【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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【10話】完成。本日より10日間、投稿致します。


第71話 別荘に鳴り響く黒猫の銃声【前編】

「ようこそ皆さん、我が天条院家の別荘へ!」

 

 沙姫の言葉に豪華な内装を見回していた全員が視線を向ける。ある日突然来た招待状。差出人は沙姫であり、ララ達やセリーヌを含む結城家6人を始め、唯や春菜。真白とヤミ。猿山を含んだ5人も招待に応じてこの場に来ていた。春菜には姉が居り、彼女も招待されていた。が、どうやら来なかった様子。里紗と未央も都合が合わなかった様で今回は不参加である。

 

「サキ! 招待してくれてありがとう!」

 

「貴女には家出の件でお世話になりましたから、天条院家の人間として受けた恩は忘れませんわ。でも、これでチャラですからね!」

 

 普段ララを敵対視する沙姫だが、決して悪人では無い。彼女の言葉に笑顔で答えるララの姿を見て、平和な光景に見ていた者達は優しい気持ちになる。

 

「沙姫様のご友人方ですね。ようこそ、いらっしゃいました」

 

「貴方は?」

 

「この屋敷の管理をしております、執事の嵐山と申します」

 

 突然現れた男性の姿に驚きながらも唯が質問すれば、お辞儀をし乍ら答える男性……嵐山。どうやら彼が今回招待客を御持て成しする様で、話を聞いていた全員がお礼を告げる。そして沙姫の指示の元、彼に先導されて全員は用意された部屋へ案内された。当然男女は別であり、招待された者の人数は分かる人数で11人。広い部屋の多い別荘だが、一部屋で過ごせば狭く感じてしまうだろう。だがそこはやはり快適に過ごす為か、2,3人で一部屋と言う待遇であった。リトと猿山は同室に。ララ、ナナ、モモの3人が同室に。唯と春菜が同室になり、真白、ヤミ、美柑の3人が同室となる。因みにセリーヌはどの部屋も行き来する事で決まった。

 

「わぁ……良い眺めだね」

 

「ん……」

 

「絶景。とはこの様な光景を言うのでしょうか」

 

 自分達に用意された部屋の窓から見える海と山の景色に美柑が見入る中、真白も同じ様にその光景を眺める。既に何度か結城家で美柑と共に夜を過ごした事のあるヤミは環境が違うだけ故にワクワクした様子も緊張した様子も無く、2人が見る景色を同じ様に眺める。すると美柑が景色から部屋に視線を戻し、2人に話しかけた。

 

「真白さん、ヤミさん。夕食まで時間もあるし、大浴場に行ってみようよ!」

 

「大浴場……銭湯とはまた違うお風呂でしたね。賛成です」

 

 普段は『彩南 ぽかぽか温泉』。稀に結城家のお風呂。お風呂と言えばヤミに思いつくのは2つだけであり、故に興味があるのだろう。美柑の言葉に頷きながら答えれば、真白も黙って頷いて同じく賛成の意を伝える。楽しそうに美柑は着替えの準備を始め、真白とヤミも持って来ていた代えの服を用意する。そして美柑が部屋を出た時、ヤミも出ようとして微かに聞こえた声に振り返る。それは人では無い、猫の鳴き声。それはヤミだけでは無く、真白にも聞こえていた。

 

「……黒猫」

 

「……」

 

 気付けば窓に存在していた真っ黒な毛並みの猫。どうやってその場所に立ったのか定かでは無いが、真白は不思議に思いながら近づき始める。ヤミがジッと黒猫を見つめる中、ゆっくりとその身体へ真白が手を伸ばした時。黒猫は逃げる様に跳んで行ってしまう。天条院家が飼っている猫なのか、野良猫なのかは当然2人にも分からない。居なくなってしまった猫の姿に真白は気にした様子も無く振り返り、ジッと窓の外を見つめるヤミに声を掛ける。

 

「……行こう」

 

「! そうですね。行きましょう」

 

 我に返って答えた後、美柑の出て行った部屋の扉を開けるヤミ。廊下では中々部屋から出て来ない2人を待つ美柑の姿があり、改めて3人は大浴場へと向かい始めた。既に誰かの気配を感じる事の出来る大浴場。どうやら考える事は皆同じの様であり、招待された女性達全員が大浴場に集まっていた。そして話している内容は主に胸の話であった。明らかに入っても碌な目に遭わない様子の湯船に裸になった美柑やヤミは戸惑う。が、真白は気にした様子も無く湯浴みの後に湯船へ浸かった。

 

「あ、真白!」

 

「貴女も来たのね」

 

「……ん」

 

 真白の姿に気付いたララの声で、その場に居た全員が真白を認識する。当然彼女が居るならばと美柑やヤミの姿も確認し、2人は気付かれた事で同じ様に湯船へ浸かった。

 

「う~ん、真白も再会した時に比べると少し大きくなったね!」

 

「……そう?」

 

「うん! あ、触っても良い?」

 

「んなっ!?」

 

 ララの言葉に声を上げて驚いたのは唯であった。見れば真白が答えるよりも早く胸に手を伸ばすララの姿があり、その膨らみに触れた途端。ララの顔は目に見えて嬉しそうな笑顔に変わる。

 

「同じおっぱいなのに少し違うんだね! 唯よりも掴みやすくて私の指を弾き返してくるよ!」

 

「シア姉の……胸……」

 

 そもそも胸の話が始まったのは、ナナが唯の大きな胸に嫉妬し始めた事が原因だった。ララが解説する真白の胸の感触。この場に居る全員は当然言われた言葉を想像して、ナナは思わず唾を飲み込む。出来る事ならララの様に触って見たいとさえ思うが、流石にそれを言える勇気をナナは持っていなかった。

 

「ふにふに~! もみもみ~!」

 

「んっ、ぁ……もう……止め……」

 

「いい加減止めなさい!」

 

 触るどころか揉み始めるララの手に翻弄されているのか、何処か弱々しく声を出す真白の姿に唯が強引に間へ入る事で行為を中断させる。お湯の暖かさで温まった事とは明らかに違う薄い顔の赤みを見せる真白の姿に、見ていた春菜が顔を真っ赤にしながらも心配そうに声を掛けた。そしてララが残念がる中、唯が湯船の中で説教を始める。

 

「ふふ、気になりますか? シア姉様のお胸が」

 

「なっ!? べ、別にそんなんじゃねぇよ! モモの方こそ気になってんじゃないのか?」

 

「いえ、私は気になりませんよ。だって先日、存分に堪能しましたから♪」

 

 モモの言葉にナナは思わず歯軋りしながら悔しさを覚える。手がくっ付いて離れられなくなった日、一緒に結城家のお風呂に入ったモモは確実に真白の胸を触る事が出来たのだ。それを思い出した事で悔しさを感じ乍ら、ナナはこれ以上この場に居てもモモに弄られるだけだと察して湯船から上がる。そして脱衣所の近くにたどり着いた時、そこでナナが目撃したのは泡に塗れて滑って転び続ける沙姫とルンの姿であった。ルンがこの場に居る事も驚きだが、何となく2人が悪巧みの末に被害に遭っているとまた察したナナ。呆れる凛と綾を尻目にナナは大浴場を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真白ちゃん! 久しぶり!」

 

「ん……久しぶり」

 

 大浴場から出て来た真白を迎えたのはルンであった。自分が先程沙姫と共に自業自得な目に遭っていた過去など無かったかの様に自然と現れたルン。どうやら沙姫の招待は今回、アイドルの仕事が無いオフの日と重なった為に参加出来た様である。真白の後を追う様にヤミと美柑も大浴場からあがり、やがてララや春菜も出て来るとルンの姿に驚きながらも仲間が1人増えた事を歓迎した。そして皆で談笑しながら廊下を歩いていた時、突然聞こえた耳を劈く様な音に全員が驚く。

 

「な、何……今の」

 

「【銃声】、みたいだったけど……」

 

 春菜が困惑する中、美柑が呟いた後に「まさかね」と続ける。だがこの場に居る全員がそれを否定出来なかった。本物の銃声を聞いた事が無くても、テレビ等でドラマを見ていれば何度かそういったシーンを見かける事もある。一斉に嫌な予感を感じる中、黙っていたヤミが静かに告げる。

 

「間違い無く銃声だと思います」

 

 それはこの地球にやって来るまでの間、宇宙一の殺し屋として生きていた者の言葉。誰も否定する事は出来ず、困惑しながら立ち止まる全員の元に複数の走る足音が聞こえて来る。やがて姿を見せたのは、リトと猿山。そして真白達よりも先に大浴場を後にしていた唯とその肩に乗るセリーヌの姿であった。どうやら彼らも銃声を聞いて駆け付けた様だ。

 

「皆! 無事か!?」

 

「私達は大丈夫。だけどさっきの音」

 

「えぇ。まるで銃声みたいだったわ」

 

「ヤミさんが言うにはみたいじゃ無くて、銃声だって」

 

「ほ、本物って事か!?」

 

 リトの声に少しだけ安心出来た春菜が答えれば、唯が不安げに告げる。先程の話をしていた美柑がヤミの言った事を伝えれば、目に見えて猿山が動揺し始めた。だがこの場に居続ける訳にも行かない。銃声のした方角はホールの様であり、リトが意を決した様子で行くことを告げれば全員で向かう事となった。……そしてその先で見たものは余りにも残酷なもの。

 

「あ、嵐山……さん……!?」

 

 胸に穴を開け、自ら流した血の海に横たわる嵐山の死体がそこにはあった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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