【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第28話 旧校舎の幽霊探し【前編】

 授業が終わって訪れた休み時間。里紗と未央がララや春菜に話しかけるのを横目に何もしないで次の授業の時間を待つ真白。結局話に参加することは無く、次の授業を終えてそのまま放課後までを過ごした真白が帰る為に立ち上がった時。普段の様にララがその傍へと駆け寄る。だが、普段ならば一緒に帰る事を要求するララはその日違う事を要求した。

 

「真白! 幽霊を確かめに行こうよ!」

 

「?」

 

 突然の言葉に思わず首を傾げた真白。そんな彼女の姿にララは「あれ?」と言って少し考えた後、そこで初めて真白に何の説明もして居なかった事に気付く。そうして説明される内容は学校に存在する旧校舎の噂であった。何でも幽霊が出るらしく、それを確かめに行くつもりだったララ。里紗と未央が話しかけて居たのはその事だった様で、参加するのはララ・春菜・リト・里紗・未央の5人。当然ララは真白と一緒に行くつもりであり、気付けばもう行くことがララの中で決定して居たのだろう。真白は少し考えた後、頷いて携帯を取り出す。何時もなら真っ直ぐ帰る分、少し遅くなると美柑にメールを送ったのだ。そして同様にヤミにも送り、思いつく問題は解決する。

 

 ララに手を引かれて他の4人とも合流し、旧校舎へと出発した6人。普段使って居る綺麗な校舎から離れ、立ち入り禁止の札を通り過ぎて辿り着いたのは古びた所々が朽ちて居る建物であった。人の気配の無い建物の中は静まり返り、ララに手を引かれたまま歩く真白は稀に後ろを気に掛けながらも足を進める。

 

 メンバーの反応は様々であり、ララは幽霊を大きな声で呼ぶ中。真白は普段通り無表情に。里紗と未央は特に怖がっている様子は無く、春菜は明らかに怯えながら。リトは武器としてフライパンを手に周りを警戒し続けて居た。っと、突然足元に走った生き物に春菜が声を上げる。それは唯のネズミであり、安心すると同時に幽霊などやはり居なかったのでは? と思い始めた一同。だがその時、全員に間違い無く聞こえる何かが動いた音で警戒を始める。

 

「聞こえた?」

 

「うん、あの中から聞こえたよね?」

 

 里紗の確認に頷いた後、上半分がガラスになって居る扉を指さす未央。音は未だになり続き、ガラス越しに近づき始める人影に全員が怯えながらも構える。やがて扉がゆっくりと動き始め、意を決した様にリトが飛び出そうとして……真白が片腕を掴んでリトの行動を止める。

 

「のわぁ! 真白!?」

 

「……平気」

 

 相手が危険な人物の可能性も想像し、誰よりもこの場に居る者を助けるために行動を起こしたリト。だがそれを止められた事で思わず声を上げ乍らリトは真白に振り返る。すると返って来た返事にリトは一瞬呆け、それと同時に扉は全開になった。そうして姿を見せたのは黒い服に長い金髪を伸ばした少女。全員が驚く中、その少女も全員を。特に真白を見ると目を見開く。

 

「ヤミちゃん!?」

 

「……何故ここに? 遅くなるのでは?」

 

「……幽霊……探し」

 

 出て来たその姿にララが声を上げる中、ヤミは真白に近づくと質問する。真白はその質問に自分達がここに居る目的を言うも、その言葉だけでは分からず首を傾げたヤミ。そんな2人の光景を見ながら、里紗と未央はララに近づき始める。

 

「ねぇ、ララちぃ。あの子、偶に校内で見かけるけど知り合い?」

 

「あ、うん。ヤミちゃんは友達で、真白の家族なんだよ!」

 

「へぇ~、三夢音さんの。にしても、可愛い~!」

 

 実はヤミ、最近になって学校内に現れる様になっていた。1年生の時は真白を外で待って居たが、2年生になってからは図書室に入り浸る事が多くなって居たのだ。ヤミがここに居た理由も古い本を読むためと言う事であり、里紗と未央はララの説明を受けて真白とヤミのツーショットを視界に納めた後、ヤミを愛でようと近づき始める。が、触れるよりも早くヤミは軽やかに移動して真白の傍を回る。と、何かを感じた様に真白を前に立って守る様に立った。

 

「何か、居ます」

 

 自分達以外に誰かが居る。その言葉の意味に再び構えた全員。だがその姿が見える様になると、一斉に再び安心する。

 

「あなた達! 揃って何処に行くかと思えばこんな所に入り込むなんて! 校則で禁止の筈よ!」

 

 それは真白以外、最近になって交流を持つ様になった唯の姿であったからだ。ララは幽霊かと期待して居た様で、唯の登場に目に見えて落胆する中。唯はクラス委員である春菜にまずは活を入れると、そのまま矛先を真白に向けた。

 

「貴女もよ真白! どうせあの子に流されたんでしょうけど、駄目な事はきちんと駄目と言いなさい!」

 

「……ん」

 

「しっかり返事する!」

 

「……はい」

 

 唯の注意を受けて返事をした真白。最初やヤミが次は唯と、幽霊でも何でもない現象の数々に幽霊が居ないと里紗と未央は少し冷や汗を書きながらも笑い合う。だがそんな2人の笑い声を一瞬で止める様に、この場に居る全員の耳に低い声が響き始める。

 

『出て行け……出て行け……さもなくば……』

 

 明らかにこの場に居る者の声では無いそれに焦る中、突然真白たちの足元が崩れ始める。足場が落ちるに従って自分達も落ちる事になり、当然真白も落下する。が、途中で真白の身体はヤミの髪に包まれると上へと上げられる。崩れた際、ヤミは残った足場に回避して居たのだ。そして落ちてしまった真白を回収し、無事に横へと着地させる。

 

「床が腐って居た様ですね」

 

「おーい! ララちぃ! 春菜!」

 

 ヤミと真白が立つ場所とは反対の残った足場には里紗と未央が立って居り、他の全員が落ちて行ってしまった穴へと叫ぶ。だが返事は無く、とにかく下に行く方法を探す為に行動しようとした2人。当然反対に居たヤミと真白も連れて行こうとするが、真白は穴を見つめた後にヤミに視線を向ける。そして里紗と未央が2人の元にたどり着いた時、真白はヤミに何かを言って戸惑い無く穴の中へと【飛び込んだ】。

 

「ちょ! 三夢音さん!?」

 

「ヤミヤミ! 止めなくて良いの!?」

 

「……問題ありません。私達は私達で合流する道を探しましょう」

 

 落ちて行く真白の姿を見て驚き焦りながら駆け寄る里紗と話をして居たヤミに聞く未央。しかしヤミは落ちて行った真白の面影を見つめながらも答えると、歩き始める。この様な状況で当たり前の様に移動を始めるヤミに里紗と未央はお互いに顔を見合い、そしてヤミを追い掛けて2人もまた移動を始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 落下の衝撃を受けて尻餅をついて居たリト・ララ・春菜・唯の4人。既に痛みを我慢しながら立ち上がった状態であり、リトが不慮の事故で唯の下着を見てしまった事で殴られた時。4人の頭上から微かに音が響く。急いで見上げた時、そこに居たのは白い羽を生やしてゆっくりと降りて来る真白の姿。上から降りて来るため、下に居る全員にはスカートの中が丸見えだが真白は特に気にした様子も無く着地すると、羽根を撒き散らしながらそれを消して周りを見渡す。そして4人が全員無事である事を確認すると、微かに溜息を漏らした。安心したのだろう。

 

「ま、真白……貴女今……」

 

「真白! 追い掛けて来てくれたんだ!」

 

 羽を生やして降りて来るその姿を見てしまった唯は信じられないとばかりに驚いて話しかけるが、それを遮る様にララが真白の身体に抱き着く。真白の顔はララの胸の谷間に埋まり、後頭部を包んで逃げられない様にまでしてしまったララ。最初は軽くララの身体を押して離れようとするも、やがて息が出来なくなって来たのか強引にそれを引き剥がす。そして後ろに数歩進んだ時、真白の足を何かが引掛ける。

 

「っと、大丈夫かよ?」

 

 地面に激突するよりも早くリトが真白の後ろに移動してその身体を支えるが、真白は足元を見てから周りを気にし始める。明らかに何かを警戒して居るその姿にリトが声を掛けようとした時、そんなリトの身体に悲鳴を上げて春菜が飛びつき始める。

 

「は、春菜ちゃん!?」

 

「今……ピ、ピアノの音が……」

 

 突然飛びつかれた事に焦りながらもその身体を受け止めたリト。すると春菜が怯える理由を話し、それと同時にこの場に居る全員に突然ピアノの音が聞こえ始める。今現在旧校舎に居るのはこの場に居る者と上に居る3人のみ。もしも同じ様に誰かが幽霊を確認しに来ていたとしても、ピアノを弾くなど可笑しい事。怪奇現象としか思えない状況に怯えながらも辿り着いたのは……音楽室であった。

 

 リトと唯は目の前の扉の中から聞こえて来る音に怯え、冷や汗を流し続ける。確かめるためには開けなくてはいけないが、開ける勇気を中々出せない2人。そんな2人を見かねた様に真白が歩きだすと、ララも一緒に並んで歩き、やがてその扉に手を掛ける。そして2人の心の準備が決まるよりも前に扉を開けた時、中には誰も存在して居なかった。ピアノの音も止まり、真白とララは躊躇なく中に入ると音楽室内を確認する。幽霊の姿も、怪しい存在も何も居ない部屋を。

 

「や、やっぱり幽霊が……!」

 

「認めないわ……居る筈無いわ、幽霊何か!」

 

 無人の部屋で鳴ったピアノ音。その事実にリトは春菜にしがみ付かれたまま中へと入り、唯は自分に言い聞かせる様に呟きながら同じ様に中へ。一通り調べ終わった後、結局何も見つからなかった事で他の場所へと移動する事になる。

 

『……』

 

「?」

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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