【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第43話 子供の多い結城家の1日

 その日、学校から結城家へと帰って来た真白達。しかしその姿は何時もと何処か違っていた。普段なら存在している確かな胸の膨らみが無くなっているララと真白。ヤミも元から余り無かった膨らみが無くなり、それぞれ身長は小学生低学年ぐらいの身長になっていた。そしてそれに伴い、胸以外にも様々な部分が明らかに幼くなっている。

 

「ただいま! 美柑!」

 

「あ、お帰……り!? ど、どうしたのその姿!?」

 

 リビングへと入った時、ソファで寛いでいた美柑が帰って来た全員に視線を向けて返事を返す。だが振り返りながら発していた言葉はその姿を見て跳ねあがり、立ち上がって幼くなってしまっている3人の前に立つとその姿を見回す。明らかに見知った顔の面影があるが、自分よりも幼い姿には驚かずにはいられなかったのだ。美柑の反応は当然の物であり、そんな3人の後ろから予想通りの反応を見せる美柑の姿に苦笑いを浮かべてリトが現れる。

 

「いや、さ。学校で色々あって、皆子供になっちまってさ」

 

「子供にって……何それ?」

 

 リトの言葉に美柑は訝し気に質問すると、リトは言い難そうにしながらも説明を始める。

 

 そもそもの原因。それはララに対抗心を燃やしているルンが宇宙からとある生物を学校に連れて来た事にあった。モドリスカンクと呼ばれたその生物はお尻から若返る効果のあるガスを発生させ、ルンはそれでララを子供にする計画を建てた。だがルンは誰よりも早くモドリスカンクのガスを浴びてしまい、幼児化。モドリスカンクは彩南高内に逃げ込んでしまい、手当たり次第に生徒達を幼児化させてしまったのだ。ララが捕まえようとしてガスを浴び、手を繋いでいた真白も被害を受けた。ヤミも学校内で被害を受け、結果的にこうして幼児化してしまったのである。……因みにモドリスカンクはララの活躍によって何とか捕獲され、現状もう被害が拡大することは無い。

 

「学校の奴らは効果が切れて午後には皆元に戻ったんだけどさ……」

 

「私達は宇宙人だから、治る速度が違うみたい!」

 

「恐らく1日はこのままだと思います」

 

 リトの言う通り、学校で被害を受けた者達は帰宅する際には元に戻っていた為に何事も無く下校することが出来た。しかし真白たちは一向に治らず、御門に診て貰った結果、地球人と宇宙人では効果に違いがある事が判明。少なくとも今日1日は幼児化したままである可能性が高い事が分かった。

 

「真白! 何かして一緒に遊ぼうよ!」

 

「……夕飯……作る」

 

「今の身長では不便なのでは?」

 

 幼い姿のまま、それでも何時も通り。何時も以上に元気の良いララが真白を誘うが、首を横に振って真白はキッチンへと向かい始める。そんな姿を目で追いながら質問するヤミ。キッチンにたどり着いた時、真白の頭が流し台から少し上に出る辺りだった為に手が到底届くようには見えなかった。何とも可哀想で、可愛らしい光景に美柑が苦笑いを浮かべながらも真白の傍へ。自分よりも小さなその姿を抱き上げると、ソファへ向かい始める。

 

「……美柑?」

 

「今日は私がやるから、真白さんはお休み。ね?」

 

 軽々と運ばれる事に、真白は首を傾げながらも運ぶ美柑へ視線を向ける。すると美柑はソファに真白を座らせて視線を合わせて微笑みながら告げた。今のままでは家事など出来ないと悟ったのか、真白は頷くとソファに寄りかかる。っと、休むことになったのだと分かったララが真白の座っているソファへ飛び乗った。自然とヤミも近づき、大きなソファに幼女が3人集まって何かを始める。普段と違う光景にリトは何とも言えない表情を浮かべた後、キッチンに立つ美柑の姿を見ると何かを決めた様に頷く。そして自分の部屋へ向かい……少ししてから私服姿になって降りて来ると、美柑の元へ。

 

「手伝うよ」

 

「じゃ、卵割っといて」

 

 普段は真白と行っている作業の為、負担も真白が居なければ2倍。子供が3人居るという現状でまだ残りの1日がこれからも大変になる事は明白であり、リトは少しでも負担を減らそうと思ったのだろう。美柑はリトの言葉に少し驚きながらも料理の指示を出し、2人はキッチンに並んで夕食の準備を始める。ダイニングな為に3人の遊んでいる光景が見え、顔を上げればララが小さな身体で真白の身体に抱き着いている姿が見えた。ヤミも真白の隣でララが抱き着いた衝撃で触れ合う真白の感覚を受け乍ら、学校の図書室で借りたであろう本を読んでおり、真白は何もせずにララにされるがままである。

 

「今日は真白さん達、泊まるでしょ?」

 

「だと思うぜ? まぁ、あの状態だからな。今日は流石に帰せないって」

 

「だね。……真白さん達、何時になったら家に住む様になるのかな?」

 

「何か切欠が無いと、難しいかもな」

 

 何ともバラバラな3人の姿を見ていたリトは美柑からされた質問に答える。普段も夜遅い時間に帰宅する等余り良い事では無いが、今は子供の状態。故に今日この日は無理矢理にでも泊まらせるつもりでいたリト。美柑も同じ意思の様で、少し間を開けた後に呟く様に言った言葉にリトは割った卵をかき混ぜながら同じく呟く様にして答える。

 

 その後、2人によって夕食の準備は終わる。子供になってしまっていても中身はそのままな為、手間も掛からず普段通りに食事を始めた真白達。食事中に泊まる話も行い、真白は自分の状態を理解していた為にリト達の提案を受け入れた。当然真白が泊まればヤミも泊まり、寝るところの話になった時。ララが笑顔で手を上げる。

 

「今日は皆で寝ようよ!」

 

「皆でって、皆でか!?」

 

「うん! 美柑の部屋が良いかな? そこに布団を並べて、皆で寝るの! 今の私達なら小さいから狭く無いよ!」

 

 ララの提案に狼狽えながらも聞き返したリト。身体が小さくなっているとは言え、その中身は自分と同年代の相手だ。一緒に寝るとなると、抵抗があるのだろう。ララはリトの考えている事が分からない為に笑顔で「どう? どう?」と真白や美柑に同意を求め始める。

 

「私は良いよ」

 

「真白が居る場所で私は寝ます」

 

「……ん」

 

「じゃ、決まりだね! よーし! じゃあ、皆でお風呂入ろ―!」

 

 美柑はララの提案を受け入れ、ヤミは真白に自分の事も託す。そんなヤミの言葉を受けた後、目を輝かせて自分を見るララの瞳を見た真白。やがて頷いて了承すれば、見るからに嬉しそうな表情を浮かべてララはリビングを後にする。お風呂に入ると言っても、まずは溜める必要があるのだ。既に食べ終わっている様で、嬉しそうなララの姿を見送りながら真白も最後の一口を食べ終える。

 

「俺の意見はねぇのかよ!」

 

「無いんじゃない? 一応今はこの中で最年長なんだし」

 

「いや、でもさ」

 

「え、何? リトってロリコンだったの?」

 

「なっ! 違うって! そんなんじゃ無くてさ!」

 

「……平気」

 

「まっ、リトに手を出す度胸何て無いもんね?」

 

「あったらあったで、明日の陽の目を見る事は無いですが」

 

 聞かれなかった事に声を上げるリト。そんな姿を少々目を細めて見つめながら、美柑が告げる。そして揶揄われ乍らも、最後にヤミが言った一言で顔を青くするリト。その後、リトが片づけを行う間に美柑を含めた子供達4人がお風呂に入る事に。リビングにある廊下へ続く扉が少し開いている為、微かに聞こえるララや美柑の声を聞きながらもリトは少々寝る時の事に緊張した面持ちで洗い物を続ける。そして4人が出た後、自分もお風呂へ。やる事を全て済ませた後、寝る時間になった時、リトの部屋の扉がノックされる。リトが入室を許可すると、ゆっくりとその扉は開いた。

 

「……そろそろ……寝る」

 

「お、おう。分かった」

 

 入って来たのは何処にでもありそうな枕を抱えた真白であり、リトを呼びに来た様であった。リトは枕を抱える幼い真白と言う珍しく懐かしい姿に少し狼狽えながらも、来てしまった時間に覚悟を決めて美柑の部屋へ。来客用の布団も含めて敷かれていた3枚の布団。ララが右側の布団で縦に転がりながら。美柑がヤミと共に左側の布団で横になって本を読んでいた。しかしリトが来たことに気付くとララは転がりを、美柑とヤミは読書を止める。

 

「じゃ、寝よっか?」

 

 美柑の言葉で寝る準備に入った一同。どんな順番で寝るのかと言う話になった時、美柑はヤミと隣が良いと。ララは真白と隣が良いと希望する。リトは一番端が良いと思っていたが、言いだすよりも早くララと美柑が寝る場所を確保。流れに流された挙句、左から順にヤミ・美柑・リト・真白・ララと言う順番になってしまう。……リトは真ん中にされてしまったのである。

 

「いや、何でだよ」

 

「ほら、寝るよ? リト、電気消して。お休み~」

 

「お休みー!」

 

「お休みです」

 

「……お休み」

 

「はぁ~、お休み」

 

 気付けば真ん中と言う事実に納得出来なかったリト。しかし美柑は立っているリトに言うと、電気を消すことを指示して告げる。美柑の言葉にララが、ヤミが、真白が答えると、リトは溜息を付いて電気を消した後に答えて布団の中へ。ヤミと美柑が同じ布団に、真白とララが同じ布団に入り、リトは1人布団を使う。別々の様になってはいるが、隣を見ればそこには美柑か真白の姿があった。

 

「(緊張……はしたけど、子供の姿だから平気そうだな!)」

 

 いざ寝て見れば自分以外は皆幼い姿。リトはその事実に安心し、目を閉じる。だが彼は忘れていた。真白たちが幼い姿である時間には、期限があると言う事を……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鳥の声が聞こえる様になり、朝日が部屋へと差し込み始めた頃、リトは未だ残る微睡みの中で目を覚ます。そんな彼を包むのは柔らかい何か。それはとても心地よく、未だ寝ぼけているリトはそれに顔を擦りつけながら幸せを感じる。しかし、彼が顔を動かし続けた時、鼻先に何かが当たった。そして

 

「んっ! ……」

 

「……」

 

 微かに聞こえた声にリトの思考が微かに正常へと戻り始める。そして柔らかいその物体の正体を知る為に、顔の傍に手を持って来てそれを掴んだ。弾力のあるそれは非常に触り心地が良く、リトはそれの正体にまさかと思いながらも徐々に顔を離す。真っ暗だった視界は離れる事で明るくなり、目の前に映るのは肌色。掴んでいる物もよく見える様になり、リトは無意識にそれを何度か揉んでしまう。

 

「……ぁ」

 

「!」

 

 今度は大きく顔を遠ざけたリト。そうして見える様になった全貌は、パジャマを着ている普段の真白であった。しかし着ていたパジャマは美柑のだった為、元に戻った事で胸などを抑えられなくなったのだろう。ボタンが千切れており、下部分が落ちてしまっていた。故に片乳が完全に解放されてしまっており、不幸な事に上部分もララが引っ張った様で解放。結果、真白の胸は完全に露出してしまっていた。……先程までリトはその胸の間に顔を入れ、その突起に触れ、今現在も胸を片方掴んでいるのだ。もしもこの光景が誰かに見られてしまえば、誤解されるのは当然。リトが顔を真っ赤にしながらパニックになる中、背後から感じ始めた殺気に顔を徐々に青くし始める。

 

「結城 リト……やはり貴女は危険な様です」

 

「や、ヤミ? これは不可抗力って奴で……」

 

「問答無用、始末します!」

 

 向けられる殺気に振り返ったリト。そこに居たのは髪をゆっくりと上げ乍ら今の光景を、真白の胸を掴む自分の光景を見つめるヤミの姿であった。目と目が合い、ヤミの言葉に何とか言い訳をしようとするリト。しかし聞く耳は持たれず、その後結城家の庭でボロボロのリトが発見されるのはまた別の話である。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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