【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第54話 双子姉妹の家出騒動

 夕飯を済ませ、結城家から帰宅する真白とヤミ。お互いに余り会話をする事無く、だが距離があるのか分からない程に近づいて並ぶその姿を真夜中故に見る者は居なかった。普段通りであれば何事も無く真白の住む家へ辿り着くのだが、この日。その帰路の途中に普段は見掛けない人物が待ち伏せしていた事で真白たちの足は止まる。尻尾を生やし、御揃いの肩を出す変わった格好をした2人組。真白とヤミの姿に気付くと同時に大きく笑顔で手を振る者と、優雅にお辞儀をするその2人の姿に真白とヤミは表情に余り出すこと無く、しかし驚いていた。

 

「……ナナ……モモ」

 

 それはララの妹であり、双子のデビルーク星人。ナナ・アスタ・デビルークとモモ・ベリア・デビルークであった。再開したのは数日前のゲームに似た世界。ヤミはその時の事を覚えていた為に余り良い感情を抱いておらず、少しだけ警戒心を抱きながら一歩前に出る。何も言う事無く、だが真白と2人の間に入る事で何時でも行動出来る様に。モモはヤミの考えを理解した上で笑みを浮かべながら、ナナは明らかに感じる敵意に少しだけ不機嫌そうな顔をした。

 

「……何で……ここに?」

 

「あ~、いや、その……」

 

「しばらくこの地球に滞在するつもりなんです。なのでまずはそのご挨拶を」

 

 3人の間で危険な空気が流れ始める中、静かに質問した真白の言葉に不機嫌そうに見えたナナの表情は一瞬にして困り顔へと変化した。何処か答え難そうに喋るその姿にモモが助け船を出す様に説明を始める。だがその内容に真白は微かに目を細めた後、2人を何も言わずにジッと見つめ始めた。額に汗を掻いて真白の視線を受けるナナと、少しだけ緊張した様子で生唾を飲み混むモモ。やがて数秒した後、真白は目を瞑って小さな溜息を吐く。

 

「……ララと……同じ」

 

「なっ!?」

 

「……流石シア姉様です。すぐに気付かれてしまうとは」

 

「確か、プリンセスはお見合いが嫌になって家出をした。そう聞いています」

 

「私達の場合はお見合いじゃないんだけどな。似た様なもんで、地球に逃げて来たって訳だ」

 

「先程お姉様達には会ったのですが、既に帰ってしまったと聞きまして。それにザスティンさんにも見つかってしまって」

 

 真白の言葉にナナは驚き、モモは感嘆の溜息を吐いて真白へ答える。ララと同じという言葉を聞いてすぐ、ヤミは何が同じなのかを理解した様に告げれば頭の後ろに両手を組みながらナナが開き直った様に答え始める。そう、ララが家出をした様に2人も何らかの理由で家出をして来たのだ。そしてモモが続けた時、2人の背後から微かに聞こえる金属の音に全員がその方角へ視線を向けた。鎧が走る事で鳴らす音であり、走りながら近づいて来たその姿にナナ達は露骨に嫌そうな表情を浮かべた。

 

「見つけましたぞ! お二人とも!」

 

「ちっ! しつこい奴!」

 

 息を切らすことも無く、2人を強い視線で見つめて告げるザスティン。その姿にナナは悪態を付き、モモも警戒する様に構え始める。ザスティンの傍には2人の黒いスーツにサングラスを掛けている、以前ララを追い掛けて現れたブワッツとマウルの2人も控えていた。ララが宇宙人であり銀河最強の娘である故に驚異の身体能力を持つ様に、ナナとモモも間違い無くその血を濃く引き継いでいるだろう。下手に戦えば周辺は危なく、睨み合うその光景を真白たちも放って置く訳には行かなかった。

 

「迎えの船も用意してあります。さぁ、デビルーク星にお戻りください!」

 

「嫌だね! 私はここに残るからな!」

 

「私もです。お父様にはザスティンさんからよろしくお伝えください」

 

「……王のご命令です。致し方ありません。少々手荒にはなりますが、ご覚悟を!」

 

 ザスティンの言葉に反発するナナと、それに賛同するモモ。だがザスティンにとって2人の意思よりも王の命令を守る事の方が大きく、少し残念そうな顔をした後にゆっくりと剣を構え始める。背後に控えていたブワッツとマウルも同じ様に拳を構え、対するナナとモモは何かを取り出して見せる。それは真白たちも見た事のある、小さな携帯の様な機械であった。

 

「ザスティン、今こう思ってるだろ? 私達の能力じゃ何も出来ないって?」

 

「そ、それは!?」

 

「『デダイアル』。情報入力した物を呼び出せる、お姉様の発明品です。ふふ、私達のお友達を紹介します」

 

 勝ち誇った笑みを見せるナナの姿とその手に持つ機械に青い表情を浮かべたザスティン。微笑みながら説明し、それを操作し始めたモモの姿にザスティン達が焦り始める。そしてそれを見ていた真白とヤミはお互いに目を合わせた後、何も言わずに頷いて距離を取った。奪う事が出来れば防ぐ事は出来たが、既に操作を初めてしまった段階で止める事は不可能だったのだ。

 

「おいで! シシナベ星で知り合った、ギガ・イノシシのギ―ちゃん!」

 

「来てください。オキワナ星のシバリ杉さん!」

 

 言葉と共にナナのデダイアルからは巨大なイノシシが、モモのデダイアルからは以前遭難したオキワナ星でリトと春菜の2人が襲われた巨大な木の化物が現れる。町中の何気ない道の途中にそんな生き物が現れた時点で危険なのは火を見るよりも明らかな事である。ザスティン達がイノシシに飛ばされ、木の枝に薙ぎ払われる光景を前に、止めさせる為に真白は駆け出す。っと、木の化物は標的として真白を捉えた。

 

「っ! 違います! その人は!」

 

「!」

 

 薙ぎ払われる枝は猛スピードで真白に迫り、叩きつけられそうになる。だが真白は避けようとせず、モモがその光景に目を瞑った時、聞こえて来た木の化物による断末魔に驚いた。見れば真白に迫っていた枝は切り刻まれ、その間に降り立つヤミの姿。一瞬の出来事に驚く中、モモは近づいて来る真白の姿に小さく口を開けて何も話す事が出来なかった。

 

「ギーちゃん! 止まれ!」

 

 ナナの声に真白が見たのはモモへと突撃する巨大なイノシシの姿。自分が起こした今の状況と、真白が襲われた事実に放心状態になったモモはそれに気付く事が出来なかった。気付いた時には逃げられない距離であり、しかしその間に舞い降りた白い羽が小さな羽根を撒き散らしながらモモの前に降り立つと同時に一回転。全体重を掛けて突進していたイノシシは真白に接触する……と同時に放たれた蹴りがその身体を大きく後方へと吹き飛ばした。地面に叩きつけられて目を回すイノシシと、その下敷きにされるザスティン達。ヤミは真白の横に静かに降り立ち、モモは我に返ると同時に動く事も出来ずにボロボロにされたシバリ杉を見た。

 

「……戻して」

 

「シア姉様……これは……」

 

「…………戻して」

 

 幸いにもザスティンたち以外の一般人が巻き込まれる事は無かったが、その危険を作ったのは変えようの無い事実。それに気付いて少し震える様に弁解しようとするも、もう1度告げられた同じ言葉に背筋に寒さを感じ乍らもモモはデダイアルを操作する。同じ様にナナもモモとの会話を聞いていた為、急いでデダイアルを操作。ギガ・イノシシとシバリ杉はその場から姿を消すと、残ったのは地面に少し出来たイノシシが作ったクレーターとシバリ杉が枝で壊した壁。気絶するザスティンたちとなった。

 

 普段から無表情である真白の声は抑揚の無いもの。故にその中に籠る感情も分かり難く、聞いてすぐに理解出来るのは結城家の人間とヤミぐらいだろう。故に無表情のまま見つめる目と静かに話す言葉がナナとモモに微かな恐怖を与えた。

 

「……駄目」

 

「ご、御免。流石に……その、やり過ぎた」

 

「ここは地球。デビルーク星とは違うと、理解して置くべきでした」

 

 深く謝る2人を前に、真白は静かに頷いた後に気絶しているザスティンたちを連れてその場を離れる。その後ナナとモモは地球に滞在することから交流出来る様になる為、その項を真白たちに伝えて居なくなる。目を覚ましたザスティンは王の命令を守れなかった事に落胆し、こうしてナナとモモは地球に居続ける様になるのであった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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