【完結】ToLOVEる  ~守護天使~   作:ウルハーツ

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第15話 ララ、コロット風邪に掛かる

 朝。結城家へと到着した真白は玄関を開けると共に少し構える。それはある意味反射的な物であり、毎日の様にララが飛び込んで来る事が原因。だがその日、珍しく真白が来たにも関わらずララの姿はそこに無かった。真白はララが居ない事に気付くと、何事も無い様にリビングへ。そこに座っていたのは美柑とララであった。

 

「あ、真白さん。おはよう」

 

「ん……おはよう」

 

「あぅ……はぅ……」

 

 真白が来たことに普段通り挨拶を交わす美柑。真白も当然それに普段通り返すが、その場に居たララは普段とは全く違う反応を見せていた。まるで恥ずかしがっている様に美柑の傍に立ち、顔を赤く染めて真白を見つめるララ。真白は首を傾げると、美柑がララの状態を見て苦笑いを浮かべる。

 

「なんかララさん、朝からこんな感じなんだよ」

 

「あの、その……おはようございます。真白」

 

「……」

 

 美柑の説明と共に挨拶を行ったララ。しかしそれは普段のララからは想像も付かない程に丁寧な物であった。天真爛漫に明るく、元気の良い彼女とは全く違うその光景に真白は何も言わずに黙り込む。すると部屋から降りてきたであろうリトが話をして居る3人に気付いて「おはよう」と言うと同時に「どうしたんだ?」と質問。真白は何も言わずにララへ指を差せば、恥ずかしそうに美柑の後ろに隠れるララの姿にリトは思わず「は?」と驚いてしまう。

 

「どう言う事だ?」

 

「……」

 

 リトの疑問に答える物は誰も居なかった。その後、普段とは違うララと共に朝するべき食事などを終えた4人は登校する為に結城家を出る。何時もなら片手に鞄を持ちながら楽しみなのか笑みを浮かべているララだが、今は両手で鞄を前に持つと言うまるでお嬢様の様な姿を見せる。鍵を掛けている真白の姿をしっかりと見つめ、やがて同じ場所になれば並行する様に歩き始めた。普段登校中の時間すらも楽しそうに過ごしているララは、リトを置いて先に行く真白を追い掛ける事は無い。だがこの日、真白が早歩きになり始めると同時にララもまた早歩きでその横を並行し始める。

 

「真白。偶には学校まで一緒に行きたいです」

 

「……」

 

「あ……ふふ、ありがとうございます。真白」

 

 ララの言葉に真白は何も言わず、だがそのスピードを徐々に下げ始める。それに気付いたララは微笑みを浮かべながらお礼を言い、やがて2人は校舎の近くへ。すると少し離れた位置に3人の人影が映り、その内2人が大きく手を振っている姿が見えた。それはララと同じクラスの女子生徒2人であり、その傍に居たのは春菜であった。春菜は勿論、女子生徒2人もララと仲が良いらしく駆け寄って来るとまずは挨拶。何時もの返しを想像していた3人は、帰って来たララの挨拶に思わず黙り込んでしまう。

 

「おはようございます。春菜さん、里紗さん、未央さん」

 

「……え?」

 

「ら、ララちぃ?」

 

 元気な挨拶を想像していた3人にとって、その御淑やかな挨拶は驚愕するもの。言っているのがあのララと言う事もあって困惑する中、意を決した様に女子生徒の内金髪の里紗と呼ばれた女子生徒が傍に居た真白に声を掛ける。

 

「え、えっと三夢音さん? ララちぃ、何かあったの?」

 

「……?」

 

 普段会話をしない相手との会話は誰でもぎこちない物。里紗の質問に真白はララへ視線を向け、やがて首を傾げる。見られ始め何故か首を傾げられた事にララも首を傾げ乍ら「どうかしたの?」と質問。そんな2人の光景に春菜は「三夢音さんも分かんないんだね」と結論を出す。里紗は春菜の通訳の様な言葉に「あ、そう言う事」と納得し、未央と呼ばれた眼鏡を掛けたツインテールの女子生徒が「意外に三夢音さんって」と何かを真白に見出し始めて居た。

 

 その後、里紗と未央は何かを話し始める中で春菜は「結城君は?」と質問する。普段先に言っている真白と遭遇することは珍しい事であり、普段ララとほぼ同じ速度で歩いているリトがこの場に居ない事に質問したのだろう。真白はその質問に自分が来た道を振り返り、指を差す。春菜はその先に視線を向け、少し離れた場所にオレンジ髪の生徒が居るのに気付いた。向こうも気付いた様子であり、自分に視線を向けている春菜に気付いたリトは一時固まった後に少し早歩きで合流。その頃にはもう、真白は校舎の中であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真白。一緒に食べませんか?」

 

 昼食の時間になった時、隣のクラスであるにも関わらず教室へとやって来たララの言葉に真白は黙り込む。すぐ傍には普段から食事を取る唯も居り、ララが来た際に譲るのはもう慣れてしまっていた唯。「行っていいわよ」と言う言葉に真白は唯へ視線を向けた後にララへ近づこうとした時、ララは唯の存在に気付いたのだろう。

 

「あ、先客が居たのですね。なら無理しなくて平気ですよ。また今度にします」

 

 ララは突然そう言うと一度頭を下げた後にその場を去って行く。普段の目立つララを知っている生徒達は一様にその行動に驚き、唯もまた困惑し始めていた。だがその間にも昼休みの時間は進み続ける。真白はララが居なくなった事に唯へ視線を向けると、自分の席に戻ってお弁当を広げ始めた。当然ララが居なくなった今、このままでは1人で食べる事になる真白の姿に唯は持っていたお弁当を手に真白の席に近づく。そして数日振りに、共に昼食を取り始めた。

 

「何があったのよ、あの子。まるで別人じゃない」

 

「……」

 

「分からないのね。にしてもあの変わりよう……ありえないわ」

 

 おかずを摘みながら唯が真白に聞けば、箸を口に入れたまま首を横に振る真白。それだけで意思を理解した唯は既に居ないララの立って居た場所を見た後に何処か現実から目を反らす様に呟く。特に会話がそれ以降盛り上がると言った事は無かったが、真白の知らないところで少しだけ唯の機嫌が良くなっているのは本人のみ知る事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後になり、ララの変化にリトは流石に不安に思ったのだろう。帰宅するよりも早く真白を呼び止め、ララと共に人の居ない屋上へと向かった3人はその場で話をする事になった。と言っても当の問題である本人が「話がある」と呼ばれただけで、何でこの場に呼ばれたのか分かっていない様子である。見ていた真白は当然理解出来ており、リトとララの会話を見守る様に見続けていた。……そんな時、少し強い風が下から斜め上へと吹き抜ける。それはララのスカートを、そして真白のスカートを捲り上げた。急いでスカートを抑え込むララとは対照的に真白は特に気にした様子も無く、唯それを静かに抑える。と、ララは少し睨む様にリトに視線を向けた。

 

「見た?」

 

「え、えっと……」

 

「見たんだね」

 

「わ、悪かったって! でもパンツが見えたのは不可抗力で」

 

「忘れて。私のはどうでも……良くは無いけど、それよりも真白のを見たのなら、すぐに忘れて」

 

「へ? いや……は?」

 

「……」

 

 ララとリトの会話を聞き、両方をジト目で見つめていた真白。するとララは突然リトから守る様に真白の身体を抱きしめる。そしてそこで何かに気付いたのか、会話が終わると同時にララの額に突然自分の額を触れさせ始める。余りに突然の行為にララは急激に顔を真っ赤にし、逃げる様に距離を取った。だがそれを行った本人である真白は触れあっていた額を触り、確信する。

 

「……熱がある」

 

「熱? でもそんなのあったら普通でいられる筈ないだろ?」

 

「いいえ、コロット風邪なら説明が付くわ」

 

「え? なっ、保険の御門先生!?」

 

 真白の言葉が嘘とは思えず、だが熱があるにしては怠そうにも何も見えないララの姿に困惑するリト。そんな彼に答えを告げたのは、この場に突然現れた彩南高校で保険医を行っている先生……御門 涼子であった。リトが当たり前の様に現れた御門に驚く中、御門本人は病気になっているであろうララを。そしてその傍に居る真白に視線を向けると、一番説明を欲しがっているであろうリトに話を行う。

 

 御門の話に寄れば、微熱と同時に性格が変わってしまう宇宙人特有の病気が存在しているとの事。リトは聞いた事の無い病名に最初は戸惑ったが、その説明で納得する。……と同時に宇宙人特有の病気を知っていると言う事実に驚愕する。ララの正体が宇宙人である事は誰にも伝えていないため、知っているならその理由は1つ。御門は特に隠した様子も無く自分が宇宙人である事を明かし、それと同時に地球にはララが来る前から沢山の宇宙人が住んでいる事を教えた。

 

「案外、貴方の傍にも居るかも知れないわ……ね?」

 

「俺の傍に……?」

 

「……」

 

 説明の最後にそう付け加えると、リトに気付かれない様に真白へと笑みを向ける。そんな御門の行動に真白は再びジト目で見つめ、話を変える様に御門は着ていた白衣のポケットから小さな容器に入った液体を取り出す。それは御門曰くコロット風邪に効くお手製の風邪薬であり、それを御門はリトの手に落とす。

 

「あげるわ」

 

「良いのか!」

 

「本当は報酬を貰う所だけど、前払いされてるから貰わないであげる」

 

「前払い? 誰が?」

 

「さぁ、誰かしらね? お節介な人である事は確かね。それじゃ、お大事にね。お姫様(プリンセス)

 

 御門はララにそう言い残し、屋上を後にする。リトは御門が宇宙人であった事や、その御門が言った言葉に考えようとするもすぐに持っていた薬でララの事を思い出す。流石にもう恥ずかしさは無くなっている様であり、今の性格なら言われた事もしっかりと聞いてくれるだろう。リトはララにその薬を手渡すと、それを飲む様に言う。少し不安そうにし乍ら真白に視線を向けるララ。真白は去って行った御門の後姿があったであろう扉に視線を向けており、ララの視線に気付くと手に持っている薬を見て静かに頷く。

 

 その夜。薬の効果は絶大ですぐさま治ったララは何時も通りに戻り、そんなララによって真白はまた一緒にお風呂に入る事になるのだった。

各話の内容を分かり易くする為、話数の後に追加するのは何方が良いでしょうか?

  • サブタイトルの追加
  • 主な登場人物の表記

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