け出したその姿に安心した後にギ・ブリーを睨みつけ始める。が、やがてギ・ブリーは歯ぎしりを始め乍ら怒り始めた。

 

「俺様を怒らせたな……テメェらに地獄を見せてやる! ギ・ブリー様のこの真の姿でなぁ!」

 

 怒号と共に姿を見る見る変え始めたギ・ブリーはやがてその姿は悍ましく恐ろしい姿へと変える。その姿は波の者では相手に出来ない様な存在感、そして強さを見せて居た。リトはそれに目を見開きながら、後ろに控える2人と眠る女子生徒を見る。

 

「結城リト、ララから手を引け。そしてララ、俺と結婚しろ。これが最後の忠告だ。でなきゃここに居る全員、地獄を見ることになるぜ?」

 

 ギ・ブリーの言葉に真白が女子生徒を抱え乍らも戦闘態勢に入ろうとした真白。しかしそんな彼女の前に手を伸ばし、リトがそれを制した。明らかにその手は震えているが、それでもギ・ブリーから視線を離さず逃げようと言う様子は無い。それどころか何かを決意した様にギ・ブリーを睨みつけ始める。

 

「テメェは俺がぶっ飛ばす!」

 

 どうやら彼の怒りは既に最頂点に達しており、今人質の居ない現状。勝てないかも知れない相手を前にしても引く事無くその拳を再び握りしめ始める。ギ・ブリーは怖い姿と表情をし乍らもリトを見て明らかに目を震わせ始めるが、今居る者達はその光景には気付かない。と、ギ・ブリーは更にその姿を変化させる。より恐ろしく、より悍ましく。が、それでもリトの決意は変わる様子が無かった。

 

「俺があいつを引きつける。その間に逃げてくれ。真白、春菜ちゃ……西連寺の事、頼む」

 

「……リト」

 

 ギ・ブリーに聞こえない程の声で告げたリト。そんな彼の姿に名前を静かに呼ぶが、それよりも早くギ・ブリーに向かって駆け出し始める。握った拳を振りかぶり、声を上げて殴りかかったリト。そんな彼の姿に明らかに強い姿をして居たギ・ブリーは……その巨体に似合わない怖気っぷりを見せて「ごめんなさい!」と謝り始める。必死の形相を見せて居たリトはその事に一瞬唖然とし、ギ・ブリーは立て直す様に取り繕う。が、既にリトは全てを察して居た。そして突然脅かす様に声を上げれば、怯えて足を後ろへ下げ、足元にあったボールに足を滑らせ転倒。頭を強打し、その痛みにのたうち回り始める。やがて暴れて居た身体が他の道具に接触すれば更なる追い打ちを受け、その姿を徐々に小さくして行った。そうして出来上がったのは小さな小狸の様な姿である。

 

 ギ・ブリーの正体。それはペケ曰く擬態能力に優れ、代わりに肉体的にはひ弱な種族であるバルケ星人と呼ばれる生き物だとの事。既に気絶し動けなくなって居るその姿に一気に肩の力を抜いたリト。やがてララは何処からともなく前の用に発明品を取り出す。ララ曰く『じゃーじゃーワープ君』と呼ばれるその発明品はまるでアヒルの様でありながら洋式トイレの便器の様になっており、ギ・ブリーを摘み上げたララは迷いなくそこに流してしまう。と同時に安心しきったのか座り込んだリト。真白は女子生徒を抱えたまま、その傍に近寄る。真白の存在に顔を上げ、その腕に抱えられる女性生徒の姿に顔を真っ赤にして俯いた。

 

「良かった……無事だよな?」

 

「ん……リトの……お蔭」

 

「俺の? 違うだろ、西連寺を助けたのは真白だしさ」

 

 無事に助けられた事に安心したリト。そんな彼に真白が告げれば、自分の手柄を否定する。そして女子生徒が目覚めた時の言い訳として、『貧血で倒れたところを真白とララが見つけた』と言う事にしようと言って立ち上がったリト。ララが「一緒に行かないの?」と聞くも、大勢で行く必要も無いと言って部屋を出ようとする。

 

「……リト」

 

「?」

 

「……格好良かった」

 

「! な、何だよ急に……また後でな」

 

 呼び止められて振り返ったリトに真白は微かに笑みを浮かべて告げる。普段は見れないその姿にリトは照れながら顔を赤くした後、その部屋から今度こそ去って行ってしまった。彼本人は否定しているが、ララも真白もそうは思って居ない。自分達の為にギ・ブリーに立ち向かった彼の姿は、間違い無く頼もしい物であったのだから。

 

 部屋を出て行ってしまったリトの姿が消えた後、真白は女性生徒を抱えたまま立ち上がる。ずっとこの場に居る訳にも行かず、真白はララと共にその後女子生徒を保健室まで送り届ける。そして保健室で食事を済ませる事になるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……んん……」

 

「あ、目が覚めた?」

 

 保健室。ゆっくりと目を開けた女子生徒に気付き、ララが口を開く。と保健室の薬品が並ぶ棚を覗いて居た真白が振り返った後に近づき始める。自分がどうして眠って居たのかを理解出来て居ない彼女にララはテニス部の部室の傍で倒れて居たと教え、やがて起き上がった事で大丈夫だと思ったのかララは抱き着き始める。突然の事に驚きながらも、女性生徒はそのままの状態で真白を見る。

 

「えっと、三夢音さん達が見つけてくれたの?」

 

「ううん、違うよ」

 

「……助けたのは……リト」

 

「え……」

 

 帰って来た答えに驚いた表情を見せる女子生徒……名を西連寺 春菜。リトの長年の想い人にして、彼女もまた不思議に巻き込まれた者の1人である。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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