【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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【10話】完成。本日より10日間、投稿致します。


第56話 天条院家のプライベートビーチにて

 夏と言えば海と答える人も少なくは無い。現在、真白は目の前に広がる海を静かに眺めていた。すぐ傍では海の光景に嬉しそうに両手を上げて喜ぶララや優しい目でそれを見守る春菜の姿もあり、少し離れた場所でリトがそんな彼女達の水着姿に顔を赤くしていた。リトの友人である猿山も来ており、真白が居る事からヤミは勿論の事。美柑やナナとモモ、里紗と未央に唯とお静。レンの姿もそこにはあった。そしてそんなメンバーをこの海へと招待した張本人である天条院 沙姫が傍に九条 凛と藤崎 綾の2人を連れて全員の前へと出る。

 

「ようこそ皆さん! 我が天条院家のプライベートビーチへ! この広がる青い空に! 流れる白い雲に! そして(わたくし)天条院 沙姫に感謝し、存分に楽しんで」

 

「真白~! 海に入ろー!」

 

「って人の話を聞きなさい!」

 

 堂々と出て語り始めた沙姫だったが、招待された一同はララを初めとして殆どがその話を聞いていなかった。リトは赤面。猿山は女子達の水着姿に鼻の下を伸ばし、レンがそれを咎める。里紗と未央はお静を連れて既に海へ入り、唯は不安そうに浮輪へ身体を入れながらも砂浜で海を見つめていた。ナナとモモも自由に入り始める中、入らずに目の前の光景を見つめていた真白は隣に立つヤミと美柑にララの言葉を聞いてから視線を向ける。既に海の中に入っているララは春菜と共に真白を待っており、その光景に美柑は少し微笑んで「入ろっか?」と真白に告げる。真白が頷けば、ヤミも頷き、そして3人は海の中へ……入る前に真白へ声が掛けられる。

 

「待ちなさい。海へ入る前にするべきことがあるでしょう?」

 

 突然掛けられた声に振り返れば、そこには招待された者の中で一番最年長である御門が砂浜に敷かれたシートの上に座り、掛けられたパラソルの下で小さな瓶を片手に待っていた。何の事か分からず首を傾げるが、御門は「とにかく来なさい」とだけ言って真白を誘う。少し黙り続けた後、真白は美柑たちに先に入る様に促して御門の傍へと近づいた。

 

「陽が差す空の下で肌を晒すなら、オイルを塗っておくのは常識よ。日焼けすると後で痛いし、何より白い肌は大切にしなさい」

 

 既に海も2回目であるが、今まで気にした事の無かった真白は御門の言葉に余り分からなそうに首を傾げる。その姿に御門は溜息をついた後、横になる様に真白へ告げた。悪意など一切無い事は間違い無く、真白は何かを疑う事も無く御門の言う通りにシートの上へ横になった。御門は少し慣れた手つきで真白の胸を隠す水着の後ろを外し、瓶から液を手へと落としながらそれを背中へと塗り広げ始める。

 

「っ……ん……」

 

「少しひんやりするけれど、我慢しなさい」

 

「ん…………っぁ」

 

 背中へと広がる粘り気のある液と、それを広げる御門の手に真白は微かに反応を示す。まだ背中で一番敏感な場所には触れていないが、何れ来る事も考えて真白は少しだけ強く目を瞑って耐え始めた。御門はそんな姿に微笑みを浮かべながら、手は止めずに楽しそうに遊ぶ生徒達の姿を見る。結城家程では無いが、それでも真白と短く無い時間を過ごしていた御門。だからこそ1年前にララが来て以降から今までの出来事などを思い返した後、燥ぐ生徒達の姿に……そんな者達と親しくなっている真白の姿に感じるものがあった。

 

「前にも言ったけれど、貴女の周りも賑やかになったわね」

 

「……そう」

 

「大事にしなさい。貴女が作った繋がりを」

 

「……」

 

 御門の言葉に真白が何かを答える事は無く、静かにその手を受け入れていた。余り言葉を口にしない真白が今何を考えているのか、御門は気になりながらも無反応であるその姿に小さな悪戯心が湧き上がる。背中の一部が敏感である事を知っている御門は、その姿を見て見たいと思うが故に手を伸ばした。

 

「っ! ひ、ぁ!」

 

「あら、御免なさいね。少し刺激が強かったかしら?」

 

「……平、気……んんっ!」

 

 普段反応が少ない真白だからこそ、中々見る事の出来ないその反応に御門は笑みを浮かべながらも謝罪。その手を止める事は無かった。うつ伏せで横になっている真白に御門の表情は見えず、更に刺激しようとした御門は突然真白の身体を包んで持ちあげたまま連れて行く金色の髪に悩む事も無く溜息を吐きながら視線を動かした。少し目を細め、真白を保護しながら御門を警戒するヤミの姿がそこにはあった。

 

「少し、過保護過ぎるんじゃ無いかしら?」

 

「いくらドクター御門と言えど、真白に手を出すのなら許しません」

 

「はぁ……」

 

 真白は現在、胸に水着を付けていなかった。だがご丁寧にヤミは真白の上半身を包みながら御門から回収した為、それが晒される事は無い。しかし御門はヤミのその姿に同じく目を細めて何かを思案しながら話しかけ、帰って来た返答に分かり易く溜息をついた。残された真白の水着を手に取り、ヤミに見せる様に差し出せば細い髪がそれを回収。身体を包んだ髪が小さな空間を作り、髪によって差し出された水着を真白は受け取ると付け始める。

 

「前から1つ、聞きたかった事があるわ。貴女、真白の事をどう思っているのかしら?」

 

「? 質問の意味が分かりません。真白は家族です」

 

「そう。ならもし真白が今の様な姿を見せた時、貴女は何も感じないのかしら?」

 

「! どう言う意味……ですか?」

 

 水着を付けていて話を一切聞いていない真白の横で、御門と話をするヤミ。首を傾げながらもされた質問に返せば、再び掛けられた質問にヤミが一瞬動揺した様に御門には映った。そして帰って来た質問に御門が答える事は無く、何かを思案しながらも「もういいわ」とだけ告げて手についたオイルを拭き始める。ヤミは御門の行動に納得が出来ずに声を掛けようとするが、口を開くよりも先に遠くから掛けられる美柑の声に振り返る。笑顔で手を振りながら海に入る様に誘っており、既に水着を付け終わった真白はヤミの姿に首を傾げながらも隠さなくて平気である事を伝えると海へ向かう様にヤミへ告げる。美柑の誘いと真白の言葉に断る事も出来ず、ヤミは御門への質問を続ける事が出来なかった。

 

「自覚無し……ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 各々に海を楽しみ続けた一同は一時、休憩する事となった。美柑に誘われ、ララと春菜と共に海の中を存分に泳ぎ遊び続けた真白は沙姫の家が保有するプライベートビートと言う事もあって普通の海には存在しない貸し切りの休憩スペースで昼食などを食べる。先程まで遊び続けていたが、里紗と未央はまだ遊び足りない様子。先程までお静と共に遊んでいたが、何かを思いついた様に立ち上がると全員に提案する。

 

「皆でビーチバレーやろうよ!」

 

 全員で楽しめる遊びの提案に反対する者は居らず、沙姫も乗り気だった事から直ちにネット等がプライベートビーチの一角に用意される。ボールも準備され、残すはチームを作るだけ。里紗と未央は2人で組むつもりだった様で、その2人を元に2人1組を作る事となった。ヤミは美柑に誘われ、ララは横で誘うレンが見えていないかの様に真白へ一緒に組もうと誘いを掛ける。ナナとモモは2人で組むつもりの様で、お静は御門と。唯と春菜はララと真白の会話を聞いて組むだろうと判断し、元クラス委員と現クラス委員のコンビが出来上がる。真白はララの誘いに乗る事にし、やがて残った男子組が3人の内でペアを組む事に。そこで猿山が思いついた様に口を開いた。

 

「俺は審判やるわ!」

 

 それは一瞬でも女子とコンビを組めると思っていたが、結果的に野郎と組むことになった事でならばいっその事誰とも組まずに違う事をしようと決意した男の提案であった。確かに審判は必要不可欠であり、猿山の提案は了承される。結果、リトとレンが組むこととなった。対戦相手はくじ引きで決定される事となり、凛とペアを組んだ沙姫が全員の前に1歩出て話し始める。

 

「それではこれより天条院家主催、ビーチバレー対決を始めますわ! 優勝者には賞品も用意して差し上げます!」

 

 天条院家が用意する賞品。それだけで期待は高まり、里紗と未央を初め各ペアの士気が上がる。笑顔で「頑張ろうね!」と心から今の状況を楽しむララの言葉に、真白は静かに頷くのだった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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