【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第3話 宇宙から来た少女

「お風呂湧いてるからリト、先に入っちゃってね」

 

「あぁ、分かった」

 

 真白がキッチンの中で使った食器を洗い、美柑はテーブルの上に並べられている空になった皿を集める。そんな何時もの光景の傍で座っていたリトは美柑の言葉に了承すると席を立ち、自分の部屋へと服などを取りにリビングを出て行った。美柑は集めたお皿をキッチンの真白が使って居る洗面台の中へ置き、真白が洗い終わった皿などを綺麗なタオルで拭いて元々あった位置へと戻し始めた。

 

「今日もこの後は帰るの?」

 

 美柑は皿を拭きながら真白に質問。真白は作業を行い乍ら頷き、美柑はその行動に「そっか」とだけ言って無言のまま続ける。階段から降りて来る音が聞こえて来た事でリトがこれからお風呂に入る事をすぐに理解出来た2人。だが特に気にも留めずに洗い物を続け、やがて全てが終わると真白は最後に自分の手を拭いてリビングの椅子に置かれていた鞄を手に取る。

 

「……また明日……」

 

「うん。また明日ね」

 

 真白の言葉に何処か憂いを帯びた様な表情で返す美柑。そのまま真白が玄関から出るのを見送ろうとリビングの扉を開けた時、突然2人の耳にリトの悲鳴が聞こえて来る。現在お風呂に入って居る彼に何かがあったのか、美柑は真白に。真白は美柑に目を合わせるとお互いに悲鳴の聞こえたお風呂場に急ぐ。そうして脱衣所に到着した時、腰にタオルを一枚巻いただけのリトが浴室からうつ伏せになりながら出て来ている光景が2人の目に映った。

 

「どうしたのリト!」

 

「と、突然風呂場に裸の女が!」

 

「……は?」

 

「……」

 

 まるでただ事では無い光景に焦る美柑だが、リトの言った言葉にその焦りは急速に冷めて行く。普通に考えて可笑しなことを言っているリト。美柑は一切信じる事無くリトの言葉の内容を確認するため浴室の中を覗きこんだ。真白も一緒になって覗くが、その中に人の姿は存在して居ない。美柑が何処にいるのかと聞けば「浴槽の中だよ!」と告げるリト。しかし浴槽の中にはお湯が溜まっているだけで特にリトの言う存在が居る様子は何処にも無かった。そうしていくら探しても見つからない事を告げればリトも恐る恐る覗きこみ、何も居ない光景に困惑した表情を浮かべる。

 

「あ、あれ。変だな……確かにさっき」

 

 頭を抱えて混乱するリトの姿をどこか白い目で見ていた美柑。リトはそんな美柑の瞳にたじろいでしまい、唯一残されて居る筈の真白は……気付けば2人の前から姿を消しているのであった。2人がそれに気付いたのはしばらくしてから。美柑は既にリトの事に呆れ、帰ってしまったのだろうと解釈してしまう。そしてリトもまた、自分が見た事に困惑しながら真白に呆れられてしまったと感じていた。だが現在真白はその考えとは全く逆の思いで行動を起こしている事を、2人は知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リトが美柑に呆れられているその頃、真白は脱衣所から廊下に出ると同時に聞こえて来る音に気付く。それは階段の上がっている音であり、今この家の中にはリトと美柑。そして自分だけである筈にも関わらず、聞こえて来るその足音は確実に誰かが【もう1人】居る事を物語っていた。故にその相手を確かめるため、真白は階段を上る。その際、少しだけ濡れている床に気付くと鞄からタオルを取り出して木が駄目にならない様に床を拭いながらその水を頼りに進み続ける。やがてたどり着いたのは……リトの部屋であった。

 

「……」

 

 真白はリトの部屋の前に立つと、その扉を開ける。最初に見えるのは当然内装。机や本棚などの学生にはよくある家具や、サッカーボールなどの男子が好きそうであるスポーツの道具。そして常に寝ているであろうベッドも存在しており、その上にあるのは布団や枕だけの筈であった。……だが今現在そのベッドの上には綺麗な桃色の髪を伸ばし、バスタオル一枚を身体に巻き付けている一人の少女。

 

「あれ、さっきの人じゃ無い? まぁ、良っか! タオル借りてるよ!」

 

「……」

 

 まるで当たり前の様にそこに居座り、真白の姿に首を傾げた後に軽く言い放つ少女。真白はそんな少女の背後に黒い紐の様な物が伸びている事に気付く。それは今の位置からでは把握出来ないが、少なくともリトの物では無いだろう。それはつまり少女の物。っと、少女が真白の顔を再び見始め、やがてベッドから立ち上がると殆ど隠せていないその豊満な裸体をバスタオルで本人なりに隠しながら真白の周りを何度か回り始める。その顔は何か気になっている様で、真白は少女の姿を唯見つめていた。

 

「う~ん、ねぇねぇ? 何処かで私と会った事無い? あ、私ララ!」

 

「!」

 

 少女……ララは真白の目の前で立ち止まると少し考えた後に質問をする。が、その後に自分の名前を名乗った時、真白は無表情を少し変化させ乍ら驚いた様に一歩後ろに下がる仕草を見せる。それは普段の彼女を見ている美柑やリトなら気付く事が出来たかもしれないが、ララでは特に違和感を感じなかった様子。何も言わない真白に「気のせいかな?」と呟いた後、笑顔で「まぁ、良っか!」と勝手に解決してしまう。そしてそのままララは再びベッドの上に戻り、真白はララの姿を見ていた。すると

 

「あれが妄想? ……だとしたら俺、不味いんじゃ……え?」

 

 徐々に近づく様に聞こえて来たリトの声はやがて部屋の前で止まり、それと同時に驚いた様な声を出して固まってしまう。それもその筈、今現在彼の目の前では帰ったと思っていた真白とお風呂場に突然現れた存在が自分の部屋に居る光景があるのだ。それも真白は大丈夫としても、ララの場合はバスタオル一枚。高校生男子の中では非常に純情である彼には余りにも刺激的すぎる光景である。

 

「な、なな、何だお前!?」

 

 既にララの姿に頭がオーバーヒート状態になっているリトは真白をともかくとし、訳の分からない存在であるララに顔を真っ赤にしながら質問する。が、ララはリトの質問に何の悪気も恥ずかしがる様子も無く自分の名前を先程の真白への仕方同様に答えた。が、その後に続いた言葉にリトも真白も衝撃を受ける。

 

「デビルーク星から来たの」

 

 ララの一言で思考が冷め始めたリトはララの姿を見ない様にしながらララに「宇宙人だって言うのか!?」と質問。普通に考えて宇宙人と言われて信じる事等出来はしない。が、ララはリトの質問に信じていない事を理解すると立ち上がる。そしてバスタオルでは隠れきれていないお尻をリトに向けた。っと、そこには人には確実に無い物。先程真白が見た黒い紐の様な物が人体にくっ付いている光景。それは正しく【尻尾】であり、それがララが人間では無い証明であった。……が、証明されると同時にリトは再び真っ赤になってしまう。

 

「……何で……ここに?」

 

「そ、そうだよ! 宇宙人なのは分かったけど、何でいきなり風呂場に現れるんだよ!」

 

 冷静になれそうにないリトに代わり、真白が質問をする。リトはそれに同意する様に捲し立てながら続け、ララはその質問に堂々と何かを取り出した。それは奇妙な装飾の付いたブレスレットであり、ララ曰く『ピョンピョンワープ君』と言う発明品であるらしい。生きて居る物を場所指定は出来ないがワープさせることが出来る物であると言う事。その内容の時点で確実に地球人では無いだろう。

 

 リトはララの答えに続けざまにどうしてそれを使ったのかを質問する。と、ララは自分が追われていると言う事を悲し気に呟いた。何か大きな理由があると感じたリトだが、ジッとララの姿を見る事が出来ず顔を反らしてしまう。……と、突然部屋の窓が小さく叩かれる音が聞こえ始める。そしてそこに居たのは小さな人形の様な生き物。

 

「ペケ! あ、あれ? これどうやって開けるの?」

 

「……」

 

 ララはその姿にすぐさま駆け寄り、窓を開けようとする。だが開け方が分からず傍に居た真白に質問。真白は無言で近づくと窓を開ける。その際リトが真白の行動に宇宙人を歓迎している様にも見えて「おい!」と止めようとするが、窓の開いたそこから人形はララ目がけて飛びつく。そしてララもその人形の存在に嬉しそうに抱きしめた事で、リトは真白の行動に抗議する気を失う事になった。宇宙人であれ、感動の再会の様に喜ぶ2人を裂く気にはなれなかったのだ。

 

「ララ様、あの冴えない顔の地球人と親切な地球人は?」

 

 人形の様な生き物がララとの再会を終えると、リトと真白を見て質問する。リトは『冴えない』と言われた事に少しショックを受ける中、ララは名前を知らない事に気付くと2人に名前を聞いた。そうして最初に聞こうとしたのは真白。が、真白は聞かれても口を開くことが無い。……と、リトがすぐに真白の前に立ってフォローをする。

 

「あ、あぁ~、えっとこいつは真白で俺はリト」

 

「真白とリトだね! この子はペケ、私が作った万能コスチュームロボットなの」

 

 リトによる2人の自己紹介を受けて今度は人形……ペケの自己紹介をするララ。最後、ペケが「初めまして」と付け加えて終えると同時にララは覆っていたバスタオルを突然脱ぎ捨てる。ララの言ったペケの紹介に疑問を持つリトだが、ララの行動に驚いてすぐに視線を外す。そしてその行動に怒ろうとするが、ララがペケに何かをお願いすると同時にその身体を突然光が纏い始める。そうして次にララを見た時、その姿はしっかりと服を纏っていた……コスプレの様な恥ずかしい服だが。

 

 何とかほぼ裸からコスプレの様な服装に変えたララの姿に真正面から見る事が出来る様になったリト。ペケとララが会話を始めようとしたその時、部屋のカーテンが大きく揺れる。そして一瞬の内、部屋の中に2人の黒ずくめにサングラスをかけたガタイの良い男性が2人。窓の傍に居たララはすぐに後ろへ下がり、男性に巻き込まれかけたリトは無理矢理真白に下がらされ、守られる様にして立つ形となる。2つの意味で驚き戸惑うリトだが、その間にも男性達はララに話し始める。そしてすぐにその2人がララの言う【追っ手】であると理解する事が出来るのであった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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