【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第65話 お正月にはすごろくを【後編】

 3周目を迎えたすごろくゲーム。唯は様々な恥ずかしい恰好を強制的に着せられ、ララも様々な恰好でワープした先にて指令を熟す。リトも服装に変化は無いが何処かへワープして指令を熟し、それぞれが多種多様なイベントに遭遇して行く中、真白は自分の手元に落ちて来るサイコロを受け取った。現在リトがトップに立ち、続いて春菜が。その次に唯がバニーガールの衣装で立っており、真白が振るのを楽しそうに待つララが4番目である。猿山はその後ろで先程まで猛獣に追われていた為に息を切らしており、真白から5マス先に居る美柑が不安そうに真白を見つめていた。

 

『シア姉様は現在最下位。頑張ってください!』

 

『メイド修業で1回休みが差を作ったんだな。だけど同じ休みでも猿山は高い数字を出したから、シア姉にも逆転出来る可能性はまだまだあるぜ!』

 

 真白は最初のマスで沙姫達の元にワープし、メイドとしての修業をさせられていた。今現在それは終わったものの、2周目は認められなかった為にサイコロを振る事が出来なかったのだ。最初の2マスしか進んでいない為、大きく遅れを取ってしまっている真白。勝利にこだわる様子は無いが、何時までも持っている訳には行かなかった為にサイコロを前方へ投げる。何度か転がって出た目は、5であった。

 

『美柑と同じマス。って事は?』

 

『スペシャルイベント発生です!』

 

「スペシャルイベント?」

 

 5マス先に立っていた美柑の元へ辿りついた真白は、到着すると同時に響いた音に顔を上げる。モニターには楽しそうに告げるナナとモモの姿があり、美柑は2人の言葉に首を傾げながら繰り返した。当然真白も知らない事であり、モモが説明を始める。その内容は同じマスに止まった者同士が共に協力して指令を熟す、と言うものであった。2人で行うと聞いた美柑は協力する相手である真白へ視線を向け、それに返す様に真白も美柑を見る。

 

「どんな内容なんだろ?」

 

「……」

 

 真白が美柑の言葉に首を傾げた時、その視界が突然変わり始める。そして次に美柑と真白が気付いた時、目の前に広がっていたのは結城家のリビングであった。戻って来たのかと一瞬戸惑った美柑だが、真白はこの場所が本物の結城家で無い事をすぐに理解する。美柑と共にお節料理を用意した真白はキッチンの片づけを軽く済ませただけであり、食べ終わってお客も帰ってから全て終わらせるつもりでいたのだ。が、今現在キッチンに道具は1つも出ていなかった。まるで、一度も使われていないかの様に。

 

 真白のお蔭で偽物の家だと分かった美柑は、何をするべきか分からずにリビングを探索する。するとテーブルの上にとある道具が置かれている事に気が付いた。それは木で出来た片側にフワフワの梵天が付いた耳かきや、白と黒の綿棒など。どれも耳掃除に使う道具であり、それに気付いた美柑と真白の目の前に突然現れた文字が指令を伝えた。

 

『スペシャルイベント! 姉妹の耳掃除』

 

「えっと、私達で耳掃除をしろって事?」

 

 思わず真白に振り返りながら美柑が言えば、他に答えが無い為に真白は頷いて綿棒を手に取った。思ったよりも全然平和で恥ずかしい目にも合わない事に安心する美柑だが、そんな彼女達の姿を見ていたモモは何かを楽しみとばかりに笑みを浮かべていた。

 

「なぁ、何で耳掃除なんだよ?」

 

「ふふ、見ていれば分かるわ。私の記憶が確かなら、シア姉様は……」

 

 質問されたモモは何処か意味深げに答える事無く美柑と真白が映る画面を見続ける。何を企んでいるのか分からないナナは不思議に思いながらも言われた通りに画面へ視線を向けた。画面の中では先に美柑が真白の耳を掃除する事になった様で、ソファに美柑が座ると同時に膝を叩く姿が映っていた。

 

「それじゃあ、真白さん。ここに頭乗せて」

 

「ん……」

 

 美柑の言葉に頷いてソファに近づき、その膝の上に頭を乗せて横になった真白。片耳を上に向ける為に横顔を見せる真白の姿に美柑は少しだけドキドキしながら耳の中を見て見る事にした。中に余り汚れは見当たらず、早く終わると思った美柑。だが耳かきを手にした瞬間、美柑の目の前に指令とは別の画面が表示された。

 

『5:00』

 

「え、何これ?」

 

 時間の様な表示に戸惑う美柑。だが真白はその画面を見る事が出来ず、美柑は画面が気になりながらも始める事にした。ゆっくりと耳かきを真白の耳の穴へと近づけ、微かに触れる。瞬間、目の前に映る時計が『4:59』へと変化した。が、驚いて真白の耳から出せば時間の変化は止まる。それはまるで『5分間、耳掃除を続けろ』と言っているかの様であった。

 

「……美柑?」

 

「あ、ごめんね。何でもないから。それじゃあ、始めるね?」

 

 微かに触れたにも関わらず、始まらない事で心配になった真白が掛けた声で美柑は我に返る。そして改めて耳かきを真白の耳へ入れ始めた。汚れは最初に確認した時と同じく余り存在せず、だが5分間は続けなければいけない為に美柑はゆっくり時間を掛けてやる事を決める。が、予期せぬ事が再び美柑の手を止めてしまった。

 

「……っ! ん、ぁ……」

 

「ま、真白さん?」

 

「ん……平気」

 

 耳かきで触れる度に聞こえる真白の声。美柑が思わず手を止めて話し掛ければ、何事も無かった様に真白は答える。しかし再び始めれば真白は声を微かに漏らし始めており、膝に乗せている為に美柑は真白の表情を見る事が出来なかった。……一方、カメラの視点を移動させていたモモは口を必死に閉じて出てしまう声を抑えようとしながら、結局抑えきれずに出てしまう真白の顔をしっかりと見ていた。隣では顔を赤くするナナが居り、恐らくすごろくのフィールドでもリト等は顔を赤くしている事だろう。

 

「な、なな、何だよこれ!?」

 

「シア姉様はエンジェイドの弱点とは別に耳が非常に弱いのよ。所謂性感帯の1つね」

 

「し、知らなかった……。何でモモは知ってるんだよ?」

 

「子供の頃。シア姉様に遊んで貰った時、ふざけてシア姉様の耳を舐めた事があったわ。その後、シア姉様は身体に力が入らなかったみたいでしばらく立てなくなってしまったけれど。あの姿は今思いだしても……ふふふ」

 

 モモが思いだして笑い始める姿に若干の恐怖を感じ乍らも、ナナは画面の中で美柑に耳かきをされる度に堪えようとする真白の姿から目を外さなかった。すごろくのフィールドでは普段見せる事の無い真白の姿に春菜が驚き、唯は同じ様に驚きながらもその光景に恥ずかしさの様なものを感じていた。ララは珍しい光景を前に今度自分が真白に耳かきをする決意をし、猿山が悶える女子の姿と言う事で興奮し始める。そんな中、リトは画面を直視出来ずにいた。普段は無表情な真白を知っているからこそ、各々の反応はどれも大きいものであった。

 

『1:00』

 

「んっ……ぅん、ぁ……!」

 

(どうしよう……手が止められない。いや、止めなくて良いんだけど)

 

 膝の上で反応を示す真白を前に、美柑の中で徐々にイケナイ感情が湧き上がり始める。必死にその感情を抑えて残りの1分を終わらせようと無心になる美柑だが、真白以外誰も居ないこの場所で聞こえて来る声は真白の抑えられた喘ぎ声のみ。湧き上がる感情に溺れそうになるも、今確実にこの光景を見ているであろうナナやモモを思いだして美柑は抵抗し続ける。……やがて、1分と言う美柑にとって途轍もなく長い時間が終わった時。真白は美柑の膝から起き上がった。

 

「お、終わった……」

 

 正に燃え尽きたとばかりに立ち上がる事の出来ない美柑を前に、今度は真白が綿棒を手に美柑の隣へ腰掛ける。そして美柑の頭を包む様に抱えた真白はそのまま美柑を自分の膝上へと誘導した。気付いた時には真白の膝の上に頭を乗せていた美柑。何かを言うよりも早く真白は耳へ綿棒を近づけ始め、新たな『5:00』が出現した。

 

「……始める」

 

「ちょ、心の準備が……ふぁ!」

 

 先程までの事もあり、真白の膝の上と言うだけで緊張してしまう美柑。しかし彼女の言葉も空しく真白は無情にも美柑の耳掃除を始めてしまった。耳の中で触れる綿棒のくすぐったさとは別に、身体へ走り始める痺れの様な物を不意打ち気味に感じた美柑は思わず声を上げてしまう。

 

(や、やばっ。これ、気持ち良すぎ!)

 

「……」

 

「く、ぅう! ぁ、あ……!」

 

 何処か手慣れた様に掃除を続ける真白の手は留まるどころか更に激しくなり、美柑は必死に声を押し殺そうとして上手く行かずに顔を真っ赤にするしかなかった。

 

「あぁ、あんな大胆に……」

 

「こ、これ耳かき……だよな? そうだよな?」

 

 モモは頬に手を当てて妖艶さを醸し出しながら話す中、顔を真っ赤にしながらナナは自分が見ているものを1人確認し続ける。同じ頃、すごろくのフィールドでは唯が更に顔を真っ赤にしながら画面を指差した。

 

「あ、あああんな声出して! 破廉恥よ!」

 

「美柑、気持ち良さそう~。真白にしてあげたら、今度は私もして貰おう!」

 

 唯の言葉に春菜は苦笑いを浮かべる事しか出来ず、ララが更なる決意をする横でリトが自分の居ない所でやる様に注意する。鼻の下が伸びきった猿山は画面を見続けており、唯がそれに気付くと見ない様に言う。が、それでも視線を逸らさない猿山の頭上に盥が飛来した。頭上にヒヨコを回して倒れる彼を前に、全員が真白たちの映る画面とは別のナナとモモが映る画面へ視線を移動させる。

 

『厭らしい顔で見てんじゃねぇ! エロ猿!』

 

『時間も残り3分を切りましたし、美柑さんの番まで進めておきましょう。それでは4周目、スタートです!』

 

 ナナによる猿山への罵倒とモモによる指示の元、リト達は再びすごろくを再開する事となった。5分間の間、美柑の声をバックに進めるゲームは4周目の春菜の順番になってようやく停止。2人はすごろくのフィールドへと戻って来る……が、美柑の顔は正に茹蛸状態であった。

 

「大丈夫? 美柑ちゃん」

 

「……」

 

 心配そうに話し掛ける春菜だが、美柑が反応を示す事は無かった。不安になりながらも自分の番だった為、春菜はサイコロを振る。今現在もトップであったリトとの差は4。転がったサイコロが出した目は……4であった。

 

『本日2度目のスペシャルイベント発生だ!』

 

「嘘だろ!?」

 

『スペシャルイベント! 愛の逃避行』

 

 春菜と一緒にスペシャルイベントと聞き、リトは緊張と同時に先程の真白と美柑を見ていた為に似た様な事をさせられるのかと顔を真っ赤にする。春菜も同じ様な事を考えたのか顔を真っ赤にする中、2人の姿はその場から消えてしまった。が、今回消えたのはリトと春菜だけでは無くその場に居た全員であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 春菜が気付いた時、そこは巨大な教会の様な場所であった。着ていたのは結構式で着るウエディングドレスであり、イベントの内容を察してリトと結婚と思った春菜は顔を赤くする。っと、背後に誰かが現れた事で春菜は「結城君!?」と驚きながら微かな期待と共に振り返り……正装した猿山の姿に驚愕する事となる。

 

「春菜! 凄い綺麗だよ!」

 

「ん……」

 

「美柑ちゃん、貴女本当に大丈夫?」

 

「……」

 

 広い教会の席1列に気付けば座っていたリト以外のメンバー。服装は本来着ていた振袖に戻っており、春菜の姿に褒めるララと言葉にはせずに頷いて同じ様に褒める真白。そんな2人の隣で未だに顔を真っ赤にしたまま俯いた状態の美柑を見て、唯が心配そうに声を掛けていた。何処を探してもリトの姿は無く、春菜は戸惑う。が、そんな彼女に猿山は声を掛けるとその両肩に手を置いた。

 

「さ、西連寺! ゲームって事で許してくれな!」

 

「え、何を……嘘!?」

 

 結婚式と言う事もあり、猿山はそう言ってキスを始めようとした。春菜はその事に驚いて逃げようとし始めるが、そんな2人と見ているメンバーが居る教会の扉が突然開かれる。扉の向こうに立って居たのはすごろくゲームを始める際に着ていた私服姿のリトであり、猛スピードで春菜に近づいた彼はお姫様抱っこで春菜を掻っ攫ってその場所から離れて行った。その形相は必死であり、猿山から春菜を攫ってそのまま離れて行くリトにララが「頑張れリト!」と声を掛けた。

 

「いや、どう言う事なのよこれ?」

 

「……ドラマ?」

 

「お、俺の純情なハートは弄ばれたのかぁぁぁ! くっ……いや。俺には、俺にはリコちゃんという心に決めた子が居る! 今行くよリコちゃぁん!」

 

 状況が理解出来ずに思わず呟いた言葉に真白が首を傾げながら続けると、新婦が居なくなった事で猿山は膝を突いて悔しがってしまう。が、すぐに立ち直った彼はリコという名前を叫びながら同じ様に1人でその場所から姿を消してしまった。誰にでも鼻の下を伸ばす助平な性格を知っていた為に唯が猿山へ白い目を向ける中、リコと言う名前に真白が首を傾げた。その名前はリトが女性に成ってしまった際、名乗っていた名前だったのだ。つまり猿山はリトの女性版であるリトに恋を抱いている事となる。

 

 新郎新婦両方が居なくなってしまった教会の中にいたメンバーは突然視界が切り替わると共にすごろくのフィールドへ戻される。その後、画面の向こうで走り続けるリトの元へ刺客として送られるお静。だが忍者の恰好で忍術を使おうとした彼女は風を操ろうとして操れずに自らの下着を晒してしまい、恥ずかしがる隙にリトは逃げ切る事に成功する。身を隠してどうすれば終わるのかを考える真剣な表情を前に春菜がドキドキし始める中、突然飛来したマフィアの様な姿のセリーヌに2人は反応することが出来なかった。セリーヌは春菜の胸へ飛びついて子供故か吸い付き始め、リトはその光景を前に大慌てで外しに掛かる。

 

『スペシャルイベントも終了。次はシア姉様の番ですよ!』

 

 無事に戻って来たリトと春菜だが、美柑同様に顔を真っ赤にして俯いてしまった春菜にリトは掛ける言葉を見つけられなかった。

 

 ゲームは続いて行き、7周目を迎えた段階でリトが残り2マス。春菜が3マス。ララが5マスで猿山が6マスと、終わりが見え始める。唯や美柑、真白等はまだ9マスや10マス以上存在しており、この周でゴールする事は不可能に近かった。

 

「今度はどんな格好にさせられるのよ……えい!」

 

 恥ずかしい恰好ばかりさせられていた唯は次の恰好に怯えながらもサイコロを転がす。当然何の目が出てもゴールには辿りつけず、唯に出た指令は再び服装関係のものであった。

 

『お休み前にお着替えを。こんな格好は如何?』

 

「今度は何? ……! こ、これ、何で透けてるのよ!?」

 

 唯が着せられたのは生地の薄いネグリジェと呼ばれるものであった。生地が薄いせいで中が透けて見えてしまい、幸いにも最初から付けていた下着が残されている為に完全な裸では無い。が、唯単に下着姿になるのとは別の恥ずかしさに唯は必死で自らの身体を隠そうとする。正月から眼福なものばかりを見ていた猿山は自分の番になり、伸びた鼻の下を戻して唯1人だけ終わらない事を願いながらサイコロを転がす。出た目は6であった。

 

「え? 終わり?」

 

『おめでとうございます! 大逆転で猿山さんの優勝です!』

 

「優勝……って事は賞品があるって事か! よっしゃぁ!」

 

 最初は終わってしまった事実に驚いた猿山だが、聞こえて来るモモの言葉で喜びを露わにし始める。駆け出し、全員が目指していた『GOAL』と書かれている場所まで直行。大きく両手を上げて喜ぶ猿山の横に突然拍手をし乍らモモが出現した。

 

「や、やっと解放されるのね……」

 

 猿山がゴールした事でゲームは終了。その事実に唯が安心した様に溜息を吐き、春菜は未だにリトの姿を見れずに思いだしては顔を真っ赤にし続けていた。真白と美柑は特に気にした様子も無く、リトは既に刺激の強すぎる様々な指令を前に放心状態に近かった。唯一元気なララだけが猿山の優勝に拍手を送り、猿山は賞品が何かをモモに質問する。モモは笑みを浮かべてとある方向へ視線を誘導、そこに立って居たのはチャイナドレス姿のナナであった。

 

「まさか賞品はナナちゃんとのデートとか? いやぁ、嬉しいけど趣味的にペタンコはちょっと」

 

「ペタンコで悪かったな! それに勘違いすんな。賞品はこっちだ」

 

 猿山の言葉に怒りを一瞬露わにした後、落ち着いてナナはデダイアルを取り出す。そして僅かな操作の後、猿山の目の前に現れたのは超巨大な亀であった。

 

「宇宙でも激レアのクリムゾンタートルだ! 亀は縁起が良いんだろ?」

 

 賞品を前に固まる事しか出来ない猿山。その後、巨大な亀に遊ばれる彼の姿を見て参加していたメンバーの殆どが優勝しなかった事を心から助かったと思うのだった。




ストック終了。また【5話】or【10話】完成をお待ちください。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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