【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第21話 突然の告白。ヤミ、発熱する

 授業が終わった後の休み時間。移動教室であった真白は唯と共に廊下を歩いていた。が、真白はふと何処からか感じた視線に振り返る。そこに居るのは短い休み時間を楽しんでいる生徒や同じ移動教室故に歩いている生徒達で賑わっており、特に自分を見つめている生徒の姿は何処にも無い。

 

「どうしたのよ?」

 

「……」

 

 突然止まって後ろを振り返った真白に当然気になり話しかけた唯。真白はその声にもう少しだけ見続けた後、首を横に振って歩みを再開する。その後、何事も無く授業を終えた真白。移動教室での授業が4限だった為、昼休みに突入した学校内で教室にお弁当を置いたままの真白達は一度戻る事に。すると教室の前には真白を待っていたのだろうララが居り、この日は唯と食べる気でいた真白はそれを断る為にララの元へと近づこうとする。だが突然視界が変化し、廊下から一瞬で別の空き教室へ視界が切り替わっていた。そして

 

「私と一緒にお昼ご飯を食べて!」

 

 そう真白へ昼食の誘いを行ったのは薄い浅葱色の髪を肩下まで伸ばし、2本だけ上に立たせて居る1人の少女。真っ赤な顔をし乍ら両手でお弁当を差し出すその姿に真白は何も答えずに少女を見つめる。やがて余りにも見つめられている事に恥ずかしそうにモジモジとし始めた時、真白はそこでようやく首を傾げた。場所が急激に切り替わり、知らない少女に昼食を誘われる事にそもそも困惑するのは当然である。

 

「……どうして?」

 

「私、ずっと見てたの。最初は些細な事で気になって。でも気付いたら真白ちゃんの事が忘れられなくて。そんな趣味無いって最初は思って、違う男の子の事も考えたりしたけど……でも駄目だった。私、真白ちゃんの事が好きになっちゃったの!」

 

「……」

 

 真白がした質問に意を決した様に言った少女。昼食の誘いから急激に告白へと移り変わった少女の言葉に真白は無表情乍らも呆然とする中、既に告白を行ってしまった少女に恥じらいと言う物は無くなってしまったのかも知れない。静かに1歩足を踏み出すと、真白の背中に手を回し始める。そして指を1本立て、背中を上から下へとなぞれば一瞬身体をピクッと震わせる真白はすぐに後ろに下がって少女と距離を取る。

 

「真白ちゃんは私の事を知らないよね。だから、これから知って。沢山、教えてあげるから」

 

「……!」

 

 離れた真白の姿に自らの唇を舌で舐め、徐々に近づき始める少女。真白はその姿に危険を感じ、その場から逃げるために移動し始めようとする。が、その時真白と少女の目の前にララが現れる。恐らくあの場から突然居なくなった真白を探していたのだろう。

 

「あ、居た! 突然誰かに引っ張られていったから吃驚……ってルンちゃん!?」

 

「……ちっ」

 

 真白を見つけた事に喜びを見せていたララは、真白の前に立って居た少女を見て驚いた様に名前を言う。対する少女はララが現れた事に聞こえない程の声量で舌打ちを行うと、真白に笑みを浮かべて口を開いた。

 

「邪魔が入っちゃった……また今度、一緒に食べてね。私の未来のお嫁さん♪」

 

「あ、待ってよルンちゃん!」

 

 少女……ルンは真白に最後に言い放つと、その場を逃げる様に去って行く。どうやらララの知り合いの様で、ララはその場を去ったルンを追い掛けて同じ様に居なくなる。そうして1人取り残された真白は現在居る教室に付いていた時計を確認し、今居る場所を確認した後に教室へと戻る事にする。まだ昼食の時間は半分以上残っており、自分の教室へと到着した真白は突然消えた事に心配する唯に平気であると伝えた後、予定通り唯と食事を行う事になるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある朝、結城家へ向かう前に自分の家で起床した真白は隣に眠るヤミが寒くならない様に布団を掛けなおした後に顔を洗い始める。パジャマ姿であった服を脱いで洗濯籠の中へと入れれば、壁にハンガーで掛けてあった制服を手に着替え始める。普段ならこの時にヤミが目を覚まし、顔などを洗い始めるのだが……この日。ヤミは寝苦しそうに顔を歪めていた。

 

 基本しっかりしているヤミが起きて来ない事が気になったのだろう。真白はヤミに近づくとしゃがみ込んでその姿を見る。真白が着ているパジャマを着用している為、微妙に大きいその袖などが可愛らしい姿を作り上げている光景。顔は少しだけ赤みを帯び、やはり寝苦しそうにしているその姿を見て真白は静かに手を伸ばすとヤミの前髪を上げる。そして自分の額を当て始めた。

 

「……熱い」

 

 何処か異常があると思って行ったであろう行動は項を奏し、真白はヤミに熱があると分かると静かに立ち上がる。そして傍に置いてあった充電するためのコードが繋がって居た携帯電話を手に取ると、畳まれている画面を開けて御門の名前を探し始める。真白の携帯に登録されている名前はリトと美柑の母親も含めた結城家4人と、御門のみ。故に探すのは簡単であり、それを開いた真白はメールを打ち始める。やがて打ち終えた後、次にリトへとメールを送った真白はヤミの身体を抱き上げた。

 

「ぅん……え……?」

 

「……少し……我慢」

 

 抱き上げられた事によって目を覚ましたヤミは自分が真白に持ち上げられている事に気付くと、力無く驚く。そんな間違いなく弱っているヤミの姿に真白は静かに告げると、ヤミを腕に抱きながら家を出る。鍵を閉める事は忘れないが、締めた後はヤミに負荷を掛けない様急ぎ過ぎずに。だが急いで御門の家へと向かい続ける。

 

 真白の家と御門の家は結城家に向かう距離とそこまで変わらず、そんなに時間を掛けずにたどり着いた時。真白は自分の家と結城家の家、そして御門の家の鍵が束ねてある鍵束を取り出すとその扉を開ける。御門が寝ているのは2階であり、真白は近くにあったソファにヤミを一度寝かせると2階へ。扉をノックするも返事は無く、真白は何も言わずにその扉を開けた。

 

「ん……すぅ、すぅ……」

 

「……」

 

 中に居たのは下着姿で眠っている御門。傍に置いてある携帯電話は一度鳴ったのだろう、気付いて貰えるように定期的に光り続けているが……持ち主である本人は一切気付く事無く夢の中である。その光景に真白は一度目を瞑った後、その身体を揺らし始める。

 

「んっ……」

 

「!」

 

 だが起こす為に揺らしていた時、御門は寝相からか真白の身体をベッドの中へと引きずり込み始める。突然の事に対応も出来ずにベッドの中に引き込まれた真白は、前から御門に抱きしめられる事でその大きな胸の中に顔を埋める事に。抱いた枕を撫でる癖でもあるのか、背中を優しく撫でられ始めた真白は息が出来ない現状も相まって暴れる様に身体を揺らし始める。

 

「ん~? 何よ~、一体」

 

 腕の中で暴れる真白にようやく目を覚ました御門。確かめる為に胸を後ろに下げて下を見始めた御門は、起きた事を確認する為に上を向いていた真白と目が合う。そしてしばらくの沈黙の後、怪奇な物を見る目で真白を見始める。

 

「何してるのかしら?」

 

「……離して。……後、助けて」

 

 何の目的があったのかと怪しんだ御門だが、解放を望む真白の言葉で悪意が無いと分かったのだろう。抱きしめていた腕を解放すればすぐにそこから逃げ出す様に移動した真白。そしてそのまま続けた真白の言葉に目を細めて「どう言う事?」と質問。真白は部屋から出て行き、御門は傍にあった白衣を着て真白の後ろへ続く。そうして導かれたのは、ソファの上で薄く目を開けて弱弱しく呼吸するヤミの場所。

 

「そう言う事ね」

 

「ん……涼子なら……助けられる」

 

「そうね。死人以外ならどんな患者でも直して見せるわ。ヒーリング・カプセルに入れるから、脱がすのを手伝って頂戴」

 

 見ただけで全てを察した御門に真白は強い目で告げる。その視線には普段は余り見られない微かな不安の感情が混じっているが、御門がそれに強く言い切る事で一瞬にして全てが信頼へと変わる。そして御門の指示に従ってヤミを助けるために言われた通り、服を脱がし始めた真白。ボタン付きのパジャマは脱がしやすく、ヤミの綺麗な素肌が徐々に晒されていく。やがて生まれたままの姿になった時、御門はヤミを直すための装置がある場所へ向かう為に歩き始める。真白もそれに着いて行くため、ヤミを横抱きに抱えて歩き始めた。

 

「最近、変身(トランス)能力を考えなしで使ったのでしょうね。その副作用よ」

 

「……」

 

 御門によって症状の原因を告げられた真白はヤミが身体の一部や髪を武器にしている光景を思い出し、次に普段一緒に居ない時のヤミの行動の中でそれを使う場面があった可能性を想像する。そしてその間に大きな丸い水の入ったカプセルに入れられるヤミ。溺れる心配は無いらしく、そこに居れば問題無いと御門は告げると時間を確認する。既に学校は始まっている時刻。「遅刻よ」と真白に告げれば、真白は何も言わずに首を横に振った。

 

「……ここに……居る」

 

「一応私、先生なのよ?」

 

「……追い出す?」

 

「……はぁ、見逃すのは今日だけよ? せめて何処か違う部屋にでも居なさい。起きたら知らせるわ」

 

 ヤミが起きるまで家に居ると告げた真白の言葉に教師として言った御門。だが真白が再び強い意志を込めた目で御門を見れば、折れた様に溜息を付いて御門は真白が学校をサボる事を見て見ぬ振りすると決める。そして座る場所の無い今の空間で立ち続ける事を想像した御門が言えば、真白はその思いを理解して頷いた後に今の部屋から出ようとし……振り返る。

 

「……涼子」

 

「? 何?」

 

「……ありがとう」

 

 突然のお礼に驚いた様な表情をする中、今度こそ部屋を後にした真白。ゆっくりと閉まる扉を見つめ、御門は小さく微笑むと巨大なカプセルの中で眠るヤミに視線を向ける。そしてまた優しく笑みを浮かべた。

 

「愛されてるのね、貴女は。少し妬けてしまう程に……ね」

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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