【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第6話 訳ありな家族

 ララが真白を気に入ってしまったその翌日。本人が言っていた通り、ララは結城家での寝泊りをその日から開始した。そのため、朝が来た時。結城家に来た真白を迎えたのはララであった。正確には美柑も真白が来る大体の時間に迎える為に玄関の傍にいたが、ララは入って来た真白にその名を呼びながら抱き着いたのである。どうやら彼女、かなり抱き着く癖がある様だ。

 

 自分を抱きしめるララを何とか離し、美柑に「大丈夫?」と心配される真白。2日間の不思議な出来事に今回の件で、真白が少し疲れ初めている様に美柑には思えたのだろう。詳しくは分からなくとも、ララが真白と結婚したいと思っている意思は同じ屋根の下を共にしたのだ。聞いている筈である。真白はそんな美柑に大丈夫である意思を伝える様に頷き、そのままリビングへと足を進めた。例え1人増えていても、真白に取ってやる事に変わりは無いのである。

 

「あ、それじゃあ私。ちょっと出掛けて来るね!」

 

「何処に行くの?」

 

「えっへへ、すぐに分かるよ!」

 

 キッチンに立った真白を見届けた後、ララは外に出ようとする。宇宙人であり、知り合いなど殆ど居ない筈の彼女が一体何処へ行くと言うのか……美柑は気になり質問するが、ララは笑みを浮かべてそう答えるとコスプレの様な恰好をしたまま外へと出て行く。しかも空を飛んで、である。誰かに見られれば騒ぎになりそうだが、本人は特に自重する気は無いらしい。

 

 ララが居なくなった途端、リビングの中は一気に静かになる。聞こえるのは調理の際に聞こえて来る音のみであり、美柑と真白はお互いに並んだまま何も言わずにそれを続けていた。それは普段と変わらない事であり、だがその事に美柑は少し不安を感じ始める。

 

「真白さん、本当にララさんと結婚するの?」

 

「……」

 

「だよね、しないよね。だって真白さんもララさんも、女の子だもん」

 

 続けていた時、ふと聞いた質問に真白は首を横に振って否定を見せる。ララはする気満々らしいが、真白はそうでは無い様子。真白の答えと同様の行動に、美柑は大きな安心感を得る。突然現れた相手が家族である真白と結婚すると言いだす。不安に思うのも仕方の無い事であろう。だが美柑は自分が言った言葉の中で、何かが引っかかるのを微かに感じた。

 

「……焦げる」

 

「へ? あっ! 不味っ!」

 

 真白に言われた言葉で美柑は手元に持っていたフライパンの上を見る。目玉焼きを焼いて居た彼女は、考え事をしている間一切手を動かしていなかった。故に同じところばかりが焼かれ、徐々に焦げ始めていたのだ。美柑は真白の言葉にすぐに気付き、急いでその対処を始める。そうして気付けば考えていた事も忘れ、美柑は何とかなった目玉焼きを見て安心するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2日続けて起きた不思議な出来事。2度ある事は3度あると言う諺が地球には存在するが、その日それ以降何かが起こる事は無かった。学校で何かが起こる訳でも無く、何事も無い1日を過ごした真白。結城家に帰った時、同じ様に朝から外出していたララは既に帰宅した後であり、歓迎する様に再び抱き着かれる。最早ララがこれから結城家に住むのであれば、慣れるか躱す方法を考えるしか無さそうである。

 

 その後、美柑と共に夕食を作るために行動した真白。ララはその間真白と美柑に話しかけたり、リトから何時の間にか借りていた携帯ゲーム機で遊んだりして時間を潰す。その後リトも帰宅し、「お帰り~!」と当たり前の様に居座っているララに思わず溜息。料理をして居る真白と美柑に視線を向けた後、一度自分の部屋に戻った後に着替えを済ませて降りて来る。そして家の中にある植物等の状態を確認したり、何だかんだでララとゲームをしたり等して彼もまた時間を過ごしていた。

 

 1人増えた結城家の夕食は騒がしくありながら、非常に明るくなったと言えるだろう。普段喋らない真白にララがほぼ絶え間なく話しかける事で、真白も少なからずその会話の回数を増やすことになっていた。答えるだけの行為ではあるが、それでもその出来事は間違い無くリトと美柑にとって嬉しい事であった。……その後、片付けも終えて結城家を後にした真白。夕食の際、ララは真白が何処に住んでいるのか気になり着いて行こうとしていたが、真白が帰ろうとしたのはララがお風呂に入っていた時故にそれは叶わずに終わる。

 

「あれ? 真白は?」

 

「もう帰った。ってララ! 服を着ろ服を!」

 

「えぇ~! 真白の家の場所知りたかったのに~!」

 

 お風呂から出て来たララはバスタオル一枚でリビングに戻って来ると、リビングのソファでは一番風呂に浸かった後のリトが何かを思いだしながら嬉しそうな表情を浮かべ、寛いで居た。ララはそんなリトを見た後に真白の姿を探す。しかし既に帰ってしまった真白の姿はそこには当然無く、唯一居たリトに聞けば彼は表情を戻してララに振り返りながら答えた。と同時にララのその姿に顔を真っ赤にして顔を背ける。特に恥じらいと言った物が無いのか、ララは気にした様子も無く居なくなってしまった真白の事に肩を落とす。と、美柑がララの後ろから姿を見せた。恐らく部屋に居たのだろう。

 

「じゃ、私入って来るね」

 

「おう」

 

「あ、ねぇねぇ美柑。何で真白はここに住んで無いの? 家族なんでしょ?」

 

 リトは既に住んでおり、ララは今上がった。故に最後の1人である美柑がお風呂に入る事を伝えた時、ララはそれを呼び留めて質問する。すると美柑はその質問に僅かに悲しそうに俯き、美柑の代わりにリトが口を開いた。

 

「真白が望んだんだ。俺も美柑も、真白の事は家族だと思ってる。真白だって俺達の事、家族だって思ってくれてる。でも、やっぱり何処かで気を使ってるんだ。だからここに住もうとしない」

 

「何度も誘ったんだよ? でも真白さん、頷いてくれないの」

 

 リトは昨日自分の事を家族と言っていた真白の姿を思いだしながら言う。そしてそれに続ける様に美柑が言い、ララはそれ以上聞く事は無かった。リトと美柑は似ている訳では無い物の、血の繋がっている兄妹。しかし真白は苗字も違い、美柑に【さん】と呼ばれる様な存在だ。故にララは聞かずとも真白が2人とは血が繋がっていない事に気付いていた。そして告げられたその内容に、それ以上詮索することを止める。色々とずれている彼女ではあるが、それでも流石に今の少し重くなった雰囲気にはそれ以上言えなかったのだ。

 

 その後、リトが大きく一度手を叩いて音を鳴らすとその重い空気を晴らす。美柑もお風呂に入るために行動し、リトは顔を反らしながらララを見ない様にして自分の部屋へ。1人残ったララはリビングのソファに座り、窓の外を見る。既に夜を迎えている外は真っ暗である。

 

「地球人にも色々とあるみたいですな」

 

「何とか力になってあげられないかな?」

 

 頭に付いて居たペケの言葉にララは考え、その後その答えは出ぬままこうしてまた一日は過ぎて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、朝の学校の教室内は普段以上に賑わっていた。話をする生徒達の殆どが口々に【転校生】と言い、静かに座っていた真白はそんな光景を気にした様子も無く過ごし続けていた。唯は登校している様だが、今日は日直の様で現在教室の中には居ない。

 

 やがてやる事を終えた唯が教室に入って来ると、そのすぐ後に担任が入って来たことで生徒達は各自自分の椅子へと戻る。そうして担任から告げられたのは噂になっていた転校生の話である。だが転校生は真白たちの居るクラスでは無く、リトの居るクラスへ入った様で、会ったら仲良くする様に。分からない事は教えてあげる様にと注意を促す。すると突然廊下に続く教室の扉が開かれる。

 

「あ、居た! 私も学校、来ちゃったよ! 真白!」

 

 そうして入って来たのは何とララであった。どうやら噂になっていた転校生とはララの事の様で、普段のコスプレの様な服装からしっかりと彩南高校の制服を着用しているララ。既に何故かララの事を知っている男子達は「あの時の美少女!」と呟く中、名前を呼ばれた真白にララと同様の視線が向けられていた。そしてその視線を向ける者の中にはクラスで唯一真白とそれなりに交流のある唯も含まれており、真白は現在の状況とララの転入に小さく溜息を吐くのであった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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