【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第32話 春菜に憑依したお静【前編】

 その日、学校へと普段通りに登校した真白は早めに登校していた唯と挨拶を交わしていた。何時もならばララ達が来るまで唯と会話をする等して時間を潰していた真白。だがこの日、そんな2人に。正確には真白に声を掛ける存在が居た。

 

「おはようございま~す! よしよし!」

 

「……?」

 

「さ、西連寺……さん?」

 

 それは春菜であった。が、その行動に真白は首を傾げ、唯は可笑しな物を見た様にその名前を呼ぶ。それもその筈。春菜は登校して来るや否や、荷物を持ったまま真白の存在に気付くと駆け寄って来たのだ。そして普段の春菜とは明らかに違う元気の良さで挨拶を行うと、さも当然の様に真白の頭を撫で始める。

 

 真白と春菜は挨拶や軽い会話をする事はあっても、そんなに深く仲が良い訳では無い。にも関わらず、春菜がこの様な行動を起こした事に理解が追い付かない唯。真白も明らかに可笑しい春菜の姿に目を細める中、そんな可笑しな春菜の背後に忍び寄る影があった。

 

「は~る~なっ!」

 

「きゃ! あ、あはは! くすぐったいですよ!」

 

 現れたのは里紗と未央であり、背後に立った里紗が突然声を出すと同時に春菜の胸を後ろから揉み始める。普段の春菜であればその事に驚きながらも顔を真っ赤にして恥ずかしがるが……何処か可笑しい春菜はそれに笑い始め、挙句傍に居た未央に仕返しとばかりに今度は同じ様にしてその胸を揉み始めた。普段の春菜では絶対にしない行為。故に里紗と未央が困惑する中、丁度良く登校して来たリトがその光景を見て顔を真っ赤にする。

 

「あ、貴女達! 朝から何て破廉恥な! 西連寺さんも委員長でしょ!」

 

「? あ、一緒にやります?」

 

「は? って、止めな、さい!」

 

「……」

 

 見兼ねた様に唯は立ち上がると注意するが、春菜は何を勘違いしたのか今度は唯に同じ行動を始める。自分が巻き込まれるとは予想していなかったのか、焦りながら引き剥がそうとする。それをジッと見ていた真白の視線に気付いた春菜は楽しそうに唯を解放すると、両手の指を動かして真白へと近づき始める。……何をしようとしているか、流れで誰もが察せる中、真白はそれから逃げる様に春菜から距離を取り始めるが、すぐにその手は掴まれる。

 

「えい!」

 

「! んっ……ぁ……」

 

 身長が低く、幼げな少女の胸を揉みしだくと言う官能的な光景に。そして普段は無表情の真白が小さく声を出しながら微かに恥じらう光景に里紗と未央は思わず感嘆の声を上げる中、目の前の光景に呆気に取られながらもやがて我に返った唯が真白を助けるために動こうとする。が、ここで春菜が何かに気付いた様に手を上に上げた。……その手には真っ白な女性用の下着。

 

「!?」

 

「可愛い! 何かしら、これ?」

 

「それは……ま、まさか、真白の……!!!」

 

 学校に下着を持ち物として持って来る様な者は居ないだろう。となれば当然それは誰かが付けていた物だとすぐに誰もが分かる。そして先程まで春菜は真白の胸を揉んでおり、外せるとすればその相手は真白のみ。それを理解した時、唯は顔を真っ赤にして春菜からそれを取り上げると、真白を連れて教室を飛び出して行く。突然奪われ、真白も連れていかれた事に春菜が呆気に取られる中、教室の中は静寂に包まれるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真白さ~ん!」

 

「!」

 

「下がってなさい、真白」

 

 午前の授業を終え、昼休みを迎えた真白達。すると自由時間になったと同時に春菜が真白の名前を呼び始め、それに跳ねる様に反応した真白に気付いた唯が真白を庇う形で前に出る。そして唯を挟んで会話をする様になった春菜は目の前に唯が居るにも関わらず、笑顔で真白に話し始めた。

 

「真白さん! 学校の中、教えてください!」

 

「学校の中って……西連寺さんが知らない筈無いでしょ?」

 

「え? あ……そう言えば忘れてました。実は私、幽霊のお静なんです!」

 

「……は?」

 

≪えぇぇぇ!!≫

 

「……お静……?」

 

 春菜のお願いに呆れた様に返した唯。そこで思いだした様に春菜は声を出すと、何気ない内容の様にその正体を明かす。気になっていたが為に聞いていたリトがその言葉に言葉を失い、それと同時に教室の中に数人の驚く声が響いた。そして真白は驚く様な姿を見せずに言われた事とその本来の姿を思いだして首を傾げ乍ら確認する様にその名を呼べば、「はい!」と元気よく春菜の姿をしたお静が返事をする。

 

 旧校舎でお静で出会っているのは宇宙人達を除いて全部で9人。その内御門とヤミはこの場に居らず、春菜は現在春菜ではない。が、その他の6人は揃って同じクラスだった為に理解出来ると同時に声を上げてしまったのだ。当然驚きが教室の中を支配する中、呆気に取られていた唯を抜いてお静は真白の手を掴むと廊下へと出ていってしまう。

 

「春菜の中に、お静ちゃんが入っていたって事?」

 

「でもどうして春菜に? って、あれ?」

 

 里紗と未央が話をしながら、やがてお静が居ない事に気付く。そこで他のメンバーも驚いていた間に2人が居なくなっていた事に気付き、リトは昼食を食べる事も忘れて廊下へと2人を探しに飛び出す。と、ララも同じ様に飛び出して廊下へと出ていってしまう。

 

「あ、ありえないわ。ゆ、幽霊何て居る訳無いのよ!」

 

「いや、流石にもうそれは無理じゃない?」

 

「私達、本物見ちゃってるしね?」

 

 唯がお静と言う幽霊の存在に震え、その言葉に里紗と未央が声を掛けていたその間。真白はお静に手を引かれて階段を上っていた。何処か向かう場所は決めていたのか、お静に連れられて辿り着いたのは屋上。そこからは彩南町の景色の一部が見え、お静はその光景に目を輝かせて手摺りへと近づき始める。

 

「うわぁ~、建物が一杯! それに太陽の陽ざし……気持ちいいですね~!」

 

「……お静……何で、春菜の中?」

 

「え? あ、それはですね……」

 

 見える景色を一望し、空からの陽ざしを嬉しそうに受けるお静に真白は質問する。するとお静は思いだす様に語り始めた。

 

 旧校舎で出会って以降、外の世界に憧れを感じ始めてしまったお静は募る思いを抑えきれずに到頭外へと出る事を決めて行動を開始した。が、その途中で犬に吠えられて逃げていた所、傍に居た春菜にぶつかってしまい、そのまま春菜の身体を乗っ取る形で憑依状態になってしまったと言う。

 

「そろそろ春菜さんにも迷惑が掛かってしまいますし、旧校舎に戻りますね?」

 

「……外に……出たい?」

 

「へ? そう、ですね……出来るならもう少し出ていたかったかも知れません」

 

「…………私の身体……使う?」

 

「……はい? い、良いのですか?」

 

 真白の突然の提案に思わず聞き返してしまったお静。自分の身体を他人に渡す等不安でしか無い筈の事を自ら提案したその姿にお静は驚きながらも確認すれば、真白は静かに頷いて肯定の意を示す。お静はそんな姿を見て嬉しそうに「ありがとうございます!」と言ってその手を掴み……首を傾げた。

 

「えっと……出方が分かりません!」

 

「……」

 

 まさかの答えに真白は思わず絶句する。と、真白とお静を追って来たリトとララが屋上に姿を見せた。2人は屋上を見渡し、やがて真白たちの存在に気付くと近づき始める。そしてお静と会話をし、お静が真白にした様にここに来た経緯を説明し始めた。……最後に出れない事も含めて。

 

「幽霊って地球人と合体出来るんだね!」

 

「ち、違う様で違く無い様な……にしても出れないって、どうするんだよ?」

 

「……御門……先生」

 

 ララが強ち間違っていない現状に楽しそうに言う中、リトの言葉に真白はその名前を口にする。医者である御門は当然病気だけが専門分野では無い。身体的内容などを調べるのであれば、知り合いの中で一番頼りになるのは彼女を於て他に居ないだろう。故にその名を出せばリトもすぐに納得し、真白はお静の手を今度は自分が引く様にして保健室へと向かい始めるのであった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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