【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第30話 結城 林檎の一時帰宅

 学校が終わり、真っ先に帰宅した真白は結城家でヤミと同じソファに座りながら美柑と夕飯の献立を話し合っていた。だが突然来客を知らせるチャイムが鳴った事で首を傾げ乍ら応対する為に玄関へと向かい、その扉を開ける。……そこに立っていたのはサングラスを頭に掛けた1人の女性。その姿を見た時、美柑は声を上げて驚き、真白は目を見開いた。

 

「結城 林檎。一時帰宅よ!」

 

 そう名乗った女性は正しくリトと美柑の母親であり、真白を結城家へと繋げた張本人であった。

 

 林檎は固まっていた2人を置いて家の中へ。やがてリビングの中へと入って行き、ようやく我に返った2人は追いかける様にリビングへと向かう。と、そこには林檎に身体を上から下まで見られているヤミの姿。ヤミは戻って来た真白と美柑に「この方は?」と質問する。それに美柑が「私とリトの母さんだよ」と答えた時、林檎が2人に振り返った。

 

「この子は美柑の友達?」

 

「え? あ、えっと……ヤミさんは真白さんの家族なんだよ」

 

「! そう……真白、良かったわね?」

 

「……ん」

 

 高校生としては低身長である真白だが、その友達まで低身長になる可能性は低い。故に美柑の友達だと思って聞いた林檎だが、返って来た答えに驚きながらも微笑みを浮かべると真白に近づいてその頭を撫で始める。その優しさの籠った手に真白が微かに頷いて答えた後、林檎は引いていたキャリーバックを部屋の隅に置いてソファに腰掛ける。先程まで真白とヤミが座っていた場所だ。

 

「そんなに長くは居られないけど、色々聞きたいわね」

 

「……珈琲? ……紅茶?」

 

「飛行機で眠れなくなりそうだから、紅茶でお願いするわ」

 

 美柑とヤミを前にそう告げた林檎。真白は飲むものを質問した後に言われた通り紅茶を入れ始め、美柑とヤミは質問攻めに遭い始める。普段話さない真白に質問をしても上手く返事が帰ってこないのは理解していたが故に、ターゲットになってしまった2人。やがて目を回し始めた頃、真白がティーカップを手に林檎の傍に立つと目の前にそれを差し出す。そこで一度質問は中断。カップを手に取り、一度香りを楽しんでから飲み始める。

 

「ふぅ。久しぶりの味ね……」

 

「……茶葉……送る?」

 

「そう言う事じゃ無いわ。家で飲むから、真白が淹れてくれるから美味しいのよ」

 

「……そう」

 

 味の感想に真白が首を傾げ乍ら質問すれば、林檎は首を横に振って答える。その内容に特に照れた様子も無く返し、真白が立ち上がった時。玄関の扉が開かれたのか、音が響く。と同時にララの「ただいま!」と言う声。そこで目を回していた美柑が立ち上がると、猛スピードで廊下へと飛び出て行く。そしてすぐにリトの手を引いて戻って来た。

 

「か、母さん!? 何時返って来たの!?」

 

「ついさっき! ちょっと日本で仕事が出来てね。余りゆっくりはしてられないけど」

 

「親父に連絡は?」

 

「急だったからしてないわ。邪魔しても悪いしね? それよりも、そこの子が居候している宇宙人の女の子?」

 

「初めましてリトママ! ララで~す!」

 

 リトはまず林檎が居る事に驚き、次に才培が知っているのかを確認する。だが首を横に振って答えた林檎は次にリトの後ろに居たララに視線を向けた。先程行っていた美柑とヤミへの質問の中で、ララの存在と宇宙人の存在を聞いていた林檎。宇宙人と聞いて特に驚いた様子を見せない事にリトが呆然とする中、ララが元気良く挨拶をする。と、林檎の目が変わり始める。そして徐に立ち上がり、ララの元へ。その身体をヤミと同じ様に下から上へと見上げた後、手を伸ばし始めた。

 

「へ? ふぁ!」

 

「ふむふむ。胸の大きさ。お尻の引き締まり……B(バスト)89 W(ウエスト)57 H(ヒップ)87って所かしらね……素晴らしいわ!」

 

「……」

 

 ララの胸やお尻等を余すことなく触り、揉み始めた林檎。突然の事に抵抗する暇も無く、ララは少しの間されるがままになる。やがて解放すると、1人ララの身体に関して呟きながら納得する林檎。そんな姿に真白はジト目になり、ヤミは自分の胸などを軽く触り始める。自分の場合は触られなかった事に安心すると同時に、ララと比べて明らかに足りない事を確認しているのだろう。

 

「は!? ご、御免なさいね? お仕事モードになっちゃって」

 

「? お仕事モード?」

 

 ようやく我に返った時、謝りながら言った言葉にララが首を傾げる。そしてそれを説明する様に美柑が口を開いた。

 

 結城 林檎はファッションデザイナーでありモデルのプロデュ―サーでもある。故に可愛い相手やスタイルの良い相手を見ると『お仕事モード』となって確認してしまうのだと。それを聞いた時、ララは目を輝かせて林檎を見る。と、ここで小さな声が全員の耳に入る。なんと玄関の近くには春菜が居り、真白と美柑はララが誘ったのだとすぐに察した。初心なリトが誘える可能性は、非常に低い故に。

 

 春菜は林檎とリト達の会話などを聞いて邪魔してしまったと思った様で、帰ろうとする。ララはそれを止めようとし、リトも止めようとする中。我に返っていた筈の林檎が再びお仕事モードになってしまう。当然その標的は春菜。が、ララとは違って身体を触った後に服まで脱がせようとし始めた事には流石にリト達も焦り始める。何とかリトが林檎の肩を掴んで止めた頃には、制服が脱げる寸前まで行っていた春菜。林檎が必死に謝る中、春菜は顔を赤くしながら制服を戻す。

 

「ご、御免なさいね? えっと、貴女は……?」

 

「あ、西連寺 春菜……です。その……結城君とは同じクラスで……」

 

「? 貴女、ひょっとして……」

 

 謝りながら何とか違う話にしようと名前を聞いた時、春菜の自己紹介とその後に続けた言葉で一気に顔を近づけた林檎。そして微かに聞こえる程の声で何かを聞いた時、春菜は顔を真っ赤にする。微かだったために全容は聞けず、それでも『リト』と言う名前が出た事に気付いたリトが首を傾げれば、口元に手を当てて楽しそうに笑いだす林檎。っと、更に顔を赤くして逃げる様に春菜は帰ってしまう。

 

「面白い事になってるわね~」

 

「でしょ?」

 

「……」

 

 明らかに楽しんでいる林檎と美柑の言葉にジト目になり乍らも溜息を吐いた真白はリビングへと戻る。っと、そこには身長が伸びて胸も大きくなって居るヤミの姿があった。お互いに目と目が会い、固まる中。何を思ったのかヤミは顔を赤くしながらも真白の前に立つと、震え乍ら手を上げる。そしてその手は真白の頭に乗り、林檎を真似る様に撫で始めた。

 

「こ……これは……」

 

「…………ヤミ」

 

「!?」

 

 真白の髪の感覚と見下ろしながら見るその光景に何処か新しい感情を感じていた時、名前を呼ばれた事で我に返ったヤミは一瞬で身体を元に戻すと顔を先程よりも真っ赤にしながら顔を背ける。

 

「今のは……その……」

 

「……」

 

「わ、忘れてください!」

 

 忘れろと言って簡単に忘れられるものでは無い。それを理解しているからこそ、ヤミはしばらくの間恥ずかしさに見悶える事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 林檎の滞在時間は本人が言う様に短く、来たその日にまた外国へと飛ぶと言う事で見送りに来たリトと美柑。真白とララ。そして顔の赤いヤミ。

 

 人が沢山居て混雑する中で、林檎は頭に掛けていたサングラスを目に掛けてキャリーバックを片手に歩き続けていた。が、やがて発着場の前へとたどり着いた時。振り返って見送ってくれる全員の顔を見る。

 

「じゃあ、またね? あぁ、そうそう。ララさん。それと美柑も、こっちに」

 

≪?≫

 

 別れの言葉を言うと思えば突然呼ばれた事にお互いに顔を見合わせて首を傾げた2人。だが時間も余り無い為、林檎の傍に近づけば微かに小さな声で告げられる。

 

「同性愛は海外では良くある事よ。先を越されない様、頑張ってね♪」

 

「ふぇ?」

 

「な、何で私にも言うの……?」

 

「ふふ。何でかしらね?」

 

 顔を真っ赤にして俯いているヤミの姿を一度見た後に言われた言葉。それにララが驚いた様に声を出して、美柑が戸惑い乍ら聞き返す。だが林檎は笑みを浮かべるだけで明確な答えを言わず、そのまま飛行機に乗るためにその場を後にした。

 

「日本でゆっくりする時間も無い、か。大変だな、母さんも」

 

「ん……」

 

 リトの言葉に真白は頷くと、目を瞑って離れて行く林檎の後姿に想う。今周りに居る人達は自分が作った繋がりかも知れない。だがそれでも、その繋がりを作るきっかけを作ってくれた林檎へ。最初の繋がりをくれた彼女へ……感謝を込めて。




ストックが終了致しました。故に以降は毎日の連続投稿が不可となります。

【5話】又は【10話】程お話が完成次第、順次投稿して行くつもりですのでこれからも本作品をよろしくお願い致します。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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